吹雪型どうでしょう   作:舞鶴鎮守府広報局

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#1 サイコロの旅 1

 某年某日、今回より記録するとある企画が立ち上がった。

 それは軍令部による艦娘のPR活動。しかし、既存の観艦式ではこれ以上の効果を期待できないと予測した広報部は、とある艦娘に依頼をもちかけた。

 その艦娘こそ、今回の企画のブレインにして第一演者である吹雪型五番艦、『叢雲』

 そして、そんな彼女が同じく演者として抜擢したのは、吹雪型ネームシップである『吹雪』

 この度の企画は艦娘のPR、そして、艦娘をPRするには圧倒的な数を誇る駆逐艦を前面に押し出すことによって、間口を広げることができるのではないかと叢雲は語る。

 かくして、これより続く長い長い艦娘PR映像、それを映す小さなハンディカメラが回り出すのだった。

 

某年某月 横須賀

「はい、えー、というわけで」

「はい! 」

「無事に吹雪による扶桑山城姉妹インタビューも記録に納められたわけなのだけれども」

「いやー、もう感動でした!あこがれの扶桑さん、山城さんとお話ができるなんて!ありがとう!叢雲ちゃん!! 」

「ま、まあせいぜい感謝しなさい」

 この時、演者である吹雪は唯一、今回のこの企画が『駆逐艦による戦艦へのインタビューによって、PRと士気高揚を計る特別企画』と説明され、地元である舞鶴より遥か遠いここ、横須賀の地へと連れてこられていた。

「もー、本当に感動したよ! 噂の艦橋もあんなに間近で見られるなんて! それにほら、これ! 」

「……あんた、いつの間にサインなんて貰っていたのよ」

「えへへー」

 無邪気に喜ぶ吹雪だったが、彼女は知らない。これから起こることこそが、“本当の番組企画である”ことなど……。

「ん、コホン。さて、それじゃあこれから私たちは舞鶴へと帰るわけだけれども」

「あ、うん。そうだね」

「まあ、今回は軍の企画ってこともあって、どうせだったらちょっとね? こう、寄り道をしていこうかな~、なんて」

「……えっ、いいの? そんなことして」

「いいのよ。全部経費で落ちるから」

「……なんか、普段の真面目な叢雲ちゃんらしくない」

「ふん、私だって、少しくらい遊ぶわよ」

「んー……まあ、私一人じゃ帰れないし、わかった。それで、どこいくの? あ、私、横浜とか見に行きたい!! 」

「そんなに慌てないでってば。大丈夫、ちゃんと行く場所は決めてあるから……深雪、“アレ”お願い」

 吹雪と叢雲を映すカメラの手前より、一枚のフリップが叢雲へと渡される。

「……本当に準備してた」

「当然よ。そして、見てほしいんだけど――」

 フリップにはそれぞれこう書かれている。

 

1 ドリーム政宗号

2 津輕号

3 神姫号

4 ハローブリッジ号

5 ROYAL EXPRESS

6 KR0430 キラキラ号

 

 吹雪がそれぞれを読み上げ、首を傾げる。

「えっと……なに、これ」

「いい、吹雪? 私たちはこれから京都、舞鶴まで帰らないといけないわよね? 」

「う、うん」

「だから、私たちはこれから、これらの手段を使って舞鶴へ戻るわ」

「これら……って、1から順番にってこと? 」

「違うわ、この数字。6までしかないってことは……」

「……え、待って。まさか」

「そうよ! 私たちはこれから、サイコロを振って、出たところを巡りながら京都、舞鶴へ向かうわ!! 」

「え、えぇぇぇぇぇぇーーーーーーー!!?!?!?!!?」

「わくわくするわね? 」

「いや、え、ちょっと待って。本気なの!? 」

「本気よ」

「でも、提督が……」

「許可は取ってあるわ」

「うわ、本気のはんこだ……これカメラに映っちゃいけないやつじゃない!? 」

「ええ、まあ、だから放映するときはカットかこう、この辺にモザイクね」

「えぇー……ねえ、本気? 本気なの? 」

「だから何度も言わせないで。本気よ」

「うわーうわー……というかね、一ついい? 」

「なにかしら? 」

「それをね、改めて言われてからこう、このフリップを見るとね? 」

「ええ」

「……大概のものがどこ行くかわからないんだけど」

「……まあ、そういう風に書いたし」

「……えぇーー」

「さて、それじゃあ実はあんまり時間がないし、さっさと投げるわよ」

「あ、うん、サイコロ……ねえこれ駄菓子のあのサイコロよね? 中にキャラメル入ってる」

「そうよ。そのサイコロに私たちのすべてがかかっているわ」

「……紙製のものにかけていいプレッシャーじゃないと思うんだけどなぁ」

「いいから早く振りなさい! 巻きよ巻き!! 」

「ああもう! どうにでもなれー!!!」

 

 そして、出た数字は――!!

 

 

前回までのあらすじ:あこがれだった扶桑、山城姉妹のインタビューを終えた吹雪。しかし、それらはすべてこれから始まる“本番”の序章に過ぎなかった。始まったのはサイコロに翻弄される旅。果たして吹雪は無事に舞鶴へ帰ることができるのか!!?

