IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第39話

 生徒会長さんとの邂逅といった特別な出来事や、いつも通り千冬先生に怒られるなどのことがあった翌日。SHRと1限目の半分を使って、全校集会が行われた。いつもはSHRだけで集会といったものは行われており、参加もある程度自由になったりする(サボる人もいるって意味だけど)面もあるなかで、今回は全員の集合が義務付けられた。

 

 わざわざそこまでするということは、よほど重要な案件だということが想像できる。そう……学生にとっては最大のイベントといっても過言ではない学園祭である。何度でも言おう。学園祭である。

 

「いや、ボクって学園祭って初めてなんだよね」

「ん、そうなのか? 中学ではそういったことやらなかったのか? 俺の通ってた学校ではあったんだが」

 

 一夏くんが不思議そうな顔をして尋ねてくる。一夏くんの疑問ももっともで、大抵の学校は学園祭というものを行っている。高校と比べると規模は小さかったりするものの、売店を出したりするところもあるしあまり違いはないと思う。

 

「んっと、ボクの通ってた学校は大々的な活動はあまりしない方針でね。かわりに社会奉仕とかそういった形で社会に出た時のための経験を積ませてたけど。ほら、学園祭で先生たちが求めることって外部の人間と関わって社会勉強することでしょ? あとは生徒間のコミュニケーションをとったりとか」

「あー、そういわれればそんな気がするなぁ……。まぁ、俺としてはそんな堅く考えなくてもいいと思うんだけどな」

「んー、ボクの考えって堅いかなぁ?」

「おう、いつものお前の態度とかからは想像もできないほど堅い考え方だと思うぞ」

 

 ちょっぴり笑いながら言う一夏くんに若干の非難の目を向ける。けれど、そこは鈍感な一夏くん。気付く様子もなくスルースキルを発揮した。

 

「おっと、生徒会長が壇上に上がるみたいだぜ。さすがにこれ以上無駄話を続けると千冬姉に睨まれそうだから、前向くか」

「そうだね~」

 

 とりあえず視線を前へと戻す。壇上には昨日見た水色の髪の人――つまり楯無さんが上がっていて……うーん、やっぱり似てるよなぁ。ん、あれ? 名字も一緒だっけ。

 そんな楯無さんは頬笑みを浮かべてウインクしてきた。ボクの隣に。

 

「い!?」

 

 隣から――つまり一夏くんから驚愕の声が上がった。あ。一応補足。ボクと一夏くんは出席番号的には大分遠いわけだけど、どうしてこんなにも近いかというと。全校があつまる集会であるため、さすがのIS学園でもちょっと密度が高いのだ。

 そして一夏くんとボクは男子であるため、密着させて意識させてしまうのはよくない……と。まあ、そんなわけである。

 

「ん?」

 

 そして気付けば楯無さんの視線がスライドしてきてボクの方にも向いてきていた。

 

「ふふっ」

 

 そして笑みを浮かべられる。綺麗な笑みだなぁ、なんてそんなことを思いつつ、ボクもにへらっとした笑顔で返す。あまりこちらに注目しているのもまずいのか、楯無さんは大した時間も経たないうちに視線を切って、口を開いた。

 

「さてさて、今年はちょっと建て込んでいて正式な挨拶がまだだったわね。私が更識楯無。君たち生徒の長よ。以後、よろしく」

 

 さっきまでボクと一夏くんに向けていた悪戯っ子のような笑みとはまた違った方向性の笑みが浮かんだ。それの破壊力は高いらしくそこかしこから熱っぽい吐息が洩れていたほどだ。

 

「で、今回の一大イベント学園祭だけど、特別ルールを導入するわ。名づけて……」

 

 一呼吸おかれ、静寂が場を支配したと思わされた時。

 

「『各部対抗男子争奪戦』!」

 

 そんな語句が会場内に響き渡った。

 

「え……」

 

 誰かの呟きを皮切りに皆が硬直する。ボクはこの発言に軽く溜息をついた。一夏くんの方を見れば、まだ情報が頭に染み込んでないようだけど。

 

「ええええええええ~~~っ!?」

 

大声がホール中に響き渡り……そこから先はあまりにも熱狂したせいかよく覚えていない。

 

 

 

 

 そんな騒動が起きた日の放課後。ボクたちのクラスでは特別HRの時間が作られていた。ボクたちのクラスでは……と言ったものの、実際はどのクラスも開いていると思う。なにせ急なお知らせだったからね。

 その確認として隣の2組をちらりと覗けば、やっぱりというかなんというべきか話しあいが行われていた。たまたまこちらに気付いた人がいて、笑顔を向けてくれた。違うクラスの偵察をしているみたいでちょっと居心地が悪かったけど、こっちもなんとか笑顔を返すことに成功。

 

「さて……と」

 

 それはさておき、すでにわかっているだろうけどボクは1組の教室にいない。というのも生徒会室まで行くつもりだからだ。直談判? っていうのをしにいく心づもりである。さすがにボクたちの心情を無視した約束には抗議が通るだろう。――すでに規模が大きくなりすぎているのが心配ではあるけど。

 ボクがその旨を伝えると、当然のことながら一夏くんも付いてきたそうにしていた。けど結局それは叶わなくて。なぜなら千冬先生が今行っている話しあいの結果を一夏くんに後で報告するように伝えたからだ。そんな役目をもらえば話し合いに参加しないわけにもいかない。

 

 一夏くんはボクに「俺の代わりに俺のことも言っておいてくれ!」なんて言ってたけど、残念ながらそんなことはしないつもりだ。いや、助けてあげたいのは山々ではあるのだけど。

 そんなことを考えていたら誰かにぶつかった。

 

「わぷっ」

 

 ボクの身長は低いので相手と正面衝突する時は、基本的に相手の胸かお腹に顔をうずめることになる。その例に洩れず、今回も胸とお腹の中間――ちょうど間あたりの位置に顔が当たった。……。頭の上に重みを感じる。

 ――って! そんな考察をしている場合でもなくて。

 

「ご、ごめんなさい!」

 

 大きく後ろにさがって謝りながら、相手の顔を確認。

 

「やーん、彩花君のえっち」

 

 瞬間、すっごく気が抜けた。相手の発言もそうだし、いかにも演技くさい雰囲気にも。そしてなによりも相手自身に気が抜けた。

 

「楯無さん……」

「あ。わかってるよ彩花君。生徒会室に行くつもりだったんでしょ? ほら、生徒会室にはもうすぐだよ? 頑張って頑張って」

 

 こんな調子である。きっとボクが生徒会室に向かっている意味も理解して言っているのだろうから、面倒なこと極まりない。一応言うだけ言ってみようかな。

 

「別に生徒会室に行かなくても……」

「ん? 私と話したいことがあるんじゃないの?」

 

 やっぱりわかってる。わかったうえで生徒会室に行くことをうながしている。

 

「ほら、立ち話もなんだし。座って話そうよ」

 

 確かに立ち話はちょっと……という感じではあるけど、生徒会室に行くと敵地に踏み込むことになるわけで。雰囲気に呑まれてこっちの要求が伝えられなかったら元も子もない。

 

「……いえ、すいませんがここで話したいと……「ケーキ出すわよ?」行かせていただきます!」

 

 脆いね。ボクの精神。

 

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