「…ん、…んー。」
カーテンの隙間から日の光が溢れる部屋で目覚ましの音が鳴り響く。10秒程経って、部屋の主に頭を叩かれ、目覚まし時計は大人しくなる。時間は午前6時。呂布は寝ていて固まった筋肉をほぐしながら、ジャージに着替える。
島から九鬼に移って暮らすようになって3日。毎朝必ず武道場で1時間ほど、組手で汗を流す。島に戻る前に行った、ヒュームとの組手を見ていた従者の人達が組手の申入れが来る。
ヒュームと互角に組手をしていたという事で、年上の者でも敬語で話して来るので、呂布は恐縮してしまうが、1度組手を始めると相手の隙を鋭く突き、終わると問題点と改善点を話し合う。
今日も武道場に着くや否や、従者の若い男性に組手の申入れを受ける。了承し、空いたスペースで組手を行うと、その周りに人が集まってくる。呂布は気を引き締め組手をしているが、まだ軽めに動く。だが、相手は本気で殴りかかって来る。
体もだんだんと温まって来ると、呂布もスピードを上げる。相手は最初こそ呂布の攻撃に対応していたが、徐々に対応出来なくなり防戦一方になっていった。そして10分ほどで呂布は相手の首に手刀を寸止めする形で、組手が止め、互いに礼をする。
「攻撃を徐々に上半身だけで防ごうとしていました。確かに攻撃の速度が上がって行きましたが、冷静に、下半身を使えば捌けます。」
「わかってはいるのですがね。」
「そうですね。後は相手との距離ですかね。一定の距離を保つ為にやはり下半身の動きが重要になります。あと、退がる、前に踏み出す、その見極めですね。これは経験の感としか言えませんが、この一瞬の判断が勝敗を左右します。」
「なるほど。」
「ええ。まあ、ヒュームさんとかを相手に踏み出すことが出来るなら凄いですね。あの人が放つ圧に向かって行くなんて命懸けですから。」
「はは。確かに。」
呂布と2人、笑い合う。
「ありがとう御座いました。勉強になりました。」
「いえ。お役に立てたのなら。」
男性は改善点を考えながら武道場の壁際まで退がって行った。そして周りに集まっていた従者の人が前に出て、組手の申入れをしてくる。呂布は快く受け、組手を始める。
組手も終わり、部屋に戻りシャワーを浴びた。そして、真新しい制服に袖を通し、鏡を見ながら身を整える。部屋を出るとクラウディオが立っていた。
「あ、クラウディオさん。おはよう御座います。」
「ええ。おはよう御座います。これから朝食をお取りになりますか?」
「はい。」
此処に来てから、朝昼晩の食事は九鬼が用意して貰っている。呂布は住む所を用意して貰っていて、更に食事までお世話になるのは悪いと断ったのだが、紋白が寂しそうな顔で、一緒に食べるのは嫌かと聞いて来たので、呂布は拒否出来なかった。
「呂布様、あまりお気になさらなくて良いのです。」
クラウディオは呂布の表情を見て、察した。
「…ありがとう御座います。紋様には敵いません。」
「この九鬼家には勝てる者はおりません。」
「あはは。最強ですね。」
「ええ。では行きましょう。」
クラウディオは呂布を先導して行く。毎朝クラウディオや従者が迎えに来るのも、呂布は恐縮してしまう。が、もう諦めている。
クラウディオが部屋をノックし、扉を開け呂布を通す。部屋の中にいたのは紋白と英雄、それぞれの後ろにヒュームといずみが待機している。
「奉先よ!おはよう!」
「奉先!おはようだ!」
英雄と紋白は笑顔で挨拶する。
「おはよう御座います。英雄、紋様。」
呂布も挨拶をし、紋白の隣に座る。一緒に食事する様になって、紋白の隣が呂布の定位置となっている。
