では、本文
「それで君は自分のことを強いというのだね。」
大きな屋敷の一角の和室に正座する二人の男は面と向かって座っていた。はっ、と少し相手を馬鹿にするような笑いを浮かべる男は口を開く。
「その自信がなけりゃ、言わねぇよ。ま、それでも俺が最強でいれるのは≪人≫と対峙したときだけだぞ。」
ただまぁ、と言葉を続ける。
「この日本という国のあり方みたいに何かの武門を納めてるわけじゃないからな。イギリス風にいうと騎士道みたいなもんはそこら辺に投げてきたからな。」
それで充分だ。そう目をつぶりながら言う男の名は高城壮一郎。日本の名家の跡継ぎである。この館にも奴の部下は多くおり全員が銃等で武装している。
日本と言う国は平和な国だがこんな裏もあるようだ。しかしこういう人間がいるおかげで日本という国はできているのだろう。
「お前に頼みたいのは我が娘の護衛だ。」
「あー、悪い虫が付かないようにか?」
日本ではあまりないことかもしれないが名家が自分の娘や息子に護衛をつけることは珍しくない。それは今護衛を頼まれた男も分かっているようだ。
「ふっ、そこまでは言わん。娘が、沙耶が選んだ男なら大丈夫だと俺は思っているからな。・・・それに沙耶にはもう気になる男もいるようだしな。」
少し最後は怒気があったような気がする。だが、男はそれを無視する。
「了解っす。金はここに振り込んでもらって良いっすか?」
そう言ってメモを渡す。それを受けとり壮一郎は立ち上がり手を差し出す。
目の前の赤毛の男に少し挑発を込めた笑顔を浮かべながら言った。
「よろしく頼む。コウヤ・アームブラスト。」
「いやっほー!」
奇声をあげながら小太刀を滑らすように≪奴ら≫の頭へと突き刺す。抜くと同時に逆手に持ち替え後ろを見ずに違う≪奴ら≫の頭へと突き刺す。その体制のまま、前方の≪奴ら≫を蹴り飛ばし、小太刀を抜き走る。
ここは藤美学園。そこそこの学力が必要な高校であり進学校としては県内屈指と言われている。そんな藤美学園は今や見る影もなく、ただただ死と恐怖に包まれていた。
「ったく、高城壮一郎はこれも予想の範囲内だったというわけか?」
走りながら依頼者の名前を口に出す。前方に出てくる≪奴ら≫に小太刀を投げつけ殺す。≪奴ら≫が倒れる前に小太刀を引き抜き少し血を払いながら考える。この異常現象。人間が食われ、食われた人間が生き返り人間を襲う。どこぞのゾンビを倒すシューティングゲームのようだ。
階段を駆け昇る。人は助けを求める際上へと向かうべきである。というを聞いたことがあるだろうか?何故か。それは発見しやすいからだと言われている。
山で遭難したとして考えてみよう。捜索はヘリからと徒歩と両方からだ。ただし徒歩の場合は範囲が広くまた、平面を見るため見つけにくい。しかし空からなら一目で見渡せてしまう。ただし山の下の方はヘリからでも見にくいとされている。
「まぁ、本能的には確実に下に、外に逃げたくなるだろうけどな。」
しかしだ。依頼者、高城壮一郎の娘、高城沙耶は天才だ。それぐらいの判断はつくだろう。
「うわぁぁぁぁ!た、助けてぇぇぇ!」
廊下の隅で断末魔をあげる少年を見つける。別に無視してもいいが数は一体だけ。はぁ、とため息をつきながらそちらの方に踏み出し背後に回り小太刀で一突きで殺す。
「うげ、刃こぼれだしやがった。もうこれは使えねぇな。おい、少年。この辺で刃物が手にはいるであろう家庭科室は何処だ?」
少年は助かったことに安堵しているが彼はまだ助かっていないことを知るべきだ。まぁ、これ以上は関わらないから自ら頑張ってほしいところである。
「家庭科室はこの階にあるし、調理室なら職員室の近くにあるよ。・・・、と言うか君もここの生徒ならしってるだろう?」
「残念だが俺が転校してきたのは3日前だ。」
