天下無双の飛将   作:聖:

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更新遅くなり誠に申し訳御座いません。


編入編6

呂布は背に汗が伝うのを感じていた。

F組の面々は、窓から馬に乗って来た金髪の転校生を一目見ようと窓に群がっているが、呂布は席から離れず、先ほどからいる中年の男性に意識を向ける。目は合わせないが。

(あれ、フランク中将だよな。てことは……)

男性も呂布の存在に気付いてから目を背けず呂布を見ている。話し掛けて来ないのは、今は大事な1人娘が主役だからだろう。

「クリスティアーネ・フリードリヒ!今日よりこの学び舎にて、皆と共に机を並べる事が出来るのを嬉しく思う!!」

外にいる金髪の転校生、クリスの高らかな名乗りが聞こえ、呂布は溜息を1つ吐いた。

 

 

 

「改めて、クリスティアーネ・フリードリヒだ。クリスと呼んでくれ。」

クリスは教卓の隣に立ち、再び挨拶をする。少し離れた所に立っている梅子は少し疲れた様子でクリスを見ている。

「うむ。では誰か、質問なんかはあるか。2、3個なら許可しよう。」

梅子の言葉に幾つか手が挙がる。……あ、岳人が手を挙げてる。馬鹿な質問はするなよ。呂布の心配を他所に、梅子に指名された岳人は予想通りの質問をする。

「クリスは彼氏がいるのか?」

「娘にそんな者いる訳ないだろうが!!」

クリスが答える前に、フランク中将が怒声をあげる。突然の怒声にF組が静まり返る。クリスはそれを気にした様子もなく答える。

「いや、そんな者はいない。」

「そ、そうですか。」

岳人は手を挙げたままの格好で固まっていたが、ぎこちない動きで挙げた手を下す。と、そこで呂布はクリスと目が合った。

「おお!セキトではないか!!」

クリスが呼んだ名前に、皆が首を傾げる。クリスは教壇から真っ直ぐ此方に歩いて来て止まる。呂布の目の前で。

「久しぶりだな!セキト!」

「…あ、ああ。久しぶり、クリス。」

クリスは嬉しそうに呂布を見る。呂布はぎこちない笑みを浮かべている。

「ふむ、久しいな。セキト。」

フランクがいつの間にか近づいてきた。

「お久しぶりです、中将。それと…。」

呂布は立ち上がり、クリスとフランクを見て拱手礼をとる。

「もう此処では、偽名を使う理由がありません。性は呂、名は布、字を奉先と申します。私のことは奉先とお呼び下さい。」

「おお!ジャパニーズ侍!」

「いや、どっちかというとチャイニーズだよ。」

クリスは爛々と瞳を輝かせ、隣の大和がぼそりとツッコむ。

「ふむ。それが君の本当の名という訳か。」

「はい。訳あって今まで偽名を名乗っておりましたこと、どうか御許し下さい。」

「私は別に気にしない。最初に偽名だと言っていたからな。」

「私も許そう。事情というものがあったのだろうからな。」

呂布はクリスとフランクの許しが貰えたので頭を上げる。呂布はクリスを見て微笑む。

「クリス、少し考え方が柔軟になったようだね。」

「ああ、セキト……いや、奉先のおかげだ。」

クリスと呂布は笑い合う。フランクは額に青筋を立て、咳払いをする。

「オホンッ。奉先よ。」

「はい。」

「これからはクリスを頼むよ。同じクラスメートとしてな。」

呂布はフランクが差し出してきた手を見て一瞬止まるが、その手を握る。

「……ええ。分かりました。」

「……君がいてくれて安心だ。」

「…………。」

「…………。」

「???」

呂布とフランクの握手が長いことにクリスは首を傾げる。それを見ていた京が大和の近くまで行き、小声で話しかける。

「あれ、力いっぱい握ってるよね。」

「だろうな。手が震えている。」

呂布とフランクの表情は和かに笑みを浮かべている。だが、フランクの額には青筋が1つ浮かび、呂布は内心溜息を吐きながら握手をする。フランクは気が済んだのか呂布の手を離し、教室の出口に向かう。

