夢幻航路   作:旭日提督

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大学が始まってテストがあったり、PS4のマイクラに嵌まったり、BF4でショットガン構えて突撃してました。
すいません言い訳です。では本編です。


第一三話

 ~イベリオ星系郊外・宇宙遺跡内部~

 

 

 今、私達はこの宇宙ステーションの遺跡内部にあるというエピタフ遺跡に向かって進んでいる。エピタフというのはどうも古代の遺物のようで、手にする者は莫大な富を得ると言われている代物だ。

 探索隊のメンバーは私とサナダさんにチョッパー、そして霊沙の4人だ。この先に高濃度汚染区画が存在するのでサナダさんとチョッパーは気密服と装甲服を着込んでいるが、私と霊沙は能力で何とかなるので普段の空間服のままだ。だってこっちのほうが動きやすいし。

 エピタフ遺跡までは距離があるので移動は車を使っている。私と霊沙は飛べるのだから別に車に乗らなくても良いのだが、勝手の分からない遺跡内部で独断先行する事態は不味いので、部隊単位で行動するために私達も車に乗っている。遺跡の通路は放棄されてから随分経ったらしく、損傷が目立つ。

「見えたぞ。あそこが居住区への入り口だ。」

 移動用のハンヴィーを運転していたサナダさんが居住区に繋がるゲートを確認し、車を止めた。因みに今私達が乗っているハンヴィーだが、これは車輪を格納すれば反重力車として無重力空間でも使用可能な優れものだ。この区画は重力制御が働いているので、通常の車として使っている。

 居住区への入口は固く閉ざされ、来るものを拒むような雰囲気を醸し出している。サナダさんは車を降りると扉の脇に立ち、操作を始める。

「よし、これで良いな。」

サナダさんが操作を終え、扉から離れた。すると、扉がぎこちない機械音を立てながらゆっくりと開き、同時に居住区の中から通路の方へと砂埃が立ち込めた。

「進むぞ、艦長。」

「ええ。」

サナダさんは再び運転席につくと、車を居住区内に向けて走らせた。

 居住区内部は強風が吹き荒れ、砂埃が舞っている。視界が悪いので遠くまでは見えないが、周りの建築物は全て半壊していたり、高層建築に至っては倒木のように根元から折れているものもある。かつては栄華を極めたであろう近代的都市はその面影もなく、無残に崩れ去っていた。

「・・・これは、酷いな。」

霊沙が呟く。彼女もこの光景を見て、何か思うところがあったのだろう。

「俺も職業柄荒廃した都市は腐るほど見てきたが、ここまで酷いのは初めてだ。これじゃあ都市を通り越して正真正銘の”遺跡”だな」

チョッパーは以前は兵士だったらしいので、このような荒れ放題の都市は何度も見てきたのだろう。彼は表面では普通に見えるが、内心では凄惨な市街戦の様子でも思い浮かべているのだろうか。

「むぅ・・・この様子を見ると、気象制御装置が重大な故障を起こしているのかも知れないな。気象制御の暴走によって放棄されてから、管理する人間がいなくなったこともあってさらに異常が進んだと見るべきだろう。」

サナダさんはこんな時でも平静に自身の推論を述べている。

「ケホッ・・・あんたは相変わらず通常運転ね。まあいいわ。遺跡まではあとどれ位かかるの?」

「あと20分といったところだが・・・艦長、やはり気密服を着てくるべきだったのでは?」

「いや、問題ないわ。」

 サナダさんは埃に咳込む私を心配して声を掛けてくれるが、私(と霊沙)は能力で「浮いて」いる状態なので、大気中の有害物質が体の中に入ることはない。私の感覚としては、魔法の森の瘴気より少しきついくらいで、活動に何ら支障はない。

「ハッ、この程度で咳込んでるなんて、軟弱だな、”艦長”さん?クククッ・・・」

「っさいわね!それとこれとは別でしょ。大体誰の御蔭で艦に乗っていられると思っているのよ。」

 霊沙が咳込む私食って掛かる。

 どうもこいつは私が嫌いらしく、時々こうして馬鹿にしてくる時がある。なんでも彼女がいた幻想郷でそこの私にコテンパンにされたらしいが大方異変でも起こしたせいだろう。それなら自業自得だ。それにそこの私とここの私は別人だ。混同するんじゃないわよ。

