蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

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第十六話

 

学年別トーナメント2日目。

今日はすべての二回戦が行われる。

そして、第一の山場を迎える日でもある。

 

 

 

タツミとエスデスが待機しているのは、昨日とは違いAピットだった。

今やっているのは最後の確認だ。

 

「まあ、前回の模擬戦から考えるとあり得なくないですけど……」

「簪は堅実な奴だ。それは悪いことではない。しかし、そこで止まっている」

「そううまくいくものですかねぇ」

「違ったら違っただ」

 

おうふ。まさかのノープラン……。

 

「ああそうだ、タツミ」

「なんですか?」

 

ピットからアリーナに飛び出す直前、エスデスさんは何かを思い出したように俺の方に振り返る。そして――

 

「楽しみだな」

 

そう言った。当然、俺も楽しみですよ!

 

二人は簪と本音の待つアリーナへと飛び出した。

 

 

 

アリーナに飛び出した俺たちを迎えたのは簪たちとやはりあの人の実況だった。

 

『さあ両者でそろいました!まずは一回戦を圧倒的な実力で勝ち上がった熾場・カティアペア!

熾場辰己は織斑一夏に続く二人目の男性操縦者!一回戦では相手の弾幕に突っ込むといった豪胆な行動が印象深い!とてもISを動かしてから数か月とは思えない!そしてその手に持つ槍は炎の槍、その振るう姿と常にエスデス・カティアがそばにいることから「炎皇子(ムスプル)」と呼ばれ、女子たちから羨望を、一部から嫉妬を集めています!!』

「はぁ!?」

 

観客席からは歓声と罵声が聞こえた……嫉妬されてるんだ…って、そんなことよりも!

 

「ちょっと待て!?なんでそんな―――」

『続けて参りましょーう!』

 

聞いてないし!(聞こえるわけがないのに……)

 

『さあ続きましては、エスデス・カティア!この場にいる女子生徒でこの人を知らない人はいないでしょう!?入学早々からその美貌、その強さ、その凛々しさに憧れる女子が続出!その人気は1年だけではなく2年、3年にも及んでいます!先月行われた「この人のためなら死ねるランキング」、「この人に罵られながら踏まれたいランキング」共に2位を大差で引き離す堂々の第1位を獲得しましたぁ!そんな彼女の異称は「氷獄の女帝(コキュートス)」!今日の戦いでも魅せてくれるかぁ!!』

「フム、悪くはないな」

 

タツミは「何そのアンケート!?ていうか、いつの間に!?」とツッコミを入れてはいたが、誰も気にしなかった。

 

『まだまだ行くぜぇ!!熾場・カティアペアに対するのは、今回のシード枠の更識簪・布仏本音ペアァァァ!

更識簪ちゃんは日本の代表候補生!IS学園での公式試合は今回が初めてですが、その実力はIS学園生徒会長であり、姉でもある更識楯無や織斑先生も認めています!

続きましては布仏本音!彼女の特徴は何と言っても、そののほほんとしたキャラクター!バトルの方では普段見せない一面が見れるかもゥ!

そんな二人はいったいどんな戦いをするのでしょうかぁぁぁ!!』

「恥ずかしい……」

「にははは~」

 

恥ずかしさのあまり顔を赤くする簪、対照的に明るく笑う本音。

すまない、もうツッコミを入れる気力はねぇ……。

 

『さあ、いよいよ始まります!今トーナメントで最初となる専用機持ち同士のバトル!カウントスタート!』

 

カウントを告げるランプに光が灯り始め、四人は戦いに向かう表情となった(本音の表情が真剣なものになったことに軽く驚いたのはこの際置いておく)。

 

『3,2,1――バトルスタート』

 

「最初から行くよ!!」

「マジかよ!?」

 

思わず素っ頓狂な声を上げる俺。理由は、簪が試合開始と同時に放った64発のミサイル――ではなかった。

 

「フ、やはりそう来たか。予想通りだ」

 

