IS×Fate - No Limited War -   作:No.20_Blaz

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どーも。最近ガチャで目ぼしいのが当たらず、これを投稿した日には荊軻さんが三人も出てきて宝具がカンストしておつりが出ました。

という訳で第四話でした。







…アレか。俺がいい加減だからなのか?
今年凶だからか?



…いいだろう。それならば戦争(クリーク)だ。

取りあえず特定人物を弄りまくって愉悦にしてやる


てなわけで、お楽しみ下さい。


#04 「開幕」

 

 

 

一夏とセイバーが正式や契約を結び、マスターとして聖杯戦争を戦うと決め、それから一時間ほどして、二人はリビングに再びやって来ており、彼女からの話を元に少しずつだが今後の活動方針を早くも決め始めていた。

だが、入っていた彼の表情は少し暗く低い声で再度訊ねた。

 

「―――じゃあ…」

 

「はい。イチカには悪いのですが…正式な契約を結んだ今でも私は本来の力を十分に発揮することはできません」

 

「…そうなのか…」

 

「ですが、魔力供給には問題はなく通常の戦闘に関しては難なく行えます」

 

「…仕方ないよな。俺、そういう才能ないだろうし…」

 

頭を掻き俯いてぼやくが、現実はしっかりと受け止めているという顔で、情報のひとつとして拾い上げる。

だがそれを見かねたのかセイバーはそこに付け足すようにある事を語る。

 

「そうではありますが、一応補給と節約をする方法はありますよ」

 

「本当か…?」

 

「補給に関しては普通の人間と同じく食事を取る事。これは魚などの生物からや野菜などにも含まれる魔力などを供給できることからなので問題はないかと。

あとは睡眠をとる事で消費は抑えられます」

 

つまり三食きっちりとした食事と睡眠が健康の証であるように、セイバーも別の意味ではそれが効果的だという事だ。

その朗報には一夏も素直に喜んでおり、ならばと活動の一環として組み込む。

食事に関してなら問題はないし、何より一夏は調理は得意であり好む性格だ。

 

「ならちゃんと三食用意してやらないとな」

 

「ありがとうございます、イチカ」

 

目を輝かせて答えるセイバーの姿は見た目相応で、本人はそれを素直に見せてはいなかったが内心では喜んでいたように彼には見えた。

 

 

「おや。お二人とも、戻って来たのですね」

 

 

「ん…」

 

「―――――ッ!」

 

 

ふと、リビングのテーブル辺りから聞こえる声に振り向くと、そこにはもう一人のサーヴァントがのんびりと緑茶を飲んで寛いでいた。

桃色の髪と狐色の耳と尻尾。そして青い露出度の高い着物を着ているというあまりに風変わりな服装。それを今の今までしっかりとは見ていなかったが、改まって見てみると男である一夏にとって目のやり場に困ってしまう。

 

だが。マスターである翼曰く「これでも実力は持ち合わせている」らしい。

 

それが彼女、キャスターなのだ。

 

 

「ズズズ………ぷはぁ…ここの緑茶は美味しゅうございますねぇ…良い茶葉使ってるのが丸わかりですよ」

 

「…すっごく寛いでますね。キャスター…さん?」

 

「ああ。呼びにくいのでしたら普通にキャスター。もしくは「キャス狐」でも可ッ!!

私、こういう身なりですので狐と呼ばれるのは慣れてます」

 

「………。」

 

 

曰く、性格はかなり軽くそれと彼女自身のステータスが合わさってかなりの自由人であると言う。現に今は他人の家であるというのに堂々と茶をすすってのんびりと余生を過ごす人間のようにふるまっている。

それに加え彼女の言葉遣いなどもそうだが、親しみやすすぎてセイバーたちからすれば警戒心を高める原因でしかない。

 

「…敵地のど真ん中だというのに随分と余裕ですね、キャスター」

 

「敵地…まぁ聖杯戦争が開戦したのでその言い方は正しいでしょう。ですが、まだ私たちは明確に敵であると互いにみなしたわけではありません。特に、マスター間ではどう思っているのやら」

 

「ッ…」

 

どうなのですか、と問うように目を向けてくるセイバーに若干だが半歩下がってしまう。

一応キャスターの言い分も正しく、聖杯戦争が始まったからとはいえまだ明確に敵であると双方みなした訳ではない。

 