「はぁ、そのことは感謝しているって何度も言ってるだろ。大体艦に乗る条件に”お前を揶揄わない”なんてのはなかったが?」

なんて霊沙は言っているが、そんな態度を見れは怪しいものだ。溜息つきたいのはこっちだっての。

「っ・・・もういいわよ。あんたと話してると疲れるわ。」

霊沙と付き合っててもまたからかわれるだけなので、とりあえず私は霊沙の声から逃げることにした。

「ちぇっ、つまんない奴。」

なにやら霊沙は不満のようだが、気にしない。

「なあ艦長、前から気になってたんだが、霊沙とは姉妹か何かなのか?」

 

 ――ハァ?私がコイツト姉妹デスッテ?――

 

「「誰がこいつなんかと姉妹ですって(だって)?」」

 

 私はチョッパーの質問に抗議したが、その声が見事に霊沙のものと被ってしまった。

「「あ・・・」」

私と霊沙は、互いに顔を見合わせる。

「っ・・・もういいわ。この話はなし。」

「同感だ。」

このまま続けても埒が空かないので、ここで強引に話題を打ち切った。

 

 その後しばらく車内では無言の状態が続いたが、居住区を抜けたところで再びサナダさんが閉じられたゲートを確認し、解錠作業を行う。サナダさんが暫く作業を続けると扉は開き、私達は遺跡を目指してさらに車を走らせた。

「ところでサナダさん?エピタフ遺跡って異星文明の遺跡って聞いたけど、なんで人間が使ってたステーションの残骸から出てくるのかしら?」

思えば、そこが不思議な点だ。この宇宙ステーションの遺跡は風のない時代に建設された人類の宇宙ステーションらしいが、エピタフはそれ以前の異星文明の遺物らしい。とすればエピタフ遺跡もその異星文明の遺跡となるが、なぜ人間が建設したものの中から出てくるのだろうか。

「そうだな・・・一番考えられるのは、当時の人間が研究目的等の為に遺跡ごとステーションに持ち込んだことだな。それなら、人類の遺跡からエピタフ遺跡が出てくることは容易に説明できる。若しくは、このステーション自体が異星文明の遺跡をベースに建設されたというのも考えられる。私が思い付く限りではこれだけだな。」

