暇つぶしにどうぞ。
特急列車は森や曲がりくねった川を抜け、うっそうとした暗緑色の丘を過ぎて行った。
コンパーメントをノックして、男の子が泣きべそをかいて入って来た。
「ネビルじゃない!どうしたの?」
入って来たのはマダム・マルキンの店で会ったネビル・ロングボトムだった。
私はネビルに近寄り、泣いているネビルに尋ねた。
「あ、リリーとアル。君たちに会えて嬉しいよ。あのね、僕のヒキガエルを見かけなかった?」
「カエル?僕たち見かけてないよ」
「いなくなっちゃった。僕から逃げてばっかりいるんだよ…」
「きっと出てくるよ」ハリーが優しく言った。
「うん。もし見かけたら、僕に教えてね」
ネビルはしょげかえってそう言うと出ていった。
「どうしてそんな事気にするのかなぁ。僕がヒキガエルなんて持ってたら、なるべく早くなくしちゃうけどな。まぁ僕だってスキャバーズを持ってきたんだから人のことは言えないけどね」
さっきロンがポケットへと突っ込んだはずのネズミは、いつの間にかロンの膝の上でグーグー眠り続けている。
「死んでたって、きっと見分けがつかないだろうなぁ」ロンはうんざりした口調で言った。
「昨日、少しは面白くしてやろうと思って、黄色に変えようとしたんだ。でも呪文が効かなかった。やって見せようか――見てて……」
ロンはトランクをガサゴソと引っ掻き回して、くたびれたような杖を取り出した。結構ボロボロになっているみたい。
「ユニコーンのたてがみがはみ出してるけど。まぁ、いっか……」
ロンが杖を振り上げた途端、またコンパーメントのドアが開いた。
今度来たのは、ハーマイオニーだった。またネビルが後ろにいた。
「あら!リリー!!元気だった?私、ネビルのヒキガエルを一緒に探しているの。見かけなかった?」
「ハーマイオニー!!久しぶりね!さっきもネビルに言ったんだけど、見なかったって伝えたのよ?」
「あら、あなた魔法をかけるの?それじゃ、見せてもらうわね」
ハーマイオニーは遠慮なく入ってきてロンの隣に無理やり腰かけた。
「ハーマイオニー…、貴女カエルを探しに来たのでしょ?」
「いいじゃない。見てみたいのよ。さっ、やってみせて」
ロンはそんなハーマイオニーにたじろいて杖を構え直し、咳ばらいをした。
「あー…いいよ。お陽さま、雛菊、溶ろけたバター、デブで間抜けなねずみを黄色に変えよ」
ロンは杖を振ったが何も起こらなかった。
「その呪文、あってるの?」とハーマイオニー。
「まぁ、あんまりうまくいかなかったわね。私も練習のつもりで簡単な呪文を試したことがあるけど、みんなうまくいったわ。私の家族に魔法族は誰もいないんだけど、手紙をもらった時、驚いたわ。でももちろんうれしかったのよ。だって、最高の魔法学校だって聞いているから……教科書はもちろん、全部暗記したわ。それだけで足りるといいんだけど……私、ハーマイオニー・グレンジャー。あなた方は?」
ハーマイオニーは一気にこれだけを言ってのけた。相変わらずである。ハリーとロンは唖然とした顔をしていた。
「僕、ロン・ウィーズリー」ロンはモゴモゴと自己紹介?
