天下無双の飛将   作:聖:

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帰還6

「うん。ちゃんと闘気は抑えられてるね。」

「俺を誰だと思っている。」

項羽が口角を上げる。朱色の瞳が光る。綺麗だ。その瞳に飲み込まれるような錯覚に陥る。

「はは、そうだね。項羽は覇王だからね。」

「その通りだ。」

項羽は頷く。呂布は項羽に一歩近づき、抱き締める。

「ただいま。」

項羽も呂布の背に手を回す。

「遅いぞ、馬鹿者が。」

項羽は呂布の胸に顔を埋める。呂布は項羽の頭を撫でる。長い髪を指で梳く。指に引っかかる事無く通る感触は呂布の心を擽る。

「奉先よ、3年前より逞しくなったな。」

呂布の胸の中にいる項羽が顔を上げ見つめてくる。

「項羽は、3年前より魅力的になった。」

「な!?…ふん!当たり前だ。俺は項羽だからな!」

呂布は微笑む。項羽は真正面から褒められる事に慣れない。恥ずかしそうにしながら答える姿は可愛いと思った。

「ああ、そうだね。項羽。」

呂布は髪を撫でていた指を項羽の頬へ這わす。

「ん…。」

擽ったかったのか項羽から息が漏れる。その吐息に呂布の心臓は高鳴る。呂布は頬を少し撫でるとそのまま顎に指を持って行き項羽の顔をを此方に向けさせる。

「項羽。好きだよ。」

「……ああ、俺も…好きだ。」

項羽は呂布の言葉に頬を赤く染め、自分の想いを伝える。唇が重なる。

項羽は目を閉じ、呂布を受け入れている。互いの体温が唇を通じ、伝わっていく。唇が離れる。呂布も項羽も名残惜しむ様に離れた。

呂布は項羽の潤んだ瞳、上気したように赤い頬、漏れ出る温かい吐息に魅了された。

「…あ、んん!?」

呂布は項羽の妖艶な表情に気持ちを抑えきれず、項羽の腰を強く抱き、唇を奪う。項羽は驚きはしたものの、呂布の唇を受け入れる。次第に、互いに舌を絡める。優しく、そして深く。暫くして唇が離れた。銀の糸が架け橋のように繋がっており、離れると切れた。

「…馬鹿者。いきなりする奴があるか。」

「ごめん。項羽が愛おしい気持ちが溢れて、我慢出来なかった。」

「…馬鹿者が。」

「続きは後でね。」

呂布が項羽の耳元で囁くと、項羽が顔を隠すように呂布の胸に顔を埋める。呂布はまた、項羽の頭をを撫でた。

 

 

 

