買い物へ行った日、夕食を食べ終えハーマイオニーと別れて私達はロンドン郊外にあるホテルへと向かった。
酔ったママを初めて見たけど、案外お酒に強いらしい。あれ程飲んでいたのに素面に見える。
ホテルに到着して、フロントで鍵を受け取る時も普通にしていた。
「さぁ、今夜は疲れたでしょう。早くシャワーを浴びてベッドへね。ママはちょっと仕事してるから、何かあったら声をかけてね」
「「うん」」
「ママ、大丈夫?」
「えぇ。これくらいは大したことないわよ。昔よりだいぶ弱くなっているけどね」
そう言ってママは隣の部屋へ入って行ってしまった。
…あれで弱くなってる…。グレンジャー夫妻がママに、もうそろそろやめておいた方がいいんじゃないかって頻りに飲むのを止めていたのに…。
ママってザル?
「アル、将来ママとお酒は飲みたくないね…」
「うん…あれは僕も無理そう…」
アルと見つめ合って思わず吹き出してしまった。
「この後、仕事するって言ってたね。ママってワーカーホリック?」
「うーん、それはそうじゃない?あの人、一応研究者だもの」
「もしかして論文でも書いてるのかな?あれだけお酒飲んでても論文って書けるものなのかな?」
「どうだろう?ママなら可能カモ?」
そんな話をアルとして、アルに先にシャワーへ向かわせ(私のが時間がかかるからね)私は今日買って来た、教科書を開いた。
つい夢中になって読んでいたんだろう。アルがシャワーから出てきたのも気が付かなかった。
「姉さん、お先。……姉さん!!」
「……」
「はぁ。姉さんは立派にママの子供だよ」
「…ん?あー、出たんだね?」
「やっと反応した。うん、お先に」
「よし!私も行ってこよー」
なんかアルが失礼な事を考えていた気がするけど、まぁいっか。今日は楽しかったしね。
明日は何をするかママに聞いてなかったけど、時間があったらまた教科書を読もう!
翌朝、ママはなかなか起きてこなかった。朝食の時間を過ぎても…仕方ないのでママの部屋のドアを思いっきり叩く。
「ママ!!もう朝よ!まだ寝てるの?」
ドアに耳を当ててみると、大きなイビキが聞こえて来た。まぁ、あれだけお酒を飲めば当然か。
私達はママの事は放っておいて下のレストランで朝食を食べ、その後は部屋へ戻って教科書を読み始めた。
アルは少しして飽きたようで、もう一度ママを起こしてみると言ってママのいる部屋へ向かっていった。
「リリー、ママは起きたみたいだ。シャワーの音が聞こえたよ」
「そう。やっと起きたんだ。ってか、何時まで仕事していたんだろうね」
「うーん、僕は早く寝ちゃったから知らない」
「私もそんなに遅くまで起きていた訳じゃないからな」
ガチャリとドアが開く音がして其方を見ると、ママがバスローブ姿で髪をタオルで拭きながら出て来た。
「あら、おはよう。あなた達、朝食はちゃんと食べた?」
「おはよ。えぇ、ちゃんと下のレストランで食べたわ」
「おはよ、ママ。僕もお姉ちゃんと食べたよ。それにしても随分お寝坊だね」
「仕事が終わったのが4時頃だったのよ。それに久々にお酒飲んでたから、効いたみたい」
「それなりにお酒の影響はあるんだね」
「…まあね。さて、今日はあなた達に学校へ連れていけるペットを買いに行きましょう」
「え!いいの?!」
「まぁ、ペットというか…連絡手段になるのかしら」
「でも、それってフクロウって事でしょ!!」
「今まで家で動物を飼ってくれなかったから、凄く楽しみ!!」
「そう。それは良かったわ。魔法使いの郵便はフクロウに頼むのよ。何処に居ても届けてくれるの。便利よ」
「じゃあ昨日行ったダイアゴン横丁にあったイーロップ梟店ね!」
「そうよ。あそこにね」
「ママ、もうあそこへは行きたくないんじゃないの?」
「気にしないで良いのよ、そんなこと」
「じゃあ、早く行こうよ!」
ママの支度が終わって、また『漏れ鍋』経由『ダイアゴン横丁』へ。