「お忘れですか、セイバーさん。私のマスターである翼さんと貴方のマスターである一夏さん。二人は教師と生徒という間柄でもあるのです。それが公で敵対関係を見せつけてしまえば…」

 

「他のマスターに気取られる可能性がある。それぐらい私でも分かります」

 

「ええ。ですが」

 

「何かあるというのですか」

 

「勿論ッ。マスターであるという事から直ぐに敵であると認めさせるのは愚の骨頂です。どんなに相手を倒したくとも、場合によっては親しみよくして近づけさせることも重要です。

…まぁ翼さんがそんな姑息な手を使うとは思いませんが…なにせあの人、生粋の武人肌ですからねぇ」

 

 

 

 

「武人っつーか鬼神の間違いじゃねぇのか…」

 

「そっちでも正しいと思いますよ?」

 

「イチカッ!!」

 

「え、俺!?」

 

馴れ馴れしく敵と話すな、と言いたい顔で声を出すセイバーに自分がわるいのかと驚く。

まだ明確に敵だと決まっていないのにと反論するが、それでもあまり軽々しく話してはいけないと説教のように言われてしまう。

 

 

(…ですが。不安要素もまだあるのですよねぇ)

 

そんな彼らの姿を目じりにキャスターは一人、気にはなっていた事と考えながら緑茶を飲む。

 

(まず翼さんが彼らと敵対するかで言えば、恐らくはNO。ですが味方するという訳でもないでしょうね。なにせ三年前には千冬さんたちと何度か私たちバトりましたし…

それに私たちやアーチャーさん。そしてランサーさんは三年前からの続投組。聖杯戦争は七人のマスターと七騎のサーヴァントで行われるのが基本。

これがもし、残っているならば私たち続投組がどう扱われるのやら…)

 

 

 

 

「まだ明確に先生らが敵と決まった理由じゃないんだ。流石に時期尚早だろ」

 

「ですがキャスターは狡猾なサーヴァントです。上手く乗せられるという事だって…」

 

 

「いくらまだ味方でもないからと言って、そう堂々と敵生物宣言させられると流石に傷付きますよ、セイバーさん」

 

「………。」

 

「マスターである一夏さんの言う通りです。開戦したと言ってもまだ誰か敵で誰が味方かは殆ど分からない状況。ここは物腰落ち着けて、見極めるのが定石ですよ?」

 

「………それはそうだが…」

 

少し頭に血が上ってないか、と声をかける一夏は宥めるように語り掛ける。

いくら彼女の能力が高くとも、直ぐに熱くなってしまえば冷静さを失って周りの事を見られなくなる。

 

「残念だけど、今はキャスターの言う通り。全員が敵であるか味方であるかハッキリとしてから、対応を決めようぜ」

 

「…ですが…」

 

「…それに。俺はキャスターに訊きたい事もあるからな」

 

「―――ほう。早速、情報収集ですか。しっかりしておりますね。それで私に訊きたいのは?

年齢?

好きなもの?

得意な家事?

それとも好きな男性のタイプ??」

 

何故そんな事を聞かなければいけないのかと言い出したくなったが、それをグッと堪え、一夏は失笑するも訊ねた。

 

「サーヴァントについてだ。聖杯戦争って七騎のサーヴァントが召喚されるって言ってただろ」

 

「ええ。過去の英雄、すなわち「英霊」が座から呼ばれ、聖杯を介して召喚される。それぞれの七つのクラスに部類されて、です」

 

「その事だ。今、俺たちが分かっているだけで知っているクラスは五つ。

セイバー、ランサー、アーチャー、キャスター、アサシン。

この中で、千冬姉ぇたちが前の聖杯戦争に参加して召喚されたのがランサー、アーチャーそしてキャスター、アンタだろ」

 

「そうですよ。私とアーチャーさんはマスター同一。ランサーさんは当然貴方のお姉さんである千冬さんです」

 

「…俺が知りたいのはそこだ」

 

真剣な声で話す姿にセイバーも釣られ、同じように顔を張りつめさせ、キャスターは何を思っているのか目を細める。

彼が訊きたい事。それは最初に生じたある矛盾(・・)からだ。

 

「俺がセイバーを召喚するまでに襲われた相手。そいつのクラスはランサー(・・・・)だった」

 

「………!」

 

 

 

「つまり。今回の聖杯戦争で、また新しいランサー、アーチャー、キャスターのクラスが現れている、と思って間違いはないよな?」

 

