蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

11 / 28
第八話

 

今日はクラス対抗マッチ当日である。

今、タツミとエスデスは一夏の応援のため、第3アリーナのAピットにいる。

 

「一夏。がんばれよ」

「おう。わざわざ来てもらって悪いな」

 

一夏の第一試合の相手はまさかの鈴だった……いくら何でも出来過ぎな気もするが。

 

「フン、(タツミほど熱心ではないとはいえ)私とタツミが教えたからな。無様な姿だけは晒すな」

「は、はい!」

 

エスデスさんが言うと「負けは許されない」って聞こえるのは俺だけだろうか?

とはいえ俺も一夏には勝ってもらいたいので――

 

「行って来いよ、一夏」

「ああ!」

 

そして一夏がIS『白式』アリーナに飛び出だしたのを見送った後、俺達は観客席に向かった。

 

 

 

 

「隣、いいかしら?」

「楯無さん、どうしてここに?」

「もっちろん!これのためよ!」

 

アリーナの観客席の中段に座った俺とエスデスさんのところに楯無さんが来て、形だけの質問をしてエスデスさんの隣に座る。

そして俺の質問に対する回答はサムズアップとともに見せた、ビデオカメラだった。

今日は簪の専用機が初めて公式戦に出るとあって、前日からテンション高めだったが、「うふふ、簪ちゃん早く~」とまで言い出してるのは考え物である。

簪は試合があるのでBピットで待機しているため、ここにはいない。

 

「落ち着け楯無。そろそろ始まるぞ」

「じゃあ、二人の成果を見せてもらおうかしら」

 

エスデスさんの目はすでにアリーナ内で合図を待つ一夏と鈴に向けられていた。釣られるように俺と楯無さんも視線を動かす。

 

「ところで、二人はどっちが勝つと思う?」

「俺としては、一夏に勝ってほしいですけどね」

「8割方、鈴だろうな。今は」

「鈴ちゃんが使ってる『甲龍』は中国の第三世代型ISよ。どちらかというと格闘型だけど、あの衝撃砲が厄介ね」

「衝撃砲ってあの、肩についているやつですか」

「ええ、衝撃砲の砲弾は圧縮空気。だから、砲弾は見えない。加えて砲身もないから弾道予測もしにくい」

「面白そうだな、それは」

「エスデスさんの場合、あっさり回避できそうな気がしますけどね……。だけど、一夏にとっては不利ですね」

「あなたもできるでしょうタツミ。アレ、やってたんだから?」

 

広げた扇子には『訓練』の二文字――うっ、頭が……。

血で血を洗う戦場も経験している二人の戦前の勝敗予想はこんな感じだ。

 

 

試合のペースは意外にもイーブンだった。いや、正確には鈴の方が今はまだ若干押している。

それでも鈴の衝撃砲をまともに受けたのは最初の二発だけで、一夏は躱し続けている。

その結果、鈴の攻撃は雑なものになり始めていた。

 

「へぇ~、意外ね」

「これは私も予想していなかったが、鈴の衝撃砲の使い方は甘いな。あの使い方ならタツミでも躱せるだろう」

「そうですね。―――仕掛けるつもりだ」

 

タツミの言う通り一夏が隙を見て瞬間加速(イグニッションブースト)で鈴に肉薄するその瞬間、アリーナ全体を衝撃が襲う。

 

「……!?いったい何が――」

「驚いている暇はない。楯無」

「言われなくてもわかっているわよ――織斑先生、状況は?」

 

突然の出来事にタツミは驚くが、エスデスと楯無は落ち着いて対処する。

 

『なぜ楯無姉がここに居るのか聞きたいが後回しだ。現在、アリーナ中央にいる謎のISの襲撃を受けている。救援に向かいたいところだが、ハッキングを受けて教員を回せない状況だ。――なんだと!?』

「織斑先生?」

『……大声を出してすまなかった。楯無、あのISに関してだが、無人機であることが判明した』

「……!?――わかりました。エスデス、タツミ。状況は今聞いた通りよ、二人は観客席のみんなの避難誘導を頼むわ。私は無人機を叩きに行くわ」

『それと、困ったことにハッキングのおかげで、アリーナのシールドはロックされ、出入り口の障壁も下りている』

「……やられたわね」

「貸せ、楯無」

 

