夢幻航路   作:旭日提督

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新年明けましておめでとうございます。
昨年は環境の変化や話自体難産だったこともあり、なかなか最新話を形にできませんでしたが、何とか完成まで辿り着けました。これからは、軌道を戻していけるようにしていきます。
今後ともに「夢幻航路」をよろしくお願いします。


第一◯◯話 激情の奔流/博麗幻想郷(Ⅴ)

「敵艦、進路変わらず! 〈アイランドα〉に向かっていきます!」

 

「チッ…………それが狙いか!」

 

 不味い。

 

 嫌な予感がひしひしと貼り付いて離れない。

 

「何としてでも撃ち落としなさい! 後部主砲―――ッ!?」

 

 しまった!! ―――この艦、後ろに撃てない! 

 

 〈開陽〉に乗っていたときの感覚で迎撃を命じようとしたが、今の旗艦である〈ネメシス〉の艦後部に主砲はない。

 咄嗟に思い付いた阻止策も、使えない。

 

 だけど、アレを行かせる訳には…………! 

 

 ―――あの憎たらしい偽魔理沙ともう一人の私…………私の最悪の可能性は、何を仕出かすか分からない。あいつらは、私を潰すためならどんな悪手にだって手を染めるだろう。

 

「早苗ッ!!」

 

「は、はいっ!」

 

 反射的に、早苗を呼ぶ。

 

 策が……ある訳でもない。

 

 でも、やれることはやらなくちゃ。

 

「無人機を全部出して! 今飛んでる奴も全部、あいつらにぶつけなさい!!」

 

「りょ―――了解ですッ!」

 

 早苗の周囲に蒼白い電子の円環が浮かび上がり、彼女の頬には緑色に淡く光る神経が通う。

 彼女が艦のコントロールユニットを介して、機器の操作に集中しているときに現れる現象(エフェクト)だ。

 

 〈ネメシス〉の艦橋後部に設置された24基の電磁カタパルトが起動し、艦載機を射出せんとバチバチと黄金の輝きを軋ませる。

 ハッチが開き、与圧室と宇宙が一体になった瞬間、盛大に勢いをつけて並んだ艦載機が"発射"された。

 

 AIF-9Vスーパーゴースト、VF-19Aエクスカリバー、VF-11Bサンダーボルト、Su-37Cフランカー、T-65Bスターファイター…………

 

 新型から旧式まで、ありとあらゆる今まで運用されてきた艦載機がマリサの旗艦に殺到する。

 自動制御された彼女達は、無駄な慈悲など微塵たりとも持ち合わせていない。既に〈ネメシス〉の斉射でズタボロになった敵艦に、傷痕を抉るようにしてミサイルやレーザーの雨を叩き込んでいく。

 

 ――それでも尚、敵艦は墜ちなかった。

 

 それどころか、残された僅かな武器を的確に指向して、此方の無人艦載機を一機、また一機と狙い撃ちにして確実に数を減らしてくる。

 

「っ!? なんて硬さなの!」

 

「くっ―――無人艦載機、損耗率30%を越えました! 霊夢さん!」

 

 無人機を制御している早苗からも、悲鳴のような報告が届けられる。

 

 ―――なんで、どうして…………

 

 ……何が、彼女達をあそこまで駆り立てるのか。

 同族嫌悪にしては、あまりにも度が過ぎる。

 もう"幻想の糸"が切れたなら、潔く消えれば一瞬で楽になれるというのに。

 

「かくなる上は…………!」

 

 ―――だけど、こっちだって、背負っているものがある。

 

 昔の私とは、もう違うんだ。

 

 つい最近までの、何も背負うものがなかった私とは、もうさよならだ。

 

 だから――――世界に仇為す創造神(オーバーロード)に与する偽物如きに、負けるわけにはいかない。

 あの二人をこの世界から抹消するまで、私に止まることなど許されない。

 

「―――全艦、反転180度! 奴等を追いなさいッ!!」

 

「「「アイアイサー!!」」」

 

 〈ネメシス〉の両舷に設置されたキック・パルス・モーターが力強く噴射し、強引に艦の向きを反転させる。

 慣性制御が急な反転に追い付かず、艦内には通常時を越えたGが降り注ぐ。

 

「っぐ…………ッ!」

 

「きゃっ……!?」

 

 左手で艦長席の手摺を掴んで、右手で重力に流されてきた早苗を掴んで受け止める。

 

「れ、霊夢さん!?」

 

「――今は、黙って。制御に集中して頂戴」

 

「あ―――は、はい!」

 

