それより手に入るガラーナとゼラーナよりエルメッツア中央の赤いガラーナとゼラーナの方が格好いいんですけど。艦のカラー変えたり鹵獲できたら面白かったんですけどね。
〈高天原〉自然ドーム・艦内神社
「ふぁぁっ~~」
私は目を覚まして、欠伸をしながら起き上がった。昨日は久しぶりに酒が入ったためか、いつもより寝起きが悪い。
《お早うございます、艦長。》
枕元の携帯端末から声が響く。早苗の声だ。
「お早う早苗。」
私は早苗に挨拶して立ち上がった。
――うわ、けっこう酷くはだけてるわね――
酒が入ったためか、自分の寝相はけっこう悪かったらしい。特に胸元なんかはサラシが丸見えだ。
《ふふっ――そんな格好だと、狼さんに襲われちゃいますね。》
――この子、どこでそんな知識仕入れてくるのよ・・・――
私は変な方向に走る早苗を無視して、携帯端末を持ってはだけた寝間着を直しながら洗面台の元へと向かい、冷水で顔を洗って目を覚ます。
「そういえば昨日は風呂に入ってなかったわね。」
昨日はずっと酒盛りだったので、風呂に入ってなかったことを思い出した。なので私は朝風呂に入ろうかと思って、神社の裏手に回る。神社の間取り自体は博麗神社と変わらないので、風呂はそこにある筈だ。
「あ、機械になってるのか。まぁ、当然よね。」
博麗神社の風呂は昔ながらの五右衛門風呂で、沸かすには薪が必要だったが、ここの風呂はどうもこの世界で普及しているタイプのものらしい。湯を機械で沸かすタイプのものだ。ちなみに五右衛門風呂といえば鉄桶でできた風呂を思い浮かべるが、正しくは底面が鉄のものを五右衛門風呂、一般的に思い浮かべるられる鉄桶のものは長州風呂というらしい。
「早苗、これの沸かし方分かる?」
この機械は弄ったことがないので、早苗に使い方を尋ねる。
《はい。ここのボタンを押して機械を起動させて、このパネルで温度を設定して給湯のボタンを押せば勝手に沸きますよ。沸いたら音で知らせてくれます。》
「ありがと早苗。」
私は教えられた通りに機械を操作して風呂を沸かす。沸くまでの時間は特にすることが無いので、その間に体を洗ってしまおうと考えた。
「じゃあ私は風呂が沸くまで体を洗ってるから。」
《はい、どうぞごゆっくり。》
私は携帯端末を置いて、寝間着を脱いで畳み、風呂場に入る。なんだか早苗が"私も入りたいなー"と呟いているのが聞こえた気がするが、気にしない。風呂場もどうやらこの世界で普及しているものらしく、プラスチックと陶器で出来ていた。浴槽は博麗神社の風呂とは違って広々としており、体を伸ばしながら入れそうだ。
「ふーん。中々快適そうじゃない。」
博麗神社のものと比べて快適そうな風呂に感心しながら、私はシャワーを浴びて身体を流した。
~少女入浴中~
《艦長、お湯加減どうでしたか?》
「ええ、中々気持ちよかったわ。」
待たせていた早苗が尋ねてくる。入ってみた感想だが、ここの風呂も中々良いものだと思う。身体を伸ばせるというのは幻想郷では温泉に行かなければ出来なかった事だが、ここでは毎日出来てしまうのだ。
「でもこれを毎日、だとちょっと贅沢よね。」
私は素直な感想を述べる。つい最近まで幻想郷で暮らしてきた身としては、当時の外の世界を上回る生活水準で暮らせることはかなり贅沢に感じた。
《えっ、これで贅沢なんですか?一般的な惑星の生活水準と同程度だと思うんですけど。》
――まぁ、この世界の人の水準でいえばそんなとこだろう―――
《うーん、艦長は以前は一体どのような生活をしていたのでしょうか?》
早苗が不思議そうに訊いてくる。そういえば、昨日は生活関連の話はしてなかった。
「機会があれば教えるわ。」
私は早苗にそう答えて、身体を拭いて艦長服に着替える。この艦長服は、空間服を元にして博麗の巫女服の意匠を取り入れたものだ。表面上は空間服に比べて余剰な布や露出が多いが、空間服としての機能は失われていない。
《あ、艦長、サナダさんから連絡が入っています。研究室に来てほしいらしいです。》
「朝っぱらから何なのよ。」
