もう一人の転生者『勇人』に敗れた三崎亮は、自分の部屋で引きこもっていた。
「・・・・・・」
何かしているわけでもなく、膝を抱えて座り込んでいる。
その目には全く生気を感じられず、何を見ているのかすらもわからない。
『聞いているか、三崎亮? クロノ・ハラオウンだ』
通信のモニターに映ったのは黒髪の少年。
彼は『クロノ・ハラオウン』。
管理局の執務官で亮の上司である。
「・・・・・・」
『君は現在、5件の任務を無断欠勤をしている。一週間後の任務も無断欠勤するのであればこちらもそれなりの対処をするつもりだ。一週間後の任務についてメールを送っておく。集合場所の時間に来なければ職場放棄とみなし・・・兎に角、覚悟しておくように、以上だ』
「・・・・・・」
通信が終わった後もこれと言った動きを見せない亮。
静寂の中、亮は呟いた。
「俺が今までやってきたことってなんだったんだ?」
その問いに答える者は誰もいない。
それは亮自身もわかっているだろう。
そしてその答えもわかっていた。
「無意味・・・・・・・・」
亮は今まで行ってきたことをデバイスである楚良が映像として残していた記録を観ながら思い返してみた。
~プレシア・テスタロッサ事件~
・黒い影との戦闘
なのはのピンチに颯爽と登場。
封印するための時間稼ぎを華麗にこなして活躍。
↓ 実際
なのはのピンチに颯爽と登場し時間稼ぎを行うが、亮自身も初戦闘で力の扱い方がわかっておらず、結局は黒い影の攻撃を情けない声を上げながら逃げ惑う。
結果的には時間稼ぎは出来ているがなのはの印象は悪かった。
・フェイトとの初遭遇
フェイトがなのはに放ったとどめの射撃魔法を防いで自分をアピール。
↓ 実際
タイミングを見計らって射撃魔法を防ごうとするが失敗して、直撃してしまい撃墜されてしまう。
なのはの印象は何しに来たんだろう?と全く無意味なものであった。
ちなみにフェイトも似たような印象であった。
・クロノ・ハラオウンの登場
フェイトを捕まえようとしたクロノを妨害し、フェイトを助けた。
↓ 実際
クロノを妨害もとい撃墜させようとするが、返り討ちにあう。
結果的にはフェイトを逃がすことに成功。
なのはの印象はええ~・・・?と呆然と返り討ちにあう亮を見ていた。
フェイトは心の中で感謝をしていた。
・プレシアとの接触
最終決戦でプレシアに回復アイテムを使うように説得する。
途中、反抗されるがその攻撃を潜り抜き説得に成功した。
↓ 実際
説得を試みるが反抗されて放たれた攻撃は来る道中での傀儡兵との戦闘で疲れ切っていた亮は直撃し撃墜、と思いきや今までに見たことのない粘りを見せる。
最終的には仮にも敵であるプレシアに土下座をしてようやく説得できた。そんな亮の姿を見て少しは見直すも、土下座する光景に若干引いてしまうなのは達とプレシアだった
・なのはとフェイトのお別れイベント
亮の使用した回復アイテムについてクロノ達管理局から追及されアースラで質問攻めにあった為、見る事は叶わなかった。
クロノ達とは最終的にアイテムの使用を控え、公衆に公然しないことで話がついた。
ちなみにお別れイベントにさらっと勇人の姿があった。
~闇の書事件~
・ヴィータ襲撃、なのは蒐集
なのはのピンチにフェイト達と共に駆けつける。
なのはの蒐集は防ぐことはできなかった
↓ 実際
ヴィータと対峙するも実力や経験に圧倒的な差があり敗北。
なのはの蒐集を防ぐ以前の問題であった
・はやてとの接触
図書館ではやてと接触。
その後もはやてと接触しようとするがそれ以降はやてが恥ずかしがって会うことができなかった。
↓ 実際
亮と接触したはやてだが、いきなり呼び捨てにされたり、頭を撫でられたりと馴れ馴れしく、異様にしつこく来たので一時期は図書館に行くのを止めた。
・闇の書の意思との激闘
防御プログラムのバリヤー破壊など激闘に大いに貢献した。
↓ 実際
亮は気づいていなかったのだが、なのは達と同じようにコンビを組んでおり、そのもう一人とは勇人だった。
割合的には亮2:勇人8とほぼ勇人のおかげで破壊していたことになる。
・リインフォース消滅
消滅を防ぐため、アイテムを使用する。
↓ 実際
実際にその通りであった。
「・・・ふっ、ふふふ」
記憶を振り返った亮はうずくまると身体を震わせる。
「はははっ・・・あはははははは!!これは傑作だ!もう笑うしかねえ!俺がやって来たことは全て無意味だったって訳だ!」
頭を抱えながら涙を流す亮。
そして、怒りの矛先は楚良へと向けられる。