梟店へ行って、私達の気に入った子が見つかり、その子を買ってもらった。
だけど、私達が泊まっているホテルは動物を持ち込めない。
ママはそんな対策もしっかり考えていた。
駅にフクロウを預かってくれる所があるんだって。そこへフクロウを預けに行ったのだが…。
「ねぇ、ママ?9と3/4番線って何処?」
「うふふ。このキングスクロス駅の9番線と10番線の間にある、この柵を通るのよ」
「「え?」」
「こっちへ来てごらんなさい」
そう言ってママは9番線と10番線の間にある柵へ私達を近づけさせた。
私達が近づくと、少し周りを確認してからママは柵へと腕を突っ込んだ。
すると、柵なんか無いかのように腕が消えている。
「うふふ。怖くないから、何気ないふりしてマグルに怪しまれないようにここを通り抜けるのよ」
「へー、魔法がかかってるんだね」
「そう。じゃ、行くわよ」
そう言ってママは柵に寄りかかる振りをしてスッと消えた。私達もそれに習ってそこへ足を踏み入れた。
ちょっと怖かったけど、体は何もぶつからないでホームに出ることが出来た。
「毎日通れるわけじゃないのよ。決まった日があるの」
「それはマグルが間違って迷い込んじゃうから?」
「そうよ。必要な時以外は閉まっているの」
「あれ?今、列車が無いよね?って事は入れないんじゃないの?」
「うふふ。それはね…内緒」
「「えー!!」」
ママが内緒にして教えてくれなかったが、駅員さんらしき人がやって来て教えてくれた。
「君たちのお母さんが前もって此処へ来てね、フクロウを預けたいのと君たちに駅を見せたいから、開けてくれってね」
「なんだ。なんか特別な事があるのかと思った」
「あはは、特別なことは何もないよ。それに、最近はよくある事なんだよ。マグル世界に住んでいる魔法使いが増えているからね。ホテルは凄く大きなところ以外は動物を入れてはくれないからね」
「そうなんだ。じゃあ、僕たちのフクロウ『ノーヴァ』もよろしくお願いします」
「おや、ウサギフクロウにしたんだね。可愛いよね。ホグワーツの入学式の日に君たちが入口を通れば君たちのどちらかに自動で荷物と一緒になるから安心してくれ」
「おぉー!凄い。さすが魔法の駅だ!!」
「おや、君たちはマグル産まれかい?」
「いいえ、私もこの子たちの父親も魔法使いよ。ただ、魔法のないマグルの世界で育てたの」
「そうだったのか。何か訳ありなようだが、それ以上は聞かないよ。君たちも、これから魔法を学ぶんだろう?ホグワーツはとっても楽しいから、よく勉強して楽しんでくるといいよ」
「おじさん、ありがとう!」
フクロウのノーヴァを預けて私達はホテルに戻った。
「さて、私の仕事は何処に居ても出来ると言えば出来るのだけど。どうする?ママがイギリスに居た方が良いならイギリスの本局へ移動させてもらえることになってるんだ」
「住むところはどうするの?」
「うーん…姉さん次第になるけど、姉さんがOKしてくれたら実家を改修してそこへ住むことになるわ」
「へー。じゃあ日本の家は?」
「買い手が付けばそのまま売るし、買い手がなけりゃどっかの不動産屋が買い取ってくれるでしょう」
「そっか。売り飛ばしちゃうのはちょっと寂しいけど…しょうがないか」
「まぁね。うちの大黒柱はママだもん。僕たちの学費だって馬鹿に出来ないだろうしね」
「その辺は決まったら教えるわよ。で、ママはイギリスに居た方がいい?」
「僕はいてほしい!」
「私も当然近くにいてほしいよ!何があるか分からないもん」
「そりゃそうね。OK!じゃあ、一先ず日本へ戻りましょう。飛行機のチケットを取りに行ってくるから大人しく待っていてね」
「えー、連れて行ってくれないの?」
「私一人なら『姿くらまし』が出来るけど、誰かいると上手く出来る自信がないの。だから大人しく待っていてほしいな」
「そっか。その方が楽だよね。時間も短縮できるし」
「そう言う事だから、よろしくね」
