「なぜだろう…この光景に馴れてしまった自分が怖い…」
時刻は午前五時前。
俺の一日は既視感を通り越し、すでに日常となりつつある(なってほしくない)光景から始まる。
「エスデスさん起きてください。朝です」
「ああ…」
「――ッ」
これもまた日常となりつつある。
エスデスは元の世界ではその強さとドSっぷりを見せてはいたが、容姿はまごうことなき美女である。そんな女性と毎日添い寝をし(正確には、知らぬうちにさせられているのだが……)、寝起き顔を見る。ドキリとしない奴は枯れていよう!
「じゃ、じゃあ俺は廊下で待っていますっ!」
基本は俺がエスデスさんを起こし、エスデスさんが着替え終えるまで俺は廊下で待機(という名の逃走)。
その後2人で、IS学園内のランニングコースを走り、アリーナで武装のみを部分展開しての稽古(当然のことだが、俺は教えられる側)をしている。
アリーナに関しては許可が必要だが、こんなに朝早くに使うのは俺達二人ぐらいなので、実質フリーで簡単に許可が下りている(放課後はさすがに簡単には下りないが)。
「待たせたな、タツミ」
「それじゃあ、行きましょうか」
「もうこんな時間か、ここらで上がるとするか」
「あ、ありが、とうござ、いました…」
時間はもうすでに午前7時を過ぎていた。
エスデスさんは名残惜しそうに、俺は息も切れ切れといった様子でこの時間を迎えるのもまた常である。
「だんだん良くなってきたぞ、タツミ!さすがは、私が惚れた男だ!」
「ど、どうも…」
隠そうとしないエスデスさんに対し、俺はいくらか薄れてきたもののやはり恥ずかしいので、抜けた返事を返すのみ。
ちなみに今回は俺の攻撃がようやくではあるが、掠る程度には当たるようになっていた。対するエスデスさんの攻撃は基本カウンターである(本気出してやり合ったら、絶対に軽くあしらわれる)。
「ナジェンダやブドーにはまだまだ及ばんが、見所はある」
とは、この稽古はじまって初日のエスデスさんの言。
俺としてはうれしいことだったが、後に明かされたこの事実には驚いた。
「あの武芸大会は私が恋をしたいという理由で始まったんだ」
元の世界で開かれた帝都での武芸大会、そしてエスデスがタツミに惚れ込んだきっかけ。それが目の前の人物のわがままで始まったということに。
そのとき襲った徒労感は計り知れない。とだけ書いておこう。
「タツミ」
「何ですか?」
「今日は確か、簪の機体の試運転があったな」
「あ、忘れてた…」
姉との仲直り以降、憑き物がとれたのか、簪の作業は驚くほどに順調だった。つい先日、鬼門であったマルチロックオンシステムがようやく形となり、今日の放課後に第三アリーナで試運転を行うという連絡が簪とその姉から届いた。
姉の文面が踊っていたように感じたのは心のうちにしまっておく。
「来たわね」
「あ、来てくれてありがとう。エスデス、タツミ」
「こんにちは、簪。楯無さんも」
「一応関わった身だからな」
「あのデータ、とても役に立ったよ」
あのデータというのはエスデスさんの機体《ニヴルヘイム》のイメージインターフェースの稼働データのことである。
「それじゃあ、『山嵐』の稼働試験始めるわよー!」
簪とエスデスさんはアリーナ内に待機し、俺と楯無さんは管制室へ向かう。
今回は織斑先生随伴の下で許可を取ってある。
「来たか、熾場と更識姉」
「お嬢さま、準備は完了してます」
「にはは~よろしくね~」
管制室で待っていたのは織斑先生と布仏姉妹だ。
布仏姉妹にはデータの記録を取ってもらっている。
エスデスさんは何かあった時のためにアリーナ内で待機している。
「よし、では更識妹、始めるぞ」
『はい!』
織斑先生の合図で、試験運転が始まった。
「ご苦労だったな、簪」
「ありがとう」
試験稼働自体の出来は上々だった。
マルチロックオンはきちんと稼働しており、機体の不具合もなく終えられた。
出力調整等の細かな点は見つかったが、概ね成功といえよう。
「簪ちゃーん!!」
「きゃ!?」
突撃してきたのはもちろん簪の姉、楯無生徒会長だ。
後ろに俺や虚さん、本音が続く。
「すごいじゃない!あれほとんど自分で組み上げたんでしょう?さすがは私の妹っ!」
楯無さんのべた褒めがうれしかったのか、簪の顔は照れくさそうに赤くなっていた。
「良かったな、簪」
