蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

20 / 28
第十七話

 

学年別トーナメント2日目。

二回戦の最終試合、一夏に関わる因縁が交錯する。

 

 

『さあ、熱戦続いた二回戦も最終試合!対決するのは~?

世界初の男性操縦者にして、『ブリュンヒルデ』織斑千冬が弟、織斑一夏!そして、フランスから来た貴公子、シャルル・デュノアのペアだぁ~!』

 

照れくさそうな一夏とシャルルを観客席から見ていた俺とエスデスさんはため息をこぼした。

 

「今日一日この調子でよく持ちますね、あの先輩……」

「まったくだ」

「二人とも……。一夏の応援に来たんじゃないの?」

「おりむ~がんばれ~」

 

席順は俺、エスデスさん、簪、本音の順だ。

そんな感じに雑談をしているうちにラウラ・箒ペアの紹介が終わり、両ペアが開始線につく。

 

「どっちが勝つか……俺としては一夏たちに勝ってもらいたいんすけど」

「7:3で小娘の方が優位だろう。まず、持っている経験値が違う」

「き、厳しいですね」

「私情を挟むものではないからな。それにゼロとは言ってないだろう?」

「AICは近接にめっぽう強い……近接主体の一夏じゃ圧倒的に不利。仮に一夏たちが2対1に持ち込んでも微妙……」

 

俺たちの試合前の勝敗予想はこんな感じだ。

そして、試合開始のランプが灯る。

 

『『叩きのめす!』』

 

奇しくも一夏とラウラの第一声は同じだった。

そして先に仕掛けたのは一夏だった。

 

『うおおぉぉぉ!』

『開幕速攻か……無駄なことを』

『ちっ、AICか!?』

 

開始直後の瞬間加速(イグニッションブースト)で奇襲するも、それはラウラのAICによって防がれ、動きを止めた一夏にレールカノンの照準を合わせるラウラ。

 

『させないよ!』

『ちっ……』

 

シャルルの射撃でレールカノンの砲弾は空を切る。ラウラはすぐさま後退するが、シャルルは高速切替(ラピッドスイッチ)でアサルトライフルとサブマシンガンを呼び出し、追撃する。

一夏も続こうとするが、箒に妨害される。

 

『私を忘れてもらっては困る!』

『すまねぇが、さっさと片付けさせてもらうぜ、箒!』

 

一合、二合、三合……と斬り合う。徐々に一夏の攻撃が箒のSEを削っていく。

焦れた箒がブレードを大きく振りかぶる。刹那、一夏はブレードの柄尻に刃を当て、箒の手から弾き飛ばす。

 

『なぁっ!?』

五風(いつかぜ)!』

『がっ……!』

 

驚愕に染まる箒に素早く五連斬。箒のSEが大きく削られる。

 

『シャルル!』

『うん!』

 

シャルルにSEの大半を失った箒を頼み、一夏はラウラをその視界に収める。

 

『よお、待たせたな』

『ふん、あやつなど最初から数に入れておらん。――いくぞ!』

『生憎負けるわけにはいかないんだ!』

 

一夏とラウラがぶつかる。ラウラはプラズマ手刀の二刀流、一夏がその回転数についているかが勝負のカギになるだろう。

 

「一夏はシャルロ――シャルルとの練習以外にも織斑先生のところに行ってたのか」

「そのようだな。それにこの前、束のやつに頼みたいことがあると言ってたな」

「どんな頼み?」

「鞘と言っていたな」

「鞘ってことは抜刀術かな」

 

タツミの指摘は事実だった。一夏はシャルルとの練習の間等を見つけて、千冬につけてもらっていた稽古を続けていた。

そしておそらく、自分に向いた形としての抜刀術なのだろう。だが、『白式』の武装《雪片弐型》は抜き身、鞘はついていなかった。故に、エスデスを通して束さんに依頼したのだろう。

めちゃくちゃ喜んだだろうなぁ、束さん……。

 

「あ、箒のSEが尽きた」

「箒はシャルルとは相性が悪い、ましてや大きく削られた後では、余計にな。――さあ、試合が動くぞ」

 

シャルロットと合流し、ラウラとの2対1に持ち込んだ一夏は切り札を切った。

 

