「では、これから決定戦の順番を決める。くじを3本用意した。これには1,2,3の番号が振られている。対戦の順番は1vs2、1vs3、2vs3だ。」
決定戦当日。
俺はエスデスさんや一夏、セシリア、他クラスメートと共に第三アリーナのAピットで織斑先生に決定戦のルール説明を受け、今は対戦順を決めるところだ。
「織斑先生、なぜ3本なのですの?」
質問したのはセシリア。一夏やクラスメートも同様の反応だ。
「カティアは先日、生徒会長の方から生徒会の副会長就任の申請を受け、了承した。そのため、カティアはクラス代表を辞退したからだ。」
「「「「なるほど」」」」
織斑先生の説明に納得した表情を浮かべる一同。
「もう一つ、実は熾場にも書記の申請が来ている。本人は保留にしてるがな」
「「「「えっ!?」」」」
エスデスさんの時とは真逆に、驚愕の声を漏らす一同。セシリアに至っては「なぜ男のあなたが!」と言わんばかりの形相だ。――まあ、無視するが。
「では、三人ともくじを引け」
織斑先生は生徒の様子など気にも留めず、俺達にくじ引きを促す。
三人が引いた番号は――
1番 セシリア
2番 一夏
3番 タツミ
となった。よって、対戦は
一試合目 セシリアvs一夏
二試合目 セシリアvsタツミ
三試合目 一夏vsタツミ
に決定したのだが…
「どのような順番でも結果は変わりませんわ。所詮、男など猿も同然。女であるわたくしに勝てるはずなどありませんわ!」
「ほう、いまだに代表候補生としての振る舞いを理解していないと見える。――織斑教諭、提案があるのですが、聞いていただけますか?」
「待っ――」
「なんだ、カティア?」
セシリアのこの一言にエスデスさんが反応する。
実はエスデスの副会長就任の際、タツミは「馬鹿にされたのは俺と一夏ですから」ということで、数時間をかけ、エスデスを説得したという経緯がある。
ゆえに今回も押しとどめようと動こうとするが、先に織斑先生が反応してしまった。
「彼女は一夏とタツミの相手など余裕と言ってるので、決定戦のエキシビジョンマッチということで私と対戦させてみるのはいかがかな?」
「おもしろい。だが、オルコットはどうだ?」
エスデスさんの提案に、ニヤリとした織斑先生はセシリアに聞く。
「わたくしはかまいませんわ。男の相手などすぐに終わってしまうので、ギャラリーを退屈させないためにも余興として受けましょう」
「わかった。聞いていたな!決定戦終了後、オルコットとカティアの試合を追加で行う!一試合目の織斑とオルコットはピットに移動だ!」
こうして、セシリアとエスデスさんの試合が決まり、俺の数時間の説得は無駄になった。
一試合目 セシリアvs一夏
試合はセシリアが完全にペースを握っていた。
だが、試合が30分ほどたったとき、一夏の動きが変わる。
「剣の方はまだ粗いが、気付いたか」
「何にですか?」
エスデスは織斑先生に連れられ、管制室で試合を見ていた。
管制室のモニターに映る、『ブルー・ティアーズ』を装着したセシリアと、『白式』を装着した一夏の戦いを見て、エスデスは織斑が動きを変えたことに気付いた。だが、山田先生は何に気付いたのか聞いてきた。特に隠すことでもないのであっさり答える。
「ビットを動かしている間、セシリア自身は動けていないこと。もう一つ、一夏は知らんだろうが、今のところ
「そうだ。オルコットはまだ、機体の性能をフルに活用できていない」
エスデスの回答を織斑先生は肯定した。
話をしている間に試合は動き、一夏がセシリアのビットをすべて破壊。セシリアに迫ったが隠していたミサイルビットからミサイルが発射され、一夏は爆炎に包まれた。
誰もが一夏の敗北を確信した。しかし――
「まずは、千冬姉の名前を守るさ」
爆炎が晴れると、そこには今までのグレーカラーではなく、白い機体を身にまとう一夏の姿があった。
そして、そうつぶやいた後、セシリアに突撃する。その右手には強く雄々しい青白い光を放つブレード、《雪片弐型》が握られていた。
一次移行したことにより推進力の上がった『白式』はセシリアの懐に入り、下段から上段の逆袈裟切りを放つ。ところが――
『白式、シールドエネルギーエンプティ。勝者―セシリア・オルコット』
斬撃が当たる直前、一夏の敗北を告げるアナウンスが響いた。
「よくも、釣り上げてくれたものだな」
「すみません」
「次の試合までに機体のことを把握しておけ」
「…わかりました」
試合後、千冬はピットで一夏に説教をしていた。
そこに、タツミがやってくる。
「惜しかったじゃねえか、一夏」
「辰己か、がんばれよ」
「任せとけ。あと、俺と戦うときにも同じこと起こすなよ」
「わかってるってば…」
そう言ってタツミはピットに向かう。
二試合目 セシリアvsタツミ
「始めようか、セシリアさん」
槍をクルクルと回し、構えるタツミ。
「そうですわね。ですが、その前に謝罪させてください。あなた方を男という理由で侮辱したこと、国のことを侮辱したこと。申し訳ありませんでしたわ」
「そいつは、あとで全員の前でも言ってくれよな」
「もちろんですわ」
どうやら、一夏との戦いで何か感ずるものがあったのだろう。
「ですが、勝負は本気で参ります!」
「上等!」
二人が構える。そして――
『始め!』
「なッ…!?」
「銃口でバレバレだ!」
先制攻撃を取ったのはセシリアだったが、タツミは自分の左足めがけて撃たれたライフルのBTレーザーを簡単によける。
そのまま、セシリアに接近しようとする。
「お行きなさい、ビット!」
「さっきも見てたけど、やっぱ厄介だなこれ」
「さあ、踊りなさい。わたくし、セシリア・オルコットとブルー・ティアーズの奏でる円舞曲で!」
「あいにく踊りはわからないんだ!」
四基のビットから放たれるBTレーザーを避けながらも、セシリアへの注意を緩めない。
(やっぱり…。彼女はビットを使っている間は攻撃できない!)