 早苗の身体が、右半身に押しかかる。

 彼女の身体を受け止めた右手はちょうど腰に回される形になり、自分でも流石に恥ずかしくなる。

 当たっている彼女の身体の、柔らかい熱さを感じて目眩がするが、強引に理性で押し留めた。

 

 今は、それどころではないのだから。

 

「艦長! 、敵艦、主砲射程圏内に捉えたぜ!」

 

「よし、その調子よ。あんたのタイミングでぶっ放して!!」

 

「イエッサー!」

 

 砲手のフォックスがトリガーを引き、〈ネメシス〉の大口径3連装レーザー主砲が放たれる。

 破壊の概念を秘めた雷は、神の怒りの如く敵艦を容赦なく貫き、遂にそのエンジン(心臓)を貫いて見せた。

 

「よしっ、命中!」

 

「敵艦、インフラトン反応拡散中!」

 

 撃沈―――誰もがそう思っただろう。

 

 エンジンを貫かれて、無事で済む(フネ)など居はしない。それが常識だから、みんな勝利を疑わない。

 

 ―――私一人を、除いては。

 

「……気を緩めないで。敵艦が粉微塵になるまで撃ち続けなさい」

 

「――なに? …………了解した。主砲、第二射用意」

 

 フォックスは一瞬疑問を持った様子だったものの、大人しく私の命令を聞き入れて、次弾の準備を開始した。

 あれだけの硬さを見せた敵だ、たかだか一斉射で沈むとは思えない。

 

「ちょ、霊夢さん!? なんでですか!?」

 

 案の定、隣からは驚きと、僅かな抗議を込めた声。

 

 優しい彼女からすれば、心外な行為なのだろう。

 

 だけど―――やらなくちゃ。

 

 ここで、あいつらを仕留めておかないと…………

 

「――悪い予感が、消えないの」

 

 右腕に、力を入れる。

 

 頼るように、縋るように。

 

 このままあいつらを生かしておいたら、とんでもないことが起こっちゃう。

 

 だから…………

 

「―――早苗、やって」

 

「……分かりました。霊夢さんが、そう仰るなら」

 

 右半身に感じていた、暖かさが離れていく。

 

 その瞳に決意を宿した彼女は、再び電子の世界へと沈んでいく。

 

 ―――ごめんなさい、付き合わせてしまって。

 

 早苗には、悪いことをしてしまった。

 

 私の都合に合わせて、無理を強いてしまっている。

 

 私が命じたことは、優しい彼女からすれば本来なら業腹ものに違いない。

 

 だけど、何としてでも…………

 

 それが、抑止力(今の私)としての存在意義なのだから。

 

「―――主砲、全力でぶっ放せ!!」

 

 〈ネメシス〉の主砲が、再び敵を目前に捉える。

 

 収束された蒼白いエネルギー弾が、雷鳴のように宇宙(ソラ)を切り裂き、破壊と蹂躙を振り撒いた。

 

 …………今度こそ。

 

 殺った、という手応えは、無い。

 

 当然だ。生身で戦う訳でもなく、直接真っ二つに裂いた訳でもない。間に戦艦という異物と宇宙という真空を挟んでいるからには、相手を殺した手応えは感じられない。

 

 ……だけど、直接手に掛けたときの気持ち悪さを感じないのは、この上なく有難い。

 偽物と破綻者如きを始末するときにまであんな感触を感じさせられてしまえば、それこそ私は狂ってしまいそうだ。

 

 だから、その点だけは…………敵が戦艦に乗っている点だけは、感謝しよう。

 

 

 前方の爆発が、次第に終息を迎えていく。

 

 線香花火のように乏しい火球の奥に現れたのは、真っ二つに切り裂かれてぐちゃくちゃになった敵の戦艦。

 

「敵艦、活動停止。断続的に爆発が続いています」

 

 画面には、火を吹いて誘爆を繰り返す敵艦の姿。

 

 今度こそ、完全に沈めた。

 

 だけど、何? この胸騒ぎは。

 

 あれだけの爆発、今度こそ殺した筈なのに。―――生きていられる筈なんて、ないのに。

 

「か、艦長!」

 

「――――何!」

 

「〈アイランドα〉より通信! 敵に侵入されたとの事です!」

 

 オペレーターの、風雲急を告げる張り詰めた報告。

 

 酷く耳障りなそれが、苛立ちを加速させていく。

 

「くっ…………やられたか。全艦、全速前進! 急いで!」

 

 してやられた。恐らく奴等は、戦艦を囮にして、戦闘機か何かで直接あの遺跡船に乗り込んだのだろう。なにかしら仕出かされる前に、殺さないと。

 

 殺せ、殺せ、早く殺せ…………と、私じゃないナニカが私と一緒に吠えている。

 あいつらは世界の敵だ、幻想の敵だ、と、頭の中でガンガンガンガン鳴り響く。

 

 ――――ああ、五月蝿い。

 

 そんなこと、分かってるのに。

 いちいち言われなくたって、最初からそうするつもりなんだって。

 

 殺せ、殺せ、殺せ……! 