「奉先よ!お前も今日から我と同じ学園に通うのだな!お前はS組だろう?」
英雄が聞いてくる。
「えっと、英雄と同じクラスも捨てがたかったんだけど、俺はF組に行くよ。」
「ほう。何故だ?お前の家族は皆、S組に入ることになるだろうに?」
「皆と一緒も良かったんだけど、学園にいる内は従者の人達が守ってくれると聞いているから。僕は人脈を広げる為に、個性的な人が集まっていると聞いたF組に入るよ。」
「なるほど。人脈か。お前が決めたのなら何も言わん。困った事があれば我のとこに来い!友として我が力を貸そう!」
「ありがとう。英雄も何かあれば僕に言ってね。力になれるかは分からないけど。」
「ハハハハハ!うむ!お前の力が欲しい時は遠慮なく頼もう!」
英雄が笑いながら言う。…うん。今日も朝から元気だ。
「奉先よ!我も力になるぞ!」
隣に座る紋白も、英雄に呼応して言う。
「はい。紋様の力が必要な時は、お願いします。紋様も僕の事が必要な時は頼って下さい。」
「ハハハハハ!うむ!お主の事を頼らせて貰おう!」
紋白も笑う。…似てるなー。
それから朝食を食べる。食べ終わると英雄は先に出て行った。どうやら仕事を片付けてから学園に行くらしい。紋白も用事があるらしく、食後に少し談笑してからヒュームと共に出て行った。
呂布も部屋へ戻り、バッグを持ち部屋を出る。
「呂布様。」
エレベーターで下に向かおうとしたらクラウディオに呼び止められる。
「どうしました?」
「ええ。この間頼まれていた物。方天戟が出来上がりました。」
「本当ですか!」
「はい。明日には此方に来ますので、ご自身でお確かめ下さい。」
「ありがとう御座います!」
「いえいえ。では行ってらっしゃいませ。」
「はい!行ってきます!」
呂布は気分良くエレベーターに乗り、九鬼本社を出た。
「失礼します。」
呂布はノックをし、部屋に入る。
「お久しぶりです。学園長。」
拱手礼を、鉄心にとる。
「うむ。久しぶりだのう。時間通りだな、呂布よ。」
鉄心が微笑みながら言う。呂布は学園に着いたら、まず学園長室に来る様にと指示を受けていた。
「はい。これからお世話になる身。失礼な態度は取れません。」
「ほほ。その心掛け。素晴らしいのう。」
鉄心は満足そうに頷く。
「さて、お主の要望により、F組という事になっておるが良いのだな?」
「はい。我儘をお許し頂きありがとう御座います。」
「よいよい。では、お主の担任を呼ぼうかの。小島先生!」
鉄心が大きな声を上げると、部屋に女性が入ってくる。
「お呼びでしょうか。学園長。」
「うむ。彼がこれからF組に入る呂布奉先だ。」
小島という女教師が呂布を見る。呂布も小島の方を向き、拱手礼をとる。
「初めまして。性は呂、名は布、字は奉先と申します。」
「う、うむ。私はF組担任の小島梅子だ。」
「小島先生ですね。これから、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。」
「ああ。これからよろしく頼む。」
梅子は呂布の礼に一瞬驚いたが、礼儀正しさに満足そうに頷く。
「では小島先生、よろしくお願いする。」
「はい。では行くぞ。呂布。」
「はい。では学園長。失礼致します。」
「うむ。勉学に励むがよい。」
「はい。」
呂布は梅子に続いて学園長室を出る。梅子の後ろを歩き、教室に向かっていると、梅子が呂布に話し掛ける。
「呂布はF組に入りたいと言ったそうだな。何故だ?」
「F組には個性的な人が多いと聞きまして。」
「…そうだな。特徴的過ぎる奴らもいるが。」
「はは。面白そうだなと思ったのは勿論ですが、人脈を広げる為にもという考えもあります。」