そして、タツミは攻勢に出る。
「まず一つ!」
タツミの槍がビットを切り裂く。
ビットは盛大に爆発する。
「くッ…」
その後も、タツミはビットを破壊していく。ビットが残り一基となってセシリアはビットを回収、ライフルでの狙撃に切り替える。しかし、いかんせん距離は詰まらせ過ぎた。
「行くぜ!」
「まだですわ!」
ついに彼我の距離が5mにまで詰まる。
セシリアは「待っていた」とばかりにミサイルを発射する。
そこでタツミはおかしな行動に出る。
「――ッ!」
穂先の側面に左手を添えて槍を後ろに勢いよく引く。すると《ノインテーター》の表面に散った火花から炎が現れる。炎はやがて槍の穂先全体に広がる。
「おらぁ!」
ミサイルが迫ると同時、タツミは炎の槍から火球を生み出し、ミサイルにぶつけた。
ミサイルを全てのみ込み、誘爆させ無力化させながら火球はセシリアに迫る。
「なんですって!?」
目の前に迫る炎に驚愕しながらも上空に逃れるセシリア。しかし、そこには――
「おぉぉぉ!」
炎を纏う《ノインテーター》を構え、さらに上空からまっすぐに突っ込んでくるタツミがいた。
「キャァァァ!!」
直撃を受け、背中から大地に落とされるセシリア。しかし、とっさにライフルを盾にしたため、ライフルは完全に破壊された。
「降参しますわ…」
『セシリア・オルコット リザイン。勝者 熾場 辰已』
ビットもほとんど破壊され、主武装のライフルも失った。予備はあるが、
《ノインテーター》を突きつけられ、セシリアは降参した。
「タツミ!よくやったぞ!」
「うわぁ!?俺まだ、試合あるんで後にしてください!」
試合を終え、ピットに戻ったタツミに待っていたのはエスデスによる熱い、熱い抱擁だった。
タツミはもがくが、右腕にエスデスの柔らかい何かが当たっていて、その上込める力も強くなっていき、タツミはなかなかはがすことができない。
タツミがもがく→エスデスが込める力を強める→タツミがもがく→エスデスが込める力を強める→タツミがもがく→…(以下省略)
結論から言おう――
エスデスの抱擁は次の試合が始まる直前まで続き、はがそうと努力したタツミは全く休憩することができずに、一夏との試合に臨むことになった。
三試合目 一夏vsタツミ
「待ちくたびれたぜ、辰已」
「すまねぇ…一夏」
戦意満々といった様子の『白式』を纏った一夏に対し、『インクルシオ』を纏ったタツミはどこか疲れたような声で返す。
「どうしたんだよ、辰已?試合前からそんなに疲れて」
「いろいろあったんだよ…。気にしないでくれ…」
「ま、いっか。でも、手は抜かないぜ」
「そんなことされてたまるかよ」
一夏の挑発にタツミも疲れた顔を消し、戦いに向かう戦士の顔に変わる。
「………」
「………」
一夏は《雪片弐型》を、タツミは《ノインテーター》をそれぞれ構え、試合開始の合図を待つ。
そして―――
『始め!』
「……ッ!」
「……ッ!」
合図と同時に二人は飛び出す。
二人の武器がぶつかり、火花を散らす。
近接戦を続けていく二人の男子。
だが、実戦経験の差は明らか過ぎた。
「おぉッ!」
「ぐッ!」
直撃をもらったが一夏はスラスターを吹かし、距離をとる。
しかし、タツミも同様にスラスターを吹かし、一夏との距離を開けないようにする。
「くそッ!らちが明かない!」
なかなか距離が開かないことにじれた一夏は加速をやめ、反転してタツミに斬りかかる。