「ハリー・ポッター」
「ほんとに?私、もちろんあなたの事全部知ってる!――参考書を二、三冊読んだの。あなたのこと、『近代魔法史』『黒魔術の栄枯盛衰』『二十世紀の魔法大事件』なんかにでてるわ」
「僕が?」ハリーは呆然としてる。
「まぁ、知らなかったの?私があなただったら、できるだけ全部調べるけど。4人ともどの寮に入るか分かってる?私、いろんな人に聞いて調べたけど、グリフィンドールに入りたいわ。
絶対一番いいみたい。ダンブルドア校長もそこ出身だって聞いたわ。でもレイブンクローも悪くないかもね……とにかく、もう行くわ。ネビルのヒキガエルを探さなきゃ。4人とも着替えた方がいいわ。もうすぐ着くはずだから。またね、リリー」
ネビルを引き連れてハーマイオニーは出て行った。ハーマイオニーがいなくなり、男の子3人はため息を吐いていた。それを見た私は思わず苦笑してしまった。
「どの寮でもいいけど、あの子のいないとこがいいかな」
杖をトランクに投げ入れながら、ロンが言った。
「私達のママはスリザリンだったって聞いたわ」
「え!そうなの?」
「え?何か問題でもあるの?」
ロンはブツブツと双子のお兄さんたちにさっきの呪文を教わったといって、不機嫌そうにしていた。どうやら嘘の呪文でも教えられたのだろう。
「君の兄さんたちってどこの寮なの?」ハリーがロンに聞いた。
「グリフィンドール」ロンはまた落ち込んだように続きを話していた。
「ママもパパもそうだった。もし僕がそうじゃなかったら、何て言われるか。レイブンクローだったらそれほど悪くないかもしれないけどね」
「ねぇ、ロン。スリザリンってそんなに評判悪いの?」アルがロンに再び聞いた。
「そこって、ヴォル…つまり、『例のあの人』がいたところ?」
「あぁ」
「なるほどね。闇の魔法使いの出身が多いのね」
「そうだね。僕はそう聞いてる」
「君たちのママは、何も教えてくれなかったの?」
「「うん」」
「そっか。……君たちのママ、『
「デスイーター?」
「『例のあの人』の部下だよ」
「知らない。ママは僕達に自分の事は殆ど教えてくれなかったから」
「でも、違うと思うわ。だってママは随分前に日本へ渡ったってそれだけは教えてくれたわ」
「リリーって何気にママとよく話してるね。僕、殆ど聞いたこと無いや」
「だって、アルが外へ友達と遊びに行ってるときに話していたりしたんだもの」
「まぁまぁ。でも、そっか。可能性は無いわけじゃないけど、低そうだね」
「うん。でも、なんで君たちに魔法界の事を教えなかったんだろうね?」
「もしかしたら、パパと関係があるのかもしれないわ」
「うん、僕もそう思う」
謎が残ったが、その話はやめてロンの兄弟の話を聞かせてもらった。チャーリーはルーマニアでドラゴンの研究をしているそうだ。ビルはアフリカで何かグリンゴッツの仕事をしていると。
そして、グリンゴッツに強盗が入ったと魔法界の新聞『日刊預言者新聞』に載っていたそうだ。なにやら、誰かが特別警戒の金庫を荒そうとしたらしい。だが、何もなかったそうだ。犯人も捕まらないと。
きっと強力な闇の魔法使いだろうとロンのパパが言っていたそうで、何も盗っていかなかったところが変なんだと。当然、こんな事が起きると陰に『例のあの人』がいるんじゃないかと皆が怖がっているそうだ。
私達とハリーは何も知らない。ヴォルテモートがどれ程恐ろしい存在なのかも…。
ロンは更に話題を変え、クィディッチの話になった。だが、これも私達とハリーは分からないので、ロンが熱く詳しく説明してくれた。ロンの双子のお兄さんもホグワーツのクィディッチをやっているそうだ。
プロチームの有名な試合がどうだったか、お金があればこんな箒を買いたい…ロンが、まさにこれからがおもしろいと、専門的な話に入ろうとしていた時、またコンパーメントのドアが開いた。
今度は男の子が三人入ってきた。ハリーは、真ん中の青白い顔をした男の子に心当たりがありそうだ。
