IS‐のんびり屋な天才‐   作:石っこ

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第8話

 ボクが目覚めたのは病室。目を開くとあまり知らない天井が目に入った。保健室とは少々違う…? いや、同じかな。前来た時から少したったから記憶の齟齬が発生しただけだろう。

 

 そんなボクの周りにはクラスのみんなが立っていた。うちセシリアさんと箒さんはいないけれど、ボクのところにもきてくれたという。

 

「……いつッ」

「まだ駄目だよさーやちゃん! 頭を怪我してるんだから~!」

 

 頭…? 怪我…? ボクが、頭を怪我…か…。ああ、あの時ボクは…

 

「…うぁ…ッ」

「ほら彩ちゃん! 思いだそうとしないで! 私たちが説明するから」

「うん、ごめん…」

 

 と言ったら口元に指を押し付けられ、まるで 静かに といった形のような体勢になった。

 

「その謝罪はもう少し経つまでとっておきなさい」

「じゃあ話しますかね……」

 

 みんなの話によるとボクは何かの崩落物に押しつぶされるようになっていたらしい。崩落物――それをつくったのはおそらくボクだけれど。そこでさらに頭を打っており、鈴音さんたちのISで救出した時はもう結構危なくて…。集中治療室いきまでしたらしい。

 

「…………」

 

 ボクはもう少しで自分が死んでいたのかもしれないと思うと、声が出ない。まさかここまで深刻な事態になってるとは。説明してる人たちからもすすり泣くような声が漏れている。本当に申し訳ないです…。

 

「と、君はそういう容態になっていたわけだけど……ここまではいいかな?」

「はい。大丈夫です」

 

 正直今の頭ではしっかり入ったかどうかは怪しいけれど、出来ることならこんな痛みの記憶は忘れてしまった方がいいだろう。

 

「で。次は私たちの質問なんだけど。ゲートロックを解除したのはもしかして彩ちゃん?」

 

 質問の意図がいまいち掴めないけれど…

 

「まあそうなると思います」

「そう…」

 

 ――なぜか重苦しい雰囲気が漂う。

 そしてボクは強烈な眠気が襲ってきた事を自覚した。

 最後にみんなに謝らないと……

 

「みん…な。心配かけて…ごめんね?」

 

 ボクはそれだけなんとか言うと意識を手放した。

 

 

 

~織斑 千冬~

 

「で? 緋桜宮はなんといっていた?」

 

 私はそれを彼のクラスの面々に問う。私の頭にあの時思い浮かんだのは緋桜宮だったのだから。ならばそれを確かめさせるために聞けばいい。

 

「そうか……。お前たちも済まなかったな。わざわざこんなことを聞かせて」

「いえっ。いいんです。私たちもゲートを解除してくれたのが誰だか知りたかったですし……。でも。本当に彩ちゃんがやったのはそれだけなんでしょうか?」

 

 緋桜宮のクラスメイトが私に何か感じるところがあったのかそう聞いてくる。

 

「それだけ……とは?」

「つまりは彩ちゃんはもっと他のことにも手をだしていたんじゃないかということです」

「…………」

 

 確かにそういう懸念は私も抱いている。なにせロックが解けたのはそう時間も経っていない頃だったのだから。その後の空白の時間、緋桜宮……奴はなにをしていたのか? それを答える事の出来る本人は眠っているし、今のところは手のつけようがない。

 

「お前たち、もういいぞ。帰って良し。解散だ」

 

 そう私はクラスに声をかける。こいつらは渋っていたが…

 

「……はぁ。お前らが近くにいると緋桜宮がゆっくり休めんかもしれんだろう?」

 

 そういうとまるで蜘蛛の子を散らすように皆が去っていった。

 

「緋桜宮…お前はあの空白の時間何をしていた…?」

 

 答える者はいない。ただ静かなこの廊下に声が木霊するだけだった

 

 

 

「あぅあ~」

 

 ボクは情けない声を漏らす。しばらく休んで復帰できるようになったと思ったら次の日は休日で……あ。あそこに一夏くんがいるぅ~。

 

「お~い一夏く~ん」

「ん?」

 

 ボクは一夏くんに声をかけた。一夏くんは一瞬不審そうな顔をしたもののこちらを振り向いた。もしかしたらボクが入院していた間にボクの声を忘れてしまったのだろうか。

 

「一夏くん、どこかに出かけるつもりなの?」

「あ、ああ。ちょっと友人の家までな」

 

 一夏くんは若干目を泳がせている。ん~。基本ボクの方をしっかり向いてくれないよね、一夏くんってば。なんでだろうね?

