夢幻航路   作:旭日提督

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第八九話 続・ブロッサムアワー

 

 ~始祖移民船中枢部・電脳空間~

 

 

「まさか、アレ見られてたなんて………」

 

 じろり、と早苗を睨む。

 

 あいつとの契約は一応交わしたものの、私はまだこの空間内に残っていた。

 

 何を言おう、ここで早苗に釘を刺す。これからは、せめて致すなら時と場所を選んでもらわなければ困る。

 

 あの自称BB、もといブロッサムの奴に足下見られた原因はそもそも早苗の行動だ。思い出すだけでも恥ずかしい。そう思うと、原因になった早苗につい当たってしまう。

 

 元はといえばコイツが所構わず私から搾取しようとするのが原因だ。あのときは私も気を緩めてたけど、これに懲りたら場所ぐらいは選べ。

 

「ひゃい!?れれれ霊夢さん、あれはですね、その………てへっ♪」

 

「ハァ………良いわよ別に。コイツはコイツであの映像はちゃんと破棄してくれるらしいんだし。―――履行するわよね?」

 

「それは勿論。私、契約内容は守る質ですから。…………それに、こっちはこっちで恥ずかしかったんですから、言われなくても厳重に破棄ないし封印ぐらいはしますって。もう、あんなモノ見せてくれた責任ぐらいは取って下さい!」

 

 成程、それが動機、か。許すか許さないかは別の話だけれど。

 

「それで腹いせにアレを使った、と………ハァ、気を緩めすぎたか。失態ね。まぁ責任なら早苗が取るから、そこは気にしなくていいわ」

 

「ふぇっ!?霊夢さん!?」

 

 面倒なことは早苗に丸投げ。あれだけ好き勝手させてるんだからそれぐらいは飲め。

 

「ふぅん………まぁいいです。二人纏めて弄り倒してあげますから、そこは覚悟しといて下さいね、新しいマスターさん?」

 

「ちょっと、私も弄られる対象なの!?」

 

「当然です。そこの緑色を生贄にしようったって無駄ですから。私の魔の手からは逃げられませんよ?覚悟して下さいね♪」

 

「うわ………今更だけど、なんでこんな面倒なの引き入れちゃったんだろう………」

 

 やっぱりこいつ、面倒くさいわ。………コイツか紫かどっちか選べって言われたら、紫の方を選んじゃうかも………

 

 

 

 

 ~始祖移民船・中枢部~

 

「くくっ、まんまと引っ掛かりましたね………この船に居る限り、BBちゃんからは逃げられませんよ?」

 

 霊夢達が始祖移民船のコントロールルームに侵入する前日、船内に張り巡らされた監視網を通して、彼女は何千年ぶりの侵入者の様子を観察する。

 侵入者――霊夢と早苗の様子から何処かの機構や政府ではなく民間航海者の類いだろうと当たりをつけていた彼女は、今後の方針を思案していた。

 

「うーん、このまま追い返しても別にいいんですけど、それだとやっぱり暇になっちゃいますからね。ここは一つ、新しい主さん(玩具)に仕えて面白おかしくしてあげるというのも良いかもです」

 

 何千年もの時間を漂流してきた彼女にとって、ただ過ごすだけでは退屈極まりないと思っていた頃合いだった。

 これが下手なAIであればそんな感情を抱くことはなかったのだが、殆ど人間と変わらない思考回路を授けられた彼女にとって、退屈なものはやはり退屈であった。

 

 なのでこの侵入者を適当におちょくってから自分のフネを貸してやろうかと考えていた彼女だが、そこで予想外の光景が飛び込んでくる。

 

「え………ち、ちょっ………な、な……、何やってるんですかぁ!?」

 

 監視用センチネルを通して送られてくる映像には、侵入者のうち緑色の方(早苗)が黒髪の方(霊夢)を押し倒して事に及んでいる様子がダイレクトに映し出されていた。

 

「いや、ちょっ………わわわ、私の中でなんてことするんですか!!えっちなのは駄目です!い、いけないと思います――っ!!」

 

