「今日は班ごとに振り分けられたISの装備テストだ。専用機持ちは専用パーツのテストだ。
全員迅速に行え」
「「「「はい!」」」」
臨海学校は2日目。今日はISの装備のデータ取りに丸一日使う……のが普通なのだが、俺とエスデスさんの機体は特に追加の武装もないので、暇である。
―――『
「篠ノ之。お前はこっちに来い」
「はい」
織斑先生は箒を呼び出し、専用機持ち達が集まっていた一角に連れてくる。箒の様子は「ようやく来たか」とでも言いそうなものだった。
「篠ノ之、お前は今日から専y―――」
「ちーちゃ~ん!!!」
織斑先生の言葉を邪魔するように響いてきたのはあの兎の声だった。
声のした方向を全員が向くと、ものすごい土煙を上げながら崖を駆け下りてくる人影があった。
「「「「はぁ~」」」」
その影が誰であるかを察した4人(俺、エスデスさん、一夏、織斑先生)はそろってため息をこぼした。
「やあやあ!会いたかったよ、ちーち――ぶへらっ」
「うるさいぞ、束」
「ぐむむ、相変わらず容赦のないアイアンクローだねっ」
飛びかかってきた束さんに顔面アイアンクローを容赦なくかます織斑先生。しかし、そんな容赦ない攻撃からあっさり抜け出すこの兎も大概である。
「おお、いっくんもいる~!それにたっくんもエーちゃ――ぶへっ」
「で、束。何の用だ」
何があったかと言うと、俺とエスデスさんと一夏を見つけた束さんが俺と一夏が並んでいたところに飛び込んでくるが、織斑先生と同様にアイアンクローを喰らいました。
「痛い、痛いって~!束さんの顔が割れちゃうよ~」
「早く答えろ」
「おっけぃ、答える!だから離して~」
そしてようやくエスデスさんのアイアンクローから抜け出す束さん。自力でも抜け出せるのに何を遊んでるんだよ。
そしてそこに箒が近寄ってくる。
「それで、姉さん。私が頼んでいたものは?」
「ふっふふ、空をご覧あれ!」
次の瞬間、空から大きな金属の物体が砂浜に落ちてくる。そして束さんがコンソールを呼び出してちょちょっと操作すると金属の物体はその中身をさらす。
それは―――紅だった。
「じゃじゃ~ん!これぞ束さんお手製!箒ちゃんの専用機こと『紅椿』!現行ISを全てのスペックにおいて上回る最強機だよ~!」
はぁ!?さらっと今すごいこと言わなかったかこの人!?
束さんの言に俺たちが驚いていると―――
「あいたぁ!?」
「束、言ったはずだぞ。やり過ぎるなと」
「ひっどい、ちーちゃん!殴るなんて~」
「やかましい」
我らの鬼教官こと織斑先生が束さんの頭を殴っていた。そして束さんが抗議するも今度は蹴りで黙らせた。
そして、懲りない束さんは箒に顔を向ける。
「じゃあ、箒ちゃん。今ここでフィッティングとパーソナライズを済ませちゃおっか」
「お願いします」
言うなり、束さんの指が高速で動き、あっという間にフィッティングを済ましてしまった。相変わらずすげぇ……。
「じゃあ、適当にターゲット出すからそれで機体に馴れていてね~」
「わかりました」
「さあてと。じゃあ次はいっくんだね~。『白式』出して~頼まれていたものは完成してるから」
「あ、はい」
束さんは一夏の展開した『白式』の装甲にコードをぶすりと刺す。少したつと『白式』に鞘が装着される。一夏は《雪片弐型》を鞘に納め、抜刀する行動を数回繰り返す。
「どうかな?」
「問題ないです。ありがとうございます、束さん」
「束さんに不可能はないのだ~。ああ、それとたっくんたちの機体も出して~」
基本的に何を言っても無駄なので、俺とエスデスさんも自分の機体を呼び出す。
白式の時と同じようにコードをぶっ刺して少しの間データを見て満足げに笑う。
「フムフム。よし、ばっちしデータ取ったよ。もう仕舞ってオッケー!」
「データだけっすか!?」
「やれやれ」
「だって~、2人にあげる新しい武装作ってないも~ん」
俺の反応が面白かったのか、胸を張って自慢する束さん。う…目に毒だ。
「た、大変です!お、織斑先生っ!」
「どうした?――なんだと?」
慌てて駆け寄ってきた山田先生から情報端末を受け取り、目を通した織斑先生は顔を険にし、指示を出す。
「全員注目!現時刻よりIS学園教員は特殊任務行動に移る!本日の演習は中止だ!各班ISを片付け、指示があるまで自室に待機すること、以上だ!」
織斑先生が発した言葉の意味を理解した人は少なかったが、砂浜でISのテストを行っていた生徒全員はすぐに行動し始めた。
そして、織斑先生は俺たち専用機持ちの方を向く。
「専用機持ちたちは私の後をついてこい。篠ノ野もだ。詳細はあとで説明する」