 

一夏side

 

「これで決める!――『零落白夜』、発動!」

「触れれば一撃でSEを消し去ると聞いているが、当たらなければどうということはない」

 

唯一仕様能力(ワンオフ・アビリティー)『零落白夜』。その能力は「エネルギーの無力化」、刃に触れたエネルギーのすべてを消し去る。

それはSEも例外ではない。絶対防御が発動するような場所への攻撃が入れば、たとえ全快状態でもひとたまりもない。

 

「そうやすやすともらうかよ!」

「ちょろちょろと目障りな……」

 

ラウラのAICによる拘束攻撃と共に『シュバルツェア・レーゲン』に装備されたワイヤーブレードで、巧みにシャルロットを牽制しながら俺との距離を開けようとしている。

強大な攻撃力を持つ『零落白夜』だが、その一番の弱点は自らのSEを大量に消費する点にあり、『白式』本来の燃費の悪さと相まって、ものすごい勢いでSEが減っていく。

簡単な話、『零落白夜』の一撃を『白式』のSEが尽きるまでに、もらうかもらわないかで勝負が決まるともいえるんだ。

 

「シャルル。俺が仕掛けるから、頼むぜ」

『時間もないしね。あの可能性に賭けよっか』

 

俺たちが導き出したAICの弱点。それは「対象に意識を集中しなければ、AICの効果を継続できない」ことだ。今まで俺の動きを止めた際、シャルロットの接近をあまりにも容易に許している。そしてシャルロットに気付くとAICは解除されていた。それは以前も今日も同じだった。

ならば、答えはそれしかない。

あとは、シャルロット次第だ。

 

「また考えなしの突進か?愚か者が」

「普通に斬りかかるならな」

 

俺は「突き」構えでラウラに迫る。線と点では捕らえる難度は点の方がはるかに難しい。

 

「その程度!」

「クッ……」

 

AICの停止結界が俺の体を拘束する――狙い通りだ。

 

「腕にこだわる必要などない。要は貴様の体を――」

「止めればいい、だろ?――残念だったな。俺たちは二人なんだぜ」

「何だと――!?」

 

ズガンッ!!

 

音と共にラウラの右脇腹に大きな衝撃が走り、ラウラは吹き飛ばされ、アリーナの壁面に激突した。

 

「僕を忘れてもらっちゃあ困るなぁ」

「ぐッ…きさ、まぁ」

「残念ながら、本命はこっちだよ」

 

そう言ってリボルバーと杭が融合したような武器を吹っ飛んだラウラに見せるシャルル。

そう、シャルルの持つ最大の攻撃力を持った武装。盾の中にずっと隠していた切り札。

攻撃力だけならば第二世代型最強と謳われる69口径パイルバンカー《灰色の鱗殻(グレー・スケール)》。通称――

 

「《盾殺し(シールド・ピアース)》……」

「そういうこと。終わりにするよ、一夏」

「ああ!」

 

右からは《盾殺し》を構えたシャルロットが、反対の左から俺が。

ラウラの止められる対象は一つ。しかし、どちらも必殺の威力を持っている。

万事休す。こいつで終わりだ……ッ!

 

Side out

 

決着はついた。誰もがそう思った。

戦っている一夏も、シャルロットも、リタイアした箒も、観客席のタツミも、エスデスも、簪も、他の観客も、管制室から見ていた織斑千冬も、山田真耶も、他の教員たちでさえもそう思ったとき―――

 

 

タツミside

 

『あああああああっ――――!』

『ぐッ……!?』 『うわぁ!?』

 

ラウラの絶叫と共に『シュバルツェア・レーゲン』の機体から突如走った激しい電撃に一夏とシャルロットが吹き飛ばされる。

 

「一体何が…―――!?」

「なに…アレ……!?」」

 

『シュバルツェア・レーゲン』をかたどっていた線は溶け、ラウラを取り込み、新しい何かを形作り始めていた。

すぐに管制室の織斑先生からの通信が飛んできた。

 