私が着替え終えたところで、早苗から報告が入る。ちなみに宇宙では当然朝夕の概念は無いのだが、艦内では生活上の理由で朝夕の時間が定められている。自然ドームの時間も、艦内の時間に合わせて変わっている。
「準備したら行くと伝えといて。」
《了解です。》
早苗はサナダさんに返信メッセージを送る。私は風呂場から出ると一旦寝室に戻って寝間着と布団を片付けてから、縁側に置いておいた靴を履いて神社を後にした。
自然ドームを出るまでは当然だが参道を通る。人工太陽の光が広葉樹の葉を透けさせて明るく照らしている。森の雰囲気や小鳥の囀りもあって、中々心地いい気分だ。これは自然ドームを採用した意義があったなと感じた。
「早苗、これから道案内よろしく。」
《了解しました。》
自然ドームを出た後は、早苗に携帯端末から艦内地図とサナダさんの研究室までの道程をホログラムで表示させる。この〈高天原〉は1000mを越える大型艦なので、艦内の移動に慣れないうちはこのような案内が必要なのだ。
私は早苗の案内に従って艦内を移動し、サナダさんの研究室へと向かう。途中何体かのドロイドに出会ったがこちらのことは意に介さずただ自分の仕事を行うだけだった。あれを見ると、早苗が人間臭いAIで良かったなと思う。ああいう下っ端ドロイドならともかく、いつも機械的なAIと一緒にいると疲れそうだ。
《着きましたよ、艦長。》
どうやらサナダさんの研究室の前まで着いたらしい。
「サナダさん、来たわよ。」
私は扉の横にある呼び鈴を押してサナダを呼び出した。
「おお、来たか艦長。今開けるぞ。」
サナダさんが返事をすると、扉の鍵が解錠されて開く。私は研究室の中へと入っていく。
「それで、要件ってのは何なの?」
私はサナダさんの姿を探して研究室を見回す。研究室の中は、資料と思われる本が壁と一体の本棚に端正に仕舞われており、机には実験台器具が整頓されていて小綺麗な印象を受ける。ちなみに、サナダさんは人手不足のために医療業務も担当しているので、研究室の隣は医務室に繋がっている。
――あれ、サナダさんと━━━もう一人いる?――
サナダさんは、中央に置かれた長椅子に腰かけていた。その隣には、見知らぬ少女がちょこんと正座してお茶を飲みながら座っている
「サナダさん、その隣の子、誰?」
私は訝しげに尋ねる。この〈高天原〉には、私とコーディーに、サナダの3人しかいなかった筈だ。
「ああ、呼んだのは彼女のことについてだよ。ほら、まずは自己紹介しなさい。」
サナダさんに促されて、少女が立ち上がる。私は少女の姿を凝視した。少女の背はどうやら今の私より少し低めのようだ。髪の色は白に近い麦色で、煤がかかったように暗く見える。頭には私のを黒くしたようなリボンをつけていて、瞳は紅色。肌には所々に血走ったような紅い線が走っていて、顔立ちは全体的に幼く見え―━
――私と、同じ顔!?――
少女の顔立ちは、私と同じ―――いや、今の私を少し幼くしたような顔立ちだった。
――けどこんな奴、幻想郷には――
頭が混乱する。私は目の前の少女のことは知らない。知らない筈だ。だが、自身の記憶はこの少女を識っていると告げる。その記憶だけ、他人の記憶を覗き見たように実感がない。
「貴女は―――誰?」
私は少女を見据え、強く訊ねる。
「私は―――霊沙。博麗霊沙だ。」
少女はきっぱりと、自身の名を告げた。
「彼女は艦長と同じ宇宙船の残骸に倒れていたところを私達が救助した。だが、彼女の方は怪我が酷くてな。今までリジェネレーションポッドに入れて治療していたが、つい先程目を覚ましたので、艦長を呼んだ訳だ。ところで艦長、彼女のことは知らないのかね?勿論、生前も含めてだ。」
サナダさんが私に訊いてくる。生前とは、幻想郷で過ごした時代のことだろう。サナダさんにはコーディ同様に生前の話もしているので、彼は知っている。
「いや、知らないわ。」
私は明確に答える。
「へぇ、知らないのか。前世は他の妖怪連中とグルになって寄って集って私を封印してくれた癖に。」
少女――霊沙は剣呑な雰囲気を漂わせる。
「私が知らないのは本当よ。私の姿をした妖怪が起こした異変なんて、私の経験にはそんなもの無いわ。」
