IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第5話

 どうも~。彩花です~。今ボクは夢の中からお届けしておりま…ゴスッ!!

 

「へうっ!!」

 

 ボクは頭を何かで叩かれ、強制的に覚醒させられる。なにで叩かれたかなんてちょっと考えればすぐわかる。出席簿の角だ。あの痛みはボクの体が覚えている……っ! こういうとなんか格好いい?

 それにしてもなんでボクには角で対応してくるんだろうね? 千冬先生は。

 

「あいたたた……」

 

 ボクは叩かれた部分をさすりながら呟く。目元が涙目になっているのが自覚できる。そしてなぜか近くの人たちが頬を上気させているのも。みんな風邪ひいたのかな?

 

「しっかり授業を受けろ緋桜宮」

 

 とそんな風に栓無きことを考えていたら千冬先生に話しかけられる。実際会ってみると千冬先生って格好いいよねぇ。クールビューティーとでもいうんだろうか? 生徒には千冬お姉さまとか呼ばれているようだし、凄い人気だよね。まあそれはともかく返事をしないと。

 

「でもですね……はい、すいません」

 

 反論しようとしたら目で制された。怖いよ千冬先生……。

 それを見かねたのか隣の人がボクに飴をくれた。なんかのんびりした感じの生徒だ。ボクと同じ空気を感じる~。ぽわ~ はっ! 一瞬変な空間を形成しそうになってた。自分でもわかったよ。

 

 確かこの隣の人は…そう! 布仏さん。布仏本音(のほとけほんね)さんだったはずだ。……やっぱりボクと似た雰囲気を感じる。ぽわ~ ガスッ! また不思議空間を形成してたらしく千冬先生に叩かれた。そんな自分を癒すため布仏さんからもらった飴玉を口に含み、ころころと転がす。

 

そんな姿はハムスターやリスのようだった。

 

 なんか大きくさっきみたいな不思議空間が広がった気がするけれど今回はボクは関係ないよね。そうだよね?

 

 真耶先生がボクに問題の答えを読み上げるよう指定してきたので、ボクは寝ぼけ眼のまま立ち上がり、すらすらと答える。元々わからないわけではないし、むしろ自画自賛ぽくなってしまうがボクに匹敵する人はそういないと思う。周りの人もボクが出来ることに驚いたようで、ボクに温かい視線を送ってくる。いやぁ照れるなぁ。……ねむねむ。

 

まるでそれは親が子を褒めるような視線だったが彩花は気づかない。

 

 

 

 こんな風な授業風景が続き、ついに一夏くんとセシリアさんの決戦の日がやってきた。

 

 当然ボクも見学に入っている。データを集めるためっていうのもあるし、純粋に代表候補生とかにも興味があるしね~。セシリアさんはすでに空中で浮遊しているが、なかなか一夏くんが出てこない。専用機の到着が遅れているのだろう。ボク調べボク情報。

 

 そうやって他の見学者たちとしばらく待つこと数分。

 ISをまとった一夏くんが空に飛び立った。そしてセシリアさんの前まで行き、なにか会話をしている。

 開始直後から早速挑発でもしあってるのかな?

 

 その間ボクがしていたことといえば……コンソールを開いていた。

 疑問をもったからだ。一夏くんの機体に。専用機にしては個性がなさすぎる。一夏くんの機体にハックし(害はない)機体へのアクセス権を手に入れる。

 セキュリティ通過までにかかった時間数十秒。さすがにしっかりと起動しているISをハックするのは初めてだ。セキュリティが結構厳重だったかな。アクセスしている間中はボクという異物を排除するよう動いているみたいだし。とりあえずオートで迎撃するパターンを自分で作って打ちこみ、実行。これで少しの間余裕ができたので一夏くんの機体のデータを見る。

 

「一夏くんの機体……第一次移行(ファーストシフト)まだ済ましてないんだね~。ま、遅れて届いたんだから当たり前なのかな。機体名は『白式』(びゃくしき)ね……」

 

 そうボクは呟きながらココアをずずずと吸う。ボクのいる場所には、なぜかみんながみんな近寄ってこない。まるでお互いに牽制でもしているかのようだねー。でも後ろのいる人がボクの開いている画面に気づいたようで、驚きの声を上げる。特にボクは自分以外に見えないように防護するといったことはしてないしね。

 

「……これって織斑くんのISのデータ!?」

 

「うん。そうなるね~。一夏くんってば第一次移行もすませてないみたいだよ」

 

 それを証明するようにボクは画面を後ろに移動させる。なんか周りの人たちが騒いでるみたいだ。何かあったのかな? と思って周りを見てみるけど、視線はボクの方に向いていて…。

 ボクなんかしたっけ?