そう言ってママは部屋へ戻って出掛ける恰好をして『姿くらまし』をして消えた。
私達はママに言われた通り荷物を一か所に集め、自分たちも何時でも出発できる恰好に着替えておく。
教科書を開いて私は読書、アルは魔法雑誌を読んでいた。
1時間ほどしてママが帰って来た。今日の夜の便が取れたと喜んでいた。
翌日の昼に日本に着いた。数日間しかロンドンに居なかったのに、空港に着いた途端お醤油の匂いがして、日本って醤油の国なんだなんてどうでもいい事を思った。
それからはママは忙しそうにあっちこっちへ動き回っていた。普段が嘘みたいだ。
普段ママは研究所に籠りっぱなしか、休暇になると1日寝て他は家事を一気に片づけるのだ。
流石に私達が10歳になった時には、家の事は自分たちで出来ることをしていた。
掃除とか、食事とか。おかげでかなりママがゆっくり休めると凄く喜んでいたんだが。
来年からはどうなるのかな…。私達は寮生活になるからママ1人になるし。
気が付いたらあっという間に8月もあと10日程になっていた。
私は教科書を全て読破し、ママが隠し持っていた昔の教科書まで借りて分からないところをママに聞きながら勉強していた。
飛行機でロンドンへ飛び、今度はマグルのホテルではなくて漏れ鍋に泊ることになった。
ママも買い物があるからとダイアゴン横丁をゆっくりと見て回ることが許され、フローリアン・フォーテスキュー・アイスクリームパーラーでアイスクリームを堪能し、
フローリシュ・アンド・ブロッツ書店で魔法薬学の本を探して買ってもらったり、クィディッチ用品店に飾ってある飛行用の箒『ニンバス2000』を眺めたり。
とても楽しくて有意義な数日間だった。
そして、遂に9月1日入学式の日になった。
日本のマグルの学校みたいに親はついてこない。親はキングスクロス駅9と3/4番線で見送る。
その後は紅いボディーのホグワーツ特急に乗ってホグワーツ城へ向かうのだそうだ。
無事に入口をくぐり、くぐるとアルの荷物にノーヴァが乗せられていた。ノーヴァはアルの顔を見てホーと一声鳴いて私の顔もみて一声鳴いた。まるで「久しぶり!」と挨拶している様だった。
ママは心配そうな顔をして、私達を送り出してくれた。
早速ホグワーツ特急に乗り込み、手ごろなコンパーメントを陣取り荷物を押し込んで(と言うほどの量はなかったりする。ママが鞄に検知不可能拡大呪文と言う呪文をかけてくれた)座席に座って出発を待つばかり。
ママの言う通り早めに駅に来て良かった。時間ぎりぎりだときっと空いているコンパーメントを探すのも一苦労だろう。
「アル、結構後ろの方の席にしちゃったけどいいよね?」
「別に困ることはないと思うし、いいんじゃない?」
私は杖を出して初級魔法を試してみることにした。
「え?姉さん魔法試すの?」
「うん。やってみようかと」
アルはじっと私がやろうとすることを見つめている。
「そんなにじっと見られると緊張しちゃうじゃない」
「いいから、いいから。早くやってみなよ!」
「…うん」
意を決して呪文を唱え杖を振ってみた。
「ウィンガーディアム・レビオーサ」
すると、側に置いた『妖精の魔法』の教科書がフワフワと浮いた。
「凄い!さすが姉さん!」
「フーッ。緊張した。アルもやってみたら?」
「え?僕?できるかなー」
アルはすっとぼけた様な声を出して、私と同じことをした。
「ウィンガーディアム・レビオーサ」
アルも魔法を成功させたが、その途端首を傾げた。
「やっぱり出来るじゃない。どうしたの?」
「…うん…なんだか僕、魔法を使ったことがあるような気がしたんだ…」
「気のせいじゃないの?私達が魔法の存在を知ったのは、家に校長先生が来てからじゃない」
「そうなんだけど…うん、そうだよね。気のせいかも」
変なアル。そう首を傾げた時、コンパーメントのドアがいきなり開いた。
「あの、僕もここにご一緒していいかな?」
