蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

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第十三話

 

シャルル改め、シャルロットの事案は学年別トーナメントが終わってからということになった。

先のクラス対抗戦では無人機の襲撃で大騒ぎになったので、面倒は後回し。というのが楯無さんの本音なのだが、正直俺も同感だ。

 

「うう、タツミ…」

(まあ、これが俺にとって一番面倒なことであるけれど……)

 

状況は簡単だ。タツミがエスデスの抱き枕にされているという、もはやお約束のようなものである。

 

「ちょ、エスデスさん起きてくださいよ……」

 

結局エスデスを引っぺがすことに成功したのはそれから二十分後のことだった

 

 

 

 

「あ、タツミじゃん。これから練習か?」

「まあ、そうだけど。一夏はシャルルと練習か?」

「そんなところかな」

 

放課後、第四アリーナに個人練をしようと歩いていた俺を見つけた一夏が声をかけてくる。一夏の隣にはシャルル改めシャルロットがいた。

 

「それで、タツミはこれからどうするの?」

「個人練。さすがにトーナメントが近いからな」

「そういやエスデスさんがいないな。いつもタツミの傍にいるのに」

「あっちからついてくるんだよ……」

 

何度逃げようとして失敗したと思ってるんだ……。と言いたいタツミだったが、言うと面倒になりそうだと諦めた。

しかし、世は無常。タツミのインクルシオに通信が入った。

 

『タツミ!今どこにいる?』

「お、落ち着けって簪。どうしたんだよ?」

『第三アリーナで鈴たちが模擬戦をしてるんだけど、このままだと危険なの!』

「はあ!?」

「変わってくれタツミ!簪、誰が戦ってる!?」

『ラウラさんがセシリアと鈴相手に一対二で戦ってる!』

「まずい!」

 

すぐに駆け出す一夏。

 

「待てよ!」「一夏!?」

 

慌てて俺とシャルロットも一夏の後を追って第三アリーナに向かう。

 

 

 

「あ、来た!」

「簪、何があったんだ!」

「最初は模擬戦だったけど……勝敗は誰の目にも明らかなのにラウラさんが止まらない」

「やろう!」

 

一夏がすぐさま白式を展開、アリーナのシールドを破ってラウラに突撃する。

 

「その手を離せぇぇ!」

「ふん、考えなしの突進。絵にかいたような愚図だな」

 

しかし、一夏の体はラウラが右腕を向けただけで停止した。

あれは―――

 

「なっ!?」

「終わりだ」

「させないよ!」

 

一夏に向けられたレールカノンに向けてIS『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』を展開したシャルルがアサルトライフルで射撃、ラウラの意識を一夏から離す。

 

「大丈夫!?」

「ああ、助かったぜ。サンキュー」

「一夏!あまり先走るなよ!」

 

シャルル、タツミが一夏や負傷したセシリアや鈴を守るように展開するが――

 

「ふん、雑魚が何匹揃ったところで私と『シュヴァルツェア・レーゲン』の敵では――っ!」

 

ラウラは構わず突撃しようと前傾になったタイミングで、足元に氷のナイフが突き刺さり、ブレードが飛んできた。ブレードを弾き、視線を動かす。

 

「誰だ!?」

「やれやれ、面倒だな」

「まったくだ。若いからと言ってこうもしょっちゅう面倒事を起こされても困る」

 

そして、ある一点を全員が見る。

そこには『最強』の称号を持つ二人がいた。

 

「エスデスさんに織斑先生!」

「きょ、教官!?」

「千冬姉!?」

 

エスデスさんは腕部装甲を右手にだけ部分展開して氷のナイフ数本を持ち、織斑先生は無手で悠々とこちらに歩いてくる。

その姿は荘厳の一言に尽きる。その場にいた人間すべてがその立ち姿に言葉を失っていた。

 

「模擬戦をやるのは構わん。だが、アリーナのシールドを壊すともなれば看過はできん。この決着は学年別トーナメントでつけろ。ボーデビィッヒ、織斑、デュノア、熾場」

「教官がそうおっしゃるのなら……」

「わかった」

「僕もそれで構いません」

「俺もです」

 

