IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第4話

「ふわあぁ~」

 

 ボクは大きなあくびをし、眠い目をこする。今日はボクの正式な入学(転入ともいうかな?)の初日だから遅れるわけにはいかない。といってもボクは寝起きはそこそこさっぱりしている方なので、そこらへんはあまり問題ない。まぁ寝起きといってもボクは常に眠いわけで本当にさっぱりしているかどうかは微妙だけど。

 

 服をみて数瞬の硬直。――そういえば昨日ぐでーんと部屋に戻ってから即ベッドダイブして寝てしまったことを思い出す。着ていた私服はとりあえず洗い物として処理をし、着替えに制服を用意する。

 ボクレベルのサイズの制服はなく、特注なのでこの制服を破ったりするのは大変いけない。ボク個人の金銭面の問題は全くないが、作る人が苦労するだろうし。

 

 着替えに用意した制服とさらに下着を用意。

 これからボクは部屋に備え付けられているシャワーを浴びるつもりだ。ボクがお風呂に入れないのはいうまでもないよね。女性の浴場しかないんだから。なんかボクならいいとか言われそうな気がして若干怖いけど。

 

 シャワーからお湯を出そうとするが、出始めの冷水を直に浴びてしまい、思わずボクは反応してしまう。

 

「ひゃっ! つめたぁ!」

 

 おかげで眠気も多少飛んだけれど、とてもじゃないがいいこととは言えない。寒い。

 幸いお湯が出てくるまではそう時間がかからず、ボクは温かな液体を体に浴び自らの汚れを洗い流していく。ボクはボクで一応シャワーに対する信念のようなものを持っている。

 

 どうでもいいと思うかもしれないけど聞いてほしい。

 ボクは寝る前と朝起きた後両方でシャワーを浴びたい。理由としては寝る前に浴びるのはいわずもがな、気分が悪いからだ。起きた後浴びるのは、頭をさっぱりさせる意味もあるし、主に寝てかいた汗を流せるし、体もさっぱり気分一新で今日1日を迎えられるといった効果もある。

 

 うん。大体そんな感じ。まぁここら辺は結構建前を混ぜていて、本当はただ気持ちいいからって理由だったりする。ベッドに飛びこんだり、そのまま寝たりする次くらいに今はお気に入りだ。シャワーから出るお湯は体を暖めて気持ち良くさせてくれるし、きれいな汗もかける。浴びすぎると頭がぼーっとしてきちゃうのでそこは注意です。

 

 シャワーを浴びさっぱりするとのんびり服を着ていく。急いで服をきるよりも朝の時間はのんびりと幸せな気分で過ごしたいよね。それが理想。現実は大体そんな甘くないけど。

 

 着替え終わったのでボクは寮を出て職員室に向かう。朝食? ボクの朝食は大体お菓子ですっ! と心の中でそういうとボクはポケットからチョコレートを出し、パキッと折ってその欠片を口に含む。甘くて少し苦い味がボクの舌を刺激する。

 いつも通りチョコはおいしい。いや、甘いものが全般好きなんだけどね。それに糖は頭を働かせるのに必要だし、ボクの場合は生命線だね。生命線。

 舌から伝えられる甘みにボクの顔がついつい、にへらっとにやけた感じの笑顔を作ってしまう。今から職員室だというのにそれはまずい。名残惜しいけれどボクはチョコの欠片を口に入れるのをやめる。本当に残念だ。あまりに残念なのでちょっと落ち込み気味の顔になってしまう。ちょっと情けないね。

 

「山田真耶先生いますか~?」

 

「あ、はいはい私です。待ってましたよ緋桜宮……さん?」

 

「あ、どうもです」

 

 ぺこりと真耶先生に向かっておじぎをする。どうして最後疑問形なんだろう?

 

「どうかしたんですか!? 私のココアあげますから元気だしてください!」

 

「え? え?」

 

 突然真耶先生がボクにココアを差し出してくる。湯気を立てていて鼻腔から伝わるなんともいえない香り。あ、甘そうー。ボクはその欲求に抗いきれず、ココアを受け取りちびちびと口をつける。

 

「はぅぁ~甘い~」

 

 ボクはココアにありつけたので少し甘い声を出してしまう。真耶先生が「我慢我慢、私は教師なんです…」とか言っていたのが気がかりだ。後に聞いた話だけど、ボクの顔が何かを憂いているような顔に見えたらしい。すいません。それ、チョコが心残りだっただけです。

 

 正気に戻ったらしい真耶先生と一緒に教室へ向かう。ちなみにその際は教室前まで手を繋いだりしてた。理由はわからない。真耶先生の方から求めてきたから。ココアをもらって真耶先生への好感度上昇中なボクが断るはずもなく、ボクは手を繋いでにこにこと歩いてたよ。

 

 とりあえず扉の前で待機中。大した時間を待つわけじゃないとわかってはいるのだけれど、暇なので何か大きなサプライズで登場できないか考えてみる。ボクはとりあえず4つのコンソールを展開する。何かを行う時のボクのデフォルトがこれだから展開しているととても安心する。