「なあ、楚良。どういう事なんだよ!!神から貰ったこの力は無敵じゃなかったのかよ!ニコポ・ナデポだって全く効いてねえし!こんなのあんまりじゃねえか!!」
『それは、あれだ。使い手の問題だわな』
そんな楚良の返答に亮は唖然としてしまう。
楚良は続けて話し出した。
『そもそも。誰も無敵の力を与えた訳じゃねえだろ?お前が欲しかった能力をプレゼントしただけ。それを無敵の力と称すには使い手であるあんたの技量不足だ。あの転生者君が言ってたろ?魔力の収束が全然出来ていないって。練習もせず、全部デバイスの僕ちゃんに任せっきり、そりゃ威力は皆無だわ』
「お、お前はデバイスだろ!主人である俺のサポートをするのは当然の筈だ!」
『いや、だから、あんたのサポートをするのであって全部やる訳じゃないっつーの。飛行やらバリアジャケットの維持も全部僕ちゃんに任せっきりなんだから無理だつー話なわけ』
楚良の言う通りで、亮は訓練など全くやってこなかった。
今まで戦えて来たのは全てデバイスである楚良のおかげであった。
『その事にいつ気づくかなと見ていたが、まさかこんなどん底に陥るまで気づかないとかマジウケる(笑)』
「ウケるって・・・それがマスターである俺に対する態度か!!」
『今更マスター面されてもなー。それに一週間後には俺を回収する為に管理局が動き出すだろうから、あんたとはそれ限りになると思うけど?』
「ぐっ・・・」
クロノからの通信にあった『それなりの対処』がデバイスの没収であると亮や楚良も理解できた。
そうなれば、亮はただ魔力が多いただの一般人となってしまう。
「そんなの、嫌だ・・・。俺は、俺は・・・」
『さあ、この後どんな行動をするのか、マジで楽しみだよん』
正反対の温度差の一人と一機。
彼らの運命はタイムリミットである一週間後まで残り時間が着々と迫ってくるのであった。
「結局、亮からの返答はなかったか・・・」
アースラの廊下で険しい顔をしながら歩くクロノ。
「あっ、クロノ君!」
そんなクロノを声をかけて合流したのは『エイミィ・リミエッタ』だった。
「どうしたの? いつも以上に険しい顔してるよ?」
何やら悪意のある発言だったが、クロノは溜め息をついて答える。
「・・・彼についてだ」
「彼?・・・ああ~、『問題児』君のこと?」
エイミィの言う『問題児』とは三崎亮のことだ。
本人は知らないが管理局ではそう呼ばれている。
他にも『未来のエースオブエース達の出涸らし』、『周りを乱す暴君』など言われている。
「そういえば今日の任務に参加しなかったら管理局員の資格剥奪とデバイス強制撤去が命じられるんだっけ?」
「ああ、そうだ」
また溜め息を吐くクロノ。
エイミィはそんなクロノを見て苦笑せざるをえなかった
「しょうがないよ。彼の自業自得だもん」
「それはそうだが後始末がまた面倒だ。それに亮はそれを簡単に応じるとは思えない」
「確かにね~」
「亮の実力は一般局員よりは上だ。中途半端な部隊では返り討ちに合う恐れがある」
「そうかな?確かに魔力量は凄いけど、それだけでしょ?なのはちゃん達みたいな技術は全くないんだから簡単に捕縛出来ると思うんだけど」
戦闘データの分析もこなすエイミィは今までの戦闘データを評して亮がクロノが思う程危険な存在であるとは思えなかった。
それも一般局員でも十分に捕獲できると考えている。
「ああいうタイプは追い込まれたら何をしでかすか分からない。細心の注意を払って行動しないといけないんだ」
「・・・そうだね。ちょっと楽観視し過ぎた。ごめんね、クロノ君」
「謝る必要はないさ。それにエイミィの意見もそれ程間違っている訳ではない。まあ、亮の事はまた後で考える事にして今は任務に集中するとしよう」
今日の任務に参加するメンバーが集まる部屋へと入るクロノとエイミィ。
二人はすぐに周りの様子がおかしい事に気づいた。
やけに騒めいていて落ち着きがない。
そして、全員がとある少年に視線を向けていた。
「・・・三崎亮、なのか?」
「た、確かに銀髪だけど、あの子の髪型は坊主じゃなかったよね!?」
唖然とするクロノに驚愕しているエイミィ。
そんな二人に気づいた銀髪坊主の少年が二人の前までやってくる。
目の前まで来てようやく二人は銀髪坊主の少年が亮である事を理解した。
「み、三崎亮。どうしたんだ?その髪は?」
「俺なりのけじめです。今までご迷惑をおかけしてすみませんでした。これからは心を入れ替えて精一杯頑張らせて頂きますので宜しくお願い致します」
頭を下げる亮の姿にクロノやエイミィだけではなく、その場にいた全員が不気味に思うのであった。