「そういえば奉先よ。」

頬の赤みも引き、抱擁も解き、2人で夜の島を眺めていると、思い出した様に項羽が呂布に尋ねる。

「ん?どうしたの?」

「お主の得物、方天戟はどうした?」

「ああ、あれは譲ってしまったよ。」

「ほう。」

項羽が此方を向き、驚きの表情を浮かべる。得物を譲る。それはその者に対しての最上の信頼の証だろう。

「どんな奴にだ?」

「旅の最後に辿り着いた土地で、少しの間、鍛錬を見てあげた子にね。」

「……ほう。」

見てあげた子、と言うとこに項羽は引っかかり眉をピクリと動かし目を細める。呂布はいきなり項羽に睨まれ、動揺する。

「ど、どうしたの?」

「いや、何、お前はその地にいる間、その子と共に過ごしていたのか?」

「そうだね。その子の家にお世話になって、いた…けど。」

呂布も項羽が何を言いたいのか薄々勘づく。

「ふむ。」

項羽が此方を向き、近づいてくる。……闘気の揺らめきを感じる。

「それで、その子と言うのは、男か?女か?」

目を細めたまま、項羽は呂布の顔を覗き込む。呂布は冷や汗が背を伝うのを感じた。

「……女の子です。」

「歳は?」

「……16。」

「泊めてくれとお前が頼んだのか?」

「いや、俺は野宿するつもりだったがその子が如何してもと。」

「では、お前は同い年の女と寝食を共にしていたのか。」

「…えっと、言い訳にしかならないが、勿論部屋を別々で寝ていた。俺はその子を弟子と見ていたし、その子も俺を師としか見ていなかった。」

それは無いな、と項羽と清楚は呂布の言葉を聞き結論づける。呂布がその子を弟子としか見ていないのは分かるが、その子が呂布を師としてしか見ていないとは思えない。

「えっと、項羽?」

いきなり黙った項羽に伺う様に問いかける。

「……はあ。まあ良い。」

項羽は溜息を吐く。嫉妬の気持ちはあるが、呂布が易々と女に靡くとは思えない。

「お前は、俺のものだ。」

「…ああ、そうだよ。」

呂布は項羽の強い視線を受け止め、抱き締める。

「そして、項羽も清楚も俺のものだ。」

項羽は呂布の言葉で心が満たされるのを感じた。呂布の独占欲を感じる。何と単純なのだろう。だが、心地いい。項羽は目を閉じる。

「りょー君。そろそろ戻ろう?」

清楚が表に出て来た。項羽は満足した様だ。清楚もまた、呂布の言葉に気持ちが高揚していた。

「そうだな。」

呂布はカップを2つ持ち、ベランダを出る。廊下を歩き階段を降りてリビングへ向かおうと思ったが、ふと振り返ると廊下の途中で清楚と弁慶が話している。小さな声で話している為、内容は分からないが、邪魔をしては悪いなと思い、階段を降りていった。

 

 

 

「清楚さん。」

清楚は、呂布がカップを持ち、ベランダを出て行く後ろを少し遅れてついていったが、廊下の途中で弁慶に呼び止められる。

「どうしたの?」

「いや、りょーとの話は終わったのかなって。」

「うん。終わったよ。」

「そっか。」

弁慶は呂布が降りていった階段の方を見る。

「ほら、弁慶ちゃん。行こ?」

「あっと、ちょっといいかい?」

清楚は弁慶を促し歩こうとするが弁慶が止める。

「りょーは変わってなかったかい?」

「え、う、うん。変わってなかったよ。」

清楚は弁慶の質問に戸惑いながら、弁慶の目を見て答える。

「…そっか。」

弁慶は頷く。

「んじゃ、行こうか。」

「弁慶ちゃん。」

弁慶が行こうとするのを今度は清楚が止める。

「ん?何?」

「弁慶ちゃんが何を想っているのかは、何となく分かる。」

清楚は真剣な顔で弁慶を見る。弁慶も清楚をじっと見る。

「その想いを如何するのか、それは弁慶ちゃんが決める事。でもね、諦めきれないのなら、行動しないと、その想いは心を蝕んでしまう。」

「…………」

「中途半端に抱え込むなら、それは忘れた方がいい。りょー君には分かってしまうから。」

「……うん。」

「…これは、私の考え方。私が何を言おうと最終的には弁慶ちゃんが決める事だよ?」

「……そうだね。」

弁慶は目を閉じる。自分自身に問いかける。忘れられるか、諦めきれるのかと。清楚は弁慶が答えるのをじっと待つ。数分後、弁慶は目を開け清楚を見る。

「この気持ちは近い内にりょーに伝えるよ。」

「…うん。」

清楚は弁慶の目を見て、少しだけ後悔した。敵に塩を送ってしまったかなと。弁慶の目は、迷いが無くなっていた。

「んじゃ行こう。清楚さん。」

「そうだね。」

弁慶と清楚は階段へ向かう。

「りょーも歴史に名を刻む猛将のクローンだからねー。」

前を歩く弁慶が呟く。清楚はいきなりの事で首を傾げる。

「如何したの?弁慶ちゃん?」

「いや、ただ…」

弁慶は振り向き、

「私は清楚さんと一緒にでも良いかなってね。」

「え!?」

直ぐにまた階段へ向かう。

「英雄色を好むっていうからねー。」

清楚は弁慶の考え方に、失敗だったかなと階段を降りていく弁慶の後ろ姿を見て後悔が少し大きくなった。

 

 

 