霊沙から漂う雰囲気は、姿は私であれ妖怪そのものだ。それに、寄って集って封印されたという話では、彼女は何らかの異変に関わっていた可能性が高い。
「ほんとうに知らないんだな。」
霊沙は私を睨み付ける。
「まぁ待ちたまえ。そう邪険にするな。君と艦長とでは、前世が違ったのだろう。」
サナダさんが割って入る。
「どういう事だ?」
「言葉通りの意味だ。艦長は本当に君のことは知らないのだろう。これは私の仮説だが、君の前世の世界と艦長の前世の世界は、それぞれパラレルワールド、つまり似たようで違った世界なのではないかな?」
サナダさんが解説する。サナダさんは私という前例があるので、目の前の霊沙の話にも別に驚きはしないのだろう。
「ふん、まぁそういう事にしておいてやる。」
霊沙は納得したようだが、どこか不機嫌そうな態度のままだ。
「サナダさん、それってこの子は私と同じような存在で、私とは違う幻想郷から来たって解釈でいいのかしら?」
「ああ、それで構わない。」
どうやら、サナダさんの話によると彼女は私と同じように、幻想郷で封印されたと思ったらなぜかここにいた、という事らしい。
「あんたの話は分かったわ。それより、この子どうするの?」
私はサナダさんの顔を見据える。
「それは艦長の仕事だろう。私の関知するところではない。私はただ怪我人を治しただけだ。」
サナダさんは霊沙への対応を私に丸投げした。確かに、艦に誰を乗せるのかといった仕事は艦長の仕事なのだが―
――ああもう、どうすればいいってのよ――
私は改めて霊沙を見る。妖しい雰囲気こそ纏ってはいるが、流石に艦外に放り出すというのは可哀想だ。
「ねぇ、あんたがいいって言うなら艦に乗せてあげない事もないわよ。騒ぎを起こさなければって条件付きだけどね。どうせ他に頼る当てなんて無いでしょ?」
霊沙はきょとんとした目で私を見つめるが、直ぐに不機嫌そうな目付きに戻った。
「良いのかよ。オマエから見たら私は妖しい妖怪なんだろ。今の私は人になってるみたいだけどな。」
霊沙は皮肉気に答える。
「安心しなさい。別に今の私は博麗の巫女って訳じゃないんだから、問答無用で封印したりなんかはしないわ。尤も、艦長ってのは艦と乗組員に責任を負うものだから、言った通り騒ぎを起こせば話は別になるけど。」
私は霊沙を凝視する。
「ああ、それで良いよもう。オマエを食い千切るのは我慢してやるよ。」
霊沙は自身の中で納得したようだ。なにやら剣呑な言い回しだが、理性はあるようなので安心した。雑魚妖怪のゴロツキ共みたいに問答無用で襲ってくるのであれば、本当に艦外追放しなければならないからだ。本当は人手不足な艦の運行を手伝ってほしい所だが、彼女の私に対する感情を考えると今は止めたほうがいいだろう。
「納得して頂けたようね。それじゃあ、艦橋に案内するわ。ついて来なさい。」
私は霊沙に艦橋まで来るように言う。これから艦で過ごすなら、コーディにも紹介した方がいいだろう。
「わかったよ。それじゃ、サナダさんといったか。世話になったな。礼は言っておくぞ。」
「ああ、仲良くやれよ。」
霊沙は研究室を出る前に振り向いてサナダさんに一礼してから研究室を後にした。
――へぇ、以外と根は素直なのね――
霊沙は口は悪いが、性格まではそうではないらしい。私に対しては分からないが。
「じゃ、邪魔したわね、サナダさん。」
私もサナダさんに一礼して研究室を後にした。
「なぁ、サナダから聞いたんだが、ここは宇宙なんだってな。」
「ええ、そうだけど、それがどうしたの?」
廊下を移動していると、突然霊沙が話しかけてくる。
「いや、私とて興味がない訳ではないんだ。できればこのまま宇宙ってのを見て回りたいって思ってる。」
研究室での剣呑な雰囲気が嘘のように、霊沙はしおらしく話す。
「だからな・・・オマエさえ良ければ、私をここに置いて欲しい。乗員として扱ってくれても構わない。」
霊沙は私に申し出た。尤も、"オマエの下でってのは気にくわないが"と付け足していたが。
「それなら願ったり叶ったりね。生憎うちの人手は火の車だから、人手が増えるのは助かるわ。」