「「「了解」」」
ちょうど降りてきた箒を加えた専用機持ち全員が非常時であることを理解し、織斑先生の後を追って旅館内に入っていった。
「現状はそうなっている。そして、学園上層部の決定でここに居る我々教員と専用機持ちがこの事態の対処に当たることとなった」
今から2時間ほど前、アメリカとイスラエルが共同開発した軍用IS『銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)』がテスト飛行中に暴走。監視範囲より離脱してしまった。あちらでもシステム的な介入で停止させようと試みたが、福音はそれらを遮断。加えてISネットワークも切断されているそうだ。それを知った国際IS委員会はIS学園に協力を要請した。
そして今から1時間後にこの臨海学校の近海を通過することが判明し、IS学園上層部は協力を受諾。実行部隊として俺たちに白羽の矢が立ったというわけだ。
「織斑先生。目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
真っ先に手を上げたのはセシリアだった。
「いいだろう。だがこれは両国の軍事機密だ。仮に漏えいなどした場合、君たちには最低でも2年間の監視が付く」
注意事項を告げた織斑先生はこの部屋に集まっている専用機持ち全員にデータを送信。全員がそれを食い入るように見る。
「私と同じ射撃型の機体ですわね」
「この独特な形状のウィングスラスターが厄介ね。それに私の『甲龍』よりも向こうの方がスペックは上ね……」
「それにデータに出ている射撃性能はとても高いね。本国から『リヴァイヴ』の防御用パッケージが届いてるけど、連続しての防御は無理そう……」
「加えてこのデータでは格闘性能は未知数だ。教官、偵察は可能でしょうか?」
「無理だな。データにある通り、最高速は音速を超えるとある、アプローチは1回が限度だろう」
「ならば、一撃必殺の機体で当たるしかあるまい」
エスデスの一言に全員の支援が一夏に集まる。
一夏は「そうなるよな」とは言ったものの、覚悟はできてはいたようだ。
「今回の作戦においてお前以上の適任はいないな、一夏」
「プレッシャーをかけないでくださいよ……。狙うは『零落白夜』での一撃必殺、だろ?」
「正解だ。織斑」
一夏が出した答えに織斑先生は表情こそ変えないものの、素直にほめた。
そして、今回の作戦に当たるメンバーが決定した。
今作戦のキーマンである一夏、現メンバーの中で最高速の出せる箒。そして、1年ではエスデスに次ぐ実力者で高機動型のISを駆るタツミの3人で予測空域に向かうこととなった。
そして1年最強の使い手であるエスデスは鈴、セシリアと共にもう一つの予測空域に向かい、一夏たちの方に来た場合は援軍として向かうこととなった(この人事にエスデスが不満を感じたのは言うまでもなかったが)。
指示のなかった簪、シャルロット、ラウラの3人は旅館に待機することとなった。
作戦会議が終了し、準備も整った俺たちは旅館前の砂浜にそれぞれのISを展開していた。
「それでは行ってくるぞ、タツミ」
「了解、エスデスさんも気を付けて下さい」
「誰にものを言っている?」
そう言ってエスデスは「フッ」と不敵に笑い、セシリアたちと共に担当海域に向かって飛んで行く。
「じゃあ、俺たちも行くか」
「そうだな」
「ああ!」
(箒のやつ、浮かれているな……)
箒の役割は一夏を戦場まで運び、状況に応じて一夏のサポート。俺は普段から一夏とつるんでいるのでエスデスさんより連携が取れるだろうということでこっちになった。
俺や一夏の表情は真剣そのもの、しかし箒の表情は、真剣さはあってもどこか浮かれた印象を抱かせるものだった。と、そこに織斑先生から俺と一夏だけにプライベート・チャネルの通信が入った。
『――織斑、熾場』
「「はい」」
『どうも篠ノ之は浮かれているな。あんな状態では何かを仕損じるかもしれん。いざというときはサポートしてやれ』
「やっぱりそう思いますよね」
「わかりました。意識しておきます」
『頼むぞ』
それからすぐに今度はオープン・チャネルに切り替わる。
そして―――
『では、はじめ!』
作戦が始まった。
短いし、てきとーな文章ですが、導入なので自分は気にしていない!
……ごめんなさい。そう言うのじゃだめですよねぇ……
今回はタツミ君とエスデスさんで別ルート取ってますが、反論はなしでお願いします。
だって、いろいろあったんだもん…
次回から福音編に本格的に入ります。
ではまた、次話!