そう、理由はこれを予想していたエスデスさんに対するものだ。

俺は切り札である《山嵐》を早々切ってくるとは思っていなかった。切り札というのは最後まで持っていて、決めに使うような代物だと考えていたからだ。

だが、試合前にエスデスさんは……

 

『簪は開始早々、または序盤から《山嵐》を切ってくるだろう』

 

と言っていた。今、それは現実となっている。

迫りくるミサイル、それはマルチロックオンシステムにより複雑な軌道を描きながら時間差で突っ込んでくる。

 

「ちぃ……!」

 

タツミとエスデスは互いに距離をとるように横に跳ぶが、当然それを追ってくるミサイルはある。半数以上はエスデスの方に殺到しているとはいえ、数十発はタツミに来ている。

複雑に軌道を変えるミサイルを迎撃するにしても、踏み込めない。

 

「くそっ!」

 

スラスターをふかし、後退するタツミ。だが、ミサイルの追跡からは逃れられないで、ミサイルが爆発する。

 

ドドォオン!

 

爆発の衝撃が土埃を上げる。そして土煙が晴れると、そこには――

 

 

「やはりその手で来たか。お前はほんとうに優秀な奴だな」

 

エスデスは自らに迫るミサイルの軌道を読み、誘爆を誘い、氷の盾で防ぎながらミサイルの猛攻を切り抜ける。そして『打鉄弐式』の武装、対複合装甲用超振動薙刀《夢現》で斬りかかってきた簪を《グラキエス》で受けながら簪にそう告げた。

 

「読んでたの……!?」

「お前は実力差をはっきりと把握することができるやつだ。であれば、試合のイニシアティブを握り、流れを作る。勝つためにな」

「やっぱりすごいよ、エスデスは」

「フン、伊達に将軍として軍を率いてたわけではないのでな」

 

二人は距離をとって、睨み合う。

 

「てことは……タツミも―――」

「視線はそらさないで私を見ているが、目の前に集中しろ」

「負けない!」

 

再び二人はぶつかった。

 

 

さすがはかんちゃんだね~。でも、油断はできないね。

えっすーならこのくらい読んでそうだし、たっつーが出てきてもびっくりしないよ~

 

「でも、たっつーをかんちゃんの方に行かせる気はないからね~」

 

いつもと変わらないのほほんとした口調でサブマシンガンの射撃をミサイルの爆心地に浴びせる。

 

「こっちも同じ気持ちだぜ!」

 

本音が声に反応して上を見ると、装甲に小さな傷をつけながらも炎をまとった《ノインテーター》を構え、突撃姿勢をとっているタツミの姿があった。

ミサイルの爆風と衝撃は確かに防げなかったが、ミサイルが軌道を変える間もない距離で炎を当てて誘爆させたことでダメージを軽減したのだ。

 

「炎天槍!」

「ふにゃあ~!?」

 

上空から瞬時加速(イグニッションブースト)の加速を加えて一直線に突っ込むタツミの速度に反応しきれずに防御の構えも取れずに、直撃をもらい吹っ飛ばされる本音。

 

「いった――!?」

「ごめん、さっさと終わらせる!」

「にゃ~!!??」

 

顔を上げると彼我の距離にまで接近したタツミがラッシュ、最後は切り上げで浮いた本音めがけて投槍。絶対防御が発動し、本音の纏う『ラファール・リヴァイヴ』はSEが尽きた。

 

『布仏本音、リタイア』

「負けたのだ~」

「よし、エスデスさんの方はっと……」

 

 

 

(強い……)

 

最初こそ打ち合えてはいたものの、徐々にギアを上げるエスデスの回転数についていけなくなり、簪は劣勢に陥っていた。

 

「この程度で終わるお前ではないだろう?」

「当然ッ……!」

 

だが、ついに《夢現》が簪の手から弾かれる。すぐさま簪は最大出力で後退の『瞬時加速』で距離を開け、二門の連射型荷電粒子砲《春雷》による射撃を開始する。エスデスは上空に逃れ、氷塊を顕現させる。

 

「ならこれはどうだ?――ハーゲルシュプルング」

 

上空から降ってくる巨大な氷塊を『瞬時加速』の加速でもって、落下範囲から逃れる。

 

