「おはよう、四葉斬」
朝から聞こえてくる挨拶がおかしい。朝だから『おはよう』は良い。何故『四葉』なのか?クラスメイトがかけてくる言葉は皆同じだ。
「一体どうなってんだよ~?」
ぐったり机に突っ伏すザンの周りに幹比古やレオがやってきた。
「おはよう、ザン」
「ザン、四葉に婿入りしたって本当か?」
「はあ?」
夏休みのある一日の事は公表されていないことだ。真夜もまだ早いと判断し、二人の関係は師族会議含めて連絡はしていないと聞いている。当然、司波兄妹にも伏せられている。一体どういうことなのだろうか。ザンは疑問が絶えなかった。
「だれだよ、そんな事言っているヤツ!」
「あたし~」
快活な少女が悪びれも無く告白した。
「エリカ!どういうことだよ!」
「え~、だって、あのダンスパーティであんなもの見せつけられちゃあねぇ」
ここぞとばかりにエリカがおもしろがっている。日頃の鬱憤を晴らしているかのようだ。
「十師族をネタにしていると、後で睨まれることになるかもしれないな。千葉家は大丈夫だろうか?」
横にいた達也が半分脅しを口にする。エリカは思わず口に手をやった。
「…次兄上にチクってやる」
「な、何でザンくんが知っているのよ!」
次兄上?教室中の話題が達也の脅しの効果もあったのか『四葉』から『次兄上』に移行した。
「も~、やめて!無し無し、今の無し!」
エリカの叫びは教室に空しく響いた。
-○●○-
昼休み、生徒会室には意地の悪い笑みをしている女性がいた。
「やあ、ザンくん。婿入りの日取りは決まったかね?」
「…修次さんに絡む人は、発想が同じなんですかね?エリカも似たようなネタで噂をばら撒いていましたよ」
そう言ってザンはプリントアウトした写真を両手に二十枚以上持っていた。
「…なんだい、それは?」
「ふっふっふ。恥ずかし地獄に行くのなら、委員長も道連れだ!」
ばっと撒いた写真が、真由美や深雪、鈴音にあずさなどに行き渡る。それには修次と共に映る摩利の姿だ。その顔は恋する乙女の顔だった。
「な、何て物を持ってくるんだ!見るな!見るな~!」
「ふ~んだ。俺をいじろうとするからだ。まだまだありますよ!これなんかレア物!羞恥に顔を染める委員長!いかがっすか~!」
「やめてくれ~!」
この非常にくだらない事が終息するのに、十分を要した。
「今月で引退か~」
ひと段落したところで、今度は真由美がテーブルに突っ伏していた。
「ああ、生徒会長引退ですか。お疲れ様でした。そういえば、会長選挙は今月でしたっけ」
ザンは紅茶を入れたカップを真由美の前に置く。
「ありがと。あとはあ~ちゃんが生徒会長を受けてくれればねぇ」
「何故、あ~ちゃん先輩なんですか?」
「ザンくん!ナチュラルにあ~ちゃん呼ばわりは止めてください!それに、私には生徒会長は無理です!」
あずさはぷんすか怒っていたが、皆可愛い動物を見る目でその光景を眺めていた。ザンの疑問に答えたのは鈴音だった。
「過去五年、生徒会長には主席入学の生徒が務めていたのです」
「へぇ!あ~ちゃん先輩が主席入学だったんですか!俺、てっきりはんぞ~先輩だとばっかり思っていました。大変失礼な思い込みをしてしまいました。申し訳ありません」
「申し訳ないと思うなら、『あ~ちゃん』呼びは止めてください!」
「生徒会長になったら、止めます」
「うっ…」
真由美がザンに向けてエールを送っていたが、あずさが心変わりするまでには至らなかった。
-○●○-
達也とザンは久しぶりに風紀委員会本部に来たのだが、めずらしい事に賑わっていた。
「これだけいるんなら、俺いらないかな?帰って良い?」
「ナチュラルにサボろうとするな。委員長、何かあるのですか?」
「特に委員会の行事があるわけではないよ」
達也とザンは顔を見合わせたとき、ザンが気が付いた。
「そういえば、千代田先輩が風紀委員入りするって聞きましたね」
