prologue―宇宙へ
「んっ……ここは………」
目を開けてみると、そこには白色の無機質な天井が見えた。
━知らない天井ね………
状況が掴めない。
此処は何処なのか、私は何をしていたのか………
私―博麗霊夢は頭を抱えて、ベットから起き上がった。
―ああ、確か、私死んだんだっけ?
そうだ、私は既に死んだ筈だ。最後は病気だったが、今思えば長生きとまではいかなくとも、随分充実した人生だったと思う。死んだ後はてっきりあの死神の舟に乗っていくものだと考えていたが、あの死神の舟はこんなに機械的なものではなかった筈だ。そもそも、あの舟には船室を設けるスペースなど到底無い。なら、此処は一体何処だ?少なくとも三途の川ではないし、冥界にもこんな場所はなかった筈だ。
私がそこまで思い至ると、ふとあることに気がついた。
―若い、手―?
私は婆さんと呼ばれるような年齢までは生きられなかったが、相応に年は取っていたし、こんな若い手をしている筈がなかった。しかし、目の前にある手は間違いなく自分の手である。もしやと思って、自分が寝かされていた部屋を見回してみるとー
―あ………
部屋の一角に映った自分の姿は、間違いなく昔の自分━具体的には紅霧異変などがあった頃の自分の姿だった。
一体何が起こったのかと思案していると、部屋の一角から空気が抜けるような音がして、足音が聞こえてきた。
―誰?
私は身構えた。もし襲いかかってくるようなら迎撃する為だ。
「目が覚めたかい、お嬢さん?」
男の声だった。
私は、部屋に入ってきたと思われる男を観察する。
身長は180cmを越えているようで、黄色の線が入った白い甲冑と、同じような配色の顔全体を覆う兜を身に付けている。顔の部分には黒い線が入っており、そこから兜の外を見るのかもしれない。
武器のようなものは見当たらず、妖力なども感じない。
そもそも、男は私に敵意を向けてはいないようだった。
「そんな服で宇宙船の残骸に倒れていたもんだから駄目かと思ったが、どうやらお嬢さんは運がいい。ドロイドの診療では見たところ身体に異常はなさそうだ」
男は淡々と話している。どうやら男の話からすると私を助けてくれたようだが、所々意味の分からない単語が聞こえる。
―宇宙船?ドロイド?一体何のこと?
私はそんなものは知らない。あの河童なら機械弄りは得意そうだが、時々魔理沙に聞かされた宇宙へ行けるような船を作れるだけの技術は持っていなかった。それにドロイドなんてものは生涯聞いたことも―
「━━ッツ!!」
突然、激しい頭痛が走った。
同時に、頭の中を知らない知識が駆け巡っていく。
―インフラトン機関、I3エクシード航法、ヤッハバッハ、空間通商管理局、0Gドック………―
「━ッはあッ、ぐぅっ………!」
「おいお嬢さん、どうかしたか!?」
男が何が叫んでいるが、頭痛の所為でうまく聞こえない。
「━ッはあっ、はあっ………」
暫くすると、頭痛は収まってきた。けど、自分の中に知らない言葉が一気に流れ込んできたおかげで今にも頭が熱で逝きそうだ。―――何なのよ、さっきのアレは………
「お嬢さん、大丈夫か、只事ではない様子だったぞ?」
男はどうやら私の身を案じているようだ。
言葉の津波が頭の中に押し寄せて、経験したことのないような痛みに襲われてのたうち回る。だけどそれも数十秒ぐらいで幾らかマシな程度まで落ち着いて、会話ができるぐらいまでには回復した。
「――暫く休めば、落ち着きそうです。………ところで、貴方は?」
私は彼に答えると同時に、彼が何者なのか聞き出す。
「すまない、自己紹介が遅れたな。俺はコーディ、見ての通り、兵士だった」
男―コーディは、兜を脱いで、私に一礼した。
さて、相手に名乗ってもらったのだから、私が名乗らない訳にはいかない。
「私は霊夢――――博麗霊夢よ」
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