蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

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第二十二話

 

タツミside

 

インクルシオ、白式、紅椿を駆るタツミたちは自分たちが担当する作戦空域に向けて進行中である。

 

「先に行かせてもらう!一夏、加速するぞ!」

 

箒はそう言って紅椿を加速させる。

一夏が多少抗議したみたいだが、箒たちの影はもうすでに小さくなってきていた。

 

(くそっ、こっちはエネルギーを温存するためにセーブしてるってのに!)

 

タツミは内心毒づく、箒の行動は浮かれ過ぎだし、無謀以外の何物でもない。完全に貧乏くじを引いた気分だ。

けれども――見捨てるわけにはいかない。

タツミも二人の後を追った。

 

 

エスデスside

 

「ちっ、福音はタツミたちの方に向かったか」

 

旅館の作戦本部から送られてきた情報に舌打ちするエスデス。

 

「アンタ、ほんとに闘うこと好きね…」

「鈴さん。言うだけ無駄ですわ――エスデスさん、予定通り移動しましょう」

「当然だ。少々嫌な予感がす―――む?織斑教諭、どうした?」

 

セシリアの提案にエスデスが頷こうとした時、織斑先生からプライベート・チャネルの通信が届いた。その内容は――

 

「チッ、あの馬鹿者が……」

「どうかなさいました?」

「篠ノ之箒がタツミを置いて、一人突っ走ったそうだ。当然その背に乗っていた一夏もな。タツミと合流するように指示を出したが、それを篠ノ之は無視したらしい」

「「バカなの(ですの)!?」」

「急ぐぞ」

 

そう短く告げて、エスデスは機体をタツミたちが向かう予定の空域に向けて発進させる。

慌ててエスデスの後を追ったセシリアと鈴がその後に続く。

 

(タツミと一夏の腕ならば持ち堪えることも可能かもしれん。だが――)

 

箒という要素がエスデスの脳内で警鐘を鳴らす。

タツミ撃墜の可能性がふと頭をよぎった。

タツミを信じていないわけじゃない。ただそれだけは起こってほしくはないと思ったのだ。

その理由を彼女は理解していない。

 

 

タツミside

 

「くそったれが……!」

 

タツミが戦場に到着した時の状況は最悪の一言に尽きた。

一夏は撃墜され、箒は具現維持限界(リミット・ダウン)(簡単に言えばエネルギー切れ)を迎えていた。そして一夏が撃墜されたことによる怒りに我を忘れた箒が無謀な突撃を敢行する。

 

「La……」

 

甲高いマシンボイスとともにウィングスラスターに搭載された砲門から放たれたカウンターの光弾は数えきれない。タツミはインクルシオを箒と福音の間に割り込ませ、箒を蹴り飛ばす。そして《ノインテーター》を回して盾にすることで、光弾の雨を何とかやり過ごす。

 

(爆発するエネルギー弾……今のが範囲優先だったからよかったものの、あれを収束されたら防ぎきれない!)

 

そして光弾の雨を防いだことで《ノインテーター》はボロボロ、使用不能となっていた。予備を積んではいるが、それも一本だけ。状況は最悪だった。

 

「箒!今すぐに一夏を連れて帰投しろ!」

「ふざけるな!お前の指示など聞かん!」

「エネルギーも切れた状況で何ができる!?早くしろ!」

 

タツミは箒に大声で怒鳴ってすぐに予備の《ノインテーター》を展開、そして最大出力の瞬間加速。福音を現在空域から引き離すために福音に肉薄した。

 

『敵機を確認。迎撃優先順位を変更する』

(よし、釣れた!)

 

ヒットアンドアウェイで福音のタゲを自分に向けさせ、空域から離脱させることには成功した。

 

 

 

(くそ、さすがは軍用ってところか……)

 

開戦からどれくらいたったのだろうか?

何とか1対1に持ち込んだはよかったもののタツミの攻撃は福音を捉えきれていなかった。紙一重で躱され続けているのだ。加えて《銀の鐘(シルバー・ベル)》によるカウンターを警戒しなければならないことがタツミを焦らす。

追い打ちをかけるようにインクルシオのSE残量も残り少なくなってきていた。箒をかばった際に受けたダメージはある程度殺したが、それも完全にとはいかなかったからだ。しかし、福音はエネルギー切れを気にする様子はない。

そして焦りはタツミの頭からエスデスたちの援軍を待つという選択肢を消していた。

 

(光弾が切れるタイミングを狙うしかない……!)

 

タツミはスラスターを吹かせ、福音に接近する。

 

「La……♪」

 

タツミの接近に対して福音は《銀の鐘(シルバー・ベル)》を36門全方位への一斉射撃で迎撃する。

タツミは装甲をある程度削ってでも弾幕をかいくぐり、福音に肉薄する。

 

「こいつでっ――ぐあっ!」

 

焦りから攻撃がやや大振りになってしまい、福音の回し蹴りがタツミの左脇腹を直撃してしまう。

 

(やべっ…!)

