多忙で…などと言い訳などは致しません。これから週一程度で更新できるかなと思います。
これからも駄文にお付き合い頂けると幸いです。
「よっし!兼ねてからの議題に上がってたクリスと奉先をファミリーに入れようと思ってんだが!」
「いや、奉先はともかくクリスは1度も上がったことなかったよ?」
クリスが転入して来た週の金曜日。翔一や大和達、風間ファミリーは廃ビルの一室に集まり恒例の金曜集会を行っていた。別に何か目的があって金曜日に集まる訳ではない。
ただ、金曜日には皆で集まり駄弁ったりするだけ。だが、時々ではあるがメンバーから意見や提案が上がり、それを話し合ったりする事もある。基本的に厄介事……基、議題を出すのは翔一と決まっているが。
「そうだっけか?まあ奉先のことは前に話した時は保留となってたな。」
「そうだな。皆まだ知らなかったから、奉先と関わってから決めようとなってた。」
大和が読んでいた小説を閉じ、膝に置く。皆もその事は覚えていると頷く。
「おうよ!もう1ヶ月経つしな!そろそろ皆も決まったんじゃねーかと思う。だから改めて聞こう!」
翔一はファミリーの面々を1度見回て言う。
「奉先をファミリーに入れたいんだが!どうだ!」
「私は賛成よ!」
翔一の問いに真っ先に答えたのは一子だった。一子の答えは1ヶ月前と変わらない。しかし、今回のは答えの熱が違う。
「りょーは私の鍛錬見てくれるからいい人よ!」
一子は胸の前で拳を握り、大きな声で言う。大和や卓也は少し驚いた。一子はいつも元気だがここまで熱く言う事は多い方ではないと。長い付き合いだから分かる小さな機微である。
「私も賛成だ。あいつは強い。」
百代が一子に同調して賛成の意を言う。口角が上がっているあたり一子の純真さとは程遠く見えるのを大和は触れることはしなかった。触らぬ神に祟りなしだ。
「俺も賛成かな。悪い奴では無いし、いろんな人脈や伝手があって面白い奴だな。」
大和も賛成の意を表明する。言ったことも本心ではあるが、本心の8割はそれと姉さんの標的が分散するのがいい。スゲーいい!っと思ったからである。だがそれは言わない。
「俺様は反対だ。イケメンはNO!だ。」
「……小さい奴だなー。」
岳人も1ヶ月前と変わらない答えを言った。百代の呟きが心に突き刺さったが何とか表に出さずに済んだ。
「僕は…保留かな。」
「ほう。」
卓也の答えに百代は意外そうな顔をした。卓也は少し照れ臭そうに理由を言う。
「奉先は意外にアニメとかの話が出来るんだよね。如何やら身内に付き合って見ていたらしいけど、綺麗な絵とか内容が濃いのに驚いて今でも見てるってさ。」
「……それは意外だな。だがモロにしては話の合う奴という事か。」
「あはは、そうだね。…それに優しいとこもあるし。」
「キターー!フラグ!」
卓也のボソッと呟いた言葉にハイテンションで反応した京。目をキラキラして卓也を見ているが、深追いをしてはいけないと誰も触れない。だが、翔一は気にせず京に声をかける。
「いきなりどうしたかわからんが、京の意見はどうよ?」
「……んー、保留で。」
京の答えに皆驚愕した表情で京を見る。あの京が保留…だと、と百代が皆が思っている事を小さく呟く。
「……少しではあるけど話した事あるし、それに……」
チラッと一子を見る。
「…私も少し弓の事でお世話になった事があるし。」
「京も!?」
一子が驚きの声を上げる。それもそうだろう。京の弓の腕は天下五弓に数えられるほどの実力がある。その京が弓の事で教えを請うなど考えられない。
「彼は方天戟が1番得意な得物らしいけど、次に得意なのが弓だって言ってた。弟分にも教えたってね。」
「…………」
皆唖然となる。京から、まさか自分達の知らない呂布の情報が入ってくるとは。それに京と呂布が会話をしていた事自体、驚愕である。
「……そ、それで京、奉先の弓の腕は?」
「私と同等かそれ以上、かな。」
「京が教えてもらう事なんてあるのか?」
「…教えてもらう事はそんな無いけど、奉先の方が飛距離が長いからその事を聞いたらアドバイスを貰った。」
「そ、そうか……しかも奉先…。」
京を除く面々は近年稀に…も見ない程の驚きだった。そして皆、呂布の印象がだんだん神格化していくような錯覚を覚えた。
(彼奴、スゲーな。)
これが全員の共通認識となった。
「よーし!んじゃ決まりだな!賛成は俺も入れて4人!保留は2人!反対1人って事で、奉先をファミリーに誘いたいと思う!」
「……反対1人とか…そいつの器量の狭さを窺えるな…。」
「ギャフンッ!!」
百代の鋭い指摘に、岳人は耐え切れず倒れる。皆それには誰も同情しない。何故なら理由が酷いためである。