それから呂布は2週間、家族と共に過ごす時間を満喫した。清楚と一緒に読書をしたり、義経と弁慶の鍛錬に付き合ったり、与一の言動に首を傾げたり、旅の話や旅の間の皆の事を聞いたりと3年間会えなかった分を語り合った。

途中、弁慶から告白を受けた。だが、俺は清楚を愛しているからと断るが、弁慶も分かっていた様で、そっかと言いその場を去った。

後日、呂布は少し気まずい表情を出さないように注意し、弁慶に挨拶するも、弁慶は特に変わった様子は特に無かった。しかし、弁慶との距離が少し変わった気がする。弁慶が呂布の近くにいるのが多くなった様に思う。

ソファーに座れば、横に座って来て体を密着させて来る。弁慶から女性の匂いと柔らかさが伝わって来て、如何しても意識していまう。如何したのだと尋ねても何の事だと首を傾げ、少し近いと言うと上目遣いでダメかと聞いてくる。呂布には断る理由が無いのでそのまま密着を許すと、反対側に清楚が座って来て腕を絡めてくる。

弁慶は清楚にニヤっと笑い掛けるが、清楚は穏やかな表情で笑い返す。……眉がピクリと動いていた気がするが。

そんなこんなで2週間経ち、呂布はまた、川神へ戻る。別れは惜しまない。1ヶ月後、会えるのだから。

別れの際、皆に別れを告げヘリへ乗り込もうとすると弁慶が寄ってきて、頬にキスされ「まだ、諦めた訳じゃないからね。」と囁かれた。如何いうことか聞こうとしたが、弁慶は離れて行って替わりに清楚が近づいて来た。そして清楚がいきなり口付けをして来た。長めのキスで唇を離してから、またねと耳元で囁かた。呂布は呆然としたままヘリに乗り、気が付いたら九鬼のヘリポートに着いていた。

呂布は気持ちを取り戻すと、ヘリポートに紋白とヒュームがいることに気が付いた。

「久しいな!奉先よ!」

紋白が嬉しそうに言う。呂布紋白とヒュームに拱手礼をとる。

「お久しぶりです、紋様。ヒュームさん。」

「うむ!今日から此処で暮らすと聞いてな、我直々に出迎えてやったのだ!」

「ありがとうございます。紋様に最初に会えるのは嬉しいですね。」

「ハハハハハ!そうであろう!」

呂布は紋白の元気に満ち溢れている姿に微笑む。

「そうだ!お主の部屋も用意してあるのだ!我が案内してやろう!」

「お願いします。紋様。」

紋白は呂布の手を取り、歩き出す。その後ろをヒュームが歩いてくる。紋白は歩きながら楽しそうに呂布の島での暮らしを聞いてきた。呂布はそれに答えながら歩いて行き、1つの部屋の前で紋白が止まった。

「奉先よ!此処がお主の部屋だ!」

「この間と違う部屋ですね?」

「あれは客用の部屋だったからな!お主はこれから、少なくとも2年間は此処で暮らすことになるのだから、客用とはいかん!」

紋白は言い終わると部屋へと入って行った。呂布も後に続く。部屋は客室よりも少し狭いと感じるが、1人部屋だと充分広い。ベッドや家具は備え付けられてある。

「奉先よ!気に入ったか?」

「ええ。ありがとうございます、紋様。」

「ハハハハハ!良いのだ!」

紋白は満足そうに頷く。

「奉先よ!我はこれから習い事の時間故、これで失礼するぞ!」

「分かりました。紋様、頑張って下さい。」

「うむ!帰ってきたら話をしようぞ!ではな!」

「はい。」

紋白は部屋を出て行った。ドアの前にいたヒュームも紋白の後について行った。急に静かになったなと思い、荷物を片付ける。備え付けてある物を見て回り、小さな冷蔵庫を開けるとお茶が入っていた。ベッドに座りお茶を飲みながら、まだ昼飯を食べていなかった事に気付く。どうせなら街で何か食べるかと思い出掛ける準備をし、何を食べに行こうか考えながら部屋を出た。

 

 

 




粉わさび様、神皇龍魔様、スライム以下様、クロバット一世様、月38万キロ様、バルサ様、感想ありがとうございます。


帰還編も終わり、次からは編入編になります。
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