 

直撃の衝撃で後方へと押し出されたタツミが見たのは、目の前に迫る《銀の鐘》による収束砲撃。

 

「―――――」

 

――逃げ場などなった。

光弾の輝きに飲まれる。

 

 

千冬side

 

(馬鹿者め……!)

 

旅館の一室で指揮を執っていた千冬は拳をきつく握っていた。

箒の独走を許してしまい、結果として今作戦の要であった一夏と『白式』を失った。この時点で作戦は失敗。実戦経験のない箒を、束に乗せられたとはいえ、戦場に送ってしまった自分を激しく責めていた。だが、千冬の立場はそれを長々と続けさせてはくれない。

エスデスたち別動隊に帰還の命令を出し、福音の抑えに回っているタツミにも同様の指示を出した。そして旅館に待機していた簪、シャルロット、ラウラの3人を援護のために出撃させた。

 

『織斑教諭。一夏と箒の2人を拾った。一夏は命に別状はないだろうが、重傷だな、気を失っているし火傷も酷い。箒は暴れようとしたので、気絶させたがな。タツミの方はどうだ?』

「カティアか。熾場は今のところ、福音を押さえている。先程帰還の命令を送った。お前たちはそのまま帰還しろ。こっちに待機していた3名をすでに熾場の方へ向かわせている」

『ことわ…いや、了解した』

 

そこにエスデスから一夏たちの救出を知らせる連絡が入り、安堵の息をつく。

エスデスたちに帰還の命令を出したのは一夏の治療と次の作戦を練るためだ。

 

通信が切れて少し経った後、モニターを見つめていた真耶が震える声で千冬を呼んだ。

 

「お、織斑先生……」

「山田先生?どうした」

 

真耶は震えを隠すそぶりもなく告げた。

 

「熾場君の……『インクルシオ』の反応が、消失しました……」

 

Side out

 

 

 

 

『タツミの撃墜』

 

陽が沈み始めた頃――

旅館に帰還し、負傷した一夏を旅館前の砂浜に待機していた医療班に引き渡したエスデスたちを待っていたのはその一報だった。

箒はその知らせを聞いてすぐに拘束され、今は別室での待機を命じられている。

そしてタツミの帰還援護のために出撃していた簪たちが旅館に戻ってきたのは、エスデスたちが帰還してから4時間後のことだった。

 

「申し訳ありません。織斑先生。タツミは発見できませんでした」

「いや、お前達に責任はない。責任はむしろ私にある」

「「「「…………」」」」

 

沈黙が一室を支配する。

エスデスはもとより、エスデスと共に行動していたセシリアと鈴も、タツミの救助に向かった簪、シャルロット、ラウラも、教員もが言葉を発せずにいられなかった。

 

「ちーちゃんだけのせいじゃないよ」

 

沈黙を破ったのは箒たちが出撃してから姿を消していた束だった。

織斑先生は目を細める。

 

「束、お前は部外者だ」

「ううん。箒ちゃんを無理やり入れさせたのは私だよ。だったら私にもいっくんが重傷を負ったことやたっくんが撃墜されたことの責任はあるよ」

 

そこに普段の奇天烈っぷりは見る影もなく、声音も真剣みを帯びたものだった。そこにあったのは後悔と怒りだった。

 

「妹だからか?」

「そんなのは今更抜きだよ、ちーちゃん。束さん、これでも怒ってるんだよ?」

 

そう告げた瞬間、全員の息をのむ声が聞こえた。いや、その中でエスデスと千冬だけは表情を変えることはなく、息をのむこともしなかった。

 

「いっくんの回復は無理だけど、たっくんの行方の捜索は任せて」

「どれくらいかかる?」

「消失地点のデータをくれれば、1時間は絶対に掛けないよ」

「わかった。山田先生、束に海域のデータを」

「じゃあ、私は行くね」

 

それだけ告げて束は部屋を出ていく。

再び沈黙が訪れるが、それは長くは続か鳴った。

最初に口を開いたのはエスデスだった。

 

「織斑教諭。指示を」

「……。専用機持ちは各部屋で待機。カティア、更識。お前達は残って今後の作戦を練るのに協力しろ。そして、熾場の行方が判明次第、追って連絡する」

「「「「了解」」」」

 

エスデスに促される形で、千冬は指示を出す。

部屋に集まっていた専用機持ちたちは指示に返事をし、残るものは残り、待機を告げられたものは部屋を出ていった。

 

 

 

 

 

 





まず最初に謝っておきます。

申し訳ありません!タツミ君とエスデスさんを分けたのは楽をしたかったからです!

ほら、エスデスさんとタツミ君がいつもセットと言うのは…ってこととか、エスデスさんがいたら勝っちゃうんじゃないのか…とかですよ~。

では、また次話!
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