「グラオホルンル」

 

落下し、地に着いた氷塊から三本の氷柱が簪に向かう。

 

「この程度で!」

 

《春雷》で二本を迎撃、そして三本目をかわそうとしたところで上空からの氷柱の直撃を受け、かわそうとした氷柱の直撃ももらってしまう。

 

「あっ!」

「タツミ」

「はい!」

 

落下した氷塊の陰からタツミが飛び出し、氷塊をジャンプ台にして叫ぶ。

 

「炎天槍!」

 

《ノインテーター》の切っ先が氷柱のダメージに体勢を崩した簪を捉え、『打鉄弍式』のSEを削り切った。

 

 

『打鉄弐式、SEエンプティ、更識簪リタイア。――勝者 熾場辰己 エスデス・カティアペア』

 

決着を告げるアナウンスがアリーナに響く。

 

「楽しめたぞ、簪」

「よっしゃぁ!」

『決着~!激戦を制したのは熾場・カティアペアだ~!!』

 

熱戦の幕は閉じた。

 

 

 

「まさかいきなり撃って来るとは思わなかったぜ…簪」

「私たちと二人の実力差ははっきりしてるから、最初に流れを取りにいかないと勝てない」

「私でもそうするさ。だがお前は堅実すぎる」

 

今は昼休み、タツミとエスデス、簪は食堂で一夏たちを迎えに行った本音を待っていた。

待っている間、話はさっきの試合へ

 

「どういうこと?」

「私に向けたのと同じ火力をタツミの方に向けるな」

「ひでぇ!!」

「私の方は足止めですませ、タツミを先に片づける。又は大ダメージを与えて容易な攻撃を不能にする。今まで見せた私の技は範囲が広いからな」

「確かに……。タツミを巻き込ませないように規模を小さくする必要が出てくるかも…」

「それは……無理だなぁ」

 

今の試合で俺の方に来たミサイルの数はその半数にも満たなかったけど、数発は処理しきれずにもらっちまった。……うん、防ぎきれずにアウトだな。

 

「まあ、私はタツミを信じているからな。規模を狭めず、容赦なく倒しに行くが」

「ああ、やっぱりそうですか……」

「ははは……」

 

どうやらエスデスさんの辞書に「巻き込まない」なんて言葉はなかったようだ。

どれほどダメージをもらってても、味方の攻撃に気を付けなければならないのか、俺は………

 

「わりぃ、待たせたな」

「お待たせ」

「さあご飯なのだ~」

「本音、行儀悪い……」

「ふにゃあ~!」

 

一夏とシャルロットが食堂に着き、俺たちがとっておいた席に座る。

本音はいきなり食べ始めようとしたところを簪に制裁(頬をつねる)をもらっていた。

 

「遅かったな。どこに行ってたんだ?」

「セシリアと鈴のところにな」

「なるほど、ラウラか」

「より正確に言えば、AICだけどね」

 

なるほど、実際に体験したセシリアたちとラウラの対策を練ってきたってわけか。

 

「具体的な対策は出なかったけど、仮説はいくつか出たから。それで練ってみることにするよ」

「そうか、まあ私は二つほど解っていることがあるが」

「マジか!それを教えてくれたりとかは……」

「自分で探せ」

「了解!」

 

一夏がエスデスに向かってわざとらしく敬礼し、エスデスは「フッ」と鼻を鳴らす。

全員で昼食を食べ始めたところで、楯無さんや虚さんが加わり、時間は過ぎていった。

 

 

一夏とラウラ、因縁の一戦が始まる。

 

 

 

 





投稿が遅れてすみませんでした……

最近暑くなってきましたね~、寝るのにも一苦労ですよ(苦笑)

今回のはいかがでしたでしょうか?書いててつくづく思うんですが、どうやればエスデスさんに負けがつくのかな(ついてほしくないとか思ってる俺はいろいろダメだと思う)……

今は福音編の書き溜めをしていますが、戦闘シーンは全ボツになると思うので、もしかしたらまた投稿が遅れるかもしれません。

ではまた次回を待っていてください!
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