 

 どんどんどんどん、耳障りな指示はその音量を上げていく。まるで早く達成しないと、とんでもないことが起こるのだと告げるように。

 

 ―――あいつらを殺したら、この音と不快な悪寒は鳴り止んでくれるのだろうか。

 

 …………あいつらは、世界の敵だ。創造神(オーバーロード)に与する裏切り者だ。だから殺せ。

 

 得体の知れないナニカからの、繰り返される断続的な指示。

 思えば、ついさっきも私の思考にナニカが自然と流入していた。

 不気味ではある。が、今はそれどころではない。

 この声がどんな存在であれ、あいつらを殺すのが先決だ。

 あいつらを殺した後に、幾らでも調べればいい。

 

 

 とにかく、今は――――

 

 

 奴の息の根を、止めるのが先だ。

 

 

 はやく、ころさないと――――殺さないと………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~始祖移民船〈アイランドα〉仮設ブリッジ~

 

 

「敵の動きは?」

 

「はい………現在、敵は中央居住区エリアを無作為に荒らし回っているみたいです。無秩序な爆撃を繰り返しています。その意図は、掴みきれませんが………」

 

 移民船の指揮を預かるサナダが、統括AIのブロッサムに戦況を確認する。

 ホログラムモニターで示されている艦の断面図では、まるで病巣のように、中央居住区が真っ赤に染められて表されていた。

 "もう一人の博麗霊夢"とマリサに進入されてから、瞬く間に被害は拡大した。

 防衛機構は用を成さず、ただ破壊されるだけ。それを食い止めようにも、二人は未だ有効な手を打てずにいた。

 

「………待っているな、アレは」

 

 敵の行動をモニター越しに観察していたサナダが、ふと呟いた。

 

「はい?」

 

 サナダの発言の意図を図りかねたブロッサムは、疑義の意図を含んだ声を漏らす。

 敵の行動の意図を予測しかねていた彼女にとって、サナダが直感の如く答えを導きだしたのは誠に疑問だった。

 彼女から見れば、科学と論理を重んじる彼は、AIの自分には予測しやすい人間に見えていた。だがこうした側面を鑑みると、やはり彼も歴とした人間だと実感させられる。

 

 ―――この数千年の漂流で、私の勘も鈍りましたか。

 

 かつて、このフネに"人間"が残っていた頃ならば、間違いなく自分は"人間"であっただろう。しかし、数千年の孤独は、彼女を只のAIに引き戻すには充分過ぎた。故に、外面は取り繕えても内面は機械的。敵の感情を察しきれない機械に成り下がりつつあることは、彼女にとって、些かショックではあった。

 だが、何も感じない機械にまで退化していないことはまだ救いだ。久方ぶりの人間との接触で、それを確認できたのは僥倖であった。

 

 彼女はふと思い浮かんだ極めて個人的な"感情"を思考の片隅に留め置きながら、再び戦況観察に分割思考を振り向ける。

 

「考えてみろ、アレの目的は艦長だ。あのエネルギー体の群が艦内で暴れ回っているのも、艦長を誘き出すためだろう」

 

「なるほど………確か彼女は、艦長に並々ならぬ感情を抱いていたようですね。ですが、データは見させてもらった限りでは、あそこまで攻撃的ではなかった筈ですが」

 

「………十中八九、"彼女"だろうな」

 

 サナダは、暴れまわるエネルギー体の中心に侍る、二つの反応に眼光を飛ばす。

 

 片方は、恐らくエネルギー体を操っていると思われる霊沙―――もう一人の、博麗霊夢。

 そしてもう片方は―――霊夢を焚き付けた張本人の、マリサだ。

 尤も、博麗霊夢の混濁した激情は、彼女の予想に収まるようなものではなかったのだが、ここの二人には、それを知る術はない。

 

「――ともかく、今は我々にできる手立てはない。センチネルも無人兵器も歯が立たない以上、座して静観するしかない」

 

「それはそうかもしれないですけど―――このままほっといたら、乗組員にも被害が出ますよ?」

 