「それでは、私は失礼する。」

フランクはそのまま教室から出て行った。梅子は溜息を吐きながらクラスを見る。

「はあ…。他に質問のある奴はいるか?」

「はい!」

梅子の問い掛けに一子が元気に手を挙げる。

「クリスを歓迎したいのですが!」

「歓迎?」

一子の言葉にクリスは首を傾げる。

「ふむ、フリードリヒ。武術は何かやっているか?」

「小さい頃からフェンシングをやっている。」

クリスの答えに梅子は頷く。

「よし、なら川神の歓迎を許す。」

「わーい!!」

一子は嬉しそうに両手を上げ、席を立ちクリスの前まで歩いてくる。

「クリス!私と決闘で勝負よ!!」

「!!」

クリスは一子の言葉と梅子の質問で歓迎の意味を理解した。一子は近くにあった呂布の机にワッペンを置く。呂布がクリスにその意味を説明する。

「クリス、一子が置いたワッペンの上に重ねて自分のワッペンを置くと決闘の了承とみなされる。」

「なるほど。」

クリスは呂布の説明に頷きながら、自分のワッペンを取り一子のワッペンに重ねる。

「その決闘。受けて立とう!」

「では、わしが審判を務めようかのう。」

いつの間にか教室の出入り口に立っていた鉄心が審判を引き受ける。

「では、両者!表に出るのじゃ!」

「おっす!!」

「ああ!」

一子とクリスは鉄心について行き教室を出て行った。それに続きF組の面々も外へ出て行く。大和は溜息を吐いている呂布に声を掛ける。

「呂布。俺たちも行こう。」

「ああ、そうだな。」

呂布は大和と並んで歩き、外へ出る。

 

 

 

校庭に出るとクリスと一子がそれぞれの得物を持ち、対面している。一子の手には薙刀、クリスの手にはレイピアのレプリカを握っている。

「決闘トトカルチョ!さあ!どっちに賭ける!!」

翔一は意気揚々と決闘の賭けを煽る。呂布はそんな翔一を見て溜息を吐く。

「翔一は元気だなー。」

「まあ、キャップだからな。」

大和は苦笑いしながら答える。京と卓也は心配そうに一子を見守っている。

「大丈夫かな。ワン子。」

「相手強いよ。多分ワン子より。」

京の予想を聞き、大和もワン子を見る。ワン子は意外にも少し落ち着いている様子に見える。

「今のワン子には、クリスを相手にするのは少し厳しいかな。」

大和は隣を見ると呂布は腕を組み、決闘開始を見守っている。

編入から数日、呂布は一子を皆と同じくワン子と呼ぶ様になった。それから徐々に渾名や名前で呼ぶ者が増えていき、今ではF組の殆どをそう呼ぶ様になった。そして、F組の面々は呂布の事を字で呼ぶ者がほとんどだ。ある一部の者は『りょー』やら渾名で呼ぶ者もいる。

「奉先はクリスと知り合いだったようだな。」

「ああ、旅をしている時にドイツに寄ったんだ。その時に会って少し武術を見てあげた事がある。」

呂布は口角を少し上げる。

「クリスも今落ち着いている。冷静に闘うクリスにはワン子はまだ勝てないな。」

「……そうか。」

大和は肩を落とす。

「だが…」

「ん?」

「意外と良い勝負になるかもな。」

呂布は視線を一子達から離さず言う。大和には一子とクリスの実力は見てみないと分からないが、呂布がそう言うならそうなのかなと思った。突然、背後から声が聞こえた。

「そうだな。ワン子が意外に落ち着いている。いつもなら今にも動き回りたいとうずうずしているはずなのに。」

大和は驚き後ろを見ると、腕を組み、口角を上げている百代が立っていた。

「ね、姉さん。いつの間に。」

「先程からいたがな。奉先は気がついていたろ?」

大和は呂布を見ると肩を竦めている。どうやら気がついていたようだ。と、そこで鉄心が一子とクリスの名を呼ぶ。一子とクリスが大きく返事をし、両者構え、鉄心の決闘開始の合図と共に一子がクリスに突っ込む。

「いつも通りのワン子だな。」

「いや、少し違うな。」

大和の言葉に百代が反論する。

「いつもより薙刀の振りが小さい。」

「?それって全力で薙刀を振っていないってこと?」

卓也が首を傾げる。卓也の質問に百代が答える。

「そうとも言うが、大振りをせず、小さく鋭く使っている。」

「…確かに。いつもより手数が多い気がする。」

長い得物は皆共通して『払い』があり、そしてそれぞれの特徴によって扱いが変わってくる。槍は『突き』、戟は『折る』、そして薙刀は『斬る』。一子は薙刀を活かすために大きく振りかぶり、力一杯振り斬ることをしていたが、今は小さく、且つ鋭く斬ることに重点を置いている。

クリスは一子の薙刀をレイピアで防ぎつつ、反撃の機会を伺う。そして突く。一子は薙刀を細く動かしレイピアを逸す。

「おお!ワン子すげぇ!薙刀でレイピアを防いでる。」

「それだけじゃないぞ。ワン子の足を見てみろ。」

翔一とトトカルチョの集計をしていた岳人が、終わったのか近くに来て決闘を見ていた。一子の動きに感嘆の声をあげる岳人を横目に百代は皆に言う。

「…ん?やたら足を動かしてるな。」

「だね。ワン子なら力負けしない様に踏ん張って押し返そうとするのに、今は徐々に下がりながら攻撃を防いでる。」

岳人と卓也の言葉に百代がニヤリと笑う。

「そうだ。あの動きは今までワン子はした事なかった。そして、この間あれと似た様な動きをお前達も見た事があるんじゃないか?」

「……モモ先輩と呂布の決闘。」

「正解。」

京の答えに皆が呂布を見る。呂布は頬を指で描きながら言う。

「モモ先輩との決闘の後、ワン子に長い得物の扱い方を教えてくれと頼まれてね。1週間に2、3度見てあげてるんだ。」

「そうなんだよ。」

百代が呂布の肩に腕を回しながら言う。

「こいつ私との決闘は断るのにワン子の鍛錬は見てやってるんだ。ひーきだひーき。」

「決闘は駄目だと学園長から言われてるではないですか。」

「軽い組手も許さないとか、あのジジイめ。」

百代が腕に力を入れ、呂布の首を締め上げる。じゃれついて来ているぐらいの力だが、呂布は百代の腕にタップして降参の意思表示をする。それを岳人は羨ましそうに呂布を睨む。

