蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

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第十一話

 

昨夜の事件(?)の翌朝。

俺は非常に困っていた。

その理由は―――

 

(落ち着け……落ち着くんだ。状況を把握するんだ……。まず、俺は昨晩確かにエスデスさんをエスデスさんのベッドに乗せて、俺自身は自分のベッドで眠ったはずだ……)

「ん、んん……」

(ならば、俺の目の前に広がっている光景が人肌であるはずがない)

「……タ、ツミ……」

(この声は間違いない。エスデスさんだ。そしてそれはすごい近くから聞こえる)

「…ん…」

(俺たちの部屋を訪れる人は少ない。楯無さんはまずありえない。以前不法侵入してこってり絞られたからだ。簪はこういうことを絶対にしないし、まず鍵を開けられないはず――つまり、この人肌はエスデスさんのものだ)

 

そっと起きあがってみる。目の前には無防備なエスデスの寝顔、はだけた胸元、肌には汗の滴。何か背徳的なのが浮かんできてしまう。

 

…………………………(背徳的な何かを抑えるため、格闘中)。

 

何かがやっと落ち着いてきたので自分が今いる状況を再び確認する。

すぅ…はぁ………N・A・Z・E・D・A!?

 

「どうして俺がエスデスさんのベッドで寝てるんだよ!?」

 

あまりの衝撃に思わず叫ぶ。

 

そう!彼は今まさにエスデスさんのシングルベッドで彼女と共に寝ていたのだ!!

 

「なんだ…?朝から騒がしいぞ……」

(まずいっ!)

「どうしたタツミ?」

「い、いえ。な、何でもないっすよ。べ、別に俺がエスデスさんのベッドで寝ていたわけでは決してないですよ!」

 

何を口走ってんだ俺は!!

こ、これはまずい。何とかごまかさなくては……!

 

「いや、違いますよ!別に好きでエスデスさんのベッドで寝てたわけではなく――」

 

全力で逆の方向に向かってますよ~ by作者

 

「何を慌てているんだ?」

「べ、べつに、慌ててなんていませんよ~」

「……せっかく、私のベッドにタツミを入れたのに……何もなしか……」

「はいぃぃぃっ!?」

 

今何か聞こえたぞ!?

俺を、入れた?私のベッドに?

 

犯人――エスデスさんに決定!

 

「何してんですか!?」

「別に今更、一諸に寝てても問題はなかろう?」

「いや、確かに今までも何回かあったけど!」

「なら問題ないではないか」

(あなたのベッドだってことに問題があるんですよ!男子的に!)

 

正直な話、今まで自分のベッドにエスデスさんが入っていた時もまずかったが、今回は本当にまずかった。こう……女性の匂いというか……なんというかで……強く感じたというか……。

 

「それにしても、これでだめだとするとどうすれば……」

「いや、そこを考えないでくださいよ!」

「いや、いずれを期待するのもありか」

「俺に何を期待しているんですか!?」

「やれやれ、今日は朝から騒がしいな」

 

あなたのせいですけどね!とは心の中で叫ぶにとどめた。確かに隣人たちも朝から何事かと思っているかもしれない。すまん。

 

「って、もう着替え始めてるし!」

 

慌てて回れ右。最近エスデスがタツミの目の前で着替え始めるようになった。大人の魅力たっぷりの光景は眼福とも目に毒とも言えた。

すぐにタツミも着替えを始める。

 

なぜかって?

 

脱衣所で着替えてたら突撃されたんだよ、この前。

 

エスデスが着替え終わるまで廊下に出ているのは?

 

出る前に睨まれるんだよ、殺気付きで。

 

結論―― 一諸に着替えるしかないんだよ!ちくしょう!

 

 

 

「……(真っ白)」

「朝から何があった……」

「一夏か……はは、なんでもねえよ……」

「……全力でそうは見えないぞ」

 

真っ白だった。テストで赤点取ったぐらいに真っ白だった。いや、あ○たのジ○―なみに真っ白だった。

 

余談だが、タツミとエスデスは簪の部屋で訓練の話をしたりしているが、ときどき簪所有のアニメを見ていたりもする(タツミだけ)。

 

「事情を知っていそうなのはエスデスさんだけど……あっちはいつも通りに見えるな」

「待て、待ってくれ、一夏。聞かないでくれ……」

 

エスデスに事情を聴きに行こうとする一夏を弱々しく止めるタツミ。

幸い一夏も無理に聞こうとは思っていなかったのか、戻ってきてくれた。

 