織斑先生は「よし」と言ってからアリーナにいた全員に聞こえるようにこう宣言した。

 

「では、学年別トーナメントまでの私闘の一切を禁止する!解散!」

 

そしてアリーナに集まっていた生徒たちは俺たち含め、アリーナから出ていく。

 

 

 

「タツミ、今日は第四アリーナにいたのではなかったのか?」

「簪に知らせをもらって、一夏が血相変えて飛び出してったから追いかけたんですよ。それよりエスデスさんはなんで織斑先生と一緒にいたんですか?」

「なんのことはない。織斑教諭と職員室で話しているところでアリーナシールド破損の連絡を受け、走ってきただけだ」

 

あの、いくらなんでも早すぎです。いくら第三アリーナが職員室から一番近いからと言っても早すぎますよ。

 

「……。あのISブレードは?」

 

エスデスさんが投げたのだと信じたい……。

 

「ん?あれは織斑教諭が投げたものだが」

「ほんとに人間なのかよ、あの人」

 

エスデスさんも大概常人とは言えないが、織斑先生も人間離れしているという事実にがっくり肩を落とす。

というか織斑先生、あれってIS用のブレードですよね……。なんであんなに軽々持っているんですか……。

 

エスデスはタツミの様子に首をかしげていたが、知らぬが仏ということでタツミは何も言わなかった。

 

 

一夏side

 

「それで、どうしてラウラと決闘なんて話になったんだ?」

「いや、そ、それはねぇ……」

「女のプライドを侮辱されたからと言いますか……」

 

あの後、セシリアと鈴は学園の保健室に運ばれた。今はお見舞い中というわけだ。

 

「どういうことだ?」

「何でもないわよ!」

「なんでもありませんわ!」

 

なぜか怒られた。え、なんで怒られたの?

 

「あはは…。一夏ってホントに女の敵だよね……」

「間違いない……」

「ん?何か言ったかシャルル、簪?」

「「何でもない(よ)」」

「まあいっか。二人とも無事なんだし――」

 

ドドドドドドドッ!!

 

なんだ?なにかが近づいてくるぞ!

そして、ドアを吹き飛ばし入ってくるのは無数の手……普通に怖いです。はい。

 

「織斑君!」 「デュノア君!」

「「「私と組んで!」」」

「はい?」 「え?」

 

いまいち事態が呑み込めていない俺たちに女子たちは一枚の紙を見せる。

なになに……『今月開催される学年別トーナメントはより実践的な模擬戦闘を行うため、二人組での参加を必須とする。なお、ペアができなかったものは抽選となる。締め切りは――』っておい、もうちょっと見せろよ!

 

「二人組?」

「そういうこと!」

「「「だから私と!!」」」

 

突然の仕様変更はもしかしたら先月の無人機がらみだろうか。まあここで何を言ってても始まらないが、目下一つ重要な問題があるな。

 

「ええっと……」

 

そう、今は男子で通しているシャルルの問題である。ペアとなればともに練習してるときにばれてしまう可能性だってある。タツミたちと話し合ってばらすのはトーナメントが終わってからって話になってるし、ここは――

 

「すまん!俺はシャルルと組むから諦めてくれ!」

 

ワイワイ騒いでいた女子たちが静まる。しかし、それもほんの少しのことで口々に「仕方ないか」、「男子同士ってのもありね」、「ほかの女子に取られないだけマシか」と言いながら保健室から出ていく。ふう。

 

「あの一夏――」

「「一夏(さん)!」」

 

もっと面倒なのが残ってた……。どうしよう骨が折れる気しかしない。表現的にも、物理的にも。

 

「ダメですよ。先程、お二人の機体を確認しました。ダメージレベルがCを超えています。トーナメント出場は許可できません」

「おわっ!山田先生いつの間にいたんですか!?」

「一夏……失礼だよ」

 

山田先生がいつの間にかそばにいてびっくりする俺に冷静なつっこみをするシャルル。そして、山田先生に注意を受けた二人はというと……

 

「ぐ、ぐぐ。わかり…ました」

「不本意ですが…辞退させて…いただきますわ…」

「はい、わかってくれて何よりです。先生は優秀な生徒が大好きです。――それと織斑君、びっくりされたのはわかりますが、あんなに反応されると……」

「すみませんでした……」

 