その子は壊れたメガネをかけていて、くしゃっとした黒髪の痩せた男の子だった。
私達は顔を見合せ頷き、アルが返事をした。
「うん、いいよ。」
「ありがとう。僕、ハリー・ポッター」
「僕はアルファード・エバンズ」
二人は自己紹介をして握手してる。
私もアルに続けて自己紹介した。
「私はアルの双子の姉でリコリス・エバンズよ。よろしく」
「よろしく。君たち双子なんだ。あまり似てないんだね」
「まあよく言われる。二卵性双生児だからね。」
「兄弟がいて羨ましいや。僕は一人っ子だしね。まあ従兄弟はいるんだけどね」
そう言ったハリーは少し嫌そうな顔をしていた。
ふと窓の外を見ると景色が動き出していた。
「どうやら出発したみたいだ」
「なんだかワクワクするよね」
アルとハリーが会話しているのをぼんやりと聞いていた。するとまた、コンパーメントのドアが開いた。
「ここ、まだ入れる?僕一人なんだけど…」
「うん、あと一人分丁度空いてるよ」
「どうぞ。他はいっぱいだったんでしょ?」
「うん。ありがとう」
そう言って赤毛の少し背の高い少年が私の隣に座った。
「僕はロナルド・ウィーズリー。よろしく。ロンって呼んでくれ」
「私はリコリス・エバンズ。よろしくね。リリーって呼んで」
「僕はリリーの双子の弟、アルファード・エバンズ。アルって呼んで」
「僕はハリー・ポッター」
「え!ハリー・ポッター?!あの?」
「うん、そうだよ」
「?」
「あぁ、アルは魔法史の教科書読んでないのよね。後で教えてあげるわ。まぁ、ハリーは『生き残った男の子』よ」
「そうそう!って事は…あるの?」
「ん?…あぁ、これね」
ハリーは前髪を上にあげ、おでこを出した。そこには稲妻型の傷跡があった。
「へー、これがそうなんだ」
「うん。でもなんにも覚えてないんだ」
「なにも?」ロンがちょっと興奮気味に聞いた。
「そうだな……緑色の光がいっぱいだったってのは覚えてるけど、それだけかな」
「うわー」
ロンはじっとして、しばらくハリーを見つめてた。
「ロン、あんまり人のことそうやってじーっと見るものじゃないわ」
「あっ、ごめん」
「うんん。ロンの家族はみんな魔法使いなの?あと、リリーとアルは?」
ハリーは私達の事も興味を持ったみたいで尋ねてきた。
「あぁ……うん、そうだと思う」ロンが答えた。
「じゃ、君はもう魔法をいっぱい知ってるんだろうな。アル達は?」
「うちは…ママがマグルの世界で僕達を育てたんだ。だからダンブルドア校長が直接家に来てね。その時初めて僕たちが魔法使いだったって聞かされたんだ」
「君たちも?でも、さっき魔法を使ってたよね?」
「あぁ、あれは教科書を読んだんだ。で、使えるかどうか試してみたんだ」
「だって魔法使いって言われたけど、本当にそうなのか心配だったのよ」
「え?あれ、初めて使った魔法なの?」
「えぇ、そうよ」
「え!君たち魔法使ったの?」
「「うん」」
「うわ!さすが双子だ。僕の兄貴達も双子なんだけど、そうやって返事とか息ぴったりなんだよね!」
「あはは」
「ねぇ、ハリーはマグルと暮らしてたって聞いたけど、どんな感じ?」とロン。
「ひどいもんだよ……みんながそうだってわけじゃないんだろうけど。おじさん、おばさん、僕のいとこはそうだった。僕にも魔法使いの兄弟がいればよかったのに」
「沢山いるのも考えもんだよ」ロンの顔がなぜか曇った。
「ホグワーツに入学するのは僕が六人目。期待に沿うのは大変さ。ビルとチャーリーはもう卒業したんだけど…ビルは主席だったし、チャーリーはクィディッチのキャプテンだった。
今度はパーシーが監督生。フレッドとジョージは悪戯ばっかりやってるけど成績は良いんだ。みんな2人は面白い奴だって思ってる。僕も皆と同じ様に優秀だって期待されてるかわからないけど、
