僕の想像していた魔法世界はこういう世界じゃない 作:キャラメルコーン
図書館前は乱戦状態だった。教師陣とテロリストの激しい戦闘は、教師側がやや劣勢といったところか。
「うおおおおお! パンツァー!」
レオが魔法を発動しつつ、テロリストに殴りかかった。
音声認識か。僕がこの世界に来てからまだあまり見たことのないCADの操作方法だ。後で見せてもらおう。
「お兄様、今展開と構成が。」
「逐次展開だ。十年前に流行った技術だな。」
「あいつって、魔法までアナクロだったの。」
僕はこっちに加勢することにしよう。
「ここは僕たちに任せて、みんなは先を急いで!」
「ああ、わかった。翔一、レオ頼んだぞ!」
「おうよ、引き受けた!」
レオは硬化魔法をかけたCADでテロリストを次々殴りつけ、吹き飛ばしていく。これは負けてられないな。僕は校内での使用が解禁となったマテリアを使うことにした。コマンドマテリア『ぬすむ』の上位アビリティ、ぶんどるを使ってテロリストの刀を強引に奪った。ぶんどるはぬすむと違って相手にダメージを与えることができる。
「ヘイスト!!」
さらに動きが二倍速。近接武器も手に入れて一気に前線へ出た。アサルトライフルの連射を受けるも左右への高速移動と身体能力をフルに使った剣戟で弾丸を弾き、躱し、傷一つ負うことなく射手を撃破する。
「相変わらずとんでもないやつだな。」
「褒め言葉としてとってもいいのかな?」
こうやって言葉を交わすくらいには余裕がある。僕たちの加勢により勢いを増した高校側は、このまますぐに鎮圧完了させてしまうかに思われた。しかし、少しずつ勢いがなくなっていく。どうして。確実にテロリストの人数は減っているはずなのに。
「どうなってんだ?なんか押されてるぞ!」
「僕にもそれはわからないけど、このままじゃヤバイ!」
不審に思った僕とレオが後ろを振り返ると、赤いコートを着た男が立っていた。右手にはレイピア。左手にはCAD。うちの制服を着ているわけでもなく、教師には見えない風貌だ。となると考えられるのはテロリスト。相当強いのだろう。目があっただけでも相当の威圧感だ。
「どうする?」
「どうするったって、戦うしかねえじゃねえか。」
「それもそうか。僕が撹乱するから、レオはデカイの一発頼んだよ!」
そう言って僕は相手に斬りかかった。ただでさえ人間離れしたスピードを倍速にしているのだ、僕は校内で一番の速さだという自信があった。それであらゆる方向から何度も攻撃しているのに、全てが防がれ、躱され、一太刀も
与えることができない。レオも攻撃するが、上手くいなされてしまった。
「お前ら、まあまあいいセンスしてんじゃないの。高校生にしてはね。」
「そりゃどうも。それよりあんたは何もんだよ、唯のテロリストには見えねえな。」
「おれはしがない雇われの用心棒さ。」
用心棒?テロリストの?ふざけてんのか?
「ブリザド!」
「危ない危ない。キミ、なかなか珍しい魔法を使うんだね。」
魔法が斬られた!?どんな反射神経してんだこいつ!
ここでふと男の持っているレイピアが気になった。よく見ると、二つの玉がはめ込まれ、刀身が赤く輝いている。⋯⋯これは!
「レオ、不用意に近づくな! その男に切られたら硬化魔法でもどうにもならない! 腕ごと焼かれるぞ!」
「マジかよ!!」
間違いない、男は炎系のマテリアに『ぞくせい』を連結させている。魔法剣にしては炎が薄い。
「よく分かったな、お前マテリアを見たことがあるのか?」
あいつが使ってるのは『ほのお』なのか?それにしては飛び道具を使ってこない。となると残った可能性は一つ。召喚獣。相手が遊んでいるという可能性も奴の態度からして高い。どちらにせよそれを使われる前にケリをつける。
「バファイ!」
僕は全力で突進をかける。
「おいおい、気でもどうにかしちまったのかよ。まあいい、死ね!」
男の横薙ぎ一閃。しかし、僕の体に傷はつかない。そしてそのまま男を羽交い締めにして、
「レオ、行け!!」
「おうよ、任された!」
強烈な一撃。男の鳩尾に直撃した。男を掴んでいた僕も一緒に吹き飛んだ。
「やったか?」
「今ので立ったら人間辞めてるでしょ。」
「残念だったな。どうやら俺は人間を辞めているらしい。」
男は立ち上がる。
「お返ししてやりたいところだが、どうやら時間切らしい。依頼主が帰ってこいとさ。」
そしてそのまま強烈な音と閃光。スタングレネードなんて古典的な方法を取ると予想していなかった僕たちは男を見失い、落ち着いた頃には姿はみえなくなってしまっていた。
騒動もひと段落つき、校内にいたテロリストは全員警察に連れて行かれた。と言っても残党がまだ隠れているという可能性が無いわけではないのだが。みんなは保健室で壬生先輩に話を聞いている。僕は壬生先輩について詳しい事は何も知らない。だから外で待っている事にした。もう夕日が綺麗な時間になってしまった。至る所で大勢の人が忙しなく働いている。
達也君を先頭に、みんなが中から出てきた。顔つきを見るにまだ何かをする気でいるらしい。
「話はついたの?」
「ああ、今からブランシュのアジトへ乗り込む。」
ブランシュ、というのが今回の事件の裏にいる組織らしい。おそらくあの赤コートはブランシュの方に雇われているのだろう。
「もちろん、僕も一緒に行っていいよね?」
「ああ、構わない。」
ここで誰にも気付かれない程度に話のトーンを落とす。
「赤いコートの男は僕に任せてほしい。」
「話はレオから聞いた。そいつは
「ああ、間違いないと思うよ。」
十文字会頭の用意した車で僕たちはアジトへ乗り込む事となった。メンバーは達也君、深雪さん、レオ、千葉さん、十文字会頭、剣術部の桐原先輩、そして僕の7人だ。アジトの位置は小野先生から聞いたらしい。なぜあの人がそんな事を知っているのか、と達也君に聞くと、知らない方がいいと言われた。彼にそう言われるということは、そういうことなんだろう。
作戦は簡単だ。まずレオの硬化魔法で車の外装を固定し、突っ込む。そして達也君と深雪さんが正面から、十文字会頭と桐原先輩が裏口から攻め込み、レオと千葉さんは退路の確保と逃げ出したブランシュメンバーの始末。僕は赤コートの処理を担当することになった。正確にはあいつの持っている『イフリート』の回収だ。
「レオ、今だ!」
「パンツァーー!」
作戦開始。敵のアジトへたどり着いて最初に現れたのは、例の赤コート。
「おい、大人しくお留守番ってわけにはいかねえようだぞ?」
「あれがあんたたちの言ってた奴?退屈するよりはいいじゃない。」
「エリカ、レオ、翔一、任せたぞ。」
「任せて。そっちも早く片付けて帰ろうね。」
イフリート。まさかこんなところで自分の行いのツケが回ってくるなんて思いもしなかった。確実に回収してみせる。確実に。
なにこの描写。下手すぎるだろ⋯⋯。