 よくよく見ると黒髪の方は緑色の方の少女から血を奪われているように見えたが、それでも二人は当然のように、奪い奪われることを許容していた。それならば、その行為は情事以外の何物でもない。

 

 見せつけられるのが(自分の不手際だが)恥ずかしいのならば回線を切るという方法もあるのだが(現役時代はそうしていたのだが)、真っ赤になって狼狽する彼女はそこまで思考回路が働かず、きっちり全部、ばっちりとその様子を記録してしまった。

 

「………よくも、よくもこの私にあんなモノ見せてくれましたね………!ククッ、それが貴女達の敗因です……!か、覚悟することです………!!」

 

 事が終わり、その一部始終をまじまじと見せつけられてオーバーヒート寸前まで真っ赤になっていた彼女は、この仕返しは絶対にしてやると固く誓った。―――あんな恥ずかしいモノを押し付けてくれた恨みを晴らすという名目で。

 

 そう、彼女―――BBこと現・ブロッサム先生は、実は初心だったのだ……。

 

 

 

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「………そういう訳ですから、これからは気をつけて下さいね?やりたいんだったら私の目の届かないところですることです!」

 

「だって、早苗。気を付けなさいよあんた」

 

「なんで私だけなんですか!?霊夢さんだって満更でもな………むぐうっ!?」

 

「お黙り。仕掛けてきたのはあんたなんだから、あんたが気を付ければ済む話でしょ。――――それで、一体いつになったら私はここから出られるの?」

 

 抗議しようとした早苗の口を塞ぎ、目の前でまだ頬を膨らませているブロッサムに問い掛ける。

 想定していた形とは違ったけど、とりあえずこのフネを使えるようにはなったみたいだし、これ以上ここにいる意味はない。

 

 しかしまぁ………あんな挑発的な格好と性格しといて中身は初心なんて、意外と可愛いとこあるじゃない。もしかしたら恥じらいなんてかなぐり捨てて襲いかかってくる早苗よりは可愛いかも。………不本意だとしても、アレを覗き見たのを許すつもりはないけど。

 

「おっとそうでした。それじゃあ、アナタ達の意識には向こう側にお帰り願いますね?はい、ふぅー♪」

 

「え、ちょっ、うわあぁっ!?」

 

 するとブロッサムは平手を口の前に突き出して、息を吹き掛けるような動作をする。最初はまだこいつふざけてるのかとも思ったけど、直後に猛烈な強さで意識が引っ張られる感覚に襲われる。

 桜が舞い散る湖面の景色はあっという間に遥か彼方まで過ぎ去り、私は宇宙よりも暗い闇の中を、後ろとも上とも分からない方角に向かって飛ばされていった。

 

 

 

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「ぅっ、……あ、ううん、っ…………」

 

 頭がガンガンする………

 

「ここ、は………」

 

 次第にクリアになっていく思考を辿って、今の状況を確認する。

 確か、私はここで変な機械に弄くられて、早苗が入っていったサイバー空間に飛ばされて、そこでなんやかんやあってこのフネの統括AIだかと契約して………

 

「………そうだ、あいつは――?」

 

 頭に嵌められていたヘルメットみたいな装置を乱暴に投げ捨てて蹴散らして、私はアイツ……統括AIと名乗ったブロッサムの姿を探す。

 

 協力するという言質は得たものの、このまますんなり帰るという訳にもいかない。せめてセンチネルぐらい止めてもらわないことには帰りが困る。

 

「う、あ………霊夢さん、起きてたんですか」

 

「早苗………あんたも無理矢理飛ばされてきたの?」

 

「はい。まぁ、そんな感じです」

 

 私より先にこのフネのコントロールユニットに潜り込んでいた早苗も、あのとき私と一緒に意識を現実世界に飛ばされてきたらしい。――――ふざけた態度ではあったけど、あいつの力は確かなようだ。

 マッドサイエンティスト・サナダさんが誇る早苗の義体のハッキング機能を無効化したばかりか私までサイバー空間に引きずり込んだ挙げ句私達の意識は出し入れ自由。加えて恥ずかしさも押し殺して使えるものは何でも使う商魂逞しさ………侮れない奴ね。