「甘いぜ、一夏!」
タツミはそれを苦も無く受け止め、雪片弐型による斬撃を弾く。
弾くと同時、セシリア戦同様に火球を繰り出す。
「あつ――ッ!」
雪片弐型で受けることもできず、炎に包まれる。
「―――ッ!」
炎の直撃でひるんだ一夏に《ノインテーター》の連撃が襲い掛かり、再びの近接戦へ。
終始、タツミが一夏を圧倒し――
『白式、シールドエネルギーエンプティ。勝者―熾場 辰已』
タツミの槍を受けきれなくなった一夏はSEが尽き、勝負がついたことを知らせるアナウンスがアリーナ内に響いた。
「くそー、手も足も出なかった」
「『フォーマット』と『フィッティング』した当日なら、よくできていた方だと思うぜ、一夏」
「結局、斬撃もろくに当たってないしな…。そういえばタツミ、お前のあの炎はどういう仕組みなんだ?」
自分の反省点も見つかったのだろう、タツミにあの炎のことを聞いてきた。
「簡単だ。火打石と同じだよ」
「火打石…。なるほどな」
疑問はあっさり解決した。
もとよりシステムが単純だ。火打石はこすり合わせて発生した火花で火をつける。そして、タツミの『インクルシオ』は《ノインテ―ター》の刃部分と左右の手装甲にはナノマシンが搭載されており、相手の攻撃を受けることなどにより発生した火花でナノマシンに着火させ、纏わせることが可能。
「やっぱあれはブラフか~」
「初見の相手にしかやれないけどな」
「確かに。あ、何かアドバイスあるか?」
などと談笑したのち、二人はピットを後にする。
エキシビジョンマッチ エスデスvsセシリア
「どうやら、自身の過ちには気付けたようだな」
「そうですわね。謝罪はあとで必ず致しますわ」
「ならばいい。だが、(タツミを侮辱したんだ)手は抜かんぞ?」
「本気で行かせてもらいますわ!」
エスデスは心の中でのみ言葉を追加して、エスデスの機体『ニヴルヘイム』の武装であるレイピア《グラキエス》を呼び出し、その切っ先をセシリアに向ける。
「―――ッ!」
セシリアがその殺気に顔を引きつらせるが、すぐに元に戻る。
二人はそれぞれの得物を構え、開始を待つ。
そして――
『開始!』
試合が始まる。
先に動いたのはエスデス、素早く《グラキエス》を振り、自身の機体の周りに四枚の氷の盾を展開する。
それを見たセシリアはすぐさまビットを展開、エスデスに向かわせる。
「………」
しかし、エスデスは無言で完全回避を続ける。
そして――
「こんなものか、セシリア・オルコット?――ヴァイスシュナーベル」
エスデスが《グラキエス》を持つ右手を振るう。
そして、エスデスの周囲に十数本の氷でできたナイフが展開され、一斉に射出する。
一部が発射体制に入っていたビット一機を破壊し、残り数本のナイフはセシリアに向かう。
「こんなもの!」
上空に避けるセシリア。しかし、ナイフに気を取られたタイミングを見逃さずにエスデスは
「
セシリアの顔が驚愕で染まる。
「驚いているひまなどないぞ!」
「キャァァァッ!!」
続けざまに放たれるレイピアの突きと氷のシールドバッシュがセシリアの装甲を叩く。
襲ってくる衝撃でセシリアは大きくバランスを崩す。
「そろそろ、
エスデスは上昇を始める。
「なぜ!?」
しかし、セシリアはエスデスの行動が理解できなかった。完全に押している場面、しかも完全に相手の体制を崩した状況。なのになぜ、上昇する必要があるのか?
