(昨日はえらい目にあった…)
俺がIS学園に入学して三日目。
今俺は同居人のエスデスとともに学園の食堂に来ていた。
ちなみに俺は焼き鮭定食、エスデスはパンとサラダを食べている。
「スーさんには劣るけど、ここの食事もうまいな」
「スーさん?」
「ああ、スサノオのことです。ああ見えて料理うまかったんだよな~」
「スサノオか、できることならもう一度
「エスデスさん。押さえてください…」
エスデスからにじみ出る闘気に冷や汗を垂らしたタツミは周囲に聞こえないように、声を潜めてエスデスに告げる。
「おはよう、熾場、カティアさん。となり空いてるか?」
その後もエスデスと談笑していると、織斑君が自分の朝食を運びながら(隣には篠ノ之箒が居た)相席を提案してきた。
「ああいいぜ、あと辰已って呼んでくれ。織斑君」
「サンキュー、俺のことも一夏でいいぜ」
「わかった」
軽いあいさつの後俺たちは食事を再開した。そしてある程度皿が片付いた頃に一夏がこう切り出した。
「そういや、二人とも来週はどうすんだ?俺の方は学園が専用機を用意するって千冬姉が言っていたけど」
まあデータ目的だろうな。男子だから。
君もそうでしょ!――by作者
「俺もエスデスさんも束さんが専用機を作ってくれて、専用機を持っているよ」
「そっか、だったら俺にISのこと教えてくれよ、頼む!」
「さすがに戦う相手に教えるのはな、決定戦後だったら構わないぜ」
「情報は簡単に戦況を変えられるからな、みだりに公開するつもりはない」
タツミとエスデスはそれぞれの言い方で拒否を表明した。この言い分には一夏も「それもそうだな」と納得した。
「うーん、どうしようかな?」
「コ、コホン。一夏、何なら私が教えようか?」
「ほんとか箒!?だったら頼む!」
今まで黙っていた箒の提案に歓喜を漏らす一夏。
そのあとすぐ鐘が鳴り、四人は教室に向かった。
「イテテ、箒もあんな強くやるなよ…」
「どうした一夏?」
「ああ、辰已か」
その日の夕食後寮内を歩いていたタツミは腕に
「それで、箒さんがやり過ぎてしまったということか」
「まあ、俺も悪いけど、これじゃ明日は無理できそうにないな」
「仕方ないけど、休んだ方がいいな」
「そうさせてもらう、また明日な」
「ああ、また明日」
そう言って二人は別れ、それぞれの部屋に向かった。
ちなみに途中で女子たちに捕まったおかげで、到着するまでに大変苦労した。
「ふ―、…あれエスデスさんまだ戻ってないんだ?」
自分の部屋に入ったタツミは「少し学園内を散歩してくる」と言っていたエスデスの姿がまだないことにそう漏らした。
「ま、すぐに戻ってくるだろ」
そう言って、借りていたエスデスの本を読みながら待つことにした。
タツミが一夏と話している頃、エスデスは整備室の前にいた。
「ふむ、そろそろ戻るとするか…」
そう言って部屋に戻ろうとするエスデスだったが――
「こんな時間まで、整備に打ち込むとは殊勝なことだが、一人か」
偶然通りかかった整備室には明かりがついており、気配も一人だけだった。
根を詰めすぎないように一声かけるため、整備室をノックするエスデスだったが反応がないので勝手に入ることにした。
「いつまでいるつもりだ?根を詰めすぎてもいいことはないぞ」
「……!?」
突然かけられた声に反応する少女。特徴はくせっけのある青い髪の毛で、どこか気弱な感じがした。
「あ、ありがとう。でも、もう少ししたら出るつもりだった」
「そうか、悪いことをしたな。ところで、このISはお前の機体か?」
そう言って目前の灰色のISを指して問いかけるエスデス。
「うん、この子は『
「そうか。――自己紹介がまだだったな、私は1-1のエスデス・カティアだ」
「私は
「私もエスデスで構わない。そうか姉がいるのか、どんな人物だ?」
簪の「お姉ちゃん」の言い方によそよそしさを感じたエスデスは姉について聞いた。
「何でもできる人、私なんかより全然すごくて、この学園の生徒会長」
「それで、不仲の理由は嫉妬か?無力感か?」
「え…?」
姉とうまくいっていないことを見破られたことに驚く簪。
「なんとなくだが、よそよそしさを感じたんでな。図星か」
「お姉ちゃんはすごすぎるよ、でも…」
「無理に聞こうとは思わないが、話せるなら話せ」
エスデスの部下の中にも姉とは道をたがえてしまった妹がいた。
だからか、簪の話に関心を持ったのだ。