「うん、ありがとう。あ、あの…」
「なんだ?」
簪の言いよどむ様子を不思議がるエスデスさんだったが、悩む時間は少なかった。
「調整終わったら、模擬戦、お願いしていい?」
「そんなことか。いつでも構わないぞ、当然タツミもだ」
「勝手に俺を含めないでください!」
「へぇ~嫌なの?」
「た、楯無さん…。い、嫌なわけではないんですけど…」
「んじゃ、決定ってことで!よかったわね簪ちゃん! あと!たまにはおねーちゃんを頼りなさい」
「う、うん。ありがとう」
いろんな意味で男は女には敵わないと、そう思う俺であった。
「はぁ、厄介なことになった…」
簪の試験運転が終わった翌日。
第四アリーナを使って、近接戦の模擬戦を俺と一夏でやっていた。エスデスさんは生徒会の方に行っている(またどっかの会長がさぼって逃げたため、虚さんから手伝いを頼まれた)。
模擬戦の結果は一夏の完敗だったが、一夏が自分なりにいろいろ模索しているのも感じ取れた。今は休憩の時間だ。
だが、今の一夏の様子がおかしい。
「どうした一夏、ため息なんてついて?」
「ああ、いや、辰已には関係のないことだけど…鈴とちょっとあってな」
「何したんだよ…」
一夏の話によると、鈴と昔した約束の内容を一夏が勘違いしていて、それに対し鈴が怒る。一夏も売り文句に買い文句で鈴の禁句を口走って、クラス対抗戦で白黒つけようって話になったらしい。
加えて――
「鈴が俺に勝ったら、自分と俺を同室にするとまで言い出してな……。箒が俺を剣道場に連れ出そうと躍起なんだよ…」
そういえば一夏のルームメイトは箒だったっけ。
でも、確か箒は一夏の幼馴染みだというのになぜ嫌がるんだ?
試しに聞いてみたら――
「箒はだめだ。剣道しかやらないし、説明が擬音だらけ。ある意味セシリアよりたちが悪い」
というのが、一夏の回答である。
いや~さすがはking of唐変木の織斑一夏氏であるな~ by作者
その後はそのまま一夏にアドバイスとかをして終わった。
はぁ~、一夏も大変だな。俺もこの後大変そうだけど…
アリーナの使用時間ぎりぎりまで、一夏の指導をしていた俺は今、自分の部屋の前にいる。そして当然のように、いつものようにドアを開ける。
「お帰り、タツミ!ご飯にする?お風呂にする?それともワ・タ・s―」
バタンッ
開けると同時、ドアを閉める。
部屋番号を確認、もう一度扉を開ける。
「おかえりなさい。わたしにする?わたしにする?それとも、ワ・t」
すぐに扉を閉めにかかる。
「だが、閉じれない!」
再び扉を閉じて現実逃避、というのは許されなかった。
扉の向こうにいたのは…
「何してんですか!?楯無さん!」
「裸エプロン」
生徒会長の楯無だった。あ、水着は着てた――じゃなくて!
「不法侵入しないでください!」
「エスデスに許可は取ってあるわよん」
「エスデスさん!?」
「
この人は何がしたいんだ…
「もちろん その驚いた顔が見たかったのだ~」
「もう嫌だ…」
楯無さんの顔は笑顔、余計たちが悪い。
「自室の前で何を騒いでるんだ、タツミ?」
「エスデスさん!?」
「は~い、お邪魔してるわよ~」
「楯無、なんだその恰好は?」
そんなところにエスデス登場。
タツミの混乱はピークに達している。
「裸エプロンっていうのよ~、実はこれね…」
「――そうか、なら私も…」
そんな俺のことなんてほっといて、こそこそ話す
そして時間が経過するほどにエスデスさんの顔は喜色が浮かび、楯無さんの顔には悪戯が成功したような笑みが浮かんでいた。
「それじゃ、また明日ね~」
「ああ」
「ま、また明日…」
楯無さんは満面の笑みで帰っていった。
その後はエスデスと二人で夕食を取り、軽くシャワーを浴びて、就寝となった。
翌日の放課後、一夏との訓練を終えて部屋に戻った俺を待っていたのは
セリフ?一択に決まってるじゃないですか。
「ま、待ってください!?エスデスさん!」
「恥ずかしがることはないぞタツミ。カップルならばスタンダードらしいぞ!」
「そんなスタンダードあるかぁっ!」
俺の叫びは寮のフロア全体に響き渡った。
どうでしたか?
まあ、そこまでいい出来ってわけではないですけど…(多分・・・いや、きっと・・・)。
次回はちょっと訓練内容を書いてみる予定です。
まあ、最後は茶番にするつもりっすけどね
ではまた次回!