「本当かい?このコンパーメントにハリー・ポッターがいるって、汽車の中じゃその話でもちきりなんだけど。で、どっちだい?」
青白い男の子はアルとハリーを交互に指差し尋ねてきた。
アルとハリーは顔を見合わせて、ハリーが前髪を上げながら答えた。
「僕がハリー・ポッター」
皆、青白い男の子の後ろの2人を見ていた。2人ともガッチリとして、この上なく意地悪そう。青白い男の子の両脇に立っていると、なんだかボディーガードみたい。
「あぁ、こいつはクラッブ。こっちがゴイルさ」
皆の視線に気が付いた青白い子が、親指で彼らを指差し紹介する。
「そして、僕がマルフォイだ。ドラコ・マルフォイ」
ロンは、クスクス笑いを誤魔化すかのように軽く咳払いをした。ドラコ・マルフォイが目ざとくそれを見とがめた。
「僕の名前が変だとでも言うのか?君が誰だか聞く必要もないな。パパが言ってたよ。ウィーズリー家はみんな赤毛で、そばかすで、育てきれないほどたくさん子供がいるってね」
それからハリーに向かって言う。
「ポッター君。そのうち家柄のいい魔法族とそうでないのとがわかってくるよ。間違ったのとは付き合わない方が身のためだね。そのへんは僕が教えてあげよう」
ドラコはハリーに手を差し出して握手を求めたが、ハリーは応じなかった。
「間違ったのかどうかは自分でも判断出来ると思うよ。どうもご親切さま」ハリーは冷たく言った。
ドラコ・マルフォイは、青白い頬にピンク色がさした。
「ポッター君。僕ならもう少し気をつけるな。もう少し礼儀を心得ないと、君の両親と同じことになるぞ。君の両親も、何が自分の身の為になるかを知らなかった様だ。
ウィーズリー家やハグリットみたいな下等な連中と一緒にいると、君も同類になるだろうよ」
なんだか感じが悪いなぁ、どこにでもこういう子がいるんだ。魔法界は色々と面倒くさそうだ。私がそんな冷めたことを考えていたら、ハリーもロンも怒って立ち上がってドラコ達を追い出そうとしていた。
だけど、ドラコは出て行こうとしない。それも、理由が食べ物がまだあるからだそうだ。私は思わずクスクスと笑ってしまった。
「何がおかしいんだい?」ドラコは気に障ったのか、私の方を睨むように言ってきた。
「え?だって、家柄がどうのこうの言っている割には、お菓子がまだあって、それを頂こうとしてるなんて…おかしいじゃない。寧ろ、あなたの方が何か施してくれる方が、よっぽど家柄云々を威張れるのでは?」
「……」
ドラコは青白い顔が赤くなったとわかるほどになり、バツが悪そうな顔でフンッと言って2人を連れて出て行った。
「わーお!リリーがマルフォイを追い出した!」
「あはは、さすが姉さん。口では勝てないね。それに冷静に事に当たれるのも女だからかな?」
「あら、アルだって黙っていたじゃない」
「いや、僕も頭に来ていたんだよ。ハリーとロンが立たなかったら、僕がアイツを殴ってたかも」
「アル、それは穏やかじゃないね。でも、一緒に怒ってくれてありがとう」
「でも、いけ好かない感じの奴ね。ドラコ・マルフォイ」
「僕、あの家族の事を聞いたことがあるよ。『例のあの人』が消えた時、真っ先にこっち側に戻って来た家族の一つでさ。魔法をかけられてたって言ったんだって。パパは信じないって言ってた。マルフォイの父親なら、闇の陣営に味方するのに特別な口実はいらなかっただろうって」
話していると、またまたコンパーメントのドアが開いた。
「ふーん。あら、ハーマイオニー!」
「ねぇ、まだ着替えてなかったの?みんな急いだ方がいいわ。ローブを着て。私、前の方にいって運転手に聞いてきたんだけど、もう間もなく着くって」
「ありがとう。みんなハリーが気になってるみたいで、千客万来だったのよ。ねぇハーマイオニー、私貴女のコンパーメントで着替えてもいいかしら?」
「えぇ、いいわよ!」
「じゃあアル、着替えたら戻って来るわ。それと、あれするの忘れないようにね」
「了解」