 

 

 

「なんなんですの……」

 

 突然観客席が騒ぎ始めたのでセシリアは嘆息する。

 どうやら相手の一夏の方も観客席の騒ぎが気になるようだ。

 騒ぎの中心にいるのは、転入生の……緋桜宮さんですわね。あの人本当に男性なのでしょうか?女性にしか見えないのですけれど…。それにしても騒ぎを良く起こす人ですわね。

 そんな思考をしていた事に気づき、セシリアは今から戦いが始まるというのに! と小さく呟き、首をやや大袈裟に振って気持ちを戻す。そして――

 

 戦いは始まった。

 

 

 

「おーっとセシリアさんはビットを出してきたぁー! 対する一夏くんはブレード一本みたいだ! 男らしいね!」

 

 実況はボク、緋桜宮彩花がお送りしています。

 ちなみに百式のデータの方はボクのプログラムが破られたので、閉じられてある。一応現在のデータはメモリに保存してあるけど、どうせ第一次移行したら性能変わっちゃうから意味ないね。

 

「この戦況をどう思いますか? 本音さん?」

 

 そういって手でつくった架空のマイクを布仏本音さんにむける。隣になったんです。移動したのはボク。周りが誰も近付いてこなくてつまらないならボクから近付けばいいじゃない。ということだね。

 

「う~ん。おりむーブレード一本は厳しいかなぁ」

 

「そうですよねぇ。でも一夏くんの動きはどんどん良くなっているみたいですし、これは期待できますね!」

 

 そう。ボクの発言通り一夏くんはISの操作がどんどん上達している。今はビットの規則性を読んでいるってところだろうか。

 

「ん~、あんなのすぐにわかりそうなものだけれど」

 

 ボクは思うけれど、実際に戦ってみるとそうもいってられないのかもしれないね。実際ボクも真耶先生と戦った時は対応遅れたりしたし。

 

 一夏くんはビットの回避をしばらくした後動きが変わった。今までは避けることに専念していたようだったけど、今回は避けてから高速で動き、ビットを斬り裂いた。なんかボクとしてもデジャヴを感じる光景だなぁ。武器が撃墜されるとか。

 でもビット斬るのって凄いよね。やってみたことないからわからないけど。

 全てのビットを斬り裂いた一夏くんはセシリアさんに向かって飛行するが、動きを変更せざるを得なくなった。セシリアさんのサイドの砲塔からミサイルが発射されたからだ。

 

「おーっと! ミサイルが一夏くんのISを襲ったー! これは大丈夫か~!?」

「お、おりむー!?」

 

 とはいっても慣性にさからうことはできず、避けることは到底不可能だった。そして白式に向けてミサイルが近付き、着弾、爆発。煙がもうもうと立ち込めて、一夏くんどうなったのかなとボクはついついコンソールを操作して確認しそうになってしまう。

 でも、こういったものは雰囲気が大事なので自制する。煙が晴れた先に見えたのは――

 

 

 形が変わった一夏くんのIS。白式の姿だった。

 

 

「あ、あなたっ! 今まで初期設定の機体で戦っていたというの!?」

 

 セシリアさんの驚きを滲ませた声がこっちまで聞こえる。うんうん、そりゃびっくりしちゃうよね。なんせボクの後ろにいた人たちでさえも知ってたはずなのに、実際の変化をみて驚いてるしね。かくいうボクも第一次移行を目の前でみたのは初めてなので(当然だけど)少し感慨深いものがある。

 

 そして、一夏くんはさっきまでのブレードとは形状が変わった剣から……ってあれは雪片に似てるなぁ。さしずめ弐型とでもつくのだろう。エネルギー刃を出してセシリアさんに斬りかかるけれど……

 

「あっ、それは駄目だよ一夏くん……もうSE少ないのに…」

 

 雪片の特殊性の1つにシールド無効化というのがある。それは自分のSEを攻撃力に転換するとというものだ。大雑把な説明でいうとこんな感じ。多分あの雪片のようなブレードも同じなんじゃないかな、と思っていったのだ。

 試合終了のブザーが鳴り、みんながぽかんとして動きを止める。ボクは頭に手をやって嘆息している。……さすがに最後のは少し格好悪いんじゃないかな……。周りの人たちは代表候補生に善戦した織斑君に好印象を抱いてるみたいだけれど。あとは突然の試合終了への疑問。

 

 そんな風に今日1日の日程が終わってみんな寮に戻る。ボクも寮に戻るのだが――なんかボクの周りには女子が一杯だ。多分ピンク色な空気が出来上がっていると思う。(その空気を形成してるのはボク含む)

 いや、だって仕方ないと思う。飴とか甘いお菓子を差し出されながら一緒に帰ろうとか言われたら従わざるを得ないと思うんだよ。うん。なんだか知らない人に飴もらったからってついていっちゃいけない、というのを唐突に思い出した。知らない人ってわけじゃないけど。

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