「そうなんだよ。前学期末に部活連枠の三年生が一人辞任していてね、その補充で花音が来るんだ。女子が風紀委員に選ばれるのは珍しいから、暇人どもが見に来ているのさ」
「委員長が選ばれたときも、注目を浴びたのでしょうね」
達也の指摘に、摩利は不機嫌な顔をして黙り込んでしまった。どうやら、あまり思い出したくない事だったらしい。
「私のことはともかく、花音の面倒はしばらく達也くんにお願いしたい」
「俺が、ですか?」
「君が、だ。…花音、今日のところは達也くんに同行して、巡回のイメージを掴んでくれ」
本部にやってきた花音は、あちこちで着任の挨拶をしてまわりようやく摩利の元に来た。
「えー?摩利さんが教えてくれるんじゃないんですか?」
「私じゃ参考にならんよ。私を見つけると、後ろめたい奴はこそこそと逃げてしまうからな。達也くんは事件遭遇件数、検挙率共にナンバーワンだ。それとも、ザンくんにお願いするか?」
「結構です!司波くんにお願いします!」
ごねていた花音がザンの名前を出すと即答していた。流石にザンも驚いたが、ピンとひらめいたようだ。
「幾ら達也が好みのタイプだからって。千代田先輩、五十里先輩と達也のフタマタなんて駄目ですよ?」
「しないわよ!私は啓一筋なんだから!」
花音は達也を引きずるように本部を出て行った。達也の眼は恨めしそうにザンを見つめていたが、ザンのスルー技術も向上しているようだ。
-○●○-
新学期が始まって一週間がたったころ、早朝に電話があった。
「七草が俺を探っている?」
『ええ。手の者によると、九校戦以降にあなたの事を調べている奴らが増えたけど、未だ続けているのが七草よ。学校では七草のお嬢さんから何か言われていない?』
「特に今までと変わったことは無いな。ただ、何かきな臭いな」
『そうね。あなたのことだから問題無いと思うけれど、一応気をつけてね』
「ああ、ありがとう、真夜」
電話を切ると、ザンは学校に向かった。遅めの登校であったため、達也たちとは学校まで会えず仕舞いだった。ザンがクラスにたどり着くと、面白いことが聞こえてきた。
「…達也が生徒会長に立候補するって、噂が流れているんだよ」
「ほうほう、そうなんだ。がんばれ達也、応援するぞ」
「俺は立候補するつもりは無いぞ。そんなデマが流れているのか」
「なんだ、やっぱりデマなのか。廿楽先生からも聞かれていたし、先生方も信じているようだったけれど?」
「俺も先輩たちから聞いているぜ?結構好意的だったぞ」
「私も聞いた。一年の風紀委員が生徒会長に立候補するって。達也くんのことだと思っていたんだけど」
「私も…」
矢継ぎ早にレオやエリカから噂を聞き、美月まであるようだ。達也は机に突っ伏した。美月は一つ思い出した。
「カウンセリングの時に、チラッと話題がでたような気がします」
その噂相手を聞き、達也が甦った。どうやら目標が見つかったらしい。一時限目の途中で達也は教室から出て行ってしまった。達也の動向を目で追っていたエリカがザンに確認していた。
「どうしたのかな?達也くん」
「小野先生んとこ行くんじゃない?さっき美月から噂の出所聞いちゃったからね」
エリカは頷いてはいたが、疑問は残っていたようだ。
「なるほど。でも、小野先生言うかな?」
「『言わせる』に近いんじゃないか?達也の場合」
その言葉に、エリカも納得していた。帰って来た達也に話を聞こうと考えていたが、休み時間に今度は真由美がやってきて達也を連れて言った為、聞けずじまいだった。
「持っていかれちゃったなぁ」
「いや、持っていかれたって。どうせ生徒会長は深雪の立候補の説得を達也にお願いしに来たんだろう?」
「そうなの?」
「昼休みだと、達也と深雪はセットだからな。そんなところだろう。ただ…」
「ただ?」
思わせぶりなザンの言葉に、エリカは疑問を持った。