サナダさんは丁寧に私の質問に答えてくれた。成程、確かにそれなら人間の遺跡からエピタフ遺跡が出てくることも説明できそうだ。

「・・・見えたぞ。あれがエピタフ遺跡だ。」

 私があれこれ考えているうちに、どうやらエピタフ遺跡に到着したらしい。まだ距離はあるが、石で出来たアーチ状の構造物なんかが確認できる。

「ほぅ、これは中々"それらしい"ものだな。」

「チョッパー、機材の準備を。」

「了解。」

遺跡に感嘆していたチョッパーに、サナダさんが遺跡探索の為の機材を準備するように命じた。

「霊沙、後ろのトランクケースを取ってくれ。」

「おう、これか?」

霊沙は後席のトランクケースを取り出して、チョッパーに渡す。

「ああ、それだ。ありがとよ、嬢ちゃん。」

「・・・どういたしまして。」

チョッパーに礼を言われた霊沙は、ぶっきらぼうに返事をする。

「さて艦長、ここからは徒歩になる。遺跡内部は私が案内しよう。」

「分かったわ。」

 遺跡の近くまで来ると、サナダさんは車を止めて、私達は車を降りて遺跡へ進んだ。

 遺跡の入口や外壁の構造物は石で作られており、何やら文字のようなものが書かれているが、風化してよく見えない。

 しかし中に入ると、床や壁は外の石とは違う、何やら硬そうな素材で構成され、懐中電灯の光を反射させている。

「なんか、雰囲気変わったな。」

遺跡の中に入って、霊沙が呟いた。

「そのようだな。チョッパー、構成素材のサンプルを採集しておこう。例の機材を。」

「了解。」

サナダさんは歩みを止めて、チョッパーが運んでいたトランクケースから機材を受け取り、その機材を遺跡の壁に当てた。

「よし・・・これで良いだろう。」

サンプルの採集が終わったのか、サナダさんは機材をしまうと再び進み始めた。

 遺跡の中をしばらく進むと、今までの通路ではなく、部屋のような空間に出た。

「ここは、何かの部屋かしら?」

「のようだな。」

私は部屋全体を見回して呟いた。

「にしても、ここは空気が随分澄んでいるな。さっきの都市とは大違いだ。」

「なに・・・?」

サナダさんが霊沙の一言に眉を潜めて、手元の機械でなんか計測を始めた。言われてみれば、確かに空気が澄んでいる。まるで森の中の沢にいるように感じる。

「・・・空気成分は居住惑星上と何ら変わらないようだ。有害な細菌類やウイルスも検出されないな。」

サナダさんはそう言うと気密服のヘルメットを脱いで、その場の空気を確かめるように吸ってみせる。

「確かに、霊沙の言うとおりだな。」

サナダさんは空気を確認すると、部屋全体を見回して、なにかを見つけたような顔をすると、血相を変えて中央の祭壇へ向かっていく。

「これは・・・艦長!」

「なにかしら?」

 サナダさんのただならぬ様子に、気になって彼のいる祭壇まで行ってみる。

 

 そこには、壁を伝う何本ものケーブルに接続された10cm四方の立方体が、丁度そのために作られたような穴に差し込まれていた。

 

「ねぇサナダさん、これってもしかして・・・」

「ああ、エピタ――」

 

「財!財よ!本当にあったのね!!」

 

 まさか本当にエピタフがあるなんて、もうこれは噂の真偽を確かめてやるしかないわね。

「あ、待て艦長、そんなに乱暴に扱うと・・・」

 私がエピタフを手に取ろうとして、それを掴んでケーブルから引き剥がすと、エピタフがガチャン、と音を立てて変形し、眩しい青白い光を発して輝き始めた。

「ちょ・・・ちょっと何よ!」

「な、何だ!」

 いきなりの変化にびっくりしてエピタフから手を離したが、エピタフは宙に浮いて輝き続ける。霊沙はいきなりの変化に驚いて、札を手にとって構えた。

「おお、これが・・・」

サナダさんは、エピタフの輝きを心を奪われたように見つめ続ける。チョッパーも、食い入るようにエピタフの輝きから目を離さない。霊沙は警戒心を崩さずに、エピタフの輝きを厳しい目付きで見守る。

「きゃぁっ・・・!」

 すると、いきなりエピタフの輝きが増して、光の柱が天井へ延びていく。

 その状態が数秒間続いた後、エピタフは力尽きたように輝くのを止めて、元の立方体に戻って床に落ちた。

 

「・・・」

「・・・」

 皆、目の前で起きたことに言葉を失い、沈黙が続く。

「い、今のは・・・」

 私がサナダさんに尋ねようとすると、ポケットの携帯端末が鳴り出した。

《艦長、こちらブリッジのミユです。たった今当艦が寄港しているステーションから不可解な光が観測されました。念のため〈高天原〉に帰還された方が・・・》

《艦長、大変です!》

 端末を開くと〈高天原〉の艦橋に残ったミユからの報告だったが、その途中に早苗が割り込んだ。

「どうしたの、早苗?」

《は、はい艦長・・・その光の柱なんですが、デットゲートに衝突した後に、デットゲートの復活を、確認しました。》

 え、デットゲートが復活・・・?

「きゃっ・・・」

「おい、今なんて言った!」

 サナダさんが血相を変えて、私の端末を奪い取って早苗に尋ねる。・・・いくらなんでも、いきなり奪うのはないんじゃないかな。

《あ、はい。本ステーションから光の柱が観測され、付近にあるデットゲートに衝突した後、デットゲートからエネルギー反応が観測されました。光学映像は保存してあります。》

「そうか―――やはりエピタフが原因か。」

「サナダさん、今のって・・・」

「ああ、エピタフが起動したと見て間違いないだろう。」

どうも早苗が報告したデットゲートの復活とやらはさっきのが原因らしい。あれ、だったらこれ私が原因じゃ―――

「艦長。」

「ひっ・・・」

 サナダさんが、いつになく威圧的な声で私を呼んだ。それに、私は思わず尻込みしてしまう。

「あ、あの・・・」

 