 

「…ふむ」

 

 

聖杯戦争は七騎のサーヴァントが召喚(・・)されて初めて開催されるものだ。

恐らく最後の一騎であったセイバーが召喚された今、その聖杯戦争は始まっている。

ならば、単純に前回のランサーが居たとしても、新たに聖杯戦争を始めるなら…と。

 

 

「どうなんだ。キャスター…?」

 

「それは―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃。千冬は一人、和式の中で数ある部屋の中のひとつで橙子と連絡を取り合う。

本人はあくまで聖杯戦争には参加しない方針を貫いているので、間接的にインフォメーションなども頼んでいる。

一夏の事についても話すべきだろうと思い、取りあえずはと報告も兼ねていた。

 

『じゃあ、アイツは正式に契約して…』

 

「マスターになったよ。これで、七騎揃ったことに…なるのかもな」

 

『聖杯戦争には開戦の合図もないからな。だが、あの襲撃がその初戦であるのには間違いはないだろう』

 

開幕の花火は今回の襲撃で、それを合図に聖杯戦争が始まった。それには彼女も同意し、今までとは違うことを早速だが感じ始めていた。

 

「…の、ようだな」

 

『という事は、大聖杯から供給が?』

 

「ああ。ランサーが槍を使ったときには一瞬死ぬ覚悟ぐらいはしたが、恐らくセイバーが召喚されてからだろうな。ある程度は楽になったよ」

 

『三年の温存は無駄ではなかったようだな。極力魔力消費を抑えるための行動。塵も積もれば何とやらか』

 

「全くだ。だがそれでもマトモな戦闘となると…」

 

 

不意に脳裏に過去の記憶を思い浮かべてしまう。あの時、自分の所為でなんど死にかけただろう。なんど自分も生死の境をさまよっただろう。

今となっては笑い話にしかならないが、そのお陰で培われた経験は確実に活かされていると感じていたようだ。

 

『お前からの供給とでは長期戦は無理か』

 

「五時間ぶっ続けはいけるが、宝具を使うとなると三時間がいいところか」

 

しかしそれでも、あまり楽観的になれるような状態ではないのも事実だ。

いくら三年間である程度の準備をしたからとはいえ、それでも十分に戦えるかどうかと聞かれれば、そうではないと答える。理由は他にもあるが、最も大きいのは積もった塵が本当に山となっているのかということだ。

千冬の自身への見立ては山というよりも丘であるとの事。三年間という短い期間であるからという理由もあるが、やはり問題は根本にあるらしい。

 

「問題はやはり回路か…」

 

『悲観しても、お前のは仕方ない。なにせ、治療のためとはいえ回路の半数を閉じて(・・・)しまったのだからな』

 

「………。」

 

 

しかしそれはどうにも打破する事の出来ないことだと分かっていた千冬は、頭を掻いて床畳に寝転がると分かって入ることではあるがと思い電話の向こう側にいる彼女に訊ねる。

せめて兆しだけでもないのか、と願うように。

 

「…どうにか出来ないか?」

 

『無理だな。三年前の反動で、今のその半分の回路はブレーカーが落ちてしまっているような状態だ。戻そうにもあと二年は必要だ』

 

「………そうか」

 

『第一、それを承知でお前は三年前にあんな無茶をしてがした。忘れたとは言わせんぞ』

 

怒気の混じった声で話す彼女に、分かっていると答える。自分でもその時の自分に対しそう言い放ちたいが、過去の自分はそれを納得して行った。

自分でも馬鹿な事だとは思っているが、少なくともその時の自分はそうは思っていなかっただろう。

 

『お陰でそのあとの大会にも響いて、結局あの後に何日床に伏せてた』

 

「忘れてはいない。だが状況が変わった」

 

『聖杯戦争か? わるいがそれでも駄目なものは駄目だ。あと二年。でなければ回路が壊れるぞ』

 

「………。」

 

『一応、(よしみ)だからやっているが、もしこの戦いで無理やり開いてみろ。そのあとの事は何も知らんからな』

 

「…分かってる。極力無理はしないことにする」

 

いつもとは違いすこし気弱な返事に、電話越しで聞いていた橙子は彼女の内心を察した。

命をかける戦いに今度は自分の弟まで加わったのだ。出来る限りバックアップしたいのも事実だし、仮に参加できるのだとしても手を抜きたくはない。そうすれば最悪命を落とすのだから。