 珍しく後ろ向きな、それでいて的確に事実を言い当てたサナダに対して、ブロッサムが反論の意を込めて発言する。

 今は彼等が一時的に根城にしているものの、ここは本来彼女の居場所だ。そして彼女は、このフネの全権を預かる統括AIである。無論防衛もその責務の一つであり、歯が立たないから諦めます、という話にはならないのだ。

 しかし打つ手がないのは彼女にも見えていることであり、この矛盾に唸りを上げるものの、効果的な打開策は彼女一人では見えてこない。

 

「分かっている。だから、形だけでも防衛線を構築する。ブロッサム君、敵とこのブリッジとの中間地点に第一防衛線を構築する。センチネルを集中させてくれ。同時に、クルーの避難も進めさせろ」

 

「分かりました、抜かりなくやっておきますね」

 

 サナダが打ち出したのは、焼け石に水のような場当たり的な対応。しかし、今はそれしか打てる手がないというのも、また事実であった。

 敵に対してなにもできない無力感を噛み締めつつ、ブロッサムはサナダの指示に従ってセンチネルの配置を変更し、兵器工場に増産を指示する。

 

「……せめて、"アレ"が間に合っていればな」

 

「無いものをねだっても、しょうがないんじゃないですか?」

 

 サナダとブロッサムが指すものは、シオンのチームが開発中だった新型の白兵戦装備―――境界逆転兵装(アンチ・ファンタズム・アーマー)であった。

 ヴィダクチオ星系での最終決戦で霊夢が使用したパワードスーツをベースとして、通常の敵以外の脅威―――まさしく、霊夢のような超常の存在とも一戦交えることを想定して建造されていたそれならば、いま〈アイランドα〉で暴れ回る敵に対しても幾らか効果的な抵抗ができただろう。(因みに、開発に当たっては霊夢の血液のデータが使われている………らしい)

 しかし、その新装備もヤッハバッハとの戦闘を前に重要度低しとして開発は凍結され、最近になってやっと開発が再開したものの、完成はまだまだ先のことと見込まれていた。

 現在、試作零号機〈オルテナウス〉及び壱号機〈ルシフェリオン〉、弐号機〈バルニフィカス〉の三機が開発中のそれは、今回の襲撃を受けて急遽稼働に向けて急ピッチで整備されているものの、元の完成度が微妙なため、戦力として投入できるかどうかは未知数である。そして、シオンから実戦投入可能の報告は、まだ来ない。

 そのため、今は艦長の帰還までは通常兵器で耐える他に手段はなかった。

 

「……確かにな。現有の兵器がせめて、時間稼ぎにはなれば良いのだが」

 

 二人は、投入しては消えて行く兵器のアイコンをじっと見つめながら、戦況の監視を続ける。

 

 今は、勝算がなくとも、ひたすら戦い続けなければならなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――

 

 

 時刻は遡り、"霊夢"とマリサが〈アイランドα〉に辿り着いた頃―――

 乗艦を霊夢の執拗な攻撃で破壊された彼女達は、脱出ポットで強引に艦内へと降り立つ。

 その目的を、復讐を、果たすために。

 

 

 

「着いたぞ」

 

 乾燥した、無機質な声。

 事務的な口調の彼女の声で、曖昧だった意識が輪郭を帯びてくる。

 一歩そこから踏み出せば、そこには偽りの大地と空。

 

 ――そう、私達の、戻ってきたのだ。

 あの憎たらしい、あいつの居場所に。

 

「……ありがとう。―――私は行くわ」

 

「そうか。………まだ死んでくれるなよ? 霊夢。お前は―――」

 

 何処か機械じみた声色に、若干の熱が籠る。

 酷く不機嫌そうな彼女の横顔が、視界の端にちらりと映った。

 

「分かってるわ。アイツになんて、殺されてたまるもんか。死ぬのはあっちの私よ」

 

「………ああ、そうだな。―――時間は一時間だ。それ以上経過するなら引き揚げろ」

 

 全く、心配性な奴だ、と心底思う。

 

 元々この襲撃に反対だった彼女からすれば、こんな場所からは一刻も早く抜け出したいに違いない。

 

 ―――だけど、彼女は私の我が儘を聞いてくれた。

 

 それなりに気に入っていた宇宙船を犠牲にしてまで、私をここまで運んできてくれた。ならば、それに報いるだけの結果を出すまで。

 

 アイツを殺して、このむしゃくしゃした感情に決着をつける。

 

 復讐は、有意義だ。

 

 巷では無意味だとも言われるが、私はそうとは思わない。

 復讐は、一つのけじめだ。

 アレが幻想の尖兵ならば、私はそれを粉々に砕いてやろう。アレの存在を消すことで、私をこんなんにした幻想に、一矢報いてやろうじゃないか。

 