呂布は笑いながら言う。
「そうか。大丈夫だとは思うが、勉学にも手を抜くなよ。」
「はい。」
それからF組の表札がある教室の前に着いた。
「少し此処で待て。」
そう言い、教室に入っていく。先生が来た事で教室内の生徒が急いて席に座る音が聞こえる。そんな中、梅子の大きな声と男子生徒の叫声が聞こえた。
「入って来い。」
梅子の朝の情報伝達も終わり、呼ばれる。呂布はドアを開け、教室に入る。呂布の容姿を見た女生徒からの黄色い声と男子生徒の怨嗟の視線を感じるが、呂布は黄色い声の意味を理解していない。
教卓の側まで行き、正面を向く。
(お、川神さんと小笠原さんがいる。)
知ってる顔を見て、少し安堵したが直ぐに顔を引き締めて、拱手礼をとる。
「初めまして。性は呂、名は布、字は奉先と申します。本日から皆と机を並べ、学ぶ事が出来るのを嬉しく思う。これからよろしくお願いします。」
呂布の挨拶に、一部以外の女生徒は、呂布の様になっている礼に見惚れ、男子生徒は呆然としている。
呂布は頭を上げ、皆を見る。
(…あれ、なんか間違えた?)
呂布もどうしたら良いか分からないまま、頭の中で打開策を模索していると、
「ゴホン。皆、質問とかはあるか?」
梅子が問う。呂布は少し安堵し教室を見回す。静寂が包むの教室内に、
「はい!!」
元気よく手を挙げる女生徒がいた。
「なんだ?川神?」
「質問じゃ無いんですけど、呂布君を歓迎したいと思うのですが!」
「歓迎?」
呂布は首を傾げる。
「その前に呂布。お前は武道はやっているか?」
「え、あ、はい。」
呂布は梅子の突然の質問に戸惑いながら答える。
「ならば川神、歓迎を許す。」
「ありがとう御座います!」
手を挙げた女生徒、一子は近寄ってきてワッペンを教卓に置く。
「ほら!呂布君もワッペン!」
「え、ああ。こうか?」
呂布は言われるがまま教卓に置かれているワッペンに重ねて置く。
「よし!では川神、呂布!校庭に出ろ!」
「はい!」
「え?」
呂布は訳が分からない。何故校庭に?
「審判は…」
「それはワシが引き受けよう。」
突然、鉄心が教室に入ってきた。
「分かりました。学園長、お願いします。」
「うむ。」
「ちょ、ちょっと待って下さい!!」
呂布はこれ以上置いてけぼりを食らう前に声を上げる。
「学園長。歓迎とは?」
「ん?お主、知らずに受けたのか?」
「ええ。ワッペンを置く様にと言われただけで。」
呂布と鉄心は一子の方を向く。
「えへへ。呂布君と前に会った時、武道をやってると聞いたから!」
一子がうずうずしながら言う。
「全く、説明くらいしてやらんか。」
「えへへ。ごめんなさい。」
一子のさして詫びていない姿に鉄心は溜息を吐きながら、
「済まんな、呂布よ。お主はこの学園特有の制度は知っておるかの?」
「いえ、分かりません。」
「この学園には武道を重んじておるからの。武芸者同士による決闘を行う制度があるのじゃ。」
「決闘、ですか。」
「うむ。そして歓迎とは、新しく入って来た武芸者に決闘を申込む事をそう言うんじゃ。やり方はお互いのワッペンを重ねること。」
「なるほど。」
呂布は納得した様に頷く。
「それでお主、この決闘を受けるか?」
鉄心は呂布を見る。
「…ええ。決闘、お受けします。」
呂布は一子に拱手礼をとる。流石武の街、川神にある高校。これ程特殊過ぎる制度があるとは。
「では、2人とも、校庭に出るのじゃ!」
呂布と一子、F組の面々は校庭へと移動する。
Eva(Ver2)様、kisora様、感想ありがとう御座います。
今回は内容が薄い様な気がします…