私はあっさりとこれを承諾した。現状乗組員が私含めて3人なので、乗組員が増えるのは大歓迎だ。それに、どうも霊沙は根は悪い訳ではないようなので、何とか付き合っていけるだろうと踏んでの判断だ。
「わかった・・・ありがと。」
霊沙は顔を反らして、不器用に礼を言う。私のことを嫌っていたようなので、素直に礼を言うのは抵抗があるのだろう。しかし、嫌いでも礼を言うあたり、根はまっとうな性格に思える。前世では一体何をして封印されたのだろうか。
「さて、そろそろ着くわね。」
私達は艦橋に通じるエレベーターの前まで辿り着いた。エレベーターに乗って、第一艦橋へ向かう。
エレベーターを降りると、私達はコーディの下へと向かった。
「おっ、その様子だと、目が覚めたようだな。」
コーディーは、既に霊沙の顔を知っていたらしい。恐らく、サナダさんと一緒に彼女を搬送したのだろう。
「私は博麗霊沙といいます。助けて頂いたことには礼を言います。ありがとうございました。」
霊沙はコーディーに頭を下げた。
「あんた、性格変わってない?」
私は霊沙に疑問をぶつけた。
「初対面の人にいきなり無礼な話し方は出来ないだろ。私とてそこは弁えている。」
どうも霊沙は私が思う以上に良くできた子らしい。不機嫌そうな表情は崩さないままだが。
「ああ、回復したのなら何よりだ。ところで、君のことは何と呼べばいいのかな?」
コーディーが尋ねた。
「霊沙で構いません。それと、以後は乗員としてこの艦でお世話になります。」
「了解だ。それじゃあ霊沙といったな、これから宜しくだ。そして俺はコーディだ。好きなように呼べ。」
「はい。宜しく御願いします、コーディ。」
霊沙がコーディに返事をする。2人の自己紹介は終わったようだ。
「しかし、これが宇宙なのか?地上から見上げたものとは随分違うな。」
霊沙は窓の外を見て呟く。
「いや、それは宇宙じゃなくてハイパースペースだ。ワープ、超光速移動中はこの空間に入っている。」
コーディが霊沙の疑問に答える。
厳密には、光速の200倍を誇るi3エクシード航法も超光速移動と呼べるのだが、ハイパードライブでワープすれば移動に係る所用時間はi3エクシード航法に比べて遥かに短縮される。厳密には、10000倍ほど早く移動できる。単純計算で、1年で約200万光年進める訳だ。だが、そう上手くはいかず、ワープ距離が10万光年以上になると、その速さはi3エクシード航法の1000倍まで落ちる。元々そんな長距離の移動に適していないシステムだからだろう。それでも充分速いのだが、この速さを持ってしてもヤッハバッハの勢力圏から抜け出すには途方もない時間がかかる。なので、超光速移動にタイムラグが生じず、尚且つ長距離をワープできるボイドゲートを活用する必要が出てくるのだ。
「もう少ししたら宇宙空間に出るから、それまで我慢してな。」
「はーい。」
霊沙は納得して近くの席に腰掛けた。
それから凡そ2時間、特にすることもなく私は艦長席で過ごした。霊沙の配属場所を考えはしたのだが、適正がわからないのでとにかくシュミレーター室で射撃や操縦の訓練を受けることを提案した。彼女は戦闘はともかく、整備や研究には向かないだろう。そっち方面は知識の蓄えがないと出来ないからだ。それに、教えられる人材も艦にはいない。もしかしたらサナダさんは教えられるかもしれないが、あの人は自身の興味が向くこと以外はしなさそうな雰囲気だ。同時に艦内の移動に必要な携帯端末も渡しておいた。霊沙はそのあとシュミレーター室に飛んでいったが、もうすぐワープアウトすると聞いて再び艦橋に上がってきている。サナダも研究室から艦橋に上がってきた。
《間もなくワープアウトします。》
早苗が報告する。
〈高天原〉は青白いハイパースペースから抜け出し、漆黒の宇宙空間へと姿を現した。
《通常空間を確認しました。ワープアウト成功、予定航路との誤差、0,0043です。リランカ星系、惑星ラサス軌道周辺宙域に到着、後続艦にも異常ありません。》
早苗がワープ完了を告げる報告を読み上げる。どうやら、無事にワープできたらしい。
《周辺宙域のスキャン開始・・・敵影はないようです。》