 

「へぇ~。あの、さ。ボクもついていっていいかな?」

 

 ちょっと気になるので付いて行ってもいいかボクは一夏くんに訊いてみる。

 

「う~ん。そうだなぁ……まぁ問題ないだろ」

「そっか! よかったぁ」

 

 そんなこんなでボクは一夏くんと、一夏くんの友達らしい人の家へと向かうことにしたんだよ。

 

 

 

「五反田食堂……これが友達のお家?」

「ああ、そうだぞ? 何か気になることでもあったか?」

「いやぁ、おいしいものを食べにまた今度ここにこようかなぁと思っただけで~」

 

 ちょっと恥ずかしくなりえへへと声をもらしながら一夏くんに返答する。ボクのそんな様子をみて一夏くんの顔がまたちょっと赤くなってたけど…。

 

「ま、まぁ早く入ろうぜ」

「そうだね」

 

 とりあえずずっと立っているのもなんなので、ボクと一夏くんは中に入ることにする。

 

「お~い弾ー!」

「お~う」

 

 一夏くんが弾 (友達の名前かな?)と呼びかけると中からどたどたと音が聞こえてくる。そして軽く顔を出して一夏くんの方を見ると、

 

「まあ俺の部屋までこいや」

 

 とだけいってまたどたどたと戻っていってしまった。どうやらボクのことは見えてなかったみたいだね。なんせ反応が何もなかったから。

 

「あいつはまた…騒がしい奴だ」

 

 そう言いつつもどこか一夏くんは笑顔をつくって進んでいくのだった。そのうしろのボクもとことことついていく。カルガモの親子ってどんな感じだったっけ? 深い意味はないんだけど。

 

 

 

「………………」

 

 うん。部屋に入るやいなや弾くんがボクの方を指さして硬直したんだけど……。ボクは弾くんの前に行き、目の前で手を振ったりしてみるのだけどボクには一向に反応がない。

 

「おい、弾!」

 

 一夏くんのその声で弾くんは、はっとしたようになり

 

「おい、一夏。この子は誰だ。まさか誘拐でもしてきたのか? お前はそんな趣味だったのか? この子はお前の彼女かああああああぁぁぁぁぁ!!!!」

「落ちつけよ馬鹿」

「そうだよ弾くん落ちついて!」

「うわぁぁぁぁぁ! なんか俺弾くんとか呼ばれてるし!!」

「え? あの……嫌だった?」

「いや! 全然そんなことはないから気にしないでくれ!」

 

 そういうと弾くんがボクの方に向かって親指をぐっ! と立ててくる。そんな光景になんとなくボクもぐっ! と親指を立てて返す。

 

「おい、弾。それでだな……なんか勘違いしているようだがこいつは男だぞ?」

 

 …………………………………

 沈黙。その場の空気が凍りついたような錯覚を一夏くんの一言はボクたちに(主に弾くんに)与えた。

 

「おいお前ら?」

「うん。大丈夫ボクは生きてるよ?」

「いや、そういうことじゃなくてだな……まあいいや、弾!」

 

 一夏くんがボクの返答に苦笑しながら弾くんを起こすように声をかける

 

「…はっ! 今俺は夢を見ていたのか? ……やっぱ女の子がいるううう!!」

「だから男だって」

「は? 男? マジで? いやいやいやこれどうみても女の子でしょそうだよね!? えーっと?」

「ああ、すいません。ボクは緋桜宮彩花です。今日は一夏くんに無理言ってついてこさせてもらいました。あと、ボクは男ですのでご安心ください」

「いや別に無理言われたわけじゃないけどな…」

 