私は急いでハーマイオニー達のコンパーメントへ行き着替えさせてもらった。
「リリー、なんでそれつけたの?」ハーマイオニーが聞いてきた。
「ママがね、学校に行く前にはつけろって」
「何か訳があるのかしら?」
「たぶんあるんだと思う。理由は教えてくれなかったけど、無意味なことはしないし、させない人だから。場所ありがとね。じゃ、私はアルの所へ戻るわ」
「うん。またね」
着替え終わった私はハーマイオニー達と別れ、アル達の所へ戻った。
戻ると、三人は着替え終わっていて、丁度車内アナウンスが流れた。
「あと五分でホグワーツに到着します。荷物は別に学校に届けますので、車内に置いて行ってください」
3人は急いで残ったお菓子をポケットに突っ込んで、私は出していた教科書をトランクへ入れ、混み合っている通路へと出て他の人たちと合流した。
汽車はますます速度を落とし、完全に停車した。みんな押し合いへし合いながら外へ出ようとしている。このへんは日本と違うな。あっちなら皆順番を待って落ち着いているような気がする。
少しもみくちゃにされながらやっと外へ出られた。そこは小さな、暗いプラットホームだった。やっぱりイギリスの北の方だけあって、夜は寒い。みんなも少し寒そうだ。
進んでいくと、頭上にユラユラとランプが近づいてきて、大きな声が聞こえた。
「イッチ年生!イッチ年生はこっちだ!おぉハリー、元気か?」
モジャモジャな髭と髪の毛がくっついた様なとっても大きな男の人がハリーに笑いかけていた。
「さぁ、ついてこいよ――あとイッチ年生はもういないか?足元にきぃつけろ。いいか!イッチ年生、ついてこいよ!」
ハリーが、あの大きな男の人のことを教えてくれた。ハグリットと言う、ホグワーツの森と鍵の番人をしているそうだ。ハリーを魔法界に案内してくれた人らしい。
私達は滑りやすく、険しくて狭い小道をハグリットに続いて降りていった。木がうっそうと生い茂って森の様な所を進んでいるっぽい。なにせ、右も左も真っ暗で良く分からない。
どうせなら明るい時間に通りたかった。あ、ネビルが鼻をすすってる。
「みんな、ホグワーツがまもなく見えるぞ」
ハグリットが振り返りながら言った。
「この角を曲がったらだ」
「うぉー!」
一斉に声が沸き、急に開けて大きな黒い湖の畔に出た。向う岸に高い山があって、そのてっぺんに壮大な城が見る。大小いろんな塔が並んでて、キラキラと輝いてる窓が星空に浮かび上がってた。
「四人ずつボートに乗ってくれ!」
ハグリットは岸辺につながれた小舟を指した。ハリーとロンが乗り、私とアルが続いて乗った。
「みんな乗ったか?」
ハグリットが大声を出した。1人でボートに乗っている。あの大きさじゃ、このボートには1人でしか乗れないわね。
「よーし、では、進めえ!」
ボート船団は一斉に動き出し、鏡の様な湖面を滑る様に進んだ。きっと魔法で動いてるのね。みんなそびえ立つ巨大な城を見上げていた。向う岸の崖に近づくにつれて、城が頭上にのしかかってくる様だ。
「頭、下げぇー!」
先頭の何艘かが崖下に到着した時、ハグリットが掛け声をかけ皆が一斉に頭を下げると、ボート船団は蔦のカーテンをくぐってその陰に隠れてポッカリと空いている崖の入口へと進んだ。
城の真下だろう暗いトンネルをくぐると、地下の船着き場に着いた。岩と小石の上に降りた。
ボートを調べていたハグリットが、ネビルに声をかけている。ネビルのペットのヒキガエルを渡していた。中々賢い蛙じゃないの。船に乗っていたなんて。
ネビルは大喜びしてペットを受け取っていた。ハグリットのランプの後に従ってゴツゴツした岩の路を登り、湿った滑らかな草むらの城影の中にたどり着いた。石段を登り、巨大な樫の木の扉の前にみんな集まった。
「みんな、いるな?お前さん、ちゃんとヒキガエル持っとるな?」
ハグリットはネビルに確認した後、大きな握り拳を振り上げ、城の扉を三回叩いた。