「きっと、達也は深雪を生徒会長にするのを薦めないだろうな。『妹にはまだ早い』とか言ってさ。それで、多分中条先輩の説得を引き受けるんじゃないかな?」
「なんでそうなるのよ?」
「ん?深雪にはさせたくない。自分は当然やりたくない。たしか服部先輩は部活連会頭になるため生徒会長にはならない。そうすると、有力な候補として本人はその気は無いが、中条先輩がピカイチだ。そんなところだろうよ」
「へぇ。よくそんなこと分かるわね」
「ま、長い付き合いだからな」
そう言うとザンは端末に向かった。止まっていた座学の続きをするためだ。
果たして、達也は「シルバー・モデルの新型CAD(モニター品)」という物で釣って、見事生徒会長に立候補させたそうな。
-○●○-
九月末の週に入った頃、昼食を終え教室に戻ろうとしていた達也や深雪、ザンに摩利が声をかけた。
「少し相談したい事があるのだが、本部へ来てくれないか?」
深雪は一般科目でほぼ自習のようなものだから多少遅れても問題ない、達也やザンは実技小テストのようなものだが、時間内にクリアすれば大丈夫だ。皆頷くと風紀委員会本部に向かった。
本部では向かい合わせに座ると、いささか緊張した面持ちで摩利が切り出した。
「…相談したいのは、真由美の事だ。生徒会役員一科生限定廃止案反対派の動きが気になってね。反対派の動きが大人しすぎると思っている。同じ一高生同士考えたくは無いんだが、平和的な裏工作がうまくいかず、暴力的な手段に出る輩も十分警戒しなくてはいけないと思う。それでだ」
摩利は達也や深雪、ザンを見渡した。
「真由美と一緒に下校してもらえないだろうか?」
「会長を、家まで送っていくのですか?」
「できればしてほしい。真由美はいつも一人で下校するから、事故に見せかけるのも校内より簡単だ。君たちならどんな闇討ちを受けても大丈夫だろう?」
摩利が言うのは、達也が『術式解体』が使える事とザンの『無限の小盾』を指しているのだろう。しかし、達也は断りをいれた。
「申し訳ありませんが、今日は用事がありましてお受けできないのですが」
「なら、今日は俺が行きますよ。明日、達也と深雪にお願いするさ」
「すまないが、頼む。こういう時期でなければ、服部に声をかけるんだが…」
ザンは心の中で合唱した。服部なら泣いて喜んだろうに。
-○●○-
「お嬢さん、駅まで一緒に歩いていきませんか?」
「何、ザンくん。待っていてくれたの?」
校門を出てきたところにナンパの様な声をかけてきたザンに、真由美は驚いていた。ただ、胸に手をあて恭しく頭を下げる執事の様なその姿に、疑いの目で見る。
「それで、どうしたの?やっぱり、摩利にいわれたの?」
「そうですよ。生徒会長が心配で心配でご飯がのどを通らないっていうもんだから。涙ながらに説得されては断れないですよ」
「…別に、そこまで話を盛らなくてもいいわよ。それにしても心配性ね。…ザンくんは、それ言っちゃって良かったの?」
ザンは肩を竦めた。そして真由美に何か言おうとしたときに、真由美の端末が鳴った。誰かからの電話らしい。
「はい。…え?いえ、でも…はい、承知しました」
その後真由美は複雑な表情をしており、無言だった。真由美のこの姿を初めて見たザンは、真由美にもこういった面があるのだと感心していた。
駅に着くと車が待っており、老紳士が傍らに立っていた。
「お迎えが来ているようですね。では、生徒会長。また明日」
「…ザンくん、申し訳ないけれどもう少し付き合ってくれないかしら?」
「でも、車来てますよ?」
「その、私の家まで来て欲しいの。都合はどうかしら?」
「特に予定は無いから、いいですよ」
真由美はホッとした表情でいた事から、気乗りしなかったのだろう。ザンも先日の真夜の電話のことを思い出していた。ザンは車に乗る前ににどこかに電話をしていた。