 そして1つ面白い趣向のものを考え付いたので、ボクは急いでプログラムを自作しはじめた。

 

 

 その2分後ボクは教室に入ってくるよう促された。扉をあけおずおずと入る。ボクに集まる視線。その中には一夏くんの視線もあって、ああ同じクラスなのかーと思ったのだが、なぜかあちらは驚いた眼でこちらをみつめている。なんでだろう? まあいいか。まずは自己紹介だね。

 真耶先生がディスプレイを展開する。そこにはボクの名前が書かれていた。なんともいえない空気になったので、一応自分で名前を読み上げることにする。

 

「はじめまして~。ボクが緋桜宮さ「か……」……へ?」

 

「かわいいぃぃーーー!!」

 

「えう?」

 

 ボクは自己紹介を言いきれずその数秒後に女子生徒に抱き締められていた。「あやかちゃんっていうの? あやちゃんって呼んでいい!?」周りの女子生徒がそんなことを言ってくる、返答しようにもボクの頭が女子生徒のどこか柔らかいところに沈んでいるのでうまく返せない。視界がふさがっているのでそれが体のどこかはいまいちわからない。

 

 そして遅くなったボクの声についての補足なんだけれど、ボクの声はどこからどう聞いても女声だ。紛うかたなき女声。さすがにソプラノではなくアルトだけどねー。ホルモンバランスおかしいんじゃないのかな? ボク。そこは常々疑問に思ってるんだけど原因解明はなかなか難しい。

 

「なにをやっているたわけ共が!」

 

 怒鳴り声と共にスパーン! スパーン! と音が聞こえた。ぷはっとボクは顔を離し声の発生源の方へ視線をやる。どうやらこの千冬先生が手にもっている出席簿をかましたらしく、女子生徒みんなが頭を抑えている。うわぁ。痛そうだなぁ……。

 

「……ッ! 緋桜宮。紹介を続けろ」

 

 ボクの方をしっかりとみた千冬さんがどこか狼狽したような雰囲気を漂わせたけど、理由がさっぱりなので気のせいだと思うことにする。

 

「改めまして、緋桜宮(ひおうぐう)彩花(さいか)と言います。とりあえずさっきの質問にお答えしますが、ボクのことはご自由に呼んでくださって構いません。ボクはみなさんより年が下なのでよろしくお願いしますね!」

 

 と言い終わると眠たそうな、しかしとても綺麗な見惚れてしまうような笑顔を一同に向ける。その瞬間の教室からは全ての音が消えたようだった。

 

 ボクは笑顔を向けたまま右手で1つのコンソールを呼びだしプログラム実行のボタンを押す。

 すると教室内にホログラフィックの桜が舞った。

 

「ボクの名前にも桜が入ってるのでこのような演出をしてみました~」

 

 みんな桜の花びらを見てくれている。1分で作ったものとはいえ喜んでもらえるのは嬉しいなぁ。でも1分で製作したものなんてちょっと悪いことしちゃったかなぁとボクは思ったけど…。

 ふとボクの後ろに殺気を感じる。振りかえってはいけない。そんな気がした。

 

 …結末はかわらないけど。

 

「なにをやっているんだ馬鹿者が!」

 

ガスッ!

 

「うみゅっ!」

 

 べたん。ボクは出席簿の角というスペシャルな攻撃を受け床に沈む。比喩ではない。実際ボクは床に倒れた。あぁ…これが出席簿の痛みなのかな とかどこか遠い気持ちで今の状況を整理する。

 

 床に倒れるボク。溜息をつく千冬先生。クラスメイトと同様桜を見ている真耶先生。

 混沌としてる。

 

「さ っ さ と 消 さ な い か」

 

 ――後ろに修羅がいた。何か原初的な本能にせかされるようにボクは慌てて桜を消す。停止させるだけなのでコンソールは1個で充分だ。そんなこんなでボクの紹介は終わった。………けど。

 

「あ、言い忘れてましたけど。といっても報道されたんで知ってるはずなんですが、ボクは男です」

 

 千冬先生と真耶先生は知っているので特に驚いた風もないが、一夏くん含むクラスメイトたちはそうもいかなかったようで……

 

「「「「ええ~~~~~!?」」」」

 

 という大合唱が教室中に響き渡った。

 

 その後に爆弾投下したボクが叩かれたのは余談。…なんでボクが叩かれるんだろう? 大声だしたのボクじゃないのだけれど。

 

 

 

~織斑千冬~

 

 私はこの緋桜宮という子を見たときに、どこかあいつと同じ雰囲気を感じた。口調、性格と似ているところはないが、私の直感のようなものが私にささやきかけている。

 

 これは束と同種の存在だと。

 

 確証は当然ない。が、無視できないくらいの妙な感覚を私は感じていた。

 

 それにしてもこいつは何をしてるんだ。桜を教室に散らせたり、自覚はないのだろうがクラスメイトを誘惑したり。……かくいう私でさえも揺らぐレベルだっだぞ、あれは。妙な騒動を持ってくる奴だ、まったく。

 

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