「ゾンビさながらだな」

「…………」

 

一夏の冗談に返す気力もなく、タツミは再び沈んだ。

 

「おはよう諸君。さっさと席に着け」

「「「はい!」」」

 

織斑先生の一声は今日も快調だった。

 

 

 

 

「今日は生徒会室に用がるんでな。タツミ、行くぞ」

「え?今日何か連絡来ましたっけ?」

「来ている」

 

放課後、いつものように一夏が俺たちに練習に付き合ってくれと頼んできたが、エスデスさんはそれを断った。

 

「生徒会関係か、なら仕方ないな。じゃあ、今日はシャルルに頼むか」

「そうするといい、あいつは教えるのがうまい」

 

どうやら一夏は納得してくれたようで、今日はシャルルと練習をするらしい。以前俺たちの練習に混ざってきたときのアドバイスは的確なものばかりで、非常にわかりやすかった。エスデスさんもそれを認めている。

一夏に言わせれば、箒、セシリア、鈴の説明よりはるかにわかりやすいそうだ。鈴、お前もか。

エスデスさんと模擬戦をした後は青ざめて、アドバイスなんてなかったのはあしからず。

 

 

「それで楯無。呼んだということはもう調べがついたんだな」

「ええ。まさかの結果というか、やっぱりというかだけれどね」

「何を調べてたんですか?」

「あら、聞いてないの?」

 

タツミが一人疑問符を浮かべていたことにきょとんとする楯無。

 

「忘れていた」

「エスデスさん……」

「まあいいわ。これを見てちょうだい」

 

そう言って渡された紙には最近転校してきた二人の写真があった。

 

「まずはラウラ・ボーデビィッヒだけど、こっちは大方の予想通りね。彼女はドイツ軍のIS部隊の隊長よ。それで、その部隊で一年間教官をしていたのが織斑先生というわけ」

「それで、デュノアの方はどうだ?」

「こっちはある意味ぐちゃぐちゃよ」

「ぐちゃぐちゃってどういうことですか楯無さん?」

 

驚きとも呆れともとれる表情で話す楯無。

 

「彼はフランスの大企業、デュノア社の社長の息子だってことになっているのだけど、調べてみたら社長の子供に男はいないのよ」

「え?つまり、シャルルは息子ではないってことですか?」

「紛らわしいからはっきり言うわ。彼は男装した女の子よ。加えて、彼――いえ、彼女は本妻の子じゃなくて社長の浮気相手の子供ね。で、彼女の母親が亡くなって、デュノア社に引き取られたみたい」

「でも、なんで男装なんて……」

「大方、目的は一夏と私たちだろう?」

「そうとしか考えられないわね。特に一夏君とタツミは最優先だろうけど」

「男子だから、ですか」

「正解よん」

 

バッと開いた扇子には「レアケース」と書いてあった。……複雑な気分ではあるが。

 

「こっちに寄越した理由は、ISデータの強奪だな。確かデュノア社は現在、経営危機になっていたはずだ」

「良く知っているわね」

「簪から聞いただけだ」

「無知だったのは俺だけか……」

 

がっくりと肩を落とす俺。

 

「それでどうするつもりだ、楯無?」

「何もできないのが現状なのよねぇ。調べたとはいえ、デュノア社はフランス政府との癒着が強いって言うし、もみ消されるでしょうねぇ」

「やれやれ、相手のぼろを待つというのは性に合わないのだがな」

「エスデスさんは率先して殴りに行くタイプですよね……(ついていけねぇ)」

 

 

 

 

「おはよう、タツミ」

「おはよう、一夏」

 

翌朝食堂にいたのは一夏とそのルームメイトのシャルルだった。

ちなみにエスデスはというと、「少し調べ物をするから、今日の一夏との練習は任せた」とのこと。なんとなくだが、いや~な予感がする……。

 

「シャルルも一緒か。あ、そうだ今日俺の練習に付き合ってくれるか?」

「僕は構わないけど、エスデスがいると僕のいる意味がない気がするかな……」

「そういえばいないな。タツミは何か知ってるか?」

「おい。何で俺に聞くんだよ?」

「なんでって……いつも一緒にいるイメージだからだけど?」

 

ちょっとニヤけた顔で聞き返してくる一夏に、ちょっとむかついた。けど、()()()()()()

 

「さあ?ただ調べ物があるから練習は任せるって言ってたけど」

 

俺は決めた。今日の模擬戦で一夏をボコすと。

 

「ふ~ん。気になるけど、まあいっか。じゃあシャルルも頼んでいいか?」

「……あ、うん。オッケーだよ」

 

ん?今の間はもしかして警戒したのか?

