蜃気楼の塔 ~塔に眠りし最後の呪文~   作:青秋

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一、静かなる捕食者(3)

「それって瞬間移動する魔法の?」

 スキップと揃って聞き返した俺に、

「うむ」

 バルバドが頷く。

「正確には、空間と空間にある種のリンクをさせていると思うの」

 エルエスが笑顔で訂正すると、彼はもう一度だけ声を落として、「……うむ」とつぶやいた。

「とてもそうは思えねーけどなぁ。だって、俺ら縦一列になって歩いてんだから、前のやつが瞬間移動して消えたらすぐにわかるわけだろ?」

「だから空間がリンクしてるってことなんじゃないかな」

 つまり俺たちが今いる通路と別の通路が魔法で繋げられているのではないか?

 そう思って発言した俺に、

「そうだとして、それでもどこかに通路が繋がっている場所ってのがあるはずだろ。その繋がっている場所──仮にポイントAにしようぜ。ポイントAを挟んだ通路から反対側の通路の景色が見えるってことかよ? 魔法ってそこまでなんでもできるわけ?」

 力説するスキップ。

 う、うーん。そう言われてみれば。

 俺たち魔法を使えない人間からすると、ウィザードという職業の人は万能の力を持っていると思いがちだけど、そうまで都合のいい魔法があるものだろうか。

 冒険者の職業の一つにクレリックやプリーストというものがある。

 彼らは神様の力をほんの少しだけ借りて、ウィザードとはまた違った魔法を使える能力を持っているのだという。

 神様の力を借りるというくらいだから、怪我の治療をできる魔法なんかも使えたりするんだろうと思っていたけど、それは違った。

 ヒールという魔法があるけど、魔法をかけられた人間の自然治癒力を気持ちばかり向上させるというもので、とても重症者を全快させられるような魔法ではないのだそうだ。

 もちろん、かなりの高レベルになればそれくらいの高位魔法を使えるプリーストもいるらしいけど、そのレベルに達した冒険者は、世界広しといえども数えるほどしかいないと聞いている。

 それだけ魔法というものを極めるのは難しいということなんだ。

 だから、スキップの質問も的を得ていたし、案の定エルエスを見ても、

「そこまでは無理、でしょうね」

 少し考えてから口を開く。

「たったいま呪文を唱えて……ならできるでしょうけれど、いつやって来るとも知れない冒険者を待ち受けるには、そこまで完成度の高い、しかも半永続的な魔法はどんなに優れたウィザードでも不可能に近いわ。あたしたちがポイントAを通り過ぎるときに、景色の変化まではリアルタイムに感じられないと思うの」

「じゃあ、どうやってこんな?」

「あたしが考えるのは、二種類かそれ以上の魔法をそれぞれ別の媒体を介して行使しているというのが、妥当だと思う」

 ややこしい話になってきたなぁ……。

 話を聞いていて俺は頭を抱えたくなった。

 要するに、魔法が二つあって、その魔法の効果が合わさって、通路がずっと続いているように見せかけているってことかな?

 でも、スキップは単純明快な答えを出したようだった。

「とにかくその魔法を消せばいいってことじゃねーの? おら、エルエスならそーゆー魔法を使えただろ。なんつったっけ、でぃすぷぇる」

「ディスペルマジックか」

 首をひねって考え込んだスキップにバルバドが助け船を出して、

「そう、それ! でぃすぷぇるマジックな!」

 人差し指を立てたスキップが白い歯を見せる。

「テレポーテーション魔法以外には多分、視覚関係の魔法がかけられているんじゃないかしら? ポイントAの場所に反対側の景色が見えるようにしてあると思うんだけど……。でもスキップ、魔法の媒体を見つけないとディスペルマジックは無理よ?」

「そんだけわかりゃ十分だぜ! 俺に任せときな」

 俺にはなにが十分なのかさっぱりだけど、スキップはやけに自信満々だ。

 三人して彼の動向を見守る。

 するとスキップはウエストポシェットに手を突っ込んで、ごそごそとなにやら漁り出す。

 

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