 

 契約したはいいけど、これからはあいつに足下見られないように注意しないと………

 

「これからは私に気をつけて、付け入られないようにしようとか考えちゃったりしてませんか?私の前では、そんなことしても無駄ですよ~?」

 

「――つッ!?」

 

 反射的に、背後へと振り返る

 

 暗闇の中から、コントロールユニットの中で見たのと全く同じ姿をしたあいつ………ブロッサムの姿がそこから現れた。

 

「私と契約してもらった以上、私からは逃げられないので、そこのところ覚悟して貰いますからね?……ところで、私に何か用があったんじゃないですか?」

 

「そうだったわね………とりあえず、最低でもあのセンチネル共は止めて欲しいんだけど。アレがまた襲いかかってくるんだったら、こっちは安心して動けないわ」

 

「おっと、そうでした。もうアナタは私のおも………マスターさんでしたからね。はい、データ更新完了です♪これでアナタ達とそのお仲間さんには、もう襲いかからない筈ですよ」

 

「ん、ありがと………って、お仲間?」

 

「はい、外にいるあの艦隊、貴女のお仲間さんじゃあないんですか?使ってる機体もシグナルコードも同じですし、てっきりそうかと思ったんですけど………」

 

「あ、そうだったわ。仕事が早くて助かるわ。じゃあとりあえず、ここにいるあの飛行機を出口に呼んでもらったら助かるんだけど」

 

「了解しましたっ♪それじゃああの2機、ハッキングしときますね♪」

 

「よろしく頼むわ………って、え………?」

 

 つい流れでよろしくなんて言っちゃったけど、こいつ、さっきとんでもないこと口走らなかった?

 

「え、だから、わざわざここで説明するのもややこしくなるだけですから、さっさと呼びつけた方が早いかと………」

 

「どうしてそうなるのよ?ハッキング?今ハッキングって言ったよねあんた!?ちょっと、今すぐ止めなさい!!」

 

「えー、面倒くさいですねぇ~。はい、ポチっと☆」

 

 わざとらしく考える素振りを見せたかと思うと、彼女は呼び出したホログラムのボタンに躊躇いなく指を伸ばす。

 私が止める間もなく押されてしまったそれには、「Now Hacking」の文字が可愛らしく書かれていた………

 

「あ"あ"ーっ!?一機2500Gの戦闘機がぁぁぁ!?」

 

「霊夢さん霊夢さん!あの2機はマッドさん達が金に糸目をかけずに作ってますから実はその3倍かかってます!!」

 

 ここにきて突然の早苗の告発である。

 申請価格と実価格が3倍も離れてるなんて、あのマッドは減給100%でも足りないみたいね………じゃなくて!!あの戦闘機で来てくれたクルーの安全は!?

 

「あ、その点はご安心下さい。ハッキングと言っても自動航法で最寄りの出口まで飛んでもらうようにするだけですから。別に殺人的なマニューバとかはやらせませんので、お仲間さんの身の安全は100%保証します♪」

 

「ふぅ、それなら良かった………いやハッキング自体よくないけど」

 

「緑色にそれをやらせた貴女が言う言葉ですか」

 

「うっ………気に食わないけど、正論には言い返せないわ………」

 

「ま、そういう訳なので付いてきて下さいね。とりあえず防衛機構は停止させてありますから」

 

「チッ………分かったわよ。変なことしたらただじゃおかないわよ」

 

「へぇ………いいんですか?」

 

「くっ………ああもう、勝手にしなさい!」

 

「あ、霊夢さん!」

 

 ああ、やっぱりこいつ面倒くさい。………これからコイツが運営してるフネが拠点になるのを考えると、頭が痛くなってくる………さなえ、頭痛に効く薬と胃薬ちょうだい…………

 

 

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《WARNING!WARNING!Unknowning enemy approaches high speed!》

 

「ちいっ………ッ!!これで何度目ですか!?」

 

《う~シュテルーん、いい加減疲れたよー。ねぇ艦長達はまだー?》

 