「よし!んじゃあお次はクリスだな!俺は賛成だ!」
翔一は岳人など気にせず次の議題に移る。
「私は賛成だ。可愛いしな!」
百代は欲望駄々漏れで賛成する。
「私も賛成よ!」
一子も賛成の意を表明する。ここ1週間、クリスと一子は事ある毎に小さな衝突があったが、あれは只のじゃれ合いであり本心からいがみ合っているわけではない。
「俺様も賛成だ。美人だしな。」
何を言われようと自分の意志を変えない岳人は大物なのか。いや馬鹿だな、と大和は結論付ける。
「俺は保留だ。まだ関わって少ししか経っていないから。」
大和はこの間、呂布の頼みでクリスに町の案内をした。その時、大和の考え方にクリスは気に入らず大和と少し口論になった。クリスは少し実直過ぎるところがあり、大和の搦手を使ったやり方が気に食わなかったようだ。
「僕は反対かな。そんなに人数を増やすことはないと思うよ。」
卓也は反対する。そして…。
「…私も反対。」
やはりと言うか、京も反対の意を表明する。大和とクリスが口論した後、大和は皆にその事を話しており、京は大和を否定したとして、クリスに対して嫌悪感が生まれた。
「んーと、賛成4、反対2、保留1と。んじゃ取り敢えず誘ってみて合わなかったら切るという事でいいか。」
「だな。」
採決を取ったので議題も終わり、各々自由に会話や読書などを再開した。大和は膝の上の文庫本を開こうとしたが、少し引っかかる事を思い出した。それは呂布を仲間に誘うかどうかの際、京の言った言葉。京が呂布との会話で、方天戟が1番得意だがその次に弓を得意としていると言った。呂布という名前からして得物を方天戟とし、親に育てられたとするならまあ、分からなくはない。百代や一子との決闘でも方天戟を使っていたぐらいだし。だが弓も得意だときた。
(これは単なる偶然か。それともそこまで似させる教育を受けたのか。)
三国志に登場する呂布も弓の名手として描かれている。数十メートルは先に突き刺した方天戟の柄に矢を当てたなどの逸話が残る。その他にも下邳の戦い、呂布最後の戦の際に弓を受けて負傷した赤兎馬を助ける為に曹操の隣にあった防具に矢を的中させ、死を一回見逃してやったとして赤兎馬の治療を約束させた。
大和はやはり何かあると思ってしまう。これは偶然では無いと。
「……ふう…。」
しかし、ここで思考を中断する。これは自分の憶測、只の感に過ぎないかも知れない。深読みし過ぎかも知れないなと思ってしまう程、大和は少なからずの信頼を呂布に寄せている。今まで呂布に接してみて自分達に後ろめたそうにしている素振りは見たことはない。
なる様にしかならないかと、大和は心の中で溜息を1つ吐き手元にある文庫本を開き読書を再開する。
「島津寮に?」
「ああ。」
翌週、呂布は教室で大和に放課後、島津寮へ来ないかと誘われる。呂布は朝のHRまであと5分の時点で翔一が来ていないので大和に尋ねたところ、肉がどうとか叫んで走り去ってしまったらしい。
翔一らしいと苦笑していると、大和からのお誘いを貰った。
「特に今日は予定も無いが…。」
「キャップが焼肉パーティーをやるとか言って奉先も誘っとけと仰せつかったんでね。」
訝しむ呂布に大和は肩を竦めながら言う。
「なるほど。だから肉と叫んでいたんだね。」
「ああ。どこからかは知らないが良い肉が手に入ったと喜んでいた。」
「ふむ。有難いお誘いだが…良いのか?」
「ん?何がだ?」
「僕はまだ1ヶ月そこらしか君達を見ていないが、身内以外がその輪に入るのは余り良しとしていないように思えてね。」
「そうか?学園でもいつもの面子以外といる事もあるぞ?」
「そうだね。大和が福本や大串、熊飼らと話しているのも見た事あるし、岳斗や卓也が話しているのも見た事はあるよ。」
呂布は一呼吸置き続ける。
「だが、大和が岳斗や卓也、翔一たち…所謂風間ファミリーと話しているときとクラスメイトと話しているときとでは、やはり違うものあると感じるよ。」
「………そうか。」
自分がそんなに違う雰囲気を出しているのだろうかと大和は気になった。
そして呂布の存在についてまた少し疑念が浮かぶが取り敢えず大和は気にせず頷いた風を装うが呂布は見抜く。
「そう心配するな。気づく奴も少ないだろうし誰も不快に思わんだろう。俺はお前達について口出しする気は更々無い。」
「………」
「まあ、京ほど態度に出すのは考えものだがな。」
「……確かにな。」
呂布は自分の席で本を読んでいる京をチラリと見て苦笑する。大和もつられて笑う。
「それじゃあ放課後、島津寮だったな。道案内を頼めるか?」
「ああ、初めからそのつもりだ。それともう1人誘うつもりだ。」