巨大な扉なのにパッと開いて、マクゴナガル先生が現れた。相変わらず厳格そうな顔つきである。漏れ鍋で会った時、ママがたじろいでいたのも判る気がする。
「マクゴナガル教授、イッチ年生の皆さんです」
「ご苦労様、ハグリット。ここからは私が預かりましょう」
マクゴナガル先生は扉を大きく開けた。おぉー、魔法って素晴らしい。あんな重そうな扉も軽々開くんだ。あれ?もしかして、先生が力持ちなだけ?それとも扉を軽くしてるのかな?何とも不思議だ。
玄関ホールに入り、マクゴナガル先生について皆石畳のホールを横切って行く。入り口の右手の方から、何百人ものざわめきが聞こえた。ーー学校中がもうそこに集まっているだろうな。ーーしかし、マクゴナガル先生はホールの脇にある小さな空き部屋に私達一年生を案内し、窮屈な部屋に詰め込まれた。皆(私も含め)不安そうにキョロキョロしながら互いに寄り添って立っていった。
「ホグワーツ入学おめでとう」マクゴナガル先生の挨拶だ。
「新入生の歓迎会がまもなく始まりますが、大広間の席につく前に、皆さんが入る寮を決めます。寮の組分けはとても大事な儀式ですからね。ホグワーツにいる間、寮生が学校でのみなさんの家族のようなものになります。教室でも寮生と一緒に勉強し、寝るのも寮、自由時間は寮の談話室で過ごすことになります。
寮は四つあります。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、スリザリンです。それぞれ輝かしい歴史があって、偉大な魔女や魔法使いが卒業しました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いは、自分の属する寮の得点になりますし、反対に規則を破れば減点になります。学年末には、最高得点の寮に大変名誉ある寮杯が与えられます。どの寮に入るにしても、皆さん一人一人が寮にとって誇りとなるように」
マクゴナガル先生は少し間をあけ、続きを言った。
「まもなく組分けの儀式が始まります。待っている間、できるだけ身なりを整えておきなさい」
マクゴナガル先生は一瞬、ネビルやロンの方を見た。ハリーはソワソワと髪を撫でていた。
「学校側の準備ができ次第戻ってきますから、静かに待っているように」
マクゴナガル先生が部屋を出ていくと、ザワザワとしだした。皆どうやって寮を決めるのか話しているようだ。
「姉さん、ママから組分けの事聞いた?」
「一応聞いたけど教えてくれなかったわ。お楽しみだって」
「そうなんだ。なんか緊張するなぁ」
「そう?私は別にどの寮でも良いわ」
ハリーはロンにどうやって寮を決めるのか聞いていた。兄弟がたくさんいるロン。お兄さんたちが教えてくれているかもしれない。
アルはどうやらロンの話していることを聞いているようだ。
ハーマイオニーは何やら覚えてきた呪文をブツブツと呟いていた。彼女の近くにいる人たちは、それを聞いて余計に緊張して顔を青くしている子もいた。
「ハーマイオニー、おそらくだけど試験みたいなことややらないと思うわ。だから呪文を復唱しないで」
「あら、誰も何をするのか知らないんですもの。私なりに考えているのよ」
私はため息をついて小声でハーマイオニーに耳打ちした。
「あなたのせいで、近くの子達が酷く緊張しちゃってるのよ。お願いだから止めてあげて」
ハーマイオニーは少し頬を赤くして、下を向いてしまった。
その時、後ろから悲鳴が聞こえた。何事かと思い、振り向くと後ろの壁からゴーストが二十人ぐらい現れた。
ゴースト達は一年生達の方にはほとんどみむきもせずにお互いに話ながらスルスルと部屋を横切って行った。
何やら議論しているようだ。ひだがある襟のついた服を着て、タイツをはいたゴーストが、急に一年生に気づいて声をかけた。
「君たち、何をしているのかね?」
「私たち一年生です。ここで準備が出来るのを待っているんです」誰も答えようとしなかったので代表して答えた。
