追記:この話は誤字脱字が多いことを自分で確認しました。一応気付く範囲で修正施しました
「はぁ……」
すでに演習場に出てから何度目かわからないほど溜息をついている気がする。
「どうかしたのさーやちゃん?」
本音さんが心配そうに話しかけてくることからも、自分が今、相当落ち込んでいるように見えるのだろうということがわかった。
理由はちょっとしょうもないものではあるんだけど……。自分からは言いづらい。生徒会長に暴行を働いた――なんてとてもじゃないけど、そう易々と口にできる言葉じゃない。
「むー、私のこと無視してまた考え事してるー」
本音さんがそう言いながら、ボクの頬をつんつんと突いてきた。
「わっ!」
くすぐったさから、思考の波に入り込んでいたのが半ば強制的に表面に上げられた。
もちろん悪いのはボクなんだけれど、それでもちょっぴり嫌だったわけで……。非難の意味を込めて本音さんの方を見てしまう。
本音さんの方はと言えば、ボクが反応したことが嬉しいのかちょっと笑顔になっていた。むぅ……そんな顔されるとボクが困る。そんなにこやかな顔のまま本音さんが口を開いた。
「さーやちゃんが私のこと無視するんだものー」
「ごめんなさい!」
その一言で、さっきまでの非難の気持ちはどこへやら。正論をぶつけられて、たちまち縮こまるようになってしまうボクだった。
「いや~、別にいいんだけど~。あまり思い悩むのはよくないから~、たまには私にも相談して欲しいな~、なんて」
本音さん独特の間延び口調のせいで、内容を察するのに一瞬の間を要したけど、つまりは私にも遠慮なく相談してくれ――ということらしい。
思わず苦笑い。そこまで人に心配されることでもないのに、大袈裟に悩んでいた自分が馬鹿みたいに感じた。
「あ~! なんで笑うの!」
本音さんからしたら真剣だったせいか、ちょっぴり怒り口調になっている。頬も軽く膨らませているし、本気ではないといえど多少なりとも怒っているのは本当らしい。
苦笑いを押しとどめて、ボクも顔をある程度真剣に作ると口を開いた。
「ごめんなさい、本音さん。悩んでた自分が馬鹿みたいだな~って思っちゃって」
「う、うん? さーやちゃんがおバカさんだったら、私はどうなっちゃうのかな!?」
「あ~! そういう意味じゃなくて~!」
思わず会話が凍りかけたところで必死にフォローを入れる。傍から見ても相当焦っているように映った事だろう。
すると、本音さんは舌をチロリと出すと、
「あはは~、冗談だよさーやちゃん。騙してごめんね~。でも、さーやちゃんもいつものさーやちゃんに戻ってくれたね~」
はぁ……敵わないなぁ、本音さんには。彼女の一言でさきほど生徒会長の――更識楯無さんと戦った時から残る、戦闘の余韻がようやく消え去った気がした。確かにこれで、やっといつもの自分に戻れた気がする。
そういえば以前もこんなことがあったような……などと思いを巡らせると、恥ずかしさからかちょっと顔が熱くなったので、さりげなく俯く。さりげなく――俯いたつもりだった。
「あれ? どうしたの?」
結局、本音さんからしたら不自然な行動に映ったのか、当然のごとく指摘された。
けど、ちょっと恥ずかしくて本音さんの顔が見れない。とはいえ、心配させるわけにもいかないわけでして……。そんなふたつの感情に板挟みにされ、あーうーと言葉にもならない声を呟く。そのせいで、逆に心配を加速させる結果となってしまったのは忘れたい。
「あっ、遅れてたおりむー達も到着したみたいだよ~」
「そうですね~。でも、やっぱり千冬先生に怒られてる……」
遅れてきた一夏くんは、千冬先生に叱られていた。もちろん一夏くんも自分の正当性を主張するために口を開く。
「いや、ちょっと見知らぬ女生徒に捕まって――」
ぴしり
空気がかたまった……ような気がした。正確にいえばボクたちからちょっと離れた辺りにいる集団――セシリアさんとシャルロットさん、それに箒さんと鈴音さん辺りが。(ちなみに1,2組合同が続いている)
「ほほう、ならばお前は初対面の女子との会話を優先して授業に遅れたのか」
一夏くんが捕まったという女生徒――なんだか最近、それも本当にごく最近に心当たりのある人が出てきた気がする。
いや、もしかしてもしかしなくてもあの生徒会長――更識楯無さんだろう。大体ボクに対してだーれだ? をやろうとしたのだから、その延長線上として一夏くんが標的になってもおかしくない。
そしてちょっとした会話をすることで一夏くんを授業に遅らせた挙句、こんな状況に陥らせるなんて……。くっ! 生徒会長卑劣なり!