もし僕が期待に応えるようなことをしたって、みんなと同じことをしただけだから、大したことじゃないって事になっちゃう。それに、上に五人もいるもんだから、なんにも新しい物がもらえないんだぜ。
僕の制服のローブはビルのお古。杖はチャーリーの、ペットだってパーシーのお下がりのネズミを押し付けられたのさ」
ロンは上着のポケットに手を突っ込んで太ったネズミを引っ張り出した。ネズミはぐっすり眠っているように見えた。
「スキャバーズって名前だけど、役立たずでさ。こいつ寝てばっかりいるし。パーシーは監督生になったから、パパにふくろうを買ってもらったよ?だけど、僕んちはそれ以上の余裕が…だから、僕はお下がりのスキャバーズさ」
ロンは耳元を赤らめた。喋り過ぎたと思ったらしく、ドアの方を向いてしまった。
「ロン、うちも双子でしょ?だからペットはこのウサギフクロウのノーヴァだけ。それも、連絡用にって」
「ねぇ、ロン。そのネズミ、何年生きてるの?」
「え?うーん、パーシーから貰って…あれ?パーシーは何時から此奴と一緒だっけ?」
「魔法界の動物と、マグル界の動物の寿命って違うの?」
「いや、確かそんなに変わらなかったはずだよ?」
「随分長生きしてるネズミなんだね。ネズミって普通、長くても寿命は3年前後だよ?」
「へー、そうなんだ。…って此奴、随分長生きしてるんだな?」
ロンは寝ているスキャバーズの首元を指で摘まんで持ち上げ、ブランブランさせながらジーッと見てからポケットにねじ込んだ。
「ロン、僕だって一か月前まで文無しだったさ。いとこのダドリーのお古を着せられて、誕生日にはろくなプレゼントをもらったことがないし」
「そうなんだ。そのマグル、随分酷いね」
「うちは片親なんだ。だからそんなに裕福でもないさ。パパは何処の誰だかわからない。ママが絶対に教えてくれなかった」
「パパも魔法使いだってのを15日前に初めて知ったの。ホグワーツへ行けばパパの事が判るかもしれないって思ってね」
「そういえば、リリーとアルもダンブルドアが来るまで自分たちが魔法使いだって知らなかったんだよね?僕もだ。僕はハグリットが教えてくれるまでは、自分が魔法使いだって事全然知らなかったし、両親の事も、ヴォルテモートのことも……」
ロンが息をのんだ。
「どうしたの?」
「君、『
ロンは驚きと賞賛の入り交じった声を上げた。
「君の口からその名を…」
「僕、名前を言っちゃいけないんなんて知らなかっただけなんだ。わかる?僕、学ばなきゃいけない事ばっかりなんだ―きっと…」
「ハリー、大丈夫よ。きっと魔法力がなければ学校から入学許可なんて出ないと思うわ」
「そうかな…。きっと僕、クラスでビリかも」
「そんなことはないさ。マグル出身の子はたくさんいるし、そういう子でもちゃんとできるから大丈夫さ」
その後はハリーを励まし、ハリーも少し元気になって来た。
十二時半ごろになると通路でガチャガチャと大きな音がして、えくぼのおねえさんがニコニコ顔でドアを開けた。
「車内販売よ。何か要りませんか?」
私達はママに車内販売があるから適当に買ってお昼代わりにしなさいと言われていた。
「あ、買います!何がありますか?」
私はカートの方へ行き、商品を眺めた。
「アル!蛙チョコレートがあるよ!!」
「じゃあ姉さん、それ以外も適当にお腹にたまるものをお願い!」
「了解!ハリーとロンは?」
ロンが耳物をポッと赤らめ言った。
「僕…サンドイッチを持ってきた…」
ハリーも少し頬を赤らめて言った。
「僕は朝ご飯を食べてなかったから買うよ」
ハリーもカートの側へ来て色々物色している。
買い物も終わり、私とハリーは両手に色々抱えて戻った。
「うわー姉さんとハリー、買い過ぎじゃない?」
「皆で食べようと思ってさ!」
「え?いいの?」
ロンは吃驚した顔をして、私達の顔を見回した。
「うん。僕、こういう風に楽しくしたこと無いんだ。後さ、ロン。僕にそのサンドイッチくれる?」
「え?…あ、朝ご飯食べてないって…。うん!いいよ!!遠慮なく食べて!」