「どうにでもなれー!!」

 ポン、カッ、コロコロ……。

「出た目は……」

「五、ね」

「ええっと、五の目は……これ? 」

「これね」

「ロイヤルエクスプレス……なんだか高級そうな名前だn」

「あー、これね。アンタさすがね」

「え、なに!? いいじゃんロイヤルだよ!? ご、豪華寝台特急とかそういう――」

 

某年某月 

―東京駅 20:00―

「……というわけで急いで横須賀から東京へ来たわけだけれども」

「はい」

「案外、東京駅周辺っていい場所ないのよね。ごちゃごちゃしていてわかりにくいし」

「いや、あの、深雪とか叢雲ちゃんがもうちょっと事前に調べておいたら、横須賀からここまで“三時間も”かからなかったんじゃ――」

「……えー、さて、というわけで東京駅は八重洲口に来たわけだけれども」

「仕切り直した! ひどい! 東京駅で一時間半も迷わなかったら東京タワー行けたかもしれないのに!! 」

「たらればの話はあとにしなさい」

「ていうか! 昨日のうちに私が行きたいって言っていたのを却下したのってこういうことだったんでしょ!? 東京タワー! 行きたかった!! 」

「うるさいわね! だいたい普通はもうスカイツリーでしょ!? 」

「いや、あの、スカイツリーは高すぎるっていうか」

「……標高が? 値段が? 」

「…………どっちも」

「まあ今回は諦めなさい。そもそももうやってないし」

「むぅ……」

「じゃあ吹雪、これから私たちが向かう場所を発表してちょうだい」

「あー、えーっと……私たちがこれから向かうのは、このロイヤルエクスプレス号で、福岡、です」

「そうね。アンタが振ったサイコロで、私たちはこれから九州へと上陸するわ」

「……あ、でも私、九州ってあんまり行ったことなかったし、夜行バスも初めてだからちょっとわくわくするかも」

「そうね。途中には本州と九州を結ぶ関門海峡もあるわ」

「大きい橋でしょ? 普段は海上から見上げるだけだから、渡ってみるのは始めてだね! 」

「ええ、そうね」

「絶対起きて見てやるんだから! それで、叢雲ちゃん、このバスは何時に福岡に着くの? 」

「……予定では明日の10時よ」

「……えっ? 」

「10時。ヒトマルマルマルよ」

「えっ、10時って、今20時だから……えっと……14時間後?」

「(無言でうなずく)」

「……ね、寝ていたらなんとかなるよね!! 」

「そうね。じゃあ行きましょう」

 

―バス 車内―

『当バスはこれより――』

「……すごい、バスなのに三列シートで、なんかこの……掛け布団? もあるし」

「ブランケットよ。白雪、アンタ一人だけ前だけど大丈夫? 」

 カメラが静かに上下する。

「そう、まあ許可はあるけどあんまり撮れないかもね。照明も落とすらしいし」

 コツコツと叩く音がする。暗視モードもあるというアピールのようだ。

「……わかったわ、ならはっきりと言うけど、寝顔は撮らないで。吹雪のはかまわないわ」

「ひどい! 」

 

― 二時間後 ―

「………………」

「………………」

 カメラに映るのは眠っている叢雲。上品に眠っているように見えるが、うっすらと目が開いており、その横では吹雪が大口を開けて寝ている。

 

― 六時間後 ―

「………………」

「…………なんでカメラ回っているのよ」

 乾燥のせいで目を覚ました叢雲と、寝付きが悪いのかもぞもぞと動く吹雪。

 

― 十時間後 ―

「……これまだ四時間あるの? 」

「…………(モッシャモッシャ)」

 腰をさすりながらカメラを睨みつける吹雪と、途中のサービスエリアで買った弁当を無言で食べる叢雲。

 

― 十二時間後 ―

「………………」

「………………」

再び寝ている二人を映すカメラ。その背後の窓からはちらちらと関門橋の様子が見える。

 

― 十四時間後 福岡 小倉駅―

「……はい、というわけで来たわよ福岡」

「いやー、関門海峡すごかったね。こう、わーって、どわーって感じで」

 

―三十分前の様子―

「……あれ? 叢雲ちゃん、橋は? 」

「……寝過ごしたわね」

「……あちゃー」

 

―――――――――

「ね、こうして福岡に来たわけだけれども」

「はいはい」

「そういえば確認を忘れていたのだけど、私たちは三日後……ああ、いえ、もう明日ね。明日の夕方には舞鶴へと戻らないといけないわ」

「本当にね、急な旅だよね」

「というわけではい、次の目的地を選びましょう」

「……え? いや、なんでフリップあるの? え、観光は!? 」

「……吹雪、いい? 」

「あ、はい」

「私たちは明日には舞鶴にいなくちゃならない。行き先はサイコロ次第。……時間はある? 」

「……ない……です」

「というわけで次の目的地はこれよ!! 」

「強引すぎない!? ていうかもうフリップも手書きだし!! 」

 

1 格安航空で沖縄へ

2 J1621 京都へ

3 ぎんなん号 熊本へ

4 南九号 鹿児島行き

5 新幹線で一本! 京都へ

6 まさかの海外!? 釜山へ

 

「……行く場所まで書くようになったんだね」

「とりあえず一と六だけは出さないでちょうだい」

「え、また私が振るの? 」

「そうよ? ……え、ちょっと待ちなさいよ深雪、私が振れって顔しないで。待って、この場面で私が振らないといけないの!? 」

「叢雲ちゃん、一人だけ責任逃れは良くないよ」

「吹雪、アンタねぇ……! 」

「はい、叢雲ちゃんがんばれー! 」

「―――ッ!! ええい!やってやるわよ!! ていっ!!! 」

 

つづく

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