「でっかい家!」
高級住宅街にある、豪華な洋風の家の前に車は止まった。ここが七草邸なのだろう。
ザンは応接室に通され、真由美は着替えの為に自室に戻った。運転をしていた老紳士が紅茶をザンの前に置く。
「ありがとうございます、名倉さん」
「いえいえ。急なお願いに快諾していただき、ありがとうございます」
そんな話をしていると、一人の男が入ってきた。今時珍しく眼鏡をしている。
「桐生斬くんだね。私は七草弘一と言う者だ、初めまして。君のことは真由美から聞いているよ。あと、九校戦の活躍は見事だった」
「ありがとうございます」
恭しく返したザンだったが、冷静に七草弘一を見ていた。言葉上は褒めているが心がこもっていない。
「立ち入った話をするのだが、君は四葉なのかな?」
「話の意図は分かりませんが、違います」
「しかし、そのなんだ。四葉当主と、その…」
「後夜祭のダンスパーティの時にキスをした話ですか?その後はありませんよ」
弘一が言いよどむ事をザンが言ってのけたので、弘一のほうが気圧された形だ。
「君は、真由美のことをどう思うかね?」
「生徒会長は気が利き、皆に愛される素晴らしい方だと思います」
「そうではなく、君個人としてだ」
「…大変魅力的な女性です」
弘一の目に安堵の色が見えた。
「桐生くんの結婚相手に、真由美はどうだろうか?」
真由美が扉を開けるのと同時に、ザンも口を開いた。
「お断りします」
父親が何を断られたのか、真由美には分からなかった。
「それは、やはり四葉が…」
「関係ありません。生徒会長は、真由美さんは非常に魅力的な女性です。しかし、こと結婚について、まずお嬢さんのお気持ちを第一にすべきでは無いでしょうか?このようなやり方は、私は承服しかねます」
「十師族は権限と共に、責務がある。強力な魔法師を生み出さなくてはならない。その為には優秀な魔法師の血筋も必要なのだよ。好いた相手が魔法師として優秀であれば、それも可能だろう」
「でも、俺の両親は魔法師ではありませんよ?」
ザンの言葉に、弘一の眉がピクリと動く。確かに桐生斬という男の素性が分からない。七草の力をもってしても闇のままだった。
「失礼だが、ご両親は…」
「亡くなりました。私がまだ幼い頃、事故で。それからは孤児院の院長先生が親のようなものです」
両親が亡くなっているのは事実であったが、その後は嘘が続いた。姉たちのことは話す必要は無いだろう、ザンはそう考えていた。
「真由美さんから伺っているかもしれませんが、私はBS魔法師です。ライセンスをとっても上位ランクは取れないでしょうよ」
「…断ると魔法師として大成できないかもしれないし、社会的地位も望めないかもしれないが、それでも良いのかね?」
「お父様!?」
弘一の言葉を聞き、真由美は父親に抗議の意思を示したとき、ザンはスッと立ち上がった。その目は哀れみを持っていた。
「そのような言葉でしか、
「ほう…」
憤怒の表情で立ち上がった弘一だが、ザンの次の言葉で動揺を覚えた。
「青い髪の男に負けたことが、まだ心残りですか?」
「何故、お前がそれを知っている!?」
「言うと思いますか?では、失礼します。…今後、俺にちょっかい出すのは止めていただこう。『七草家』が無くなるのが嫌であれば、ね」
ザンは濃密な殺気を弘一にぶち当てたあと、応接室を勝手に出て行った。弘一は膝から崩れこむ。真由美は部屋を出たザンを追いかけた。
「ごめんなさい、このようなことになると思わなかったの」
「別に、生徒会長のせいではありませんよ。それに、生徒会長が興味あるのは達也ですもんね」
真由美の顔がポンと赤くなった。
「な、なな、ななななな…」
「幾ら『七草』の家とはいえ、『七』ばっかりじゃないですか」
「そ、そんな事はどうでもいいのよ!な、なんでそう思うの!?」
真っ赤な顔で抗議する真由美だったが、ザンは肩を竦めていた。