「あ、あれ? さーやちゃん?」
「心配するな本音。これは嫁特有の深読みしすぎている状態だ」
「そうなの?」
「うむ」
ラウラと本音さんの会話で意識が現実に引き戻された。
「あれ? ラウラいつの間に?」
「ふんっ、貴様が私を置いていくから私から合流してやったのだ」
う。まずい。表情にあまり変化は出てないから顔ではわかりづらいけど、態度と雰囲気で完全に怒っていることがわかる。そしてなぜか隣でゆる~く胸を張る本音さん。
「ふふ~ん、ラウラちゃんに勝った~!」
「なっ……!」
「……え?」
本音さんの一言でラウラが絶句。ボクはといえばなにがなんだかわからないまでも、必死に頭を働かせる。
(え~っと? 本音さんが胸を反らせてラウラに勝ったと言い張る……これから導きだされる答えは……)
はっ! 閃いた!
「……バストのサイズ?」
ボクの放り投げた爆弾発言に一瞬の静寂が訪れた。
「うん、あの……ごめん」
どうにもいたたまれなくなって謝罪の言葉を口にしたボクなのであった。
一方、一夏くんたちの方ではすでに一夏くんへの制裁(?)も済んだようで、千冬先生がチョイチョイとボクを手で招いている。呆れた表情から察するに、早く来いということなのだろう。別に怒ってはいないようなのでちょっぴり安心。
傍らには天使の笑顔を浮かべたシャルロットさんが。その笑顔にぞくりと震えたのはきっと何かの間違いだと思う。一夏くんが土まみれでそこに倒れてるのも多分気のせいじゃないかな。うん。
「では、デュノアと緋桜宮の実戦訓練を始める。両者とも準備はいいか?」
「はい」
「は~い」
ベシッ!
頭に鈍い痛みを感じて見上げれば目の前に千冬先生。
「ISも展開しないで準備完了とは面白い冗談だな」
「え、あっ、いえ」
慌ててISを起動。粒子の光が身体を包んで、それがなくなった時にはすでにISは展開されていた。その間0,5秒。ISの展開と同時に知覚が加速されるので、少々ゆったりと秒を数える時間があったりもするのである。
「あー。いいか? 貴様ら、緋桜宮のIS展開速度を参考にするように」
半ば投げやりに生徒たちにそう言うと千冬先生は、右手を高く上げた。
それと共にボクとシャルロットさんが上空へと飛行する。お互いに顔を見て頷き合う。戦闘態勢は整ったということの確認だ。
「それでは……始めっ!」
千冬先生の大きな声と共に右手が振りおろされ、戦いの火蓋は切って落とされた。
「まずは小手調べっ!」
シャルロットは最近彩花の動きを見ていなかったので、小手調べとして機関銃を放った。
確かな速度をもって放たれるそれを、円軌道で回避しながら彩花自身も銃器をコール。
これでシャルロットは彩花の腕が落ちてはいないこと……むしろ上がっていることを確認した。以前よりもただでさえ少なかった無駄な挙動が減っているのだ。
現れたのはスナイパーライフルのようなもの。形状はセシリアの使うものに近いが、彩花のことである。一癖も二癖もある装備なのは間違いなかった。
「ていっ!」
おおよそ真剣勝負の時に放たれるべきではない、気の抜けた声とともに、これまた気の抜けたような速度の青いエネルギー弾が発射された。
シャルロットはそれを訝しげに見ながら、射線からずれて彩花へと反撃を行った。
両手に機関銃を装備したシャルロットからばらまかれる弾幕に、避けることのできる対処の限界を迎えたのか、徐々にシールドが削られていく彩花。
