蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

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第一五話

学年別トーナメント当日。初日の今日は一回戦をすべて消化する予定だ。

俺やエスデスさん、一夏、簪を含めた1年生たちはトーナメントの対戦組み分けが出るのを静かに待っていた。

 

「まさか、一回戦からタツミたちと当たるなんてやめてくれよ」

「確かにそれは避けたい……」

「うん、まあそうだね」

「別格なのだ~」

 

上から順に一夏、簪、シャルロット、本音の順番だ。

うん、なんとなくみんなの言いたいことがわかる気がする。

 

「いちおう聞いとくけど、あの人?」

「「「うん」」」

「なのだ~」

 

三人の声が重なった。

彼らの本音は「エスデスは一人でも十分に強い。それこそ『ブリュンヒルデ』織斑千冬クラスに」というのだ。結局のところ何が言いたいかというと、エスデスは特別ルールで一人にしてもらいたかったということだ。

 

「ひどいな、まるで私が化物みたいじゃないか」

「まあ、気持ちはわからなくもないな……」

「?」

「いえ、何でもありません。俺は何も言っておりません」

 

悪寒が走った。だから嘘をついた。

 

「まあ、出る以上は優勝を目指すか。だから待ってろよ、二人とも」

「私たちも負けない」

「ああ、待っているぞ。お前たちとの楽しい時間を」

 

いい感じにまとまったところで、一夏とタツミの頭の中には同じようで違う考えがあった。

 

(俺は負けられない。主に俺の命のために!)

(負けられねぇ。主に俺の貞操のために!)

 

優勝時の褒賞をだれにも与えたくないという思いは共通していた。

 

 

 

「あ、出たみたいだよ。組み合わせ結果」

 

シャルルの一言に一同はトーナメント表が映し出されたディスプレイを見る。そこには――

 

「第一試合からタツミたちの登場か……」

「私たちはシードだけど、初戦でエスデスたちと……」

「こっちもすごいことになってるぜ」

「ん?……なっ!?」

「ほう、実に作為が感じられる組み合わせになったな」

 

今回のトーナメントに参加するのは1年だけで総勢63ペア。奇数となったのはセシリアと鈴が出場できないためである。

そしてペア数が奇数となったため、シード組が発生することになった。今回は簪・本音ペアがそうだ。

そして彼女らの初戦の相手は第一試合の勝者、つまりタツミたちである可能性があるのだ。

それがAブロックの山の組み合わせ。

 

一夏たちはBブロック。

こっちにはシード組はいない。

一夏・シャルロットペアの一回戦は一回戦最終試合。これはまあ運の問題だから問題はないのだが、一夏たちの試合の直前の試合、つまり勝てば二回戦で当たるであろう相手。それは―――

 

「ラウラ・箒ペアか……」

「タツミたちの次に当たりたくないペアだね。それにラウラさんの実力なら確実に上がってくるだろうし、僕らも勝ち進むだろうから二回戦で確実に当たる」

「なあ、トーナメントのシステムは――」

「公平性を保つために1年は虚さんがやったよ」

「だよな~、くじ運がないのか何なのか」

「できれば準決あたりで当たりたかったね、対策のために時間がほしいし」

 

そう、ラウラと箒。どちらも一夏と浅からぬ関わりを持つ者同士なのだ。

それが早々と二回戦で当たるとなれば作為を感じられるのも無理はないだろう。

それをいったらタツミたちの方もそう言えなくはないが。

 

「一夏、勝てる自信はあるか?」

「自信以前に勝たなくちゃならない。セシリアと鈴のこともあるけど、それ以上にこれは俺の問題だ」

「フン、どうやら杞憂のようだったな。タツミ」

 

一夏の表情は真剣そのものだった。

だが、力んでいる様子はない。どうやらエスデスさんの言う通り、俺の杞憂で終わったようだ。

 

「さて、私たちは一試合目か、なら向かうとしよう」

「行ってくるぜ」

「勝つだろうけど、二人とも頑張って」

「二回戦で待ってるよ~」

「じゃあ、俺たちは観客席に行くか」

「そうだね」

 

三組のペアはそれぞれの場所に向かった。

 

 

 

『さぁ~今年も始まりました!IS学園学年別トーナメントォォ!!

今年はルールが変更され、2対2のタッグマッチとなりました!昨年までの1対1(ガチンコ)とは違い、どんな戦略、どんな連携が見れるか。非常に楽しみです!』

 

アリーナに響くのは新聞部部長の黛薫子先輩の声だ。

彼女は今回のトーナメントには参加せず、実況及び進行を務めることになっている。

楯無さんは「盛り上げることに関しては超一流よ」とは言っていたが、そうなのだろうなぁ。

実際、新聞部の学内誌は人気で、その記事は女子たちの間で常に話題に上るほどだ。

だけど、俺や一夏の場合はそうではないんだよな。俺たちは新聞部に取材申し込みや隠し撮りをされて、いろんなことを書かれている(その結果エスデスさんに追及されることもしばしば)。

特に部長の黛先輩は、俺や一夏の写真をいつの間にか撮っていて、カメラの音で「振り返れば奴がいる」状態で、楯無さんばりに逃げ足が速くて始末に負えない。

 

「なんか変な紹介されそうだな……」

「それを気にして負けたは許さんぞ、タツミ」

「負けませんよ。てか、紹介されるのは確定なのかよ……」

「行くぞ」

「はい!」

 

二人は自分の専用ISを纏い、一回戦の場へと飛び出した。

 