「今、私とディアーチェが、探してる………所です……ッ!」

 

 偽りの空を舞台に、死のダンスが繰り広げられる。

 

 霊夢達の捜索のため巨大宇宙船にVFで乗り込んだシュテルとレヴィの二人だったが、そこで宇宙船側の防衛機構と思われる無人戦闘機群(センチネル)と遭遇していた。

 一体一体の性能自体は『紅き鋼鉄』航空隊のエースであった二人からすれば大したことはなかったものの、何よりその数が問題だった。

 墜とせども墜とせども次から次へと沸いて出る無人戦闘機の群れに辟易としたシュテルは一度一点突破を図り、自らの愛機――〈VF-22HG改 ルシフェリオン〉に搭載された大出力レーザーライフルの威力に物を言わせて強引に船内への道を切り開いた。

 そしてシュテルが空けた道に飛び込んで居住区まで侵入した二機であったが、またしてもそこで無人戦闘機群―――センチネルの洗礼を浴びることになった。

 巨大船の入口で破壊された突撃艇をその目で見ていたシュテルは"きっとあの艦長なら無事だろう"とは思いつつも、雇い主の安否を確認するまではやはり不安を感じており、中々本格的な捜索に乗り出せない現状にストレスが蓄積していった。

 突如状況が動いたのは、そんな時だった。

 

《あーシュテるん、ごめん、弾切れちゃった》

 

「何をやってるんですかレヴィ。貴女は弾薬もマイクロミサイルもばら蒔き過ぎなんですよ!無駄弾を減らす努力ぐらいはして下さい」

 

《そうは言われてもさー、こいつら次から次へと沸いてくるんだもん。そりゃあ弾だって無くなるって》

 

「仕方ないですね………レヴィ、貴女は得意の格闘戦でも何でもしてなさい!それぐらいは出来るでしょう」

 

《えー!アイツらけっこうすばしっこいから面倒なんだけど………》

 

「そうでもしないと、この局面を乗り越えられないでしょう!」

 

《まぁ、そりゃあそうだけどさ………仕方ないねぇ、じゃあ、それでやるよ》

 

 レヴィの駆る戦闘機―――〈VF-19A改 バルニフィカス〉が一瞬で戦闘機から人型へと変形し、驚くほどの速さでシールドに内臓された投擲兵装――〈ハーケンセイバー〉を取り出し、投げることなくそのまますれ違い様に一機のセンチネルを切りつけてバラバラに分解した。そのままの勢いで今度は〈ハーケンセイバー〉を投擲し、数機の敵機を真っ二つに切り裂く。

 

《ふはははっ、見たか!これがボクの実力だ!》

 

「敵は無人機ですから、格好つけても無駄ですよ、レヴィ」

 

《な、何をッ!?こうした方がモチベーション上がるんだよ!》

 

「そうでしたね、貴女はそういう人種でした。では、お好きにどうぞ」

 

《ば、馬鹿にしたなぁシュテるん!?》

 

 通信でキャッツファイトの如き口喧嘩を繰り広げる二人であったが、その間にも着実にセンチネルを破壊していく。

 そうしてレーダーに映る敵機の半数近くを解体した二人であったが、そこでシュテルが異常に気がついた。

 

「―――おかしいですね。敵が攻撃してこなくなりました」

 

《え?》

 

 最後の数機を破壊した辺りから、彼女達を囲っていたセンチネルはその大半が踵を返すかのごとく背を向けて撤退を始め、近くにいた機体もレーザーやミサイルを撃ってこなくなった。

 そのことを訝しむシュテルであったが、それとは対照的にレヴィは楽観的だ。

 

《でも撃ってこないならそれで良いじゃん。コイツら数だけはあったけど大した張り合いないし、つまんないから》

 

「そういう問題じゃないんです。これが何かの罠かもしれないと―――」

 

 その時だった。

 

 二人の機体のモニター画面に突如「Now Hacking!」と書かれた可愛らしい文字が踊る。

 

「―――え?」

 

《ゑ?》

 

