天下無双の飛将   作:聖:

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帰還5

呂布は目を覚ました。枕元の近くにある目覚まし時計を探し確認する。設定してある時間より1時間早く起きた事を確認し溜息を吐く。

気持ちの昂りで早く起きてしまうとは。

小学生のような感覚に苦笑し、二度寝をしない様、ベッドから出て、カーテンを開ける。眩しい。今は3月の中旬、冬の名残の寒さはまだ残る。だが、日の出の時間が早まって来て、春の訪れを感じる。太陽の光を浴びて、風呂に入る。シャワーを浴びて全身を温め身体を起こす。風呂を出て髪を乾かし、身支度を整える。バッグの中身を確認すると昨日買った飴が入っている。食べたい衝動に襲われるがこれは土産だと自分に言い聞かせ、箱が崩れない様に丁寧にしまう。

朝食をどうしようか考えた。おそらく此処で朝食が出るのだろうが、もし出なくても向こうに着くまで我慢していればいい。とりあえず聞いてみようと人を探しに部屋を出ると、ヒュームが立っていた。

「あ、ヒュームさん。おはようございます。」

「ああ。奉先、これから少し付き合え。」

いつもの事だがヒュームは本題まで遠回りする事はなく、直球だなと呂布は思った。

「ええ、早く起きたので時間はありますが、何処へ?」

「久々に組手をしようと思ってな。」

ヒュームの目が鋭くなる。…組手で終わるかな。だが断る理由は無い。

「分かりました。着替えるので少しお待ちを。」

「ああ。」

呂布は部屋に戻り、動きやすい服に着替える。そして部屋を出て、

「ふん。行くぞ。」

ヒュームが歩き出し、呂布が付いていく。

 

 

 

(懐かしいな)

呂布はヒュームの拳をいなしながら思った。

ヒュームに連れられ、九鬼の中にある武道場へと入った。武道場には組手や模擬試合が同時に3組出来る程の広さ、組手をしている者が数人いた。ヒュームと呂布は場の1つが空いていたのでそこを使う事にし、組手を始めた。

ヒュームから繰り出される拳を出来るだけ避ける。避けれないものは一瞬触れて軌道を逸らす。ヒュームが少し踏み込み、拳を放つ。弾いて軌道を逸らし、懐に入る為、一歩前へ出る。同時に勢いの乗せた右の拳をヒュームの腹へ。だが左手で防がれ、ヒュームの右拳が呂布の頬を狙い繰り出される。

呂布は左腕を頬の横へ、拳を防ぐ。気を使い、防御を高めたが、腕が痺れる。だが、まだヒュームの攻撃は続く。左手で防いだ呂布の右手を中心として左脚を呂布の右脇腹を狙う。呂布も咄嗟に反応し、右膝を上げ防ぐ。踏み込んだ状態での防御だった為、堪えることは出来ず、ヒュームの蹴りの勢いで後ろに退がる。

だが呂布はこれでいいと考えた。あのままあの場に止まると防戦一方になる。なら一旦距離を置く。ヒュームは素早く距離を詰めるが呂布は体制を整え、ヒュームを迎撃しようと構える。

そんな攻防が数秒毎に入れ替わる。武道場にいた他の者は、始めは輪になって見ていたが、徐々に下がって行き、今では巻き込まれない様に壁際まで退避していた。高速での戦闘。目でを追えないもの、追えても自分との力量の差に呆然と見ている。