苦虫をかみつぶす楯無から強引に通信機を奪い取ったのはエスデスだった。

 

「織斑教諭、非常事態ということで大目に見てもらおう」

『カティア?何をする気だ』

「幸い、ほかの生徒たちは出入り口に集まっているからな」

 

そう言って通信を切り、自身のIS『ニブルヘイム』を展開し――

 

「グラオホルンル」

 

瞬間現れた巨大なツララがBピット側のカタパルトルーム外壁の一部を貫く。

 

「よし。あそこから入るぞ」

「ちょ、ちょっと待って――」

「簪か?いやなに、ちょっとカタパルトの外壁を貫いただけだ。気にするな」

 

どうやら簪は無事のようだった。

ていうか、エスデスさんむちゃくちゃすぎますよ!

 

「タツミ、呆けてないで行くぞ」

「ちょ、ちょっと待ってくださいよ!」

「ふ、ふたりとも!?」

 

楯無が慌てて止めるも、エスデスはすでに開けた穴からカタパルト内に入っており、タツミも同様に飛び込んでいた。

つまり、避難誘導の仕事を押し付けられた楯無は――

 

「これじゃあ簪ちゃんの様子を見に行けないじゃない、薄情者~!!」

 

 

 

 

「簪、お前は楯無のところに行ってやれ」

「わ、わたしも一緒に――」

「ダメだ」

 

カタパルト内に飛び込んだタツミがISを装着するのを待って(実質一秒もかからないが)、エスデスが先程同様外壁を破壊する。直後、簪が駆け込んできて一緒に出ようとするがエスデスはそれを拒絶した。

 

「どうして!?」

「お前の機体はまだ日が浅い。アレが明確な敵だということを忘れるな」

「――ッ!」

「行くぞ、タツミ」

「――っ!わかりました」

 

エスデスの鋭い視線に身をすくませる簪。

しかし、エスデスは簪に何を言わせる間もなく、タツミを促す。

タツミとて、エスデスの言わんとしていうことはわかっていたから何も言わないことにした。

 

「エスデスの言う通りだ……」

 

残された簪もまた、エスデスの言うことは理解していた。ゆえに悔しさが込み上げ、拳を固く握った。

 

 

 

タツミたちがアリーナに入った時には、セシリアの射撃を受け、謎のISは倒れていた。

 

「終わってる……」

「そのよ――まだだ!」

 

次の瞬間、謎のISは再起動し、近くで動けなくなっている一夏に攻撃を行おうとしていた。

それを見たエスデスは瞬間加速で一気に肉薄し、その胴体を武装の《グラキエス》で切りつけ、破壊した。

 

「エスデスさん?助かりました」

「ふっ、礼にはおよばん」

「一夏、鈴!無事――」

『お前たち油断するな!上空からもう二機来るぞ!』

 

織斑先生の通信に上を見たエスデスたち、そこにはさっき倒したのと同型機とみられる二機のISがいた。

 

「セシリア。一夏と鈴を抱えて離脱しろ」

「了解ですわ」

「悪い……」

「どういうことよ!?」

 

セシリアはエスデスのスケールを知っているからか、すぐに了承した。一夏も俺たちの実力を知っているし、何より機体のSEが尽きているのを理解していた。鈴は不服のようだったが――

 

「鈴のISはSEがもうほとんど残ってないはずだ。ここは俺たちに任せてくれ」

 

というタツミの一言に鈴はなおも残ろうとするが、エスデスが殺気で黙らせた。

三人が離脱したのを確認したエスデスとタツミは二機のISと対峙する。

 

「タツミ、まさかお前と一緒に戦うことになるとはな」

「それはこっちのセリフですよ」

「ふ、運命を感じるな」

「ふざけたこと言ってる場合じゃないですよ!」

「ん?ふざけているつもりはないぞ」

「ああもう!来ますよ!」

 

二人が夫婦漫才(?)をしている間に二機のISはアリーナ内に入っていた。

二機はそれぞれ二人に向かっていく。

 

「タツミ、そっちは任せたぞ」

「了解です」

 

二人は飛び立った。次の瞬間、氷の壁がアリーナを真っ二つに分断した。

これで1対1となった。

 

 

