完全版ができたら本話は削除致します。
「敵艦、進路変わらず! 〈アイランドα〉に向かっていきます!」
「チッ…………それが狙いか!」
不味い。
嫌な予感がひしひしと貼り付いて離れない。
「何としてでも撃ち落としなさい! 後部主砲―――ッ!?」
しまった!! ―――この艦、後ろに撃てない!
〈開陽〉に乗っていたときの感覚で迎撃を命じようとしたが、今の旗艦である〈ネメシス〉の艦後部に主砲はない。
咄嗟に思い付いた阻止策も、使えない。
だけど、アレを行かせる訳には…………!
―――あの憎たらしい偽魔理沙ともう一人の私…………私の最悪の可能性は、何を仕出かすか分からない。あいつらは、私を潰すためならどんな悪手にだって手を染めるだろう。
「早苗ッ!!」
「は、はいっ!」
反射的に、早苗を呼ぶ。
策が……ある訳でもない。
でも、やれることはやらなくちゃ。
「無人機を全部出して! 今飛んでる奴も全部、あいつらにぶつけなさい!!」
「りょ―――了解ですッ!」
早苗の周囲に蒼白い電子の円環が浮かび上がり、彼女の頬には緑色に淡く光る神経が通う。
彼女が艦のコントロールユニットを介して、機器の操作に集中しているときに現れる
〈ネメシス〉の艦橋後部に設置された24基の電磁カタパルトが起動し、艦載機を射出せんとバチバチと黄金の輝きを軋ませる。
ハッチが開き、与圧室と宇宙が一体になった瞬間、盛大に勢いをつけて並んだ艦載機が"発射"された。
AIF-9Vスーパーゴースト、VF-19Aエクスカリバー、VF-11Bサンダーボルト、Su-37Cフランカー、T-65Bスターファイター…………
新型から旧式まで、ありとあらゆる今まで運用されてきた艦載機がマリサの旗艦に殺到する。
自動制御された彼女達は、無駄な慈悲など微塵たりとも持ち合わせていない。既に〈ネメシス〉の斉射でズタボロになった敵艦に、傷痕を抉るようにしてミサイルやレーザーの雨を叩き込んでいく。
――それでも尚、敵艦は墜ちなかった。
それどころか、残された僅かな武器を的確に指向して、此方の無人艦載機を一機、また一機と狙い撃ちにして確実に数を減らしてくる。
「っ!? なんて硬さなの!」
「くっ―――無人艦載機、損耗率30%を越えました! 霊夢さん!」
無人機を制御している早苗からも、悲鳴のような報告が届けられる。
―――なんで、どうして…………
……何が、彼女達をあそこまで駆り立てるのか。
同族嫌悪にしては、あまりにも度が過ぎる。
もう"幻想の糸"が切れたなら、潔く消えれば一瞬で楽になれるというのに。
「かくなる上は…………!」
―――だけど、こっちだって、背負っているものがある。
昔の私とは、もう違うんだ。
つい最近までの、何も背負うものがなかった私とは、もうさよならだ。
だから――――
あの二人をこの世界から抹消するまで、私に止まることなど許されない。
「―――全艦、反転180度! 奴等を追いなさいッ!!」
「「「アイアイサー!!」」」
〈ネメシス〉の両舷に設置されたキック・パルス・モーターが力強く噴射し、強引に艦の向きを反転させる。
慣性制御が急な反転に追い付かず、艦内には通常時を越えたGが降り注ぐ。
「っぐ…………ッ!」
「きゃっ……!?」
左手で艦長席の手摺を掴んで、右手で重力に流されてきた早苗を掴んで受け止める。
「れ、霊夢さん!?」
「――今は、黙って。制御に集中して頂戴」
「あ―――は、はい!」
早苗の身体が、右半身に押しかかる。
彼女の身体を受け止めた右手はちょうど腰に回される形になり、自分でも流石に恥ずかしくなる。
当たっている彼女の身体の、柔らかい熱さを感じて目眩がするが、強引に理性で押し留めた。
今は、それどころではないのだから。
「艦長! 、敵艦、主砲射程圏内に捉えたぜ!」
「よし、その調子よ。あんたのタイミングでぶっ放して!!」
「イエッサー!」
砲手のフォックスがトリガーを引き、〈ネメシス〉の大口径3連装レーザー主砲が放たれる。
破壊の概念を秘めた雷は、神の怒りの如く敵艦を容赦なく貫き、遂にその
「よしっ、命中!」
「敵艦、インフラトン反応拡散中!」
撃沈―――誰もがそう思っただろう。
エンジンを貫かれて、無事で済む
―――私一人を、除いては。
「……気を緩めないで。敵艦が粉微塵になるまで撃ち続けなさい」
「――なに? …………了解した。主砲、第二射用意」