 突然のことに呆気に取られた二人であったが、その意味を理解しあ二人は猛烈に嫌な予感が背筋をぞくぞくと迸るのを感じた。

 

《え、ちょっ………シュテるん!?こいつ、くそっ、き、消えないよぉ!》

 

「お、落ち着きなさいレヴィ!機体の高度を維持して!!その間にディアーチェが何とか―――」

 

《おいシュテル、レヴィ!!貴様達の機体一体どうなっておる!?こっちに謎のウイルスが侵入して………ぎゃああああああっ!?》

 

 ボガーン。

 

 船外で待つ彼女達の隊長、ディアーチェからの通信は強制的に切断され、彼女の断末魔の悲鳴と共に機械がショートしてあらぬ音を発しているのが耳に届いた。その後は砂嵐。二人にディアーチェの現状を確認する術はない。

 

《で………ディアーチェが………》

 

「………彼女は良い人でした。貴女のことは忘れません」

 

 かけがえのない仲間を失い、お葬式ムードに暮れる二人。だがその態度はあからさまに演技じみている。

 

《か、勝手に殺すなぁッ!?》

 

《あ、生きてた。やっほー隊長。元気?》

 

「まぁ、この程度で死ぬようなタマじゃないでしょう隊長は。……で、ウイルスの解除は?」

 

《………無理だ。此方からの制御を一切受け付けんばかりか下手に干渉するとこっちまで機体の制御を持っていかれる。すまぬがそこでベイルアウトしてくれ。必ず迎えにいく》

 

「そうですか………実は脱出機構まで乗っ取られたらしく、レバーがロックされてびくともしないんです。………まぁ、なるようにはなるでしょう」

 

《うわっホントだ!こいつびくともしないぞ!!》

 

 いつの間にか二人の機体の制御は完全に乗っ取られていたらしく、二人からの指示を機体は一切受け付けない状態に陥っていた。だが機体は穏やかに何処かへと向かって飛行を続けているだけなので、シュテルは落ち着いた態度でそう告げた。

 

《そうか………お前達のバイタルは此方でもまだマークできてる。何かあればすぐにでも言ってくれ》

 

「分かりました。では」

 

 ―――さて、鬼が出るか蛇が出るか。あまりいい予感はしませんが、ここは身を任せるしか無さそうですね………

 

《くそっ、コイツっ、動け!動けよぉ!!》

 

 制御を奪われた二人の機体は、何事も無かったかのように飛行を続ける。その先に探していた雇い主――霊夢達が居るとは知らないまま……。

 

 

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 ~始祖移民船・居住区~

 

 

 仲間?になったかどうかはともかく一応契約関係を結んだあいつを連れて、中枢コントロールユニットの外に出る。

 道中は行きと違って複雑な迷路のように変形しているようなことはなく、普通に一本の道だった。そこを抜けると、居住区の青空が見えてくる。

 

「あ、霊夢さん、あれ………」

 

「………ちゃんと着陸してるみたいね」

 

 中枢コントロールルームに続く道から出た先には、何事も無かったかのように着陸している2機の戦闘機があった。その着陸脚に、身を預けるように寄りかかる2つの人影も見える。

 

「あれは………艦長!?」

 

「えっと………シュテルさんにレヴィさん、だよね………。あ、うん…………とりあえず、この通り五体満足よ」

 

「私も無事ですよー」

 

 駆け寄ってきた二人に対して、一通り無事であることを伝える。

 

「いや、無事で良かったです。外に残存艦隊が待機していますから、そちらに向かいましょう」

 

「ええ。まさかこんな早くに見つけてもらえるとは思ってなかったわ。そっちに戻ったら礼を言わないと。向こうに行くのは良いんだけど、その前に………」

 

「ねぇねぇ、そっちの人は?」

 

「え?、ああ、こいつか………こいつは」

 

 ここで彼女達にブロッサムのことは紹介しようと思ったのだが、レヴィさんの疑問に応える形で先に彼女の方から前に出る。

 

「はい、このフネの現・総合統括AIのBBちゃんでーす!今は故あってブロッサム先生、と名乗らせて貰ってるので、呼ぶときはそちらでお願いしますね♪」

 