 

『…それと、橙子』

 

「なんだ?」

 

『今回の聖杯戦争、監督はどうなってる』

 

「………一応、裏から聞いた話だが…どうにも選抜に手間取ってるらしい。なにせ、あの天災を始末するのに力注いでるって言うからな」

 

『…アイツ…』

 

「どの道、聖杯戦争が始まるから直ぐに代理人は来るだろうさ。けどそれはあくまで時間稼ぎ。それまでは聖杯戦争もかなり荒れるだろう」

 

 

そもそも聖杯戦争の監督役というのは二つの組織から選抜される人間が就任する。

聖堂教会と魔術協会。この二つの組織から選抜された人間こそが聖杯戦争の監督役となり、戦いの運営を担う。

監督役の役割はいくつかあるが、その中で主にサーヴァントを失ったマスターの保護や聖杯戦争によって起こってしまった事件等の隠蔽。その修繕、修復等も資金源は別ではあるが事実彼らの管轄だ。

 

「監督役の不在。前回からの続投組。そしてお前たちと縁を持つ彼女」

 

『アイツは関係ないはずだ』

 

「どうかな。自力でこの世界を見つけたのかもしれんぞ?」

 

『………。』

 

「とにかく、監督役が現れるまでは無理はするな。今回の聖杯戦争、思ってたより激しくなるぞ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

七騎のサーヴァントが出そろった。

それは一夏たちだけではなく、当然ながら他のマスターにも知れ渡っている。

勿論、それは一夏たちを襲撃したマスターたちも同じことだ。

 

 

 

「―――――ついに出そろったな。サーヴァントが」

 

 

質のいいオフィスにひとつだけあるデスクに腰を下ろす男は、窓から外の夜景を眺めながら呟く。

高層ビルであるから眺める夜景は見下ろすように絶景で、態とオフィスの電気を消している所為でより幻想的だ。高速道路では行き来する車のライトが光り、一般道などでは街灯が輝く。そして、今居るようなビルではまだ居残っている人間がいるのか所々に光が灯っている。時間からして遅い頃合いだというのに残業か何かで残っているのだろう。

 

だが、そこに腰かける男にとってそんな事や、まして夜景については至極どうでもいいことだ。一応は綺麗ではあると理解しているが感想はそれだけ。特に付け足すこともない。

 

 

 

「最後の一騎、セイバーは…どうだった。ランサー」

 

 

「どう…ねぇ…」

 

 

向かい合った長いソファの上には横になって寝転がる男の姿があり、気の抜けたような声と共に足をぶらつかせていた。

数時間前に一夏たちを襲撃したランサーがそこで居眠りでもしようしているかのように寛いでおり、彼は訊ねられたことに軽く唸ると自分の意見も交えて問いに答える。

 

 

「…セイバーは強い。マスターが未熟だっていうのに鍔迫り合いをして勝っていた。元が相当いいステータスを持っていたんだろうなぁ」

 

「ほう…」

 

「おまけに、セイバーの剣は風を纏って見えなくなってる。あれじゃあ剣の間合いは図れないし、奇襲攻撃だって場合によっちゃされるだろうさ」

 

「…見えない剣、か」

 

ふむ、と頷くとランサーからの話に男はひとつの仮説を立てる。セイバーの剣が風で見えなくなっているのは、恐らく剣そのものに原因があるからだ、と。

 

「…どうやら、マスターよりもサーヴァントの()が恵まれていたようだな」

 

「そりゃアンタの予想が正しければ…なぁ?」

 

彼らの予想が正しければ、敵対したセイバーは思いのほか強敵でしかならない。

マスターが未熟であっても、ランサーと戦えるほどの能力を十分持ち合わせているのだ。宝の持ち腐れとは言わないが、誰がマスターであろうとも脅威となるのには変わりはないはずだ。

 

「七騎のクラスの内で最強のクラスと謳われるセイバー。ありゃその中でも上玉だ。もしマスターが完成した奴なら、オールAランクは軽いだろうな」

 

「…で。その上玉がアレか」

 

「…ええ、まぁ」

 

寝転がっていた体勢から座り直すと、ランサーは自分の手が届く距離に置かれていた酒瓶のウィスキーを手に取り半分ほどグラスに注ぐ。

そして、瓶をテーブルの上に置くとそのまま喉の奥へと流し込んだ。

 