はい、俺が悪かったです。

そしてそのまま山田先生は出ていった。

 

「なし崩し気味ですまないが、頼むわ、シャルル」

「うん、ありがとう。こっちこそよろしく」

「う~ん、私は誰に頼もうかな?」

 

シャルルの了解も取れてペアを組むことになった俺たちだが、簪は相手を決めかねている様子だった。

 

「簪はどうするんだ?」

「タツミかエスデスあたりに頼もうかとも思ったけど、無理だと思うから本音に頼もうかなって思ってる」

「「「あぁ~」」」

 

満場一致で納得した。

 

 

 

タツミside

 

保健室でそんな話が行われているとは露程も知らないタツミは女子の輪に囲まれていた。一夏とシャルルという学園で三人しかいない(正確には二人だが)男子のうち二人に断られた女子がなだれ込んでいるのだ。

 

「熾場君!」 「辰已君!」

「と、とにかく落ち着けって……」

 

な、なんだ?さっき紙を見せられて、タッグ戦になったのは知ったがこんなに必死になっているのはどういうことだ!?

 

「私と組むよね、熾場君!」

「いいえ、私よ!」

 

俺の目の前は混沌(カオス)と化していた。

ああもう!なんでエスデスさんはこんな時にいないんだよ!

さっき楯無さんから連絡が入ったとかでどっかに行ったが、あんなに急いでたのは――はっ!?ま、まさかっ!

 

「何を騒いでおるのだ。お前たちは」

「――!?エスデスお姉さま!」

「姉御!」 「姐さん!」

「ふん」

 

シュバッ!

 

エスデスの登場に先程まで騒いでいた女子一同が一斉に静まり、道を作る。

……………。エスデスさんすごいです。すごすぎです。

 

「あの~エスデスさんはどちらに行ってたのでしょうか?」

「何だ?口調がおかしいぞ。なんのことはない、職員室に行っていただけだ」

「まさかとは思いますが、トーナメントのことで?」

「当然だろう?それ以外に何があるというのだ?」

 

終ったー!はい俺終ったー!

絶対俺とペアで申請してきたよ!絶対!

 

「一応聞いときますが…相手は?」

私の男(タツミ)以外に誰がいる?」

「……ですよね~」

 

わずかな望みは叶わなかった。

周囲にいた女子たちは「「「きゃぁぁぁ!!」」」と叫んでいたが、エスデスさんが「静かにしろ!」と一喝すれば、今はもう自分のペアを探すのに躍起になっている。

 

「さて、タツミ。私と組んだ以上、必ず勝つぞ」

「エスデスさん?」

 

あれ?こんなキャラじゃないよねこの人?なんで?

 

「なんだ、まだトーナメントの変更通知の紙をもらってないのか?」

「いや、見せてもらいましたけど……。何か書いてあったんですか?」

「ほれ」

 

………はぁ!?

『トーナメント優勝者には織斑一夏か熾場辰已と交際できる』だって!?

少なくとも俺は許可してないぞ!

 

「まったく、私というものがいながら浮気とは……」

「してませんよ!」

「そうか、ならいい。やれやれ、こんなのを考えそうなのは楯無のやつだな」

 

あれ?なんでうれしそ――しまった!俺は「許可してませんよ!」というつもりで言ったのに、今の流れだと「浮気してませんよ!」と捉えられてもおかしくない!そしておそらくこっちで取っている!

 

「俺が否定したのは『交際』じゃなくて――」

「強いやつと対戦できて、その上タツミとの交際も全生徒に知れ渡る……フフッ」

 

聞いてなかった!完全に自分の世界に入ってるよ!

…………もう、どうにでもなれ(泣)。

 

こうしてかつて敵対した二人がペアパートナーとして、共に戦うということになった。

………パワーバランス的に大丈夫かこのペア?

 

 

 




今日だけで三話アップしました。

なんか無駄に話数を書いてる気がしますが、楽しんでいただけてると幸いです。

次話はいつアップできるかわからないですが、待っていてください!


では、また次回!
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