天下無双の飛将   作:聖:

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帰還3

九鬼本社を出て、車に乗る。

川神学園へ向かう車の中で、呂布は流れる風景を見ながら、ふと疑問が浮かんだ。

「そういえばヒュームさん。武神ってどんな方ですか?」

「お前もやはり気になるか?」

ヒュームは後部座席、呂布の隣で目を閉じ、腕を組んだまま聞き返す。

「ええ、旅の途中でも何度か武神の話を聞いたことがありますから。」

「ふん。武神は、拳の重み、戦闘のセンス、闘いでの感は良いものを持っていて壁超えはしている。だが、未熟。センスや力に溺れ鍛錬を怠り、対等に闘える者がいないからと戦闘狂のように常に闘いに飢えている。」

「……それは…。」

呂布は苦笑いし思った。

それは…それはまるで呂布のようだと。乱世の時代だから鍛錬を怠れば死に直結する為、鍛錬で日々鍛えていた。強く、強くと高みへ進む。強過ぎた。高みへ進むと同時に孤独になって行った。化物と恐れられた。寄ってくるのは己の武を利用しようとする者が殆んどだった。信じるのは己の武のみ。

現世に置いて鍛錬の怠りは死とはなり難い。だが、やはり呂布と似て孤独なのだろう。

「お前は武神と闘いたいか?」

ヒュームが目を開け、呂布を見て問う。ヒュームの言う通り闘いに飢え、力に溺れているなら、孤独を感じているのなら、僕は…

「僕は、闘いたいです。」

ヒュームを見る。笑みが深くなる。…ヒュームさんの笑みって迫力あるな。

「闘うことになったら武神を倒せ。今のお前なら勝てる。」

ヒュームは確信している。呂布なら勝てると。

「お前は俺が鍛え、俺が認めた奴だ。今の武神なんかに負ける訳がない。」

呂布の目を見る。呂布の瞳には闘いへの感情の昂り、ヒュームの信頼に答える覚悟が映し出されている。

「楽しみにして置け。此方からも闘いの舞台は用意してやる。」

運転席の李と助手席のステイシーがヒュームの笑みに怯えながらも呂布の意志に笑みが零れる。

ヒュームは目を閉じる。笑みはそのままで。

 

「まあ、普通の高校だな。」

川神学園の校門の前に着き、車を降り目の前の校舎を見て呂布は呟く。武を重んじる川神市、その川神の名が付く学校だから特別な施設や特殊な環境を備えた学園なのだろうと、勝手に想像を膨らませていたが、見た目は普通だった。

「どんなんだと思ってたんだよ。」

ステイシーが呆れた表情で言う。

「どんなと言われると説明出来ませんが、普通の高校とは何か違うのだろうと勝手ながら思ってました。」

呂布はうーんと考えながら答える。

「奉先、行くぞ。」

ヒュームはステイシーとのやり取りを無視し、校舎に向かい歩いてく。呂布は慌てて追いかける。

校舎に入り、持って来たスリッパを履き階段を上がる。呂布は学校に行ったことが無い為、校舎内、沢山の教室や長い廊下を物珍しく見回す。そして学園長室の前まで来る。

「鉄心、入るぞ。」

ヒュームはノックせず、扉を開けながら言う。呂布もヒュームに続き中へ入る。

「相変わらずだのう、ヒュームよ。」

室内にいた老人、川神鉄心は呆れた声で迎え入れる。

「ふん。事前にこの時間だと言ってあっただろう。」

ヒュームは詫びれず言う。呂布は目の前の老人を見つめる。

(この方が川神鉄心。ヒュームさんと同じ、闘気を抑えているが何という大きな人だ)

隠された闘気の大きさを感じ息を飲む。だが、気持ちが疼く。

(勝てるとは思えない。でも…)