「あれ、隠しているつもりだったんですか?あんな艶っぽい目で達也のことをいつも見つめているくせに」
「つ、艶っぽいって…、私そんな目していたかしら?」
「やれやれ、自覚が無いとは…。良い事を教えておきましょう。達也みたいなのは、『押しの一手』ですよ。絡めとろうとするから、すり抜けられるんです。密室に誘うなりして、ゴーですよ」
フムフムと頷きながら、何処から取り出したのかメモ帳にメモを取る真由美だった。
「そんなことより、外が騒がしいですね」
「そうね、何かしら?」
外にでたザンと真由美を待っていたのは、報道陣だった。
「桐生斬さんですね?七草真由美さんと婚約されたと伺いましたが?」
思いもよらない事に、真由美は真っ赤になって否定した。ひょっとすると、この報道陣は父親が呼んだのかとも思った。我に返った弘一が出てきたとき核心を捕らえていたと思ったが、どうやら違うようだ。
「誰だ!そのようなデマを流しているのは!今日、桐生くんが来てくれたのは、九校戦の活躍に対してささやかなお祝いをしようと呼んだからだ。そのような事実は無い、帰りたまえ!」
「では生徒会長、私はこれで。このように報道陣が来ては、食事どころではありませんからね」
わざと声を低くせずに話し、報道陣に印象付けると車に乗り込んでしまった。名倉の運転で駅まで送られるザンを、弘一は複雑な表情で見送った。当事者でしか知らない事を、なぜ彼は知っているのか。報道陣を呼んだのは一体誰か。それにあの殺気。今まで弘一が体験したことの無い濃密さだった。彼は本当に一体何者なのか。答えは出ない。
なおザンの時もそうだが、達也や深雪の時も、特に真由美を襲撃する不埒者は現われなかった。
-○●○-
生徒総会、立会い演説会、そして投票が行われた。総会ではまだしも、演説会では深雪が暴走しサイオン光の吹雪が吹き荒れたが、達也がそれを抑えたことにより無事終了した。
「おめでとう、あ~ちゃん」
「中条さん、おめでとう」
あずさが生徒会長に当選し一件落着かと思われたが、いたわるかのような鈴音の言葉と面白がる事を隠すこともしない摩利の言葉で否定された。
「司波さん、無効票なのですからそんなに気にしなくても良いと思いますよ?」
「達也くん、惜しかったな」
「桐生くんの場合は、司波さんの暴走の際に展開させた『無限の小盾』と噂のせいですね」
投票数、五百五十四票。
内、有効投票数、百七十三票。
司波深雪、二百二票。中条あずさ、百七十三票。司波達也、百七十六票。桐生斬、三票。
「でも、こんな結果になるとはねぇ」
「待ってください。大勢の方が勘違いして私に投票したのは認めざるを得ませんが、何故『女王様』や『女王陛下』や『スノークイーン』が私の投票にカウントされているのですか!?」
泣きそうな声で深雪は叫んでいた。
「『深雪女王様』とか『司波深雪女王陛下』とか『スノークイーン深雪様』と投票表紙にありますので、他に解釈の仕方がありませんので…」
申し訳なさそうに鈴音が深雪を宥めようとするが、深雪は納得するはずも無かった。なお、演説会で深雪を達也が止めたせいか、『騎士達也』『女王陛下の教育係』『氷皇帝』などがあった。
「いいじゃんか、深雪。俺なんか、『四葉』と『盾』だぞ!?それも三票はそのどちらかだ。ひどくない?」
「いいんです、ザンさんは!…お兄様ぁ!」
泣き出す妹をそっと抱き、子供をあやすように背中をぽんぽんと叩く。
「大丈夫だよ、深雪。誰が何と言おうと、俺にとってお前は、可愛いお姫様だ」
泣き止んだ深雪だったが、そのまま抱き合っているため空気は甘くなる一方だった。達也と深雪以外は、全員ブラックのコーヒーを濃い目で飲んでいたそうな。
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