 ………でなければ、私は彼女の隣には立てない。

 

 私がもう一度、彼女の隣に立つためには、彼女を一度殺した幻想に、その責任を取らせないと。

 

 ―――それが、"幻想の尖兵"として一度は彼女を手に掛けた私の、せめてものの罪滅ぼしだ。

 

「―――じゃあ、行くね」

 

「―――ああ」

 

 墜落した宇宙船の残骸から、偽りの陽光に向けて飛翔する。

 

 外壁を蹴り飛ばし、光に包まれた青空の先には、無数の防衛機構(センチネル)の群。

 

 ―――やってやろうじゃないの。

 

 身体じゅうの血肉が、沸き上がって躍動する。

 

 復讐と嫌悪と責任感―――それしかなかった感情に、新しい色が混ざり込む。

 

 ―――バラバラにしてやる。

 

 夢想封印。

 

 撒き散らした光弾が、機械の翼に穴を穿って強引に地面へと叩き落とす。

 

 次から次へと、新しいガラクタが飛んでくるが、私はそれらを全てガラクタへと変えていって、無計画に飛び回る。

 

 何もできないままに落とされていく、哀れな翼。

 

 その悲劇を積み重ねているのが他ならぬ私だというのが―――たまらなく愉しい。

 

 

 

 ……さて、そろそろ頃合いか。

 

 霊力を編んで、幻影を呼び出す。

 

 既にイメージは組んであったから、呼び出すのは簡単だ。

 

 かつて戦った幻想少女、その写し身を、空に並べる。

 

 私が踏み潰していった、異変の主達。

 

 朧気にしか覚えていなくとも、その閃光は、確かに私の脳裏に焼き付いていた。

 

 彼女達の姿を借りた幻想達は、利口な人形のようにみんな私の後ろに侍る。

 

 外面だけを真似た、虚ろな人形達の群れ。

 

 所々剥がれた表皮(テクスチャ)から覗く虚数(暗黒)は、まるで底無し沼のようにまっくらだ。

 

「―――行きなさい」

 

 腕を振り下ろし、幻想の人形達に命じる。

 

 人形共は表情一つ変えぬまま、ゆらり、ふわりととんでいく。

 

 彼女達は思い思いの方角へと散っていき、空から光をばら撒きながら、偽りの緑を更地へと変えていく。

 

 人も緑も青空も、何もかもを虚無へと沈める。

 

 まっくらな貌はケタケタと薄気味悪い笑みを浮かべていて、私のように気持ち悪い。

 

 ――くく、っ………

 

 かつてこれほどまで、愉しいことがあっただろうか。

 

 嫌悪していたのが馬鹿馬鹿しいくらいに、たまらなく心地いい。

 

 混沌と破壊に身を委ねて、自分のなかに溜まった汚泥を四方八方に撒き散らして、どこまでも堕ちていく。

 

 ―――ああ、なんて楽しいのだろうか。

 

 いままで必死に繋ぎ止めてきたもの、守ってきたものを投げ捨てて、ただアイツを殺すために、思うがままに力を振り撒く。

 

 そのどれもが、最高(最悪)に愉し過ぎてたまらない。

 

 ―――さぁ、早く出てこい。………全力で叩き潰してあげるわ、博麗霊夢……!! 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっと、そこまでよ。お二人さん」

 

 

 ──ふと、声が、聞こえた。

 

 

「誰だッ!?」

 

 マリサが、叫ぶ。

 

 ここには、私達の障害になるような存在は居なかった筈…………

 

 そんな都合の良い考えは、いとも容易くひっくり返る。

 

 最悪のタイミングで、まるで冷や水を浴びせられたみたいに。

 

 

 流麗に流れる、金の髪。

 氷のように無機質な、蒼の瞳。

 衣装こそあの"作り物"のものだったが、その姿は、間違いなく…………

 

 

 見間違える筈がない。

 あれは…………

 

「何故、どうして──」

 

「お前が、ここに居るんだ──」

 

 

 

 

 

 

 ────アリス・マーガトロイド!? 

 

 




 プロフィールが更新されました

 ~博麗 霊夢~

 筋力:E-
 耐久:D
 敏捷:EX
 霊力:EX
 宝具:ー

 属性:秩序・中庸 (New!)
※属性は、状況によって変化する。

 skill

 ・艦隊指揮:C

 ・直感:A

 ・空を飛ぶ程度の能力

 ・永遠の巫女:EX (Rank UP!)

 ・破滅願望

 ・抑止の先鋒:EX (New!)

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