そして話を聞いてみると――
「『無能のままでいい』か、舌足りずといったところか」
「言いたいことはわかる、でも…」
簪は自分でも姉の力になれることを証明するために一人で『打鉄弐式』を完成させようとしている。しかし、武装の一つ『山嵐』のマルチロックオンシステムがなかなか形にならないらしい。
「とにかく、今日はもう上がれ。相談ならいつでも聞く」
「ありがとう、エスデス」
そう言って整備室を出たエスデスは部屋に向かう途中で
(皮肉なものだな、『弱肉強食』を地で行くといわれた私がこんな相談に自分から乗ろうとするとはな)
自嘲の笑みを漏らしていた。
「じゃあ、簪さんは会長さんの言ったことを理解しているけど、見返してやるために躍起になっている。ってとこですか?」
「そうなる」
部屋に戻ったエスデスは簪との会話をタツミにしていた。
簪には悪いと思ったが、仲直りさせるために協力者は必要だからだ。
「でも、仲直りさせるにもどうするんですか?」
「まずは、生徒会長に会うべきだろう」
エスデスの提案は――まず明日、織斑先生に頼んで生徒会長に接触し、簪との仲をどうしたいかを聞く。そして、修復の意思があるなら、話し合わせるか戦うかさせて本音をぶつけ合わせる、というものだった。
「そうですね。戦わせるのは正直どうかと思いますけど、アカメとクロメも決闘の中で関係を修復できたから、戦うのも一つの手段かもしれないないですね」
タツミと同じくナイトレイドに所属していた姉のアカメとエスデスが編成したイェーガーズに所属していた妹のクロメ。敵同士であったが最期にはお互いを認め合い、アカメがクロメを斬ることで決着はついた。
戦わなければわからないということもある、ということを知っているタツミはエスデスの提案を承諾した。
「なに?生徒会長に会いたいだと?」
授業終了後すぐにタツミたちは織斑先生のもとを訪れていた。
最初は「決定戦が近いのに余裕だな」と言っていたが、すぐに「なぜだ?」と返してくる。
「はい、エスデスが一人で整備室にこもっていた簪さんを見つけて、話を聞いたみたいなんです」
「余計な世話だが、姉妹が不仲のままでいさせるのもやぶさかだ。それにあのままで簪の体が持たないだろう」
「……わかった。明日は休日だ。時間を作るように言っておく。場所と時間は追って連絡しよう」
織斑先生も了承してくれた。あとは織斑先生からの連絡を待とう。
その後二人は軽く走り込み、組み手をして部屋に戻ることにしたが、エスデスが簪にも話しておくべきだな。と言うので今、二人は簪の部屋の前にいた(場所は先程エスデスが簪に確認した)。
コンコン 「はい」
ノックをしたら返事が返ってきた。
「邪魔するぞ」「お邪魔します」
と言いながら部屋に二人が入ると――
「あ、エッスーとたっつーだ~。どうしたの?」
「その呼び方はやめろと言ってるだろう、本音。ところで簪はいるか?」
「かんちゃん?いるよ~ちょっと待ってて~」
簪を呼びに行ったのは同じクラスの
それと彼女にも姉がいてこの学園に在籍しているため、名前でいいよ~とのことだ。ちなみに姉妹仲は良好らしい。
本音に呼ばれ、部屋の奥から簪が出てきた。
「何?本音?…あ、エスデス、話って何かな。あと、そっちの男子は?」
「はじめまして、1-1の熾場 辰已です。辰已と呼んでください、簪さん」
「あれ?なんで私の名前を?」
「タツミは私のルームメイトなんだ。簪には悪いと思ったが、あのことをタツミに話させてもらった」
「そうなんだ…。よろしく、辰已。あと、わたしも簪でいい」
自己紹介も終えたので、話は本題に入る。
「話というのはだな、お前の姉のことだ」
エスデスの切り出しに簪と本音は目を丸くした。
「お姉ちゃんに会ったの?」
「いや、織斑先生に明日時間を作ってもらえるように頼んできたところだ。実はだな――」
そして今朝の提案を簪に話し終えたエスデスは簪に核心を問う。
「簪は姉との関係を戻したいか?」
「私は認めさせたい。わたしでもお姉ちゃんの役に立つってことを」
「わかった。なら本音をぶつけ合えるように舞台を整えてやらないとな、タツミ」
「そうですね、きっとお姉さんも仲直りしたがってるだろうし」
簪の了解もとれた。あとは姉だな。と、エスデスは気持ちを切り替えていた。
簪の部屋を出てすぐ織斑先生から連絡が入り、明日の14時半に生徒会室だそうだ。