それでもところどころであのエネルギー弾を撃ってきているのが、シャルロットにかすかな違和感を与えた。
(……おかしい。さっきから彩花君は僕に当たるような攻撃をしてない)
――そう考えた刹那。視界の隅を
「っ! まさか!」
反射的に後ろを振り向くと、空にはエネルギー弾が
「あー、バレちゃったか~」
周りに機雷のごとく設置されたエネルギー弾。撃たれた当初よりも、その輝きは増しているように見え、おそらく威力が上がっているのだろうということを否が応にも感じさせた。
シャルロットも自分の行動を反省する。彩花へと攻撃をあてるのに夢中になり、周囲への警戒が散漫になっていたからだ。相手の武器がこちらへと直接害を与えるものではなかったというのも、油断した原因になっているかもしれない。
一見、設置された機雷程度ではシャルロットが別に不利になってはいないじゃないかと思うだろう。しかし、その実シャルロットと彩花には大幅な違いがあった。
(機動力が……違うんだよなぁ……)
素の機動力に圧倒的な違いがある、無形とラファール。フランスで生み出された疾風の名を冠するISといえども、装備を削ってまで動作を速くできるようなISに敵うはずもない。
もちろん、通常の場合において機動力が高いことは、この状況下で有利に働くことはすくない。機雷が多く設置されているということは、それだけ隙間がなく動きづらいということだからだ。
しかし、そこは彩花。かなりのハイレベルの繊細な操作精度を持っている。もちろん自分が撒いた機雷などに当たるわけがない。これはシャルロットの予想ではあるが、自分の攻撃がなければ、彩花は目を瞑ってもこの機雷の間を潜り抜けれるのだろうと思った。
――そしてシャルロットに不利な点がもうひとつ。
「くっ!」
シャルロットの放つ機関銃の弾は機雷に破壊されてしまうのだ。高密度のエネルギー体であるそれは、圧倒的に質量の小さい機関銃の銃撃にはなんの反応もみせず、ただただ銃弾を打ち消す。
もともとシャルロットの戦法は臨機応変な攻撃手段で攻めることである。強大な突破力なんて持ち合わせていない。かといって接近戦を挑めば動作の速さの違いから不利になるのは間違いない。
(こういうのを八方塞がりっていうのかなぁ……)
内心で溜息をつきつつも、シャルロットは勝ち目のほどが全くない銃撃戦より、少しでもある接近戦をしかけるのであった。
「なんの参考にもならん戦いを見せるな」
「ふぎゃっ!」
試合終了早々に千冬先生からお仕置きをもらった。シャルロットさんも苦笑い。フォローできないらしい。
「なんだあの武器は? あんな武器お前以外に誰が使うんだ。ほら、言ってみろ」
容赦なく紡がれる千冬先生の言葉にだんまりとなりながら、反論する気も失せたボクは……むしろ開き直った!
「ボクだけですね! ちょっと威力が高すぎたような感じもしましたが、あれでいいですよね千冬先生!」
千冬先生に反応を与えないようにたたみかける! 事実唖然としている千冬先生が視線の先にみられた。……と思いきや呆れに変わって……徐々に……これは怒り?
「馬鹿者」
ゴスッ!
最近ボクを助けてくれるクラスメイトたちは、さっきの試合について色々と話しているようで誰も気付かなかった。いや、気付いてほしいわけじゃないからいいんだけど。