決闘の後、百代が呂布にじゃれつく事が徐々に増えて来ている。百代は無意識のうちに自分と張り合える相手だと思い嬉しいのだろう。

(よかった。姉さんからの弄られる回数が減った気がする。)

大和は内心、百代の弄る対象に呂布が増え、自分に来る回数が減っている事に安堵する。

「おっと、そろそろかな。」

百代の言葉に皆、視線を決闘に戻す。一子の足捌きがだんだんと散漫になっている。薙刀で防ぐ回数が増えているのがわかる。クリスも冷静にそれを読み一気にギアを上げ踏み込む。一子はとうとう捌き切れずに一撃をくらう。

「そこまで!」

鉄心の声が響く。

「勝者、フリードリヒ!」

F組の面々から大きな歓声が上がる。大和や京たちは一子へ歩み寄り、呂布もその後に続く。一子と大和達が話している中、呂布はクリスに声を掛ける。

「お疲れ、クリス。」

「おお!セ…いや奉先!どうだった?」

「うん。あれから鍛錬を積み重ねたのが分かるよ。強くなった。」

「…ふふん。そうだろう。」

「それで、ワン子…相手はどうだった?」

「ああ、意外…と言うと失礼だが、予想以上に強かった。もっと大技で攻めてくると思ったのだがな。」

「そうか。ま、ともかくお疲れ。タオル使ってくれ。」

「ああ、ありがとう。……ん…。」

呂布がタオルを渡しクリスの頭を撫でる。クリスはそれを受け入れ嬉しそうに笑う。呂布は一瞬、凄まじい殺気を感じたが気にしない事にした。

「クリス、みんなと話してきな。みんなクリスと話したがっている。」

「ああ、分かった。また後でな。」

「ああ。」

クリスは小走りでF組の面々の方へ向かう。F組の女子達から質問責めを受けている様だが、呂布は仲良くなるだろうと思い一子の方へ向かう。

「ワン子。」

「あ!りょー!」

ワン子が近寄ってくる。

「お疲れ様。タオル使って。」

「ありがとー!…どうだった?」

一子はタオルを受け取り、呂布に不安そうに聞く。

「始めの薙刀捌き、足捌きは良かったよ。」

「ほんと!りょーが教えてくれたから出来たわ!」

「でも、後半から足捌きが乱れたね。」

「うぅ。だんだん窮屈に感じてきて…」

一子がしゅんと俯く。

「そう。あれはクリスとの間合いが徐々に小さくなっていたから。クリスはいつの間にか薙刀を振るうには狭い所まで入り込んでいた。」

「………」

一子が顔を上げ、真剣な表情で呂布の話を聞く。

「ワン子に足りなかったのは間合いの見極め。それと相手の攻撃を目で少し追いすぎている所かな。」

「でも、見なきゃ分からないわ?」

「相手の攻撃をわざわざ目で追うのでは無く、視野を広くして相手全体を視界から外さないことが大事。攻撃は相手全体を見ている視界の中で見て躱すなり払うなりをする。」

「なるほど!間合いと相手から目を離さず、視野を広く!ね。」

「うん。その通り。その事を頭に入れて今後鍛錬する様に。」

「おっす!!……えへへ。」

一子の大きく頷く姿を見て呂布が微笑み一子の頭を撫でる。一子は嬉しそうに撫でられる。その様子を見ていた大和達がひそひそと小声で話す。

「なあ、ワン子飼いならされてないか?」

「…そう見えなくもないな。俺には大人が子供の頭を撫でている様にしか見えないが。」

「………さっき転校生の頭も撫でてた。」

「まったくー。おねーさんも構えよなー。」

百代がまた呂布に絡み出す。呂布は無理に抵抗せず何とか百代を防いでいる。

「………なんか私達といるのが自然になっている気がする。」

「だな。キャップが仲間に入れたいと言っていたけど、なんか自然に輪の中に入ってきた様な気がするよ。」

百代の絡みを抜け出し、岳人や卓也と和気藹々と話している呂布を見て大和は無意識に頬を緩める。

 

 

 

 

 




銀羽織様、クロバット一世様、一馬之介様、玉葱様、感想ありがとう御座います。
そして評価して下さった皆様、ありがとう御座います。

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