「大丈夫ですかね、エスデスさん?」
「問題ない。私に任せておけ」
タツミは知らないことだが、
今回の件に関してエスデスがこんなにも積極的なのは更識姉妹にアカメとクロメの姉妹を重ねているのが4割で、残りの6割はタツミに惚れてもらうためである。
理由が前者8で後者が2ぐらいだったらよかったけど、ぶれないな~エスデスさんby作者
――翌日
二人は生徒会長に会うため、生徒会室にいた。
「はじめまして、1-1の熾場 辰已です」
「エスデス・カティアだ」
「ご丁寧にありがと、私はこのIS学園で生徒会長を務めている
軽いあいさつを交わす。
「ところで、話したいことってないかしら?」
「更識 簪…お前の妹についてだ」
「簪ちゃん!?」
楯無の表情が変わる。
それを見たエスデスは本題に入る前に、一つカマをかけることにした。
「私たちのことは知っているか?」
「…あなたたちはいったい何者なの?戸籍は――」
「やはり、国のことにかかわる者だったか」
「エ、エスデスさん!?」
エスデスが楯無の言葉を遮るように出した一言に驚愕するタツミと楯無。
「どうしてそう思ったのかしら?」
楯無は自分の正体を見破られたと思ったのか、警戒心をあらわにしてエスデスに問う。
「簡単なことだ。『無能のままでいい』、つまり『自分の陰に隠れていろ』と言っているようなものだ。そして、簪は姉に自分を認めさせる。私でも姉の役にたつ、と言った。であれば、考えられる環境は弱い者――能力の無い者は
エスデスは続ける。
「ましてや、聞き手によっては『切り捨てられた』と感じ、離れていく可能性の高い発言をしたんだ。関わらせないようにしているのは明白。大方、後ろめたいことの多い国の暗部に関係しているのだろう。どうなんだ?楯無生徒会長?」
「……」
エスデスの推論には有無を言わせぬものがあった。
タツミと楯無の顔は驚愕に染まっていた。
「まさか、そこまでばれるなんてね…。さっきのは不用意だったわ。更識家は代々日本の暗部として動いているの。そして私は更識家の17代目当主よ」
数秒後、ようやくといった感じで口を開いた楯無は両手を上げ、降参の意思を示し、正体を明かす。
その光景を見たタツミはこの世界に来て変わりつつあるエスデスを実感していた。同時に、久しく見せていなかったエスデスの――『帝国最強』の将軍としての風格も感じていた。
(ほんと、よくこの人と戦って生きられたな…)
失礼だがそう考えてしまったタツミであった。
「まあ、私たちの正体については…この問題が解決したら話そう」
楯無は自分の正体を明かしたが、自分たちのことは後回しにする気のエスデス。
「いいんですか、エスデスさん?」
正体を明かしていいのか?とエスデスに問うタツミ。
「構わないさ、私たちのことについてあまり吹聴するわけにいかないが、暗部の人間に協力を仰げればいろいろ便利だ」
「わかりました。協力者は多い方がいいですしね」
どうやらエスデスは楯無会長を巻き込む気のようだ。タツミにとっても協力者ができるのはうれしい。
そして、話は本題へ――
「さて、本題に入ろうか。楯無、お前は妹との関係を修復したいか?」
「当然よ!」
即答だった。
「簪ちゃんが無能じゃないことぐらい私だってわかってる!でも、この世界に巻き込みたくないの!」
「だが、それを決めるのは簪だ」
「……ッ!!」
楯無の希望はもっともだ。しかしそれを理解してもなお、エスデスは言う。「お前にそれを決める権利はない、決めるのは本人だ」と
「妹を守りたいのはわかる。だが、簪は姉の力になりたいと言ってるんだ。家のことを理解した上で、覚悟はできているということだろう」
「………」
「楯無、お前は妹の覚悟を踏みにじっている。それでも修復したいのなら明日の夕方、ここにいろ。」
そう言って、エスデスは部屋を出ていった。
「何かすみません。楯無さん」
「いいのよ、あなたが謝る必要はないわ。エスデスには了解って伝えといてくれる?」
「わかりました。伝えておきます」
「ありがとう。私も頑張ってみるわ」
タツミも楯無と短い会話を交わして、部屋を出た。
本編二話目です。
正直早すぎじゃないかと思いますが、そこは堪忍(笑)。
「のほとけ」って入力しても『布仏』に即変換できないのがめんどい………
さて、次回は仲直りまで行くつもりです(早すぎ!)。では!