闘ってみたい。と思ってしまう自分に笑みが零れる。

「今日は世間話をする為に来たのではない。こいつの編入についてだ。」

鉄心とヒュームが会話を2、3交わした所で本題に入る。

「そうだったのう。」

鉄心が呂布を見る。呂布は一歩前に出て、拱手礼をとる。

「お初にお目に掛かります。性は呂、名は布、字は奉先と申します。

呂布とお呼び下さい。」

「これは丁寧な挨拶じゃのう。うむ、わしは川神学園の学園長、川神鉄心じゃ。呂布よ、この学校に編入する為の試験を受けて貰うが良いかの?」

呂布は顔を上げ、戸惑いの表情を浮かべる。

「今から、ですか?」

「なんじゃ、聞いてなかったのか?」

呂布は隣にいるヒュームを見ると、

「お前なら出来るだろう?」

笑っている。心なしか悪戯が成功したような笑みだ。呂布は目を閉じ、息を吸う。そして大きく息を吐き、目を開ける。

「…出来ます。己の道を進むためですから。」

「ほほ、良い眼をしておるのう。なら移動して貰おう。ルーよ!」

鉄心の呼び掛けに扉が開く。

「総代、もう準備は大丈夫です。」

「うむ。では呂布よ。頑張るのじゃ。」

「はい。ありがとうございます。」

もう一度、拱手礼を鉄心にとり、ルーにも礼をする。

「性は呂、名は布、字は奉先と申します。よろしくお願い致します、ルー先生。」

「この学校で教師をしている、ルー・イー。よろしく。では行こうか。」

ルーが出て行き、それに続いて学園長室から出て行こうとした時、

「奉先」

ヒュームに止められる。

「はい、どうしましたか?」

「俺はここで戻る。試験が終われば校門の前に車があるからそれに乗って九鬼本社に帰ってこい。」

「分かりました。ご同行頂いありがとうございます。」

「ふん。俺も鉄心に用があっただけだ。礼をされることはしていない。」

呂布は苦笑いする。もしかして照れているのかな。指摘したら殺されそうだからその思いは胸の中にしまった。

「では、行ってきます。」

と、学園長室から出て行った。

「礼儀正しいのう。本当に16歳か疑問じゃ。」

鉄心は百代と比べて呂布の礼儀正しさに感嘆する。百代は何であんなんなのじゃ。

「さてと、お主の用とはなんじゃ?」

「お前の孫、武神についてだ。」

「百代についてじゃと?」

「そうだ。」

鉄心とヒュームは目を合わす。視線が交錯する。鉄心はヒュームが百代について口出しすることは無いと思っていた。

「近い内に、武神を倒す者が現れる。」

「モモをか!?」

鉄心は驚く。腐っても武神。並大抵の格闘家を一瞬で屠る百代を倒せる者など数える程しかいない。

「してそれは誰じゃ?まさかお主か?」

「そんなわけあるか。俺は赤子を相手にする気など無い。」

そうだろうと鉄心も考えていた。ヒュームが闘う気ならもっと早く闘っていた。

「それでは誰が?」

「彼奴だ。」

「まさか、呂布か?」

ヒュームが頷く。鉄心は先程までいた呂布を思い出す。それ程の武を呂布は持っているのか。名前からして何かしらあるとは思っていたが。

「彼奴は俺が鍛え、俺が認めた。」

「ほう、お主が認めたとはのう。」

ヒュームが認めるほどとは。

「彼奴は壁を超え、更に高みへ進んでいる。今の武神では勝てないと断言出来る。」

鉄心が目を閉じ、考える。百代は敗北を知るべきだろう。力やセンスに奢り、鍛錬を怠けている。身内ではいくら言っても駄目だと前々から分かっていた。

「武神も負けを知れば更なる高みへ行けるはずだ。」

ヒュームも同じことを考えていたのだと鉄心は思った。目を開け、もう一度ヒュームを見る。

「何時試合をする?」

「次代の四天王を決める目安となる大会を開く。九鬼も関わる大きな大会だ。そこで、武神は負けを始めて知るだろう。」

ヒュームは言い終わると鉄心に背を向ける。扉まで歩いて行き、

「大会は約2ヶ月後だ。それまでにもう1人、武神を倒し得る者を川神に呼ぶ。その赤子もこの学園に入るだろう。」

そう言い残し、出て行った。1人になった鉄心は立ち上がり、窓の外を見つめる。

「ヒュームが呂布を赤子ではなく字で呼んでいた。百代同様、わしも危ういかのう。」

新しく現れた若者に期待を膨らませ、微笑む。

 

 

 

「すいません。お待たせしてしまって。」

「いいよ、別に。それも仕事の内だからよ。」

編入試験を終え、茜色の空が広がる下、呂布は校門前に止めてある車の前でステイシーたちに謝罪を述べる。ステイシーと李は気にした様子も無く、車に乗るよう促す。呂布は安堵し、車に乗る。

「んで、編入試験はどうだった?」

ステイシーが聞いてくる。行きは助手席に座っていたステイシーは帰りは後ろで呂布と隣合わせに座ってる。

「僕は高校卒業程度の学力はありますので大丈夫ですね。」

呂布はふーっと息を吐き、両腕を上に伸ばし筋肉をほぐす。テストは出来ても数時間座ったままというのは、流石に疲れる。

背もたれに深く身を沈めリラックスしていると、ステイシーが此方を見ているのに気付く。

「す、すいません。みっともない所をお見せしました。」

呂布は慌てて身を起こし座り直す。

「いや、その為に車で帰ってるんだからいんだよ。」

ステイシーは呂布の慌てる姿に頬を緩める。運転席の李もバックミラー越しに微笑んでいるのがわかる。呂布は俯き、

「今日出会ったばかりですが、ステイシーさんと李さんなら気を緩め、身を委ねることが出来ます。」

そう呟く。10秒ほど待ったが反応が何も無いことを不思議に思い、呂布は2人を見る。ステイシーと李は前を向いている。

「えっと、……?」

呂布は首を傾げる。ステイシーと李の頬が赤くなっている。

「たく、恥ずかしげもなくこいつは…」

ステイシーが消えそうな声で呟く。呂布には聞き取る事が出来なかった。それから、ステイシーと李は黙ったままで、呂布には理由が分からなかったが頬が赤いのは夕陽のせいだなと結論付け、茜色に染まる街並みを眺める。

 

 




うーん。上手く書けなかった気がする。
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