「素晴らしいぞ艦長!! これは世紀の大発見だ!!!」

 

 サナダさんはバッと腕を広げて、高笑いを続ける。さっきは怒られるのかと思ったが、こっちの方が怖いかも・・・

「これは学会史に残る大発見だ!チョッパー、今すぐ研究室に戻るぞ!」

「アイアイサー、主任!」

 チョッパーもサナダさんのノリに合わせて、せわしなく撤収の準備を進める。その傍らで、サナダさんはケーブルのサンプルを採集したり、壁画を余すとこなく撮影していた。まったく抜かりない人だと思う。私と霊沙は、そんなサナダさんをポカンと見つめるだけだった。

 

 

 

 それから程なくして遺跡から撤収した私達だが、艦に戻った後サナダさんにこっぴどく怒られた。曰く、あれで毒ガスが発生したり罠が起動したらどうするんだと。結果的にそんなことはなかったが、次からは気をつけよう。反省してるわ。

 エピタフ?あれは勿論頂いていったわ。サナダさんに奪われたけど。なにが「科学の発展の為に私に寄越せ」よ。私は艦長なのよ。いつか取り返してやるんだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから数日後、再び私はサナダさんに呼び出された。なんでも新旗艦が竣工したらしい。

 ということで、私は今ステーションの造船区画に来ている。目の前には、この遺跡ステーションの外で見た戦艦と同じ姿をした戦艦が鎮座している。

 

【挿絵表示】

 

「やっと完成したのね。」

「ああ、スーパーアンドロメダ級戦略指揮戦艦・・・私が手掛けた中での最高傑作だ。」

 サナダさんが自慢げに話す。元々の設計はサナダさんじゃあないんだけどね。

 その戦艦は、艦首に大口径のハイストリームブラスターを2門装備し、3連装の主砲を5基備え、背の高い重圧な艦橋が威圧感を醸し出している。これぞまさに戦艦、といった感じだ。

「このスーパーアンドロメダ級戦艦の全長は1780m、〈高天原〉の凡そ1,6、7倍といった所か。2300mのダウグルフ級に比べれば見劣りするが、砲火力なら互角以上、装甲防御も実体弾への備えとして装甲も中々のものだ。さらに二個中隊規模の艦載機も搭載可能。戦艦としては高い能力水準を誇る。さらに艦首に装備した2門のハイストリームブラスターは専用のインフラトン・インヴァイダーを用意してエネルギー伝導系を短縮しレアメタルを節約、また発射後の主機のエネルギー不足といった問題を解消している。このブラスター専用の機関は、非常時には予備電源としても使用可能だ。」

サナダさんは自慢気に解説を続ける。でも私はサナダさんの話がよく分からないわ。せいぜい凄い戦艦だってこと位ね。

「中々格好いいじゃない。気に入ったわ。」

「それはどうも。ところで、艦名は決めてあるかね?」

サナダさんが、新旗艦に与える艦名を尋ねてくる。艦隊の中核となる旗艦の艦名は、艦長である私が与えなければならない。

 

「もう決めてあるわ。〈開陽〉よ。」

 

 ―― 開陽 ―― 夜明け前を意味するこの語なら、ヤッハバッハに反旗を翻して自由を求める私達に相応しい――なんて難しい事は考えてない。ただ響きが格好いいから付けただけだ。案外艦名ってそういうのでも良いんじゃないかしら。

 

「ほう、〈開陽〉か。良い名だ。」

サナダさんは感心したように〈開陽〉を見上げる。

 

 これから丸一日、先代旗艦の〈高天原〉からこの〈開陽〉に設備を移動させる作業がある。船室や自然ドームに早苗の本体をこの〈開陽〉に移して、〈高天原〉は戦闘空母として運用される予定だ。これから私を含めて、総出でこの引っ越し作業にかかる。

 

「さてと・・・これから宜しくね、〈開陽〉。」

 

 

 




随分と間が空きましたが、これからも執筆は続けますよ。なにせ無限航路系ssは完結しているものがないので、これからも頑張っていこうと思います。

新旗艦〈開陽〉の艦名は、幕末の榎本艦隊の旗艦〈開陽丸〉から取っています。今は復元されて展示されていますね。




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