「あ、はい、どうも………」

 

 シュテルさんはこいつのテンションに面喰らっているみたいだ。それも無理はない、私も散々振り回されたもの。

 

「とりあえずアナタ達のボスとは契約を交わしましたから、ここの施設は基本的に全部フリーです。あと、先程については申し訳ありません。そうした方が早かったものですから」

 

「先程?………ああ、ハッキングですか。いえ、此方に害はありませんでしたから、その件については私からは何も。………しかし艦長、凄いのを引っかけましたね。何やったんです?」

 

「何も、あっちの方から売り込んできたのよ。ここの設備は魅力的だし、断る理由も無いかなって。元々この巨大船が目的だった訳だし」

 

 この巨大船が丸々私達の拠点になるというのなら、これほど美味しい話はない。コイツの頭の中が見えないのと覗かれたことは不服だが、それでも旨味は十分ある話だ。………コイツを残すのは癪だけど。

 

「ってことは、このでっかいフネが全部ボク達のものってこと」

 

「まぁ、そういうことになりますね」

 

 その話を聞いたレヴィさんが、子供のように目を輝かせた。

 

「ひゃっほーう!!これは凄いぞ!こんなでっかい遺跡船が丸々だなんて、探検のしがいがありすぎるー!」

 

「あ、ちょっ、レヴィ!!…………ハァ、彼女については私が面倒を見ておきます。此処に迎えの便を手配致しましたので、艦長達はそちらでご帰還願いますね」

 

「ありがと。じゃあお言葉に甘えて。………それにしても、大変ねぇ。私も私でこいつの面倒見なきゃいけないし」

 

「まあ、慣れたものですから」

 

「ちょっと霊夢さん!そこでなんで私が出てくるんです!?」

 

 子供っぽいレヴィさんの面倒を見てるシュテルさんは、年の離れた姉のような印象を受けた。癖の強いパートナーが居ると、お互い苦労するものだ。

 

 ―――さらに面倒なことに、私の胃がこのフネとバーターされちゃったし。ああ、疲れるわ………

 

 ともあれ仲間との合流はこれで果たせたし、一応活動拠点も手に入れることができた。物がない人がないのないない尽くしで殆ど何もできなかったけど、これで少しは状況も好転してくれるだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ~数刻後・帰路の強襲艇内にて~

 

 

「ところで霊夢さん?なんでアイツの方が可愛いげがあるなんて思っちゃうんですか!?」

 

「(こいつ、また心を………)だってあんた、節操無しでしょ?私はあれが必要だから認めてるだけなんだから、毎晩どころか昼でも襲いかかってきていいなんて言ってないもん」

 

「ぐぬぬ、確かに正論ですね………だけど霊夢さんのパーフェクトボディ(とハート)は諦めませんからね!今夜も覚悟することです!!」

 

「なんでそうなるの!?」




これでレイサナ二人っきりもいよいよ終わりです。BBちゃんとマッドサイエンティストの悪魔合体にご期待下さい。

茨でも霊夢ちゃんは敵がいて怒らせた方が元気出るらしいので、なんだかんだでBBちゃんも馴染むでしょう。つまり第二のサナダさんポジ。




~おまけ プロフィール・人物関係~

博麗霊夢

好き:魔理沙と早苗。(気に食わないけど紫も、かな………)

天敵:紫、早苗、あの紫色。あいつらのテンションには付いてけないわ。………紫色の奴にはろくなのが居ないわね。

敵:マッド共。私にどれだけ不馴れな書類処理をさせたら気が済むのかしら ………まぁ、発明が優秀なのは認めるけど。


東風谷早苗

好き:霊夢さんに決まってるじゃないですか!

尊敬:勿論神奈子様と諏訪子様です!

同志:サナダさんとかにとりさんの発明とか、ロマンがあって素敵ですよね!

天敵:あのBBとかいう紫色、どことなく私とキャラ被ってるような気がしてなんだかイライラしちゃいます。

???:あの霊夢さんに似てる子、もしかして似ているとかじゃなくて……

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