「おらぁっ!」

 

ノインテーターに炎を纏わせ、突撃するタツミ。

謎のISは体をひねって躱そうとするが、右腕を掠る。しかし、すぐに反撃のビームを撃って来る。

 

「食らうかよっ!」

 

反撃を予想していたタツミは反転し、炎を飛ばして迎撃する。

ビームと炎が衝突し爆発するが、爆風を気にせず殴りかかってくる敵IS。

 

「ちっ!」

「……」

 

それを危ういところで回避する。

 

『やっぱり、人が乗っていないってのも厄介ですね』

『確かにそうかもしれんな。まぁ、容赦なく破壊するのに変わりはないが』

 

破片も残らない気がするのは俺だけだろうか?

しかし、無人機であれば人の命を考える必要はない。

 

「これでもくらえ!」

 

瞬間加速で一気に距離を詰め、その胴体に《ノインテーター》の切っ先を突きつける。

 

「爆牙!」

 

瞬間、切っ先で爆発が発生する。き、気持ちいい!

技名を言いながら決めるがこんなに気持ちいいなんて!

 

(技自体は単純だけど、ダメージは大きいはず)

 

だが、タツミもこれで勝ったと思うほどうぬぼれてはいない。

落下していく無人機にダメ押しの連撃を叩き込み、最後は左拳で殴り飛ばす。

 

「これで、終わりだ!」

 

地面に背を預けた無人機にとどめの火球をぶち込み、完全に機能を停止させる。

 

「ふう……」

「見事だったぞ、タツミ~!」

「うわっ!?」

 

一息ついたところだったが、後ろから『ニブルヘイム』を纏ったエスデスに抱きつかれるタツミ。

 

「エスデスさん!?あのISはどうしました!?」

「ん?あそこで潰れているぞ?」

 

エスデスの視線の先には巨大な氷塊が…うわぁ……。

後で聞いたら、通信を終えた直後に潰したとか言ってた。

 

「さあ、戻るぞタツミ」

「あ、はい…」

 

後処理を教師部隊に任せ、二人はアリーナを後にする。

 

「二人が来てくれたおかげで助かったぜ」

「エスデス、タツミ、お疲れ様」

「二人ともお疲れ~、でもおねーさんに面倒ごと押し付けてくれた礼はどうしようかしら~」

 

ピットに戻った二人を待っていたのは楯無姉妹と一夏だった。

簪はさっきのことを引きずっているのか、声に陰りが若干見えた。

すると――

 

「簪、さっきはすまなかったな」

「え?」

 

エスデスがいきなり謝罪の言葉を口にした。

 

「ど、どうしてエスデスが謝るの?」

「なに、試すようなことをしたからな」

「で、でもあれは私を巻き込まないように…」

「あの時拒絶したのは、戦闘の経験の浅く、事件の混乱を抑えきれていない簪がいても足手まといになると判断したからだ」

「うん……」

「そして、お前は自分の実力が未熟で足手まといになる、と自分の実力を判断した。だから、出てこなかった」

「うん。悔しいけど、エスデスの言う通りだよ」

 

自分の手を強く握る簪。

するとエスデスは簪の頭に手をのせ、撫でる。

 

「え……?」

「強くなろうとするやつは嫌いではない。いつでも声をかけろ」

 

そう告げて、エスデスはピットを後にする。

 

「簪ちゃん……」

「…ありがとう、エスデス。――お姉ちゃん、一夏、タツミ。今度、模擬戦の相手してもらっていいかな?」

「……!お姉ちゃんにまっかせなさい!」

「一緒にエスデスさんを倒せるように頑張ろうぜ!」

「俺も構わないぜ」

「うん!」

 

そうして残った4人もピットを後にし、自分の部屋に戻っていった。

 

 

 





大学生活が再び始まりました。
更新の速度が遅くなっていくと思います(当然努力はします)。

泣き言はここまでにして、今回のはどうでしたかな?

何かエスデスさんが教育者みたくなってきてる気がするのは自分だけだろうか……


最後に、最弱無敗かISのオリ主物を作ろうかなと思ってます。いい設定が浮かべばいいんですけどねぇ……(最弱無敗の原作でオリ主の機体に使おうとしてた名前が出てきたとか(*_*))。

では、また!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。