「よし、このまま予定通りに進もう。」
ハイパースペースを通過中にした打ち合わせでは、この惑星ラサス近傍宙域に到着後、恒星を挟んで反対側の巨大ガス惑星の重力圏を抜けるまで通常空間を航行し、そこから再びワープでコーバス星系を目指す予定となっている。
「敵がいないなら、安全に進めそうね。でも周辺の警戒を怠らないで。」
私は早苗に警戒を続けるよう命じた。敵艦が惑星の背後に隠れている可能性も捨てきれないし、デブリがあれば資源と金に変えることができる。資源小惑星があれば一気に数百から2000Gほどの収入が見込める。ちなみにG(ガット)とはこの世界の通貨だ。1Gは1000C(クレジット)からなり、パン一つ買うのに凡そ20Cほどかかる。2000Gあれば、艦船の建造は無理だが駆逐艦クラスの小型艦の内装をある程度整えることができる。艦船を建造するには、通常1~5万Gほどの金額が必要だ。
《了解しました。周辺スキャンを継続します。》
早苗は命令に従ってスキャンを続ける。
「これが宇宙か。幻想郷で見るよりも星が多いな。」
霊沙が感心したように呟く。幻想郷でも外の世界に比べたらずっと星は見えるのだが、宇宙から直接見た方が大気の影響を受けないので、天体の光を直接観測することができる。なので、惑星上より宇宙で見た方が星が良く見えるのだ。
「おっ、あそこに何だかでかいのが見えるぞ。」
霊沙は艦橋の左側、第二艦橋の上に見える渦状銀河に注目した。
「あれはアンドロメダ銀河だ。見る分にはいいが、あそこはヤッハバッハの一大拠点。下手に行けば捕まってブタ箱行きだな。」
サナダさんが霊沙に説明する。
「へぇ、あそこが敵の本拠地って訳か。殴り込まないのか?」
霊沙が私を見る。
「馬鹿言いなさい。私達は自由を求めてヤッハバッハから逃げてるのよ。わざわざ捕まりになんて行かないわ。」
私は霊沙にそう返した。
――確かに、見る分には綺麗なんだけどね――
私はアンドロメダ銀河に目をやると、すぐに艦長席のコンソールに目を落とした。
すると、レーダー画面に、小さな輝点が表示される。
「ん、早苗、ここに何かない?」
《はい?えっと、詳細にスキャンしますね―――――はい、確かにありました。本艦の左舷前方、10時の方向980MLの宙域にデブリの反応があります。》
――おっと、これは幸先が良いかも――
私はデブリ発見の報告を受けて、そこへ向かうよう命令する。
「艦隊は捕捉したデブリへ向かうわ。全艦取り舵。詳細な調査をお願い。」
《了解しました。》
〈高天原〉と〈サクラメント〉はスラスターを噴射して回頭し、デブリへと向かう。
「艦長、デブリの詳細が判明した。比較的原型を留めているのがヤッハバッハのブラビレイ級航空母艦。他は恐らくダルダベル級とブランジ級と思われるが、損傷が酷くて判別できない。」
サナダさんがスキャン結果を見て報告する。恐らく戦闘かなにかで撃沈されたあと、ここまで流されてきたのだろう。
「ブラビレイ級に〈サクラメント〉を接舷させて調査ドロイドを派遣するべきだと考えます。」
サナダさんは原型を留めているブラビレイ級ならリサイクル可能な資源が得られそうだと踏んで、工作艦〈サクラメント〉を接舷させることを提案した。
「許可するわ。」
私はサナダの提案を了承する。ヤッハバッハの追撃がない内に、金になるものは回収しておきたい。〈サクラメント〉とこの艦に積み込まれた資源があれば数ヶ月の長距離航海は可能だが、今後のためにも資金は確保しておきたかった。
《では〈サクラメント〉に命令を送ります。》
早苗が〈サクラメント〉にブラビレイ級への接舷と調査を命じ、〈サクラメント〉はブラビレイ級に近づいていく。ある程度まで接近すると〈サクラメント〉はメインエンジンの出力を下げてサイドスラスターで位置を調整し、デブリとなったブラビレイ級に損傷を与えないよう慎重に接舷する。
「接舷完了。調査ドロイドを送るぞ。」
〈サクラメント〉の側面ハッチからから小さめのロボットが大量に吐き出され、ブラビレイ級の中に入っていく。それから30分ほど経過すると、〈サクラメント〉から詳細なデータが送られてきた。