「ふざけないでくださいませんか!!」
「なめられた」と思ったのだろう、セシリアは残ったBTライフル片手にエスデスのあとを追う。
そして、アリーナの天蓋近くでエスデスは止まり、振り向く。
セシリアはスラスターを全開にして向かってきている。急停止はできない。
「?」
セシリアはそれを錯覚だと思った。
エスデスの横手にある、直径10mほどの巨大な氷塊を。
「ハーゲルシュプルング」
エスデスは左腕をセシリアに向け振り下ろす。
それとともに巨大氷塊が落下を始める。
「―――!?!?」
急停止は間に合わない。声を上げる間もなくセシリアは氷塊の直撃を受けた。
「
『ブルー・ティアーズ SEエンプティ 勝者 エスデス・カティア』
「「「「「……」」」」」
無感情のアナウンスが響く。
しかし、今までの三試合とは違って、拍手はなかった。誰もが国家代表候補生を相手にここまでの一方的展開と最後の氷塊のスケールを見て言葉を失っていた。
そしてそれは、管制室で試合を見ていた織斑先生をはじめとした教員たち、タツミ、一夏、
(なぜかいる)箒もまたそうであった。
氷塊が跡形もなく消えた後、押しつぶされていたセシリアは気絶していた。
「やりすぎだ、カティア」
「あの程度普通だろう?」
ピットに戻ったエスデスを待っていたのは織斑先生の出席簿アタックだった。しかし、そこは『帝国最強』の将軍と呼ばれたエスデス、苦も無くかわす。
「いやいや、エスデスさん。さすがにあれは…」
織斑先生と一緒にいたタツミの顔も青ざめている。
自分がされたら……想像したくない。
「まあいい。今後は気をつけろ」
「心にとめておきます」
そういって織斑先生は出て行った。
残された二人も自分たちの部屋に向かった。
「タツミ!今日の私はどうだった?かっこよかったか!?」
「あ…はは、そ…うですね、かっこよかったです…」
部屋に向かう途中の様子と言ったらこの会話から察せられるだろう。
「疲れた…早く休もう…」
タツミは部屋に入ってすぐにベットに横たわる。
エスデスはまあ、元気で当然だろう。あの金髪をぶっ潰して、タツミにかっこよかったと言われたのだから。
「ところでタツミ、生徒会の話は――」
「おっ疲れー!!」
エスデスの話は、急に飛び込んできた明るい声に中断された。その正体は――
「なんだ、楯無か?」
「そうよっ!IS学園生徒会長、更識楯無よ!」
「お、お邪魔します」
声の正体は楯無だった。その隣で申し訳なさそうな声を出したのは簪だった。
「簪も一緒か、どうした?」
「勝利のお祝いと例の件よ!」
「タツミ、起きろ。簪たちが来たぞ」
「あ…どうも」
半分夢心地だったタツミだったが、残念。起こされてしまった。
「大丈夫?」
「まあ、なんとか…」
簪の心配が嬉しかった。
しかし、残念ながら年上の二人は待ってくれない。
「ところで、生徒会の話はどうする、タツミ?」
「私も聞かせてほしいな~」
「え、えっと…」
二人はずいずい迫ってくる。
まずい、早く答えないとまずい気がする!?
「えっと、俺は…」
「まさか断るわけはないだろう、タツミ?」
「そうよね。彼女と一緒にいたいわよね?」
「ふ、二人とも…」
迫る年上のお姉さん(?)二人、対して俺と同い年の簪は目の前の光景にオロオロしている。
というか、二人の気配が怖すぎる!
「生徒会の書記…やらせて、いただき、ます…」
断りたくても断れない空気になっていた。もとい、断ったらおもちゃにされそうだという激しい悪寒に襲われたタツミはついに陥落した(話を受けてもおもちゃにされる気はしたが)。
簪よ…今、そんな申し訳なさそうな顔をしないでくれ…今よりもっと悲しくなってくる…
「決定戦の結果、クラス代表は織斑に決まった!織斑、しっかり役割を果たせ」
「ちょっと待てよ!千冬姉!」
「織斑先生と呼べ!馬鹿者!」
朝から、出席簿の気持ちいい音が鳴る。
「結果からみれば熾場だが、昨日の試合のあとで連絡が入り、生徒会のスカウトを受けることにしたそうだ。よってクラス代表は辞退となった」
「た、辰己!」
「すまん、一夏…」
すまねぇ、一夏…
俺だって、いやだったよ。でも、でも…
「じゃ、じゃあ、セシリアは!?」
「それは、わたくしが辞退したからですわ。そして、みなさん。以前のあの発言は申し訳ありませんでした。申し訳ありませんでした」
「というわけだ、諦めろ」
「そ、そんな…」
セシリアの謝罪を皆は受け入れたようで、休み時間にはセシリアの周囲にも人の輪ができるようになっていた。
対して一夏は…灰になっていた。ご愁傷さま。
そして、ほんとにすまない。
俺は心の中で、哀れな一夏に謝っていた。
「ここに、あいつがいるのね」
IS学園にまた一人、嵐の種がやって来る。
すんません!急に遅れたのは教習所とかで忙しくて上げられませんでした!
とりあえず、クラス代表決定です。
なんというか……書いてて「この設定でいいのか?」みたいに思ったんですよね……《ノインテーター》の追加機能……。
結局そのままにしたわけですが、やっぱりちょっと……
ある人に相談したら「火打石の現実差でいいじゃん?」と言われたものの、機体の製作者が束さんですよ?いきなり炎出しても問題ない気が……
とまあ、こんな感じに悩みながら書きました。
ではまt!次回を待っててください!