「かまわんよ。誰なのか聞いても?」
「クリスだ。」
「ほう。」
呂布は少し驚きの顔をする。クリスは転入してきてまだ1週間だ。翔一たちが誘うほどの親交があったのは驚きだ。
「キャップが誘っとけと五月蝿いんだ。」
大和が溜息を吐くと朝のHRを告げる予鈴が鳴る。それじゃ放課後、と大和に告げ自分の席に座る。呂布は翔一たちとはそこそこの親交があると思っているが、ファミリーの集まりに来ないかと誘われるほどでは無いと考えている。翔一からではなく大和から誘いがあることからしてファミリーの面々には話が通っているのだろう。
そこでふと、風間ファミリーの面々との関わりを思い出す。
一子には稽古をつけ、京とは弓の技術で話す事もある。翔一とは旅の話、大和とは政治や経済に関する意見を述べ合ったり、卓也とはアニメや漫画の話や細かい設定を教えて貰ったり、岳斗とは個人同士で話した事は無いが数人での会話ならある。モモ先輩には絡まれたりと、思っていた以上に風間ファミリーと関わっている事に気づき呂布は心の中で苦笑しながら教壇に立つ梅子の話に耳を傾ける。
そしてその日の放課後。
大和の道案内の元、呂布はクリスと大和に挟まれながら島津寮を目指す。クリスは転入してきて島津寮に住んでいるから大和の道案内は必要無いのだが行き先は同じなので共に学園を出た。
道中クリスは呂布に積極的に話し掛けていた。旅の途中で立ち寄ったドイツでの思い出話や、呂布がドイツから旅立った後の事等を楽しそうに話す。呂布もクリスの話に相槌を打ちながら旅の出来事を話す。呂布はチラリと横の大和を見る。携帯を忙しそうに弄っている。別段、呂布達といる事に退屈している訳では無い。ここ1ヶ月ほどの間にも何回かあった。メールか?と尋ねたところ人脈が広い故にこまめに連絡を取っているのだと卓也が教えてくれた。
呂布はその事が気になった訳ではなく、少しクリスと大和との間に違和感を感じる。それは大和がクリスの道案内をした次の日から感じた。恐らく案内中に何かあったのだろうと推察する。
大和が何かをしてクリスを怒らせたとは考えづらい。大和なら自論をいきなり話すのでは無く相手の好みや自論を聞き出してから相手の性格を考えつつ会話をしていくと呂布は思っている。
(すると何かしたのはクリスの方か。)
予想だがクリスの実直過ぎる正義感に大和の何かがクリスの琴線に触れ、クリスが何かを言ったのだろう。
初めて会った時より柔軟になったと思っていたが、根はなかなか変えられないかと呂布は溜息を吐く。
「あそこに見えるのが島津寮だ。」
大和が携帯を制服のポケットにしまい、建物を指差す。
「へえ。なかなか大きく日本の家屋の味が出ている。」
「確かに今は日本家屋は少ないな。でも一階はキッチンやリビングだから日本家屋とは言いづらいな。個々の部屋は畳の和室だが。」
大和の話を聞きながら島津寮の敷地に入る。寮の扉を開けると翔一が腕を組みながら仁王立ちしていた。
「おせーぞ、お前ら!もう待てないと野獣共が始めようとしている!」
「キャップ、一応時間通りだけど…」
「時間なんかに縛られるな!早く上がれ!」
翔一は背を向け奥へ歩く。大和は苦笑しながら後に続こうとしたところで恰幅の良い女性が姿を現す。
「大和ちゃん、クリスちゃんお帰り。」
「ただいま麗子さん。」
「ただいま!」
「…とそちらの彼は?」
大和とクリスの挨拶に頷きながら麗子は呂布を見る。呂布は拱手礼を取る。
「初めまして。私は性を呂、名は布、字を奉先と申します。この度は翔一のお誘いを受け、この島津寮に上がらせて頂きます。」
「御丁寧にどうも。私は島津麗子。岳斗の母です。貴方が噂の呂布ちゃんだったのね。」
「噂、ですか?」
「ふふ、岳斗や大和ちゃん、偶に遊びに来る一子ちゃんや百代ちゃんから貴方の名前を聞いた事があってね。それにしても予想以上にイケメンね!」
「私の容姿については分かりませんが、どうぞこれからよろしくお願い致します。」
「分かったわ。でもそんな堅苦しい話し方じゃなくて良いわよ。」
「私は初めて会う者に対してはこのような挨拶を心掛けておりますので。以後、敬意を失わぬ程度にて話させて頂きます。」
相変わらずの呂布の挨拶に大和は苦笑する。麗子も納得した様子で奥へと案内する。奥の部屋、リビングの窓の外にはバーベキューセットで肉を焼く翔一やその近くで肉を見ている一子ら風間ファミリーの面々と呂布の知らない、年の近いと思われる女の子がいた。
大和を少し頭の切れるキャラに変え過ぎた気が……。
呂布の弓の腕についての逸話は、誰が書いた三国志か皆さんの中で気付いた方がいると嬉しいですね。