 いいんだよ一夏くん。この場の状況ではそういうものなんだよ。

 

「………マジで?」

「マジだ」

 

 そんなに疑わなくても…。

 

 

 

 その後ボクの誤解も解け、今一夏くんと弾くんがゲームで遊んでいるのをボクは見ている。2人に「お前もやるか?」と言われたけれど、ボクはこれを知らなかったから操作をみて覚えるまで見学させてもらうよと答えたんだ。

 …少しの間見ていて操作もなんとなくわかったからやることにしたんだけど……。

 

 

 結果は今のところ無敗。

 

「「………………」」

 

 どうやら2人とも開いた口がふさがらないようだ。

 

「えっと……なんかごめんね?」

 

 ボクのその言葉で2人は意識を戻し、

 

「い、いや! 別に謝ることはないぞ? なあ一夏!?」

「ふっふっふ…なんか燃えてこないか? 弾」

 

 一夏くんはなぜかやる気がとても出てきたようだった。

 

「いややめとけよ一夏……なんせこいつ一連のコンボで体力の半分以上を削るような鬼コンボだしてくるんだぜ?」

「それを乗り越えようぜ!」

「よーし。それだったらボクも受けてたっちゃうぞ~」

「止めろ一夏ああああぁぁぁぁ!」

 

 そして再び画面にはFIGHTの文字が流れた。

 

 

 

「ぐああぁぁぁあ………」

「ふっ。ボクの勝ちだね!」

 

 結果。ボクの隣に一夏くんの姿をした屍が出来上がり、ボクのキャラクターの体力は0,5割ほどしか削られていなかった。

 

「なんだよそのコンボ…どんだけ速く指動いたらそうなるんだ…」

 

弾くんがボクをみてそう呟いてくる。

 

「えっと…普通?」

「「それが普通なのかよ!!」」

「あ、なんかごめん」

「「ま、まぁ普通なら仕方ないな…」」

 

そう? それはよかったよ! ありがとう!

 

 

 今ボク達はジュースを飲みながらIS学園について話している。といってももっぱらボクは聞いてるだけだけど。主に弾くんが一夏くんに問いかけそれを返答しているといった感じだ。

 

「IS学園は女の園なんだろ!? いいなぁ! 招待券とかねえのか!?」

「ねえよ馬鹿」

 

 一夏くんの返答はにべもない。

 

「いや、でもだよ一夏くん? 確か学園祭では招待券がもらえると思うけれど…」

「マジ!? それほんとか!? おい一夏! 頼むぞ!」

「お、おう…もらったらな…?」

 

 なんか言わない方が良かったのかもしれないね。弾くんのテンションのあがりっぷりが、ちょっと異常だ。

 

「でもさぁ鈴が転校してきてくれて本当に良かったよ。話し相手少なかったからなぁ」

「あん? でもここに男いるだろ?」

 

 弾くんがボクを指さしながらそういうと一夏くんは弾くんの耳の方へ顔を寄せ――

 

「ほら、こいつはこの容姿だからさ…クラスでも人気で、あまり話せないというか…というかこいつと話してたら少しまずそうな気配がするっていうか…」

「ああ、そりゃ納得だ。こいつは見た目女にしか見えないもんなぁ。箒とかが嫉妬するかもな」

「箒? なんでそこで箒が出てくるんだ?」

「……あいつも浮かばれないな…」

 

 何を話しているのやら。

 

「ずっとひそひそ話はずるいよ~」

「おっと悪い悪い」

 

 と一夏くんが弾くんの耳元から顔を離す。と、その時

 

 バン!!

 

「お兄~お昼できたよー! さっさと食べにきなさ…っ…い、一夏さん!?」

 

 ? 誰だろう? ……お兄といっているところから想定するに弾くんの妹さんだろうか。年の頃はボクと同じくらいかな? わぁ~なんか親近感を覚えるよ~。

 

「あ、蘭久しぶり。邪魔してる」

 

 どうやら蘭ちゃんというらしい。それにしても結構はだけた格好だなぁ。活発そうな感じがうかがえてかわいいと思うけどね。

 一夏くんを視認したかと思うと蘭ちゃんは隠れてなんかごそごそやってるみたいだ。もう一回出てきた時には服のはだけ具合が直ってたから、きっとそれかな?