フォックスは一瞬疑問を持った様子だったものの、大人しく私の命令を聞き入れて、次弾の準備を開始した。
あれだけの硬さを見せた敵だ、たかだか一斉射で沈むとは思えない。
「ちょ、霊夢さん!? なんでですか!?」
案の定、隣からは驚きと、僅かな抗議を込めた声。
優しい彼女からすれば、心外な行為なのだろう。
だけど―――やらなくちゃ。
ここで、あいつらを仕留めておかないと…………
「――悪い予感が、消えないの」
右腕に、力を入れる。
頼るように、縋るように。
このままあいつらを生かしておいたら、とんでもないことが起こっちゃう。
だから…………
「―――早苗、やって」
「……分かりました。霊夢さんが、そう仰るなら」
右半身に感じていた、暖かさが離れていく。
その瞳に決意を宿した彼女は、再び電子の世界へと沈んでいく。
―――ごめんなさい、付き合わせてしまって。
早苗には、悪いことをしてしまった。
私の都合に合わせて、無理を強いてしまっている。
私が命じたことは、優しい彼女からすれば本来なら業腹ものに違いない。
だけど、何としてでも…………
それが、
「―――主砲、全力でぶっ放せ!!」
〈ネメシス〉の主砲が、再び敵を目前に捉える。
収束された蒼白いエネルギー弾が、雷鳴のように
…………今度こそ。
殺った、という手応えは、無い。
当然だ。生身で戦う訳でもなく、直接真っ二つに裂いた訳でもない。間に戦艦という異物と宇宙という真空を挟んでいるからには、相手を殺した手応えは感じられない。
……だけど、直接手に掛けたときの気持ち悪さを感じないのは、この上なく有難い。
偽物と破綻者如きを始末するときにまであんな感触を感じさせられてしまえば、それこそ私は狂ってしまいそうだ。
だから、その点だけは…………敵が戦艦に乗っている点だけは、感謝しよう。
前方の爆発が、次第に終息を迎えていく。
線香花火のように乏しい火球の奥に現れたのは、真っ二つに切り裂かれてぐちゃくちゃになった敵の戦艦。
「敵艦、活動停止。断続的に爆発が続いています」
画面には、火を吹いて誘爆を繰り返す敵艦の姿。
今度こそ、完全に沈めた。
だけど、何? この胸騒ぎは。
あれだけの爆発、今度こそ殺した筈なのに。―――生きていられる筈なんて、ないのに。
「か、艦長!」
「――――何!」
「〈アイランドα〉より通信! 敵に侵入されたとの事です!」
オペレーターの、風雲急を告げる張り詰めた報告。
酷く耳障りなそれが、苛立ちを加速させていく。
「くっ…………やられたか。全艦、全速前進! 急いで!」
してやられた。恐らく奴等は、戦艦を囮にして、戦闘機か何かで直接あの遺跡船に乗り込んだのだろう。なにかしら仕出かされる前に、殺さないと。
殺せ、殺せ、早く殺せ…………と、私じゃないナニカが私と一緒に吠えている。
あいつらは世界の敵だ、幻想の敵だ、と、頭の中でガンガンガンガン鳴り響く。
――――ああ、五月蝿い。
そんなこと、分かってるのに。
いちいち言われなくたって、最初からそうするつもりなんだって。
殺せ、殺せ、殺せ……!
どんどんどんどん、耳障りな指示はその音量を上げていく。まるで早く達成しないと、とんでもないことが起こるのだと告げるように。
―――あいつらを殺したら、この音と不快な悪寒は鳴り止んでくれるのだろうか。
…………あいつらは、世界の敵だ。
得体の知れないナニカからの、繰り返される断続的な指示。
思えば、ついさっきも私の思考にナニカが自然と流入していた。
不気味ではある。が、今はそれどころではない。
この声がどんな存在であれ、あいつらを殺すのが先決だ。
あいつらを殺した後に、幾らでも調べればいい。
とにかく、今は――――
はやく、ころさないと――――
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プロフィールが更新されました
~博麗 霊夢~
筋力:E-
耐久:D
敏捷:EX
霊力:EX
宝具:ー
属性:秩序・中庸 (New!)
※属性は、状況によって変化する。
skill
・艦隊指揮:C
・直感:A
・空を飛ぶ程度の能力
・永遠の巫女:EX (Rank UP!)
・破滅願望
・抑止の先鋒:EX (New!)
本作の何処に興味がありますか
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百合