「まさか苦戦するそのセイバーが若い小娘だとはな」

 

「流石に俺も驚いたさ。だが実力は言った通り。舐めてかかれば…」

 

「首はない…か。面白い」

 

「オジサン、この戦いに勝てるかなぁ…?」

 

 

 

椅子に座った男は口元を釣り上げて笑う。

しかしその顔は優しきものではなく、獰猛な狩りの獲物を狙う捕食者のようなもので小さく笑い声を出して喜びの念をこらえていた。

まだ始まったばかりだ。これぐらいで笑い転げるものなら何時か笑い死ぬだろう。なら、それは後でとっておくべきだ。

 

右手に聖痕を宿し、固まったスーツでさえも彼の屈強な肉体にとっては拘束具のようにしかならないほど形を肉体によって作られてしまっている。そして腕や手も太く、もし彼と同じ年の人間がいるなら倍は大きいと分かるだろう。

彼がランサーのマスターで、口元を上げて言った。

 

 

 

「聖杯戦争…そうでなければな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

腹が減ってはなんとやら、と誰が言っただろうか。

取り合えず一夏はそんな言葉を作ってしまった人物に対し、猛烈な怒りをぶつけたくてしょうがなかった。

 

あの後、セイバーたちを加えまだとっていない夕食を食べることにしたが、千冬の提案で翼たちも同席することとなる。それぐらい、別に人数が増えたぐらいで根を上げるほどの事ではない。個人的に気になることといえば、アーチャーと呼ばれたサーヴァントが同席しなかった事ぐらいだろう。しかも、それがマスター本人から断られたとなると彼女らにそれなりの理由があるのか、それとも単に必要がないのか。いずれにしても何となく彼のことが気に入らず、しかも同席しないということから一夏の中に悔しさが残った。

 

 

 

 

 

さて。そんな事は頭の隅に置き、一夏はまず現在の状況に頭を痛める

 

 

というよりそれで痛めているのだ。

 

 

人数が増えて個人的に料理が好きであった彼は上機嫌になって作ったはいいが、出来ていざ食事。と思った瞬間にある事を思い出してしまう。

そしてその直後に彼は思い知る事となった。

 

自分の目の前で口を動かし、今晩のおかずである煮物を食べる姉の千冬とランサー。

そして角を挟んで一夏の隣ではセイバーがお椀を持って白米をおいしそうに食べている。なにせ色が白く柔らかいのだから出来立てが一番だろう。

そしてセイバーの対極位置に翼とキャスター。そしてそこから角を挟んで一夏。

もしこの長方形のテーブルを対極で線を引いたらこんな感じだろう。と失笑する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一夏の失念。

それは千冬とランサーがやたらと大食らいである事。

 

そして誤算。

セイバーは魔力の事もある―――だけではないと思うが黙々と出された料理の半分を物の五分ほどで食い尽くしていること。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そう。この三人。同い年の女性よりもかなり(・・・)大食いなのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………。」

 

「…一夏さん。大変ですね」

 

緑茶の入った湯呑を持って言うキャスターの言葉に、返すこともできない彼は無残に散っていく食べ物たちと今月の家計に頭を痛めることになる。

 

 

 

―――――ちなみに。これがまだほんの序の口であることは一夏は後で身をもって知る事となる。

 

 

 

 

「バイト…しようかな…」

 

幸いと言うべきか、来客の側は食欲はそこまでのものではなく一般的と呼べる割合だ。

しかしそれでも三人の食事の割合が馬鹿にならないので、結局炊飯器ひとつが実質彼女たちだけに食い尽くされたのだった。

しかも、ご丁寧に食後のデザートまでもだ。

これで三人(特に姉の)体重が一向に増えないというのが一夏にとっては現在永遠の謎指定になっている。

果たしてどうしてなのだろうか、どういうシステムなのだろうか。

それはいずれ分かる―――――ことなのだろう…?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…セイバーって結構食べるんだな…」

 

「な…それはチフユやランサーも同じではないですか…!」

 

「いや、あの二人の事は身をもって理解しているからな…」

 

「………イチカ、なにかあったのですか? まるでこの世の悪によって宣告されてしまったような…」

 

「…なんで当たらずも遠からずを言うんだよ」

 

 