返答にわずかな間があったことにタツミは反応したが、あえて追及はしなった。

 

「じゃあ、頼むな」

 

 

 

模擬戦で一夏を軽くボコした後、一夏はシャルルにアドバイスをもらっていた。

 

「近接はばっちしだね。それにちょっとずつだけど、銃弾に馴れてきた感じかな。でも、まだちょっとってぐらいだから――はい、コレ」

 

そう言ってシャルルが一夏に渡したのは前回練習したときに貸していたアサルトライフルだった。

 

「またか?」

「うん。慣れるには数をやらないとだからね」

「思い出したくもないアレもそうだっただろ、一夏?」

「やめろ。思い出させないでくれ……」

「一体どんな訓練だったのかな……」

 

シャルルはアレを知らない。まあ、思い出したくもないから教えなんてしないが。

と、そこに――

 

「あ、一夏達も来てたの?」

「やっほ~、おりむ~にたっつ~。お~、でゅっち~もいる~」

 

現れたのは簪と本音だった。簪はISスーツに身を包んでいるが、本音は制服のままだ。

 

「二人は?」

「かんちゃんの機体の出力の確認と~例のものの試験稼働」

「うん、まあそんなところかな…」

「となると、のほほんさんは計測係か」

「そういうこと~」

 

軽く会話を楽しんだ後、各々が自分の練習に入ろうとした時――

 

「うそ、あれってドイツの第三世代型じゃない?」

「まだ本国でのトライアル段階って聞いたけど…」

 

同じくアリーナ内で練習していた他の生徒たちがざわめきだした。

そしてその視線の先にいたのは、ラウラだった。

 

「おい、織斑一夏」

「なんだよ」

 

転校初日のことを思い出したのか、ラウラの高圧的な言い方に反抗したのか、一夏の声はいつもとは違っていた。

 

「貴様も専用機持ちのようだな、私と戦え」

「いやだ、理由がねえよ」

「なら、無理やり理由を作ってやる」

 

ドウンッ!

ラウラのISの肩部に搭載されたレールカノンがいきなり砲弾を発射する。

 

「「「……!?」」」

 

ギンッ!

 

「こんな密集空間で戦闘しようなんて、ドイツの人は随分と沸点が低いんだね」

「お前!こんな状況で撃つ奴がいるか!」

「貴様ら……」

 

シャルルが素早く盾を展開、砲弾を防ぐ。そしてタツミも槍を構えて一夏の前に立つ。

 

同時に俺は顔には出さないもののシャルルの得意とする技能、高速切替(ラピッド・スイッチ)に驚いていた。

通常1~2秒かかる量子構成。俺も実際そのくらい。戦闘中に()ができるのは結構痛い。

だが、彼女の場合は照準まで含めて1秒もかかっていない。戦闘と同時並行して行える武装の切り替え。この技能は戦闘において大きなアドバンテージになるだろう。

 

 

「……篠ノ之博士の機体はともかく、フランスの第二世代型ごときが私の前に立つとはな……」

「いまだに量産化のめどが立たないドイツの第三世代型に『ごとき』なんて言われたくないね」

「お前と一夏にどんな因縁があっても、場所はわきまえろよ」

「…………。ふん、今日のところは引いてやる」

 

しばらく涼しい顔のまま睨み合うが、すぐにラウラは戦闘状態を解除してアリーナを後にした。

 

「一夏、ラウラさんとの間に何があったの?」

 

武器をしまい、いつもの表情に戻ったシャルルが一夏に尋ねる。

近くにいた簪と本音も一夏に視線を向けていた。

 

「……千冬姉の経歴に傷をつけた俺を許さないってさ」

「ふ~ん。あ、そろそろ時間だから上がろっか」

「そうしようか。タツミたちはどうする?」

「俺も上がるとするよ」

「私たちはデータを取るから、残る」

「ばいばいなのだ~」

 

シャルル達も深くは聞かずに解散した。

 

(今回のことはエスデスさんに言っといたほうがいいな)

 

今日は引いたラウラだが、絶対また何かやらかすだろうと思わずにいられなかったタツミはため息をこぼしながら更衣室で着替え、自室に戻っていった。

 





今日は数話いっぺんにアップします。

理由としてはこれからレポート課題が増えてきそうなので暇がなくなるかもしれないということです。

さーて、次!
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