 

「き、来てたんですか?」

「おう。家によるついでにちょっとな。あとこいつもいるぞ」

「こいつ?」

 

 といって一夏くんはボクの方を指さしてくる。ここでボクはもうおなじみとなった自己アピールをしようと考え、プログラムを実行する。ボクがしたプログラムというのは……

 

 

 

「ボクが一夏くんの彼女です!」と書かれたタスキを作って着ることだった。

 

「お前なにやってんだよ……」

 

 一夏くんがあきれたような声でボクに指摘し、

 

「うおぉぉぉ! くそ! 男だってのはわかってるんだが、一夏め! うらやましいぞ!」

 

 弾くんがなぜかテンションをあげ、

 

「……………」

 

 肝心の蘭ちゃんはかたま…

 

「っえええぇぇぇぇぇぇ!!!」

 

 ってなかった…。

 

 

 

 

 

「おい彩花。気をつけてくれよな、さすがにああいった冗談をすると、お前の場合本気で受け取られかねない恐れがある」

「はい、すいません……」

 

 ボクからはしょんぼり…とした擬音が聞こえてきそうな感じで落ち込んでいる。一夏くんにたしなめられたよぉ…。ボクが悪いんだけどね。でも悪ノリしたのは反省してません!

 

「おい」

「いや、はい、すみません…」

 

 すいませんやっぱり反省してますほんとですだから怒らないで!

 今ボク達は五反田食堂の方で昼食をいただいている。時折来る蘭ちゃんの視線が気になる…

 

「えっと……何かなぁ?」

「ふぇっ!? あの……ほんとに一夏さんとは…?」

 

 ああ、なんだ。そっちの心配か。

 

「うん。ただの冗談だよ。なんせボクよく…というかほぼ100%の確率で女の子に間違えられるけど男だし、あれはちょっとしたそれの腹いせで…」

「………え? 今なんて?」

「ん? 腹いせで? 「そっちじゃなくてですね」じゃあボク、男だし?」

「ええええええええ!!!」

 

 再び蘭ちゃんが叫ぶ。けど店長さんらしき人は気にした風もない。厳格そうな人なんだけど…蘭ちゃんには甘いとかそういうのかな?

 一夏くんはもう慣れたといった感じでスルー。弾くんはやっぱ間違えるよなぁといった感じで苦笑している。

 

「男? あなたが男? こんな、私より小さな身長で、なおかつ肌もやわらかくてすべすべしてて髪もきれいなのに?」

「あは。褒めてくれてありがとう~。密かに自信だったんだ~。まぁ特にケアをしてるわけじゃないんだけどね。あ。低身長は別に自信に思ってないからね! 勘違いしないでね! …それとボクの年齢は多分君と一緒だと思うよ。蘭ちゃん」

「私と…一緒…?」

 

 そういうと蘭ちゃんは一夏くんの方を向き、同意を求めるようにする。

 それをうけた一夏くんは頷きながら

 

「ああ、本当らしいぞ。あとついでに言うとそいつは第2の男性IS起動者でIS学園に通ってる」

「ここまできたらそんなに驚かないが、すげぇな…」

「IS学園に…通ってる…? ……一緒の年齢なんだよね?」

「うん。ちょっとした飛び級のようなもの」

 

 隠しても仕方がないので正直に言う。

 あぁ、この食事おいしいなぁ。ちょっと変わった味、どこか甘いけどボク甘いの好きなんだよね~。いきつけのお店にしようかな? 蘭ちゃんと話すのも楽しそうだし。

 

「こんな小さな子が…飛び級…」

 

 なんか蘭ちゃんは思うところがあるらしいけど…ボクは食事を進める。

 そして蘭ちゃんはそんなボクを見ていたかと思うと、抱きしめてきた。

 

「あう?」

 

 疑問に思ったけどさすがのボクもそろそろ慣れる。

 ……あの、胸があたりそうですけど…。

 

 

 全然慣れてなかった。

 

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