「…なんてロックな奴だ。ヒュームのおっさんと互角にヤリ合ってやがる。」

そんな1人のステイシーが、呂布とヒュームの組手を凝視しながら呟く。

「ええ。でも、ヒュームさんの方が攻撃回数は多いですね。」

李は冷静に分析する。

そして、呂布とヒュームの互いの蹴りがぶつかる。ぶつかった状態で数秒固まり、互いに脚を下す。そして呂布は頭を下げる。

「ありがとう御座いました。」

「ふん。旅に出る前より強くなったな。」

ヒュームが口角を上げ、目を鋭くする。

「ありがとう御座います。旅は無駄では無かったと確信出来ました。」

呂布は再び頭を下げる。よかった。旅はいろんな物を教えてくれたが、武を高めるため、鍛錬も日々欠かさず行った。無駄になってはいなかった。

「ヒューム、今日はこの辺で終わりにしましょう。」

いつの間にか、クラウディオが武道場に入って来ていた。

「そうだな。これ以上は組手ではなくなるか。」

「ええ。呂布様、汗を流して来て下さい。朝食を用意してあります。」

そういえば、朝食を求めて部屋を出たんだった。思い出した様に腹の虫が鳴く。

「それでは、支度して来ます。」

呂布はクラウディオとヒュームに頭を下げ、武道場を出て行く。その後姿を見つめながら、

「どうでしたか?」

「次は死闘をしたいな。鉄心と闘う時の様な昂りを心の底から湧き上がって来た。」

「それは…。まだあの年で。将来が楽しみでもあり、末恐ろしいですね。」

「ふん。彼奴が牙をむくことはあるまい。彼奴の逆鱗に触れなければだがな。」

クラウディオとヒュームは、呂布の出て行った扉を見ていた。

 

 

 

汗を流し、朝食を摂った。一旦部屋へ戻りバッグを肩に提げ、部屋を出る。部屋の前にいたクラウディオの案内で屋上にあるヘリポートへ向かう。ステイシーと李に挨拶をしたかったが2人とも仕事中との事で断念した。ヘリポートへ着くとヘリはもう離陸準備が出来ているらしく直ぐに乗り込んだ。離陸。機体が揺れないのはパイロットの腕が良いからだろう。ヘリの窓から外を見ると、もう九鬼本社が遠くに見える。そして、周りには海しか見えなくなった。20分程経ち外を見ると小さな陸地が見える。島だ。心が躍る。故郷に帰って来たと思えた。島を一周する様に飛び、島の中にあるヘリポートの真上に着き、ゆっくり着地する。

パイロットに礼を言い、クラウディオと呂布はヘリから降りる。ヘリポートから舗装された道を歩く。島にある山の中腹へと続く林道。開けた場所に出る。

そこには二階建てのペンションと隣に一回り小さな体育館の様な施設が隣接している。鼓動が早まる。呂布はペンションのドアを開ける。玄関を入って直ぐに広いリビングが見える。リビングの中央には、白のカーペットに黒い3人掛けのソファーが2つ、ガラスのテーブルに沿う様L字に設置されており、少し離れた所にテレビがある。そしてリビングの両脇には二階へと続く階段がある。だが、呂布は、それ以外のものに目を奪われていた。いや、者たちに。3人の女性と1人の青年。

「りょー君。おかえり。」

お淑やかな長い黒髪の女性が言う。

「りょー。やっと帰って来たね。」

ウェーブかかった長い髪をした女性が言う。

「りょー兄。おかえりなさい!」

黒髪を後ろに束ねた女性が言う。

「兄貴、おかえり。」

つり目の青年が言う。

呂布は無言で靴を脱ぎ、お淑やかな女性の前まで行き、抱き締めた。

「うわ!!りょー君!?」

「…清楚、ただいま。」

呂布は耳元で囁く。清楚は頬を赤くしながら抱き締め返した。呂布は抱擁を解くと隣の女性を抱き締める。

「弁慶、ただいま。」

「おかえり。…んー、りょーの匂いだ。」

弁慶も呂布を強く抱き締める。抱擁を解き、隣の期待に満ちた顔をする女性に近づき抱き締める。

「義経、ただいま。」

「りょー兄!」

義経は呂布に抱きつく。目の端には涙が浮かぶ。呂布は優しく指で涙を拭う。そして、

「与一、ただいま。」

「え!?俺も!?」

呂布は与一を抱き締めた。与一は抱擁は無いと思っていたのか驚きの声を上げる。呂布は抱擁を解き、

「与一、男らしくなったな。」

弟分の成長を嬉しく思った。一通り挨拶を終えると、

「では、私はこれで。」

見守っていたクラウディオが言う。

「クラウディオさん。ありがとう御座いました。」

呂布は拱手礼をとる。

「いえ、当然のことで御座います。では、また。」

クラウディオはヘリポートへ向け、歩いて行った。

呂布は改めて4人を見る。

(ああ、帰って来たな)