「おぉ、そうかそうか。これから組分けされるところか?」
「はい」
「ハッフルパフで会えるとよいな。わしはそこの卒業生じゃからの」
「さあ行きますよ」厳しい声がした。
「組分け儀式がまもなく始まります」
マクゴナガル先生が戻ってきたのだ。ゴーストが一人ずつ壁を抜けてフワフワ出ていった。
「さぁ、一列になって。ついてきてください」
マクゴナガル先生の後をついていくと、部屋を出て再び玄関ホールに戻り、そこから二重扉を通って大広間に入った。
「「うわぁー」」
大広間の光景を見て思わずアルと二人で声を上げてしまったが、周りも似た様なものだった。
その光景とは何千という蝋燭が空中に浮かんでいて、四つの長テーブルを照らしていた。テーブルには上級生たちが着席し、キラキラ輝く金色のお皿とゴブレットが置いてあった。広間の上座にはもう一つの長テーブルがあって、先生方が座っていた。
マクゴナガル先生は上座のテーブルのところまで私たち一年生を引率し、上級生の方に顔を向け、先生方に背を向ける格好で私達を一列に並ばせた。ハリーが天井を見上げていたので私も見ると、綺麗な星空が広がっていた。
「あれ、本当の空に見えるように魔法がかけられているのよ。『ホグワーツの歴史』に書いてあったわ」
ハーマイオニーがそう言ったのが聞こえた。そういえばそんなことが書いてあった気がする。
彼女は教科書を丸々覚えているってことだろうか?などと考えているとマクゴナガル先生が一年生の前に黙って四本足のスツールを置いてその上に魔法使いがかぶるとんがり帽子を置いた。
随分と古いものらしい。ボロボロだ。その帽子が突然ピクピクと動き出し、破れ目が口のように開いて歌を歌いだした。それは、何とも言えない歌で、さらに四つの寮の特徴を歌い上げ寮を決めるのを自分に任せろと歌い上げた。
歌が終わると、全員から拍手喝采。すると帽子は各寮へお辞儀をして静かになった。ロンがハリーに何かを囁いていたけど、あれをかぶるのか…。
マクゴナガル先生が羊皮紙の巻紙を手にして前に進み出た。
「ABC順に名前を呼ばれたら、帽子をかぶって椅子に座り、組分けを受けてください」
マクゴナガル先生は順に名前を呼び始めた。私達はEvansだから結構早いはずだ。
次々と一年生が呼ばれて行き、遂にアルが呼ばれた。アルは緊張した面持ちで組分け帽子をかぶった。
何やらボソボソ呟き、チラッと見えた顔は少し怒っているような気がした。4分ほど経つと帽子が叫んだ。
「グリフィンドーーーーール!」
アルはホッとしたような、少し嬉しそうな顔でグリフィンドールのテーブルに向かった。そして、
「エバンズ・リコリス」
私の名前が呼ばれ、ハーマイオニーが私の背中をトンと軽く叩いてきた。私は微笑みをハーマイオニーに返し、堂々と椅子へ向かい帽子をかぶった。
『フムフム。そなたか。マリーゴールド殿の娘か…。勇気もあるし優しさもある。学習意欲も高い。そして…マリーゴールド殿同様、狡猾だ。どの寮へ入れたものか…フーム。希望する寮はあるかい?』
『特にありません。まぁ、ママと一緒でも嬉しいかな』
『そうか。それなら……』帽子はそう言い、私の行くべき寮の名を叫んだ。
「スリザリン!!」
私はスリザリンのテーブルの方へ歩き、空いている席へ着いた。
アルが私の方を見ているのに気が付き、手を振っておいた。アルは何やら悲しそうな顔をしてた。
何もそんな顔をしなくてもいいのにね。寮が違ったって、双子ですもの。
中々先に進めずちょっとすっ飛ばしたくなりますね(汗)
すっ飛ばしたの部分の説明となると、下手なもので書けないと思ったので
順繰りに気長に行こうと思います。
感想頂く程の作品では御座いませんが、頂ければ嬉しいです。
ただ、作者の精神は豆腐の様に柔いです。
注意や誤字報告は物凄くありがたいですが、中傷するような言葉を書かれると酷く傷つきます。
優しい世界でありますよう、祈ります。
※タグは都度増やそうと思います。ご了承ください。