数十分後。そこには苦渋の顔で皿洗いをする一夏と湯呑で緑茶を飲むセイバーの姿があり、千冬はその間に翼を玄関で見送ろうとしていた。

ちなみに話は聞こえていなかったようで、後でセイバーに釘が刺されたのは言うまでもないことだ。

 

 

「すみません。一家団欒を邪魔するような真似をして…」

 

「別に構わん。元より、家族人数が増えてしまっているからな。それに、客人と自宅で食事も慣れている」

 

「…橙子ですか」

 

「その顔…お前もか」

 

「…アーチャーがアレなので…」

 

三人とも料理は壊滅的なのだが、それぞれ一夏とアーチャーがそれを補っているため、一人だけ本当に一人生活をしている橙子は時折彼女らの家によって食事を集るらしい。一応本人もそれを認めており、しかも「出費の削減」と理由づけしている。

 

「…アイツ、自炊はできなくても他に方法があるだろうに…」

 

「まぁ…私たちが言えた口ではないんですがね…」

 

靴を履き、かかとを整えた翼は軽く挨拶をして玄関のノブに手を掛けた。

だがその瞬間に後ろから呼び止められ、その体勢のまま振り返る。

 

「一応聞くが…お前も今回の聖杯戦争に参加するのか?」

 

「…マスターとしての権限はあります。監督役が来るまでは一応参加するつもりです。あとは向こうからの話を聞いて、可能であれば…ですが」

 

「…それしかないか」

 

「なにせ、私たち二人は前回の参加者であって今回続投を決められたわけではありません。令呪があるからと言っても―――」

 

「参加できる、という訳ではない…か」

 

 

改めて令呪を見る千冬はハッキリとしない今の自分の立ち位置に苛立ちは持っている。

だがどうじにそれは知るべき疑問として急いているのも事実だ。もし参加が許されるのであれば一夏と共に勝ち残りたい。彼が危険に晒された時に守ってやりたい。

少なくとも、自分にはその力があるのだから。

無駄な時間があったわけではない。十分であるとも思ってはいない。だがそれでも守れる術は持ち合わせている。

後はそれが許されるかどうがなだけだ

 

 

「今回の聖杯戦争…私たちを受け入れるのか…?」

 

 

それとも。受け入れないのか。

尽きぬ疑問、解決されない問いに千冬は強く拳を握りしめた。

それしか出来ない自分に、悔しさをかみしめながら。

 

 

 

 

 

 

場所は再びリビングになる。今後のことに頭を痛めながらも後片付けを終えた一夏はセイバーと二人、今後の戦いについての相談を始める。

幸い他の誰にも聞こえないようで、二人は気兼ねなく話を始めた。

 

「…で。今後…というか、そもそも聖杯戦争ってどうやって行われているんだ?」

 

「…まずはそこからですね」

 

苦笑する顔に知らなくて悪かったな、と頬を少し赤らめて目をそらす。

しかしそれでも一夏が聖杯戦争について、そもそも戦いについても初心者であることから当然の疑問ではあったが、彼はそれさえも知らないというのがまるで馬鹿か愚か者であると言われているように思え、小っ恥ずかしく思っていたのだ。

彼女はそうは思ってはいないが、どうやら考えに多少の違いがあるようだ。

 

 

「聖杯戦争は原則、一般の人間に見られては行けません。それを避けるために基本夜間での行動がほとんどです。

が、もし人気がほとんどないのであれば昼間であっても結界などを張っておけば問題はないかと」

 

「…例えば、街はずれの廃坑とか…夜の地下鉄とか…?」

 

「ありきたりな所で言えばそうですね。それにサーヴァントに認識阻害の魔術を張らせたり、寝静まった時間であるなら多少民家に近くでも問題はないと思いますよ」

 

「…ってことは深夜の学校…とかでも大丈夫ってことか…」

 

「人の気配がなければ、の話ですが。もし警備の人間がいれば大抵の魔術師は気絶か殺害をします。が後者は後々面倒になるので大抵は前者を行います」

 

「………。」

 

秘密裏が原則な戦いなので、場所などが狭められるか用意されるものかと思っていたが一夏は案外場所は身近なところでもいいものなのだな、と関心の念を唸ってしまう。

だが実際はそこが難しい、とセイバーが付け足し彼に質問を投げる。

 

「イチカ、ここら辺に大きな森林地帯や廃墟といった人気のない場所は?」

 