「ありがとう!」
「君たちもさ、良かったら食べなよ!」
「あら、ハリーのご飯なんでしょ?」
「姉さん、食べたそうにしながら言うセリフじゃないよ」
「あはは!」
なんだかんだと、楽しい食事会になった。
「あれ?姉さん、蛙チョコに何かカードが入ってるよ?」
「え?…ホントだ」
「あ!何が入ってた?」
「え?これって、カードが入ってるものなの?」
「ん?そうだよ。僕、このカード集めてるんだ。アグリッパだけがまだないんだ。みんな結構集めてるやつ多いよ。有名な魔法使いとか魔女とかの写真なんだよ。僕500枚ぐらい持ってるけど、アグリッパとプトレマイオスがまだないんだ」
「あ、僕のも入ってるよ。この人がアルバス・ダンブルドア!」
「ダンブルドアの事知らなかったの?僕にも蛙チョコ一つくれる?アグリッパが当たるかもしれない…ありがとう…」
ハリーはカードの裏を読んでいた。アルも覗き込んで読んでる。
読み終わってカードを表に返すと、ダンブルドアの顔が消えていた。それを見たアルとハリーはビックリしている。
「あれ?いなくなっちゃったよ?」
「ホントだー!」
「そりゃ、一日中その中にいるはずないよ」
アルとハリーがカードの表を見て声を上げると、ロンがそう言った。
「また帰って来るよ。あ、駄目だぁ…また魔女モルガナだ。もう六枚も持ってる…ハリー、欲しい?これから集めるといいよ」
ロンは蛙チョコの山を開けたそうに、チラチラと見てる。
「開けていいよ」ハリーは気前よくロンに蛙チョコを差し出す。
「でも、マグルの世界じゃ、写真の中にズーッと居るよ」
「そうなの?じゃ、全然動かないの?変なの!」逆にロンは驚いていた。
ダンブルドアが写真の中にソーッと戻ってきて、ちょっと笑いかけたのを見て、ハリーとアルは目を丸くした。
ロンは有名な魔法使いや魔女の写真より、チョコを食べるのに夢中だったが、ハリーはカードから目が離せない様だった。
暫くするとダンブルドアやモルガナの他に、ウッドクロフトのヘンギストやら、アルベリック・グラニオン、キルケ、パラセルサス、マーリンと、カードが集まっていた。
「アルは、ママの話を聞いてなかったの?」
「え?ママが何か言ってたの?」
「うん、魔法界の写真は動くのよって。私、ママの若いころの写真を見せてもらったよ?」
「えー!僕、見せてもらってない!!いつ見たのさ!!」
私達がちょっとした兄弟喧嘩になりそうなとき、ハリーはバーティー・ボッツの百味ビーンズの袋を開けていた。
それを見たロンがハリーに注意を促していた。
「ハリー、気を付けた方がいいよ」
「?」
「百味って、ほんとになんでもありなんだよ―そりゃ、普通のもあるけどね。チョコ味、ハッカ味、マーマレード味なんか。でも、ほうれん草味とか、レバー味とか、臓物味なんてのがある。ジョージが言ってたけど、鼻くそ味に違いないってのに当たった事があるって」
「僕たちも食べたことあるよ。確かにひどい味も入っていたね」
「え?君たち、魔法の世界は知らなかったんだろう?じゃあなんで、魔法界のお菓子を知ってたんだい?」
「あのね、ママの友達のおじさんが月に一度家に来ていたんだけど、お土産でお菓子を持ってきてくれていたんだ」
「私達、日本に住んでいたの。だから、まさかおじさんが持ってきたお菓子が魔法界のお菓子だなんて思わなかったのよ」
「蛙チョコにカードは入っていなかったんだ」
「きっと私達が食べる前に抜き取ってたのね。魔法に関係しそうな物はきっと買ってこないようおじさんに言っていたんだわ」
「そこまでして君たちに魔法を隠していた理由、知りたいね」
ロンはそう言って緑色のビーンズをつまんで、よーく見てから、ちょっとだけかじった。
「ウェー、ほらね?芽キャベツだよ」
4人はしばらく百味ビーンズを楽しんだ。
まんまコピーにならないように気を付けたけど…大丈夫でしょうか(汗)