自然と頬が緩む。

「ひとまず、りょー君、荷物を部屋に置いて来よう。」

「ああ、そうだな。」

清楚の言葉に呂布は頷く。

「部屋の場所は変わって無いのか?」

「うん。3年前のまま、何も変えて無いよ。」

義経は嬉しそうに呂布の手を取り、部屋へ向かう。

このペンションは左右に広がっている。義経に連れられリビング、玄関から入って右側の階段を登り、建物の右へと続く廊下、手前から2つ目が呂布の部屋だ。

部屋に入る。懐かしい。机やベッドもそのまま、3年前と変わらない。

埃を被っていないのは、誰かが掃除をし続けてくれたからだろう。

部屋にバッグを置き、リビングへ戻る。ソファーに座る清楚が手招きしているので、清楚の隣に座る。反対側にはいつの間にか弁慶が座っていて、義経はオロオロとしている。それを弁慶が見てニヤニヤしている。主従関係も変わって無いなと苦笑し、呂布は義経に膝を叩く。義経は嬉しそうに呂布の膝に座る。3年前と変わらないポジションだ。与一はその姿を呆れながら隣のソファーから見ていた。

「本当におかえりなさい。」

「ああ、皆、ただいま。」

清楚の心からの言葉に呂布は4人の顔を見回し、再び言う。

「りょー兄!旅はどうだった?」

義経は呂布の膝の上から顔をこちらに向け、聞いてくる。

「そうだなー。充実していたかな。」

呂布は義経をぬいぐるみの様に抱き締めながら答える。そこから旅の話を語る。昼飯を挟み、夕飯まで語り続けた。

 

 

 

夕飯を食べ、皆がそれぞれ寛いでいる中、呂布は二階にある小さなベランダから島を眺めていた。この島に光は、このペンションとヘリポートくらいしかなく、夜空には星が輝いていた。風で木々は揺れている。海岸では波が絶えず打ち寄せている。このベランダからはそれらが一望出来る。

「りょー君。」

後ろから声がする。振り向くと清楚がカップを2つ持ち立っていた。カップからは湯気が立ちのぼっている。

「ありがとう。」

呂布はカップを受け取り、また島を眺める。カップの中は珈琲だった。喉を潤す。自分好みの味だ。流石清楚。

「りょー君。」

「ん?何?」

「私、これでも怒ってるんだよ。」

横に来た清楚が頬を膨らませながら呂布を見る。呂布も怒っている理由は何となく分かっている。

「急に旅に出るって言って来て、次の日にはもう行っちゃうんだもん。」

「それは…ごめん。」

やっぱり。呂布は苦笑しながら謝る。

「それに…」

清楚は呂布に寄り添い、肩に頭を乗せる。

「寂しかった。」

「…ごめん。」

「置いて行かれたと思った。」

「…ごめん。」

呂布は謝ることしか出来ない。

「でも…ちゃんと帰って来てくれた。嬉しかった。」

「……」

「りょー君はズルいね。帰って来たら最初に怒ろうと思ってたのに、いざ帰って来ると、嬉しい気持ちが溢れて、怒ろうと思ってたの忘れちゃった。」

「…清楚。ありがとう。」

「……」

「旅は、僕の我儘だった。どうしても世界を見ておきたかった。でも、旅の間、幾度と無く清楚の顔が浮かんだ。弁慶や義経、与一の顔も。」

「うん。」

「そして、帰って来て、清楚達の顔を見たら…僕も嬉しかった。嫌われたかなと思ったこともあったから。笑顔で僕を迎えてくれた。それだけで心が満たされた。」

呂布はカップを置き、清楚を抱き締めた。

「清楚、好きだよ。この気持ちは何年経とうが変わらない。」

「うん。私も好きだよ。」

清楚も呂布を抱き締める。そして、唇を合わす。

暫くして、清楚は呂布の抱擁を解き、

「もっとしていたいけど、そろそろ我慢の限界かな。」

清楚は苦笑いする。

「そっか。俺も会いたいと思ってたしね。」

呂布も苦笑する。

「それじゃ変わるね。」

清楚が目を閉じる。そして目を開ける。

「…久しぶりだね、項羽。」

呂布の言葉に笑みを浮かべ、

「うむ。久しいな。奉先。」

項羽はしっかりと呂布を見つめ返した。

 

 




たっぷん様、nariyoshi様、感想ありがとう御座います。

戦闘描写は難しい。伝わっていると良いのですが。
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