「…セイバーの話を元にして挙げるなら…空海原、首都地下鉄と高速…あ、けど高速は監視システムがあるからアウト…だけど下の支柱のところは場所によっては人気がないところもあるな。あと、自然公園も一か所だけだけどデカいのが」

 

「他には…?」

 

「あとはもっぱら郊外だろうな。ココは都心だし、あるのはビル街だ。けどいけるのであれば路地裏もあるけど…」

 

「…人気のなさを考えればいいでしょうけど…これは一度下調べをする必要がありそうですね」

 

「オッケー。後で出来る限り調べよう」

 

「あと…今から外に出るのですか?」

 

セイバーの言葉に、立ち上がって体を伸ばしていた一夏はそのままの状態で呆気にとられる。それには本人も直後に目を丸くして、違うのか、と問いかけるように目を合わせた。

 

「…セイバー?」

 

「…え、今から外に出ては敵の攻撃を受けてしまう…違うのですか?」

 

「いや…確かに…そういう時であればセイバーの意見は正しいけど…」

 

「??? イチカ、下調べとは現地に向かう…ではないのですか?」

 

困った顔で訊ねるセイバーに、一夏は納得した顔で苦笑し返事を返す。

どうやら現代の知識を得ていても、実際に見て触れねば分からないものもあるらしいと彼も改めて知った。

 

「それも良いけど、今日はセイバーの言った通り敵の再襲撃も考えて家で調べることにする。俺の部屋にだってパソコンは置いてあるし」

 

「パソコン…ですか?」

 

「ああ。ネットならここ等の地図を調べられるし、それも合わせれば調べたりするのもかなり楽だろうからさ」

 

「………ネット…」

 

不思議そうに、さも興味ありげに頷く姿に新鮮さを感じた一夏は、彼女より少し先に居るという感じに酔いしれて嬉しさを隠しながらも訊ねた。

 

「セイバー、パソコン知らないのか?」

 

「…知識としては分かります。ですが実際となると…」

 

「…へぇ。見て触れては初めて、ってことか」

 

「はい。ですので、もしよければ…」

 

「ああ一緒に部屋に来てくれ」

 

 

興味津々に反応したセイバーの姿を見て嬉しく感じたが、次の瞬間。その顔が一転して先ほどの彼女よろしく困った顔となる。

 

 

「都心部となると、戦いの場が限られますね…」

 

「やっぱりか…?」

 

「ええ。防音の結界はありますが認識阻害となると、かなり難しいですから…」

 

「…ってことは逃げるにしても他の人間にも被害が及ぶのか…」

 

 

その瞬間。セイバーはある事に気づき、彼に問う。

 

 

「…イチカ。戦えないのですか?」

 

「え…?」

 

彼の話に疑問を持ったセイバーは不思議そうに尋ねる。

それには一夏も目を丸くして耳を傾けた。

 

「いえ。マスターである以上前線で共に居るというのには異論はありません。ですが相手は魔術師。戦闘については魔術で行ってきます」

 

「そりゃ分かってる。けど、俺は魔術なんて何一つとしてできないし…そもそも戦う事自体…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………それではイチカ。貴方は戦えるのですか? それとも…」

 

「それはぁ…」

 

 

 

 

「―――戦えんぞ」

 

「………え」

 

「だから。そいつの戦闘能力はハナから無い。ゼロだ」

 

「………。」

 

 

 

 

 

直後。セイバーが強引に今後の活動に一夏の訓練と鍛錬を押し込む。これには千冬も同意し、後で二人が作り上げた地獄のような特訓メニューが作成された。

セイバーは彼の能力の低さに言葉も出ず、自分が今までどれだけ恵まれたマスターの下で聖杯戦争を戦い抜いてきたのかというのを改めて思い知った。

特に二度目は彼女にとって最高のマスターと環境だったらしい。

 

 

 

この後。一夏の悲惨な叫びが聞こえたが、帰宅途中だった翼たち二人は聞こえないフリをして帰ったと言う…

 

 

 

 

「…彼の口癖…「なんでさ」だそうですね、アーチャーさん」

 

「………。」

 

 

 




次回予告


「不思議なところですね」

「ああ。ここは…」


「マスターは揃ったが…全員ここに集まっている訳ではない」


「…で、橙子さんコレは…」

「一夏君。ちょっと…診察されてくれない?」



次回 「鉄の森林」
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