それだけ言うと走り出す。後ろから少年の待ってくれとか置いてかないでくれだのの断末魔が聞こえるが此方にそんな余裕はない。早く高城沙耶を探さなければならない。
家庭科室に到着する。どうやら誰も来ていないようだ。≪奴ら≫もいなければ人一人いない。
「ラッキー、武器の調達ができらぁ。」
鼻唄を歌いながらまち針などの鋭利な物を回収しこの学園の制服である学ランを改造し武器をしまえるようにしてあるホルスターへと入れる。
次に訪れたのは調理室だ。こちらでも同じように鋭利な物を主に包丁だが数本取りだし、ベルト部分に差す。流石に素のままだと危ないので、簡易な鞘を作る。
「よし、補給完了!暫くは大丈夫だな。高城沙耶を見つけねぇとな。」
そう言いつつ鏡を見る。そこには藤美学園の制服を着たアメリカ人がいる。真っ赤な髪を尻尾みたいになるように結んでいる。よくこの学園に転入できたもんだ。流石は日本の名家の高城家である。
「日系アメリカ人ってのも良かったんだろうなぁ。」
再び廊下を走りながら呟く。目の前の≪奴ら≫を蹴り飛ばし後ろの奴にぶつけてドミノ倒しの要領で転ばしていく。
階段を駆け昇る。だがそこにも≪奴ら≫が現れる。しかしコウヤは動きを止めない。懐から包丁を取りだし手のなかでくるくる回しながら接敵する。
自分の体を≪奴ら≫にくっつける。頭を突き刺しその刺した体を盾にするように走る。屋上に出る前に≪奴ら≫
の体を捨てる。
「とぉ、ちゃあーく!」
扉を蹴破る。そこには沢山の≪奴ら≫が存在している。蹴破ったからか此方に迫ってくる。一番近くいる≪奴ら≫を合気道の要領で投げる。横から迫ってくる≪奴ら≫に家庭科室で手にいれたまち針を投げ、額を貫通する。そして此方に迫ってくる≪奴ら≫以外の≪奴ら≫が向かう場所へと走る。
一直線に走る。自らの走路を邪魔する≪奴ら≫のみ包丁で対処していく。しかしあくまでも包丁である。数回の突きで欠けてしまう。
「やっぱり武器が必要だなぁ。」
包丁では強度が足りず骨に当たると欠けてしまう。何本あってもこれでは足りない。
すると突然今しがた向かっていた場所から水が上がる。その水はかなりの勢いで≪奴ら≫に直撃する。
「緊急用の防火用のホースか。考えたな。」
相当の威力だったのだろう。水を浴びた≪奴ら≫は階段に頭を打ち付け死んでいた。
その放水の元へと向かうとそこにいたのは一組の男女だった。
「そこの少年、少女よ。このお兄さんの質問に答えてくれないかい?」
「あんたそこまで歳上には見えないんだが・・・。」
此方はまだ21だから離れていても5つ。そんなに変わらない。
「私は2年B組の宮本麗です。こっちは小室孝。貴方は?」
茶髪のロングヘアーでゴキブリの触覚のような髪の生え方、通称ゴキヘッドをした少女が自己紹介をしてきた。なかなかの美少女で、さらにはスタイルも良い。こんな状況でなければ確実にナンパしようとしているだろう。
「俺は3年A組のコウヤ・アームブラストだ。名前で判ると思うが日系アメリカ人だ。特技は一対一で人間の知覚に関知する前に殺すこと。趣味は最近じゃ、ゾンビ狩りだな。」
ボケッと口を空けながら停止する孝と麗。まぁ、平和な日本ではなかなかない自己紹介だろう。外国でやっても当然のごとくひきつった笑みをされるが。
おもむろにまち針を取りだし孝に向かって投げる。正しくは孝に迫っていた≪奴ら≫に、だが。頭を貫かれその場に崩れ落ちるのを見ながら孝に質問する。
「お前ら、高城沙耶を知っているか?仕事で探してんだけど。」
「高城・・・、そう言えば見てないな。心配だな。」
そうか、ありがとよ。と言って孝と麗に手を振り走り出そうとして止まる。校舎へと繋がる階段は≪奴ら≫で一杯だった。
この作品はテレビアニメまでの予定です。