蒼空を駆るは誰がためか   作:無勝の最弱

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第二十五話

 

「作戦完了――と言いたいところだが、貴様達は重大な命令違反を犯した。帰ったらすぐに反省文と懲罰用の特別訓練を課してやるから、そのつもりでいろ」

「……はい」

 

戦士たちの帰還は、それはそれは冷たいものだった(三人を除いて)。

旅館に帰還すると、織斑先生は怒り心頭といった様子で腕組仁王立ち。

とりあえず旅館内には入れてもらえたものの、一夏やセシリアたち無断出撃組は大広間ですでに三十分ぐらい正座させられている。箒は教員の監視付きで別室にいる。

俺とエスデスさんと簪は先に山田先生の診断を受けて治療をしてもらっていた。当然のことだが、俺は最初に治療を受けた。今回はいろいろ無理をしたからだ。

今は三人揃って大広間にいる。三人の視線の先では山田先生が救急箱を用意したり、水分パックを持ってきたりと忙しそうに動いている。

織斑先生の目の前で正座をさせられている五人のうち、セシリアだけは顔が青ざめていた。

 

「俺……あっちにいないで済んでよかった……」

 

タツミは大広間の柱に背を預けながらそう呟いた。

 

「やれやれ、情けないなセシリアは」

「仕方ないと思うよ…慣れていないときついから、あれ」

 

タツミの隣で辛いことを言うのはエスデス。

そしてその隣に座る簪はセシリアの擁護に回る。

それから少したって、織斑先生が口を開いた。

 

「……しかしまあ、よくやった。全員、よく無事で帰ってきたな」

 

照れくさそうに告げた織斑先生はすぐに顔を背ける。一夏は姉の様子に頬をかいていた。

 

「じゃ、じゃあ、一度休憩してから診断しましょうか。ちゃんと服を脱いで全身を見せてくださいね。――あっ!だ、男女別ですからね!わかってますか、織斑君、熾場君!?」

「「わかってますってば……」」

 

山田先生の一言に従って男子二人は大広間を出る。

『脱いで』のあたりで正座組の女子ズがさりげなく自分の体を隠したことは一夏とタツミの心に小さい傷を刻むことになったのは余談。

夕食ではみんなが今回の一件について一番とっつきやすいシャルロットに聞いてきたが、上手にスルー。その話題は終わった。

 

 

 

 

その日の夜。旅館近くの岬には二人の影があった。

 

「単刀直入に聞く。束。今回の暴走事件にお前は噛んでいるのか?」

「答えはノーだよ、ちーちゃん。今回は本当に箒ちゃんに専用機を渡しに来ただけ。それに、私がどれだけ妹を溺愛してるか知ってるでしょ?わざわざ危険な目に会わせるわけないじゃん。白騎士事件の時とは違うよ」

「そうか――盗み聞きとは感心しないぞ、カティア」

 

束の言い分に納得したのか、千冬は短く答えて背後に声をかける。

木々の陰からエスデスが出てくる。

 

「フ……。さすがだな」

「世辞はよせ。隠れている気なぞ最初からなかっただろう?」

「ちがいない」

「それで?エーちゃんは何を聞きに来たのかな?」

「タツミと一夏についてだ」

 

エスデスは端的に問う。

 

「正直に言うとわからないんだよね。男の子である二人がISを動かせる理由も、今回のような生体再生もね」

「そうか」

「問い詰めたりしないんだね」

「開発者本人でもわからないことを知ろうとするのは無駄骨だからな。結論が出たら教えてくれればそれでいい。――それで、その溺愛の妹はこれからどうするつもりだ?」

「まさか、箒ちゃんがあんなに弱いと思わなかったな~。けど、弱さを作ってしまったのは私のせいなんだろうね。いっくんたちに伝えて――ごめんね、って。

箒ちゃんの処罰に私からは特に干渉しないよ。箒ちゃんの処分はちーちゃんに任せたから。けど、国際IS委員会がでしゃばるようなら、そっちは干渉するよ。もちろん、ちーちゃんに頼まれればの話だけどね」

 

そう言って束は千冬に視線を向ける。

千冬はため息をつきながら、やれやれといった様子で話し出す。

 

「現状では篠ノ之は退学となる可能性が高いだろう。少なくとも7月末までは監視付きの謹慎処分が下る。最終処分の決定はその間か8月の頭だろうな」

「随分と時間がかかるな」

「こいつの言った通り、委員会が出てくる可能性が高いからだ。学園を運営する資金は日本政府が出しているが、委員会の力は強くてな。学園の方針などに一々口出ししてくるし、生徒に対する処分も一度、委員会を通さなければならない。一夏の時は苦労したものだ」

 

この手の組織とはどの時代、どの世界においてもそういうものなのだろう。

 

「想像に難くないな」

「それにこいつを頼るのは癪に障る」

「同感だ」

「ふたりともひっどーい!」

 

エスデスと千冬が頷き合う。

束が抗議するが、そこはスルーする。

 

「長話が過ぎたな。そろそろ旅館に戻るとするか」

「じゃあ、箒ちゃんを頼んだよ。――それじゃあ、ばいばーい」

 

千冬の一言で話は終わった。

束は立ち去り、エスデスと千冬もまた岬を立ち去り、旅館に戻っていく。

それを見ていたのは満天の星空だけだった。

 






今回はかなり短いです。
正直言って挟むかどうかも悩んだ。

は~こうも大学の課題が多いといろいろとなえてくるな~。
バカモップのお仕置きは前話のあとがきに書いた通り、概要しか書かない予定です。

では、また次話で!
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