『さあ、Bピットから出てきたのは両者ともにかの篠ノ野博士が自作した機体を駆り、その実力をいかんなく発揮!そして、入学直後に非公式試合で国家代表候補生を撃破!今回のトーナメントにおいて優勝をもっとも有力視されているペア。熾場辰己、エスデス・カティアペアだぁぁぁ!』

「「「ワアァァァ!!」」」

 

湧き上がる歓声。よかった、まともな紹介文で……

 

『そして!そんな熾場、カティアペアと対戦するのは姫野優里、園上葵ペア!姫野さんはその背の低さから「親指姫」、園上さんはそのかわいらしい笑顔が人気となって「そのみん」のアイドルっぽいあだ名を中学の男子からつけr――』

「「スットーップ!!!」」

 

まだまだ話を続けようとする黛先輩の実況を遮って、二人が大声を出す。

え、ええと……

 

「「その先は言わないで!」」

『えぇ~せっかく学外に出てまで調べたのに~!―――さあ、気を取り直して!まもなく試合開始です!カウントォ~スタート!』

 

黛先輩の掛け声とともにランプが点灯する。

 

『3、2,1――Battle Start!』

 

「ふむ、銃を構えたあたり、遠距離から削る腹だな」

「それじゃあ、俺が突っ込みますか?」

「行って来い」

「俺を撃たないでくださいよ!」

 

姫野さんと園上さんが使用している機体は『ラファール・リヴァイヴ』、二人は試合開始直後に銃を取り出して射撃を開始する。

タツミは弾幕の中をノインテーターを時折盾に使いながら急停止、急加速、方向転換を駆使して、二人との距離を詰める。もちろんエスデスが後方から「ヴァイスシュナーベル」の援護、また射撃を続ける二人を牽制していることもある。

 

「ちょっ…!」

 

そして槍の間合いに園上さんをとらえた俺は猛ラッシュで一気に削りに行く。

 

「葵!」

「試合中によそ見とは大した度胸だな」

「しまっ――!?」

 

その様子を視線を向けて見てしまったため、大きな隙をさらした姫野さんにエスデスさんが容赦なく襲いかかり、あっという間に決着はついた。

そしてすぐに俺の方の決着もついて、ブザーが鳴り響く。

 

『圧倒的ー!!勝ったのは熾場、カティアペアァァァ!まったく危なげない試合運びで完勝!優勝はこのペアで決まりかぁぁ!?』

 

黛先輩の絶叫が響き渡る。正直なところ恥ずかしい……

 

「さて、戻るぞ」

 

恥ずかしさなど微塵も感じさせない凛々しい声音で、その美しい青い髪を揺らしながらBピットに戻っていくパートナーを追い、タツミもアリーナを後にした。

 

 

 

一方、観客席で見ていた4人はというと……

 

「ますます勝てる気がしねぇ……」

「普通突っ込まないよ、あの弾幕」

「タツミってあんなに機体制御うまかったっけ?」

「びっくりなのだ~」

 

エスデス一人でも大変なのに、タツミの成長を見て苦笑いしていた。

 

「いったいこの数日間にどんな練習してたんだか、まさかアレじゃねぇよな……」

「でも、アレならあの成長も納得できるかも……」

「ねぇ、二人が言う『アレ』って何?僕にも教えてよ」

「一夏から聞いてないの?」

「うん。聞こうとしても『思い出したくない』の一点張りで教えてくれないんだ」

「仕方ないよね~、かんちゃんから聞いただけでも地獄だよ~」

「そ、そうなの?」

 

そして簪解説によるアレがシャルロットにも伝わる。

一夏はよっぽど聞きたくないのか、終始耳を塞いでいた。

 

「考えたくなくなるね、それは……」

「でしょ?」

 

シャルロットの顔は青ざめて、顔は引きつっている。

無理もない、あんな地獄を好んで味わおうとする人がこの世界に何人いるのだろうか?そんなやつがいようものなら、そいつは頭がいかれているだろう。

 

「お、終わったか?」

「うん、一夏の気持ちがわかった気がするよ……」

「ふう~、あんなのは二度と御免だ……」

「でも、勝たなくちゃね」

「ああ、いつまでも負けてられないからな」

「まだラウラさんが残ってることを忘れないでね」

 

一夏はまだ試合が残っているのにもかかわらず、決勝に気を向けている一夏にくぎを打つ。それに対し一夏は「忘れてなんてないさ」と返す。どうやらいらない心配だったらしい。

 

「ねぇ、かんちゃん。どうする~?」

「作戦に変更はなし。やるしかない」

「あいあいさ~」

「何か作戦があるのか?」

「うん、でも秘密」

 

「だよなぁ」と言って一夏はシャルロットとともに観客席を去る。おそらく一回戦の打ち合わせだろう。簪たちは今日試合がないので、そのまま観客席で残りの試合を観戦することにした。

 

 

一回戦は無事終わり、タツミとエスデス、ラウラと箒、一夏とシャルロットの専用機組(箒は量産機の『打鉄』を纏って戦っていた)は順当に勝ち残った。

 

そして、今回のトーナメントの山場の一つである激戦の二回戦が始まる。

 

 

 

 






パワーバランスって大事だよね!!


すみません、書いててどうしても思わずにいられなかったんです。ハイ。
さて、今回から学年別トーナメントが始まりました。タツミ君とエスデスさんが組んだので優勝は確実でしょうね(笑)

次話は来週の土日の予定です。
大学が夏休みに入ったらバハムートかISのSSを書き始めようかなと思っています。できればバハムートで書きたいなぁ。

ではまた次話で!
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