『熾場、カティア。お前たち観客席にいるな?』

「ああ。指示を」

『話が早くて助かる。今、鎮圧のための教師部隊を編成してるが、時間がかかる』

「足止め。またはアレを破壊するなどして止める、だな」

『そういうことだ。任せる形になるが、頼む』

「頼まれた」

 

そう言って通信を切り、エスデスさんは指示を出す。

 

「タツミ、お前は私と一緒に足止め、またはアレの鎮圧」

「はい!」

「簪と本音は生徒たちの避難誘導を手伝ってやれ」

「わかった!」 「了解なのだ~」

 

簪たちが俺たちの周囲の生徒を退避させたのを確認し、ISを呼び出し、纏う。

 

「タツミ、私がひびを入れる。お前が壊せ――グラオホルンル」

「了解――炎天槍!」

 

シールドを突き破り、アリーナ内に入った時、『白式』がエネルギー切れで解除された一夏はシャルロットに抑えられ、箒は呆然と立ち尽くしていた。

 

「シャルロット、説明しろ。何があった」

「一夏落ち着け!」

 

タツミが一夏の抑えを変わり、シャルロットが事態の顛末をエスデスに話す。

 

「そうか。わかった」

「一夏、どうしたんだ?」

「すまねぇ、タツミ。あれは千冬姉の剣だ。千冬姉だけの剣だ。あんなまがい物に使われていいものじゃねえ」

「織斑先生?だってあれは……」

『多分、VTシステムだと、思う』

「簪?」

 

簪から通信が入り、VTシステムと呼ばれるものの説明をしてくれた。

まとめると――

 

世界大会(モンドグロッソ)各部門の優勝者(ヴァルキリー)の動きを模倣する禁じられたシステムか……」

『うん。それに一夏の言う通り、あの手にあるのが《雪片》なら、間違いなく織斑先生の模倣のはず…』

「そうか。一夏、お前はどうする?」

「決まってる。俺が決着を付ける」

 

一夏の答えを予想していたのか、エスデスは前に出る。

 

「エスデスさん?」

「シャルロットは一夏にエネルギーを分けてやれ。舞台は私が整える」

「はぁ、絶対戦いたいだけでしょ。エスデスさんは」

「タツミ、お前は護衛だ」

「はいはい、任されましたよ」

 

エスデスは単騎、立ち向かう。

 

ガギガガンッ!ガギガガギギギンッ!

 

高速かつ激しい剣戟の音が一体どれほど続くのだろうか。

そうしてエスデスさんが時間稼ぎをしている間にようやく――

 

「うん、残ってる『リヴァイヴ』のエネルギーは全部渡したよ」

「サンキュー、シャルル。じゃあ、行ってくる」

「エスデスさん!終わりましたよ!」

 

ギンッ!!

 

ひときわ大きい音が鳴り、牽制をしながらエスデスさんがこちらに戻ってくる。

そして全く息を乱している様子もなく、一夏にこう告げた。

 

「男に二言はないな?」

「もちろん。負けねぇよ」

「じゃあもし負けたら、明日から一夏は女子の制服で通ってね」

「いい考えだな、シャルロット。何ならタツミもどうだ?」

「絶対に嫌です!」

「と言うわけで、負ければ女子の制服を着てもらうぞ?もちろんタツミもだ」

「う…。い、いいぜ。なんせ負けないからな」

「負けたら一生恨むぜ、一夏」

「行ってくる」

 

一夏が織斑千冬の偽物の前に立つ。

そして大きく息を吸い、《雪片弐型》を居合の構えで持つ。そして『零落白夜』を発動する。

 

「行くぜ、偽物野郎!」

「…………」

 

ギンッ!

 

横一閃。相手の刀を弾き、素早く上段に刀を持ちかえ――

「ただの真似事だ!」

断つ。

 

「真似することがダメなんじゃない。真似で満足することがダメなんだよ」

 

織斑千冬をかたどった何かが縦に割れ、気を失ったラウラが救出された。

 

 

 

 





やっと大学の試験やらレポートやらが終わりました。

前回ぐらいにお知らせしたやつですが、バハムートで書いています。10話ぐらい書き溜めが出来てからアップする予定なのでまだ少し待っていてください。

次々話から原作三巻の中身に入っていく予定です。ではまた!




技名って考えるの難しいね…………

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。