Baby Steps ~変則バックの使い手~ 作:抹茶小豆餅
本日もお付き合いくださいませ~!!
場所は学校のテニスコート。普段は練習休みの今日にコートを使用するのは禁止されているが、今日に限っては顧問からの許可はもらっている。
顧問も俺が硬式に転向するのにいい顔をしてなかったからか修を応援していたが……まぁ、コートさえ使えりゃなんでもいいけど。
「んで、どっちだ?」
そして試合が始まろうとしている。今はサーブ権を決めるためにラケットを立てている。
「表」
修は返事を聞いてラケットを回す。カラカラと乾いた音をたてながら回り、やがて重力に則って横に倒れる。……マークが見えた、表だ。
「ちっ。……んじゃ、始めるとしようか」
「おう」
短い会話を交わして、お互いにベースラインへと下がっていく。
――ふぅ。
一つ息を吐いて、一回、また一回ボールを弾ませる。ゴムボールの空気も軽く確認……今回のは少し空気が入り気味か。このくらいなら誤差の範囲だな。
ここで補足。一般的に、硬式であろうと軟式であろうとテニスはサーブ側が有利だ。自分から攻めることができ、試合の主導権を握りやすい。
勿論有利というだけで、絶対にゲームがとれるというわけではないのだが。
ゴムボールの状態も確認を終え、サーブを打つためにトスをあげる。うまくあげることができた。サーブを打つのに適したやや前で高すぎない。
腕を鞭のようにしならせ、インパクトの瞬間ボールに順回転が掛かるように手首のスナップを効かせる。
「んぁ!!」
うまく乗った! 回転の乗ったボールは鋭く、相手コートのワイド側の深いところに突き刺さる。
「っく!!」
修も触ることが精一杯。力なく返されたボールはライン内に入ることなく、コート外を転がった。
「
そのボールを回収しながらスコアを宣言。そのままアドサイド側のベースラインに移る。修も軽く素振りをして構えた。
うん、サーブはいい感じだ。他の球種も試したいところだな。
そう考え、トスはさっきよりセンターライン寄り。
「っふ!」
そしてインパクトの瞬間、ボールの上っ面を滑らせるように打つ。所謂スライスサーブと呼ばれる、聞き手側に滑るサーブだ。
「ふっ!!」
しかし修は苦も無げにストレートに打ってきた。球威をやや抑え、ドライブ回転を掛けて入れに来たボール、でもコントロールがいい……!
「っし!」
だが後衛を努める俺をなめるなよ! そのドライブボールに対して、俺はドライブで返す。――が。
「――らぁっ!」
いつの間にか前に来ていた修は、これまた苦もなくボレーを決めた。
「
……くそっ。さすが俺の片割れだ。俺の考えなんてお見通しってか……。
だが今日はフラットがいい。サーブもショットもフラット中心に攻めていった方が良さそうだな。
このあと、フラット中心に修を攻めた。修もなんとか対応しようとしたが、なかなか突破口を見出だせずそのゲームを落とした。
「ふぅ……。ゲーム俺。
だがこのあとだ。サーブは交互に訪れるから、どこかで修のサーブゲームをブレイクしないといけない。キープするだけじゃ勝てない。
コートチェンジを終え、ラケットのガットを整えて、相手のサーブに備える。
ちなみにコートチェンジとは、最初のゲームが終わって一回、そのあとは二ゲーム毎にプレイコートを変えることだ。こうすることでコートや風向きによる不利有利を限りなく無くすことができる。
「っらぁ!」
修のサーブがセンター側に跳ねる。修のサーブは球威こそ無いが――
「っ!? うらぁ!」
カットがすごく掛かっている分厄介だ。バウンドを抑え、鋭く胸元をえぐる。それになんとか対応するが……。
「っと」
サービスダッシュしてきていた修に、難なくボレーを決められる。
修にはスピードサーブを打つことが出来ないが、こうしたトリッキーにさまざまな球種を打つことができる。
その後、修のトリッキーなサーブに翻弄された俺。ゲームを落としてしまった。
「ゲーム俺。
……にゃろう、全国の時よりもキレがあるじゃねぇか。
「っはは……やっぱすげぇな、修!」
ちなみに、自分で言うのもあれだが、俺は身体が大きい。だからそれを活かしてのパワーテニスが信条だ。
「……」
修は、黙ってこっちを見ている。
「お前がここまで出来るようになるまで、どれだけ努力してきたか……俺は見てきたつもりだ」
それこそ、自主練習にも付き合わされたからな。カットサーブのカットはどう打てばよく掛かるのか、ドライブは掛けすぎると伸びるから、どの程度の回転をかけるべきなのか。
「数えきれないほど……だからこそ、俺はお前に負けないように努力してきたつもりだ」
「……そう、だったな。お前は不器用だったから、とにかくパワーを磨いた。お陰で全国有数のビッグサーバーだ」
「あぁ、自信をもって言える。おまえがいたからこそ、俺がここまで来ることができた」
「……」
ポーン……。
左手のボールを見つめ、一度、地面にバウンドさせる。
「この恩は、お前と全力での試合をすることで返す! それがこの三年間のけじめだ!!」
――最強にして最大の壁……俺の片割れ、寒河江修に――全力で勝つ!!
覚悟をボールに乗せて、俺はラケットを振り抜いた。
おかしい……一話で書くつもりだったん……だけどな。
なぜか前後編です。近いうちに投稿するのでお待ちください!