終焉の箱庭   作:名状し難いAliCe

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犠牲

 

憂鬱な気分を綴って、一冊書けそうなくらいには落ち込んだ。来月買おう買おうと貯めていたPC用貯金に手を出してまで買った"ブツ"は、部長のお気に召さなかったらしく、尚且つ成果なしと断定されて、結局死にたくなる程度に嫌味のマシンガンを食らわされた。踏んだり蹴ったりどころか、泣きっ面を踏まれながら蜂に刺された気分。そうは言っても、大金をはたいてまで手に入れたそれを、僕は少なからず気に入っているフシがある。愛着じゃ無いが、何だろう。初めてのお年玉でちょっと高級なゲームに手を出した気分。…………ちっちゃいな僕の幸せ。

金をかけたらいいってわけでも無いが、貯金を崩してまで買ったそれを捨てるに捨てられないのも事実。部屋の内装と合わず浮いてしましそうだが、それもやむなしだろう。

「ってか、こんなものに七万とかぼったくりも過ぎるだろ…」

そんなぼったくりに手を出す僕も僕だが。

家に着く頃にはすっかり辺りも暗くなっていた。日の入りが早く、秋の訪れを感じる。

「おかえり、お兄ちゃん。………何それ?またオカルトグッズか何か?」

「え、まぁ、そんなとこ……かな」

帰りを出迎えたのは妹だった。家族には絶対こいつに数万も溶かした事を知られたく無い。話題を逸らさねば。

「えっ…と、母さんはまだ仕事?」

いつもは夕飯を作り始めてる時間だが、見たところキッチンは暗い。

「うん。お母さんはまだ帰ってきてないよ。だから夕飯は私が作ったげるね」

母さんがまだ帰ってないとは珍しい。だがチャンスだ。見つかる前に部屋に逃げ込まねば。この箱庭を見た一言目は絶対に「いくらしたの?」だ。言えない。嘘をついても貯金の管理を統括してる母さんには通じない。いつもは部活動費で誤魔化しているが、ブツを持って帰ってきたのはこれが初めてだ。何か話す妹を空返事で受け流し、部屋への階段を上り始めた。

 

しばらくして、母の帰りが遅くなるとケータイに電話があった。もしかしたら日を跨ぐかも知れないとの事だ。放課後を見計らって電話をしていたらしいが、あいにくその時間は圏外にいた。疲れた様子で、いつもより追求も少なく、夕飯は冷蔵庫のものを好きに使っていいから先に食べてていいらしい。通話を切った直後に、妹が部屋に乗り込んでくる。

「お兄ちゃんっ!ご飯できたよ。食べよ?」

そんな格好で友達呼ぶんじゃ無いよと言いたくなるくらい目に毒な格好で(妹の部屋着だ)上目遣いをしてくる。こいつ彼氏とか作れんのか…?

夕食中は静かなものだった。妹の格好はふざけていても、マナーは親仕込みでしっかりしている。そんな妹が行儀悪くむせ込んだのは、テレビのニュースが原因だった。

「ったくもう。汚ねぇなぁ……ほら、顔拭けよ」

そう言ったものの、実際汚いのは真正面でもろに飛沫を浴びた僕だが。

「ね、ねぇ!お兄ちゃん!これ!」

興奮気味にテレビを指差す。向きてきに食事中、僕はテレビを見れない。母さんに多少の罪悪感を感じつつも、そのテレビを見た僕も、思わずむせってしまった。

 

「母さんの会社が……火事…?」

 

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