「艦は全体の約6割を再生可能。残念ながら金になるメインエンジンはイカれているな。使えそうな部品だけ剥ぎ取っておこう。」
サナダさんはデータを一瞥すると回収する資源を決めて、〈サクラメント〉に命令を出した。私はこのことに関しては専門外なのでサナダさんに任せている。
サナダさんの命令を受けとると、 ロボットがブラビレイ級の艦内から部品を運び出して〈サクラメント〉の艦内に戻っていき、〈サクラメント〉はクレーンを展開してブラビレイ級を解体し、解体によって生じた資材もロボットが運び込んでいく。それも40分ほどすると作業は完了し、〈サクラメント〉はブラビレイ級の残骸から離れていく。
「これでデブリの回収は終了だな。」
作業を確認していたサナダさんは、作業の終了を報告する。
「分かったわ。元の航路に戻るわよ。両舷全速。」
「了解。両舷全速。」
舵を握るコーディが命令を受けて艦を元の航路へ進めていく。
それからは特に何もなく、艦隊は無事に巨大ガス惑星を抜けてワープ予定地点まで到着した。
《機関に異常なし。ワープ準備完了です。》
早苗が報告する。
「ワープに入る。各員準備して。」
私はワープを命じ、次の目的地であるコーバス星系を目指す。
全員席につき、ワープ準備が完了した。
「ワープ!」
私の命令と共に〈高天原〉は再びハイパースペースへと飛び込み、青白い空間に包まれた。
今回登場したオリキャラ?の博麗霊沙ですが、見た目は禍霊夢です。口は悪いですけど可愛い声で喋ります。本家の禍霊夢に比べて大分いい子になってると思います。名前を考えたのは、禍霊夢だと混乱しそうだからです。禍たん可愛いよ。
またゲーム中の通貨より下の単位を設定しました。ゲーム中の救急箱等の値段と艦船の装備の値段がつりあわないと感じたので、日用品などの値段を下げるためにGより下の単位を捏造します。
下記は霊夢艦隊の艦の能力をゲーム内の数値で表したものです。括弧内はモジュールによる増加分です。
*ヴェネターⅢ級 巡洋艦 〈高天原〉
全長1137m、全幅548m、全高276m
耐久度:4640(1200)
装甲:83(18)
索敵距離:24700(7700)
対空補正:40(2)
対艦補正:57(12)
機動力:61(21)
搭載機:44機
サナダが古代異星人の遺跡から発見した設計図を元に改良を加えた艦。空母に匹敵する艦載機数と重巡洋艦並の攻撃力を持つ。長期航海を想定し、艦内には各種娯楽設備や倉庫が設置されている。ヤッハバッハから逃れることを想定し、速度や機動力は高めに設計されている。
*アクラメーター改級 工作艦 〈サクラメント〉
全長752m、全幅460m、全高188m
耐久度:4000(1200)
装甲:83(18)
索敵距離:19000(4000)
対空補正:39(4)
対艦補正:10(0)
機動力:35(10)
搭載機:24機
〈高天原〉同様、サナダが遺跡から発見した設計図を元に建造された工作艦。長距離航海を支えるための補充部品を生産し、その原料となる資源を貯蔵する能力を持つ。軽巡程度の武装を持つが、迎撃用のパルスレーザーを除いて牽制用である。ヤッハバッハからの逃走を想定しているので、例え倉庫に物資を一杯詰め込んだとしても〈高天原〉に追従可能な速力を発揮可能。
霊夢の艦長服のラフ画を挿入しておきます。描く上でイメージしたのがにがもん式霊夢のため、少しロリっぽいです。腰の刀はスークリフ・ブレードです。
【挿絵表示】
7/10追記:ハイパードライブの設定を修正。
本作の何処に興味がありますか
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戦闘
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メカ
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キャラ
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百合