ガンダムシードデスティニー ビルギットが主人公の場合   作:タチコマb333

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前大戦をなんとか生き延びたビルギットはザフト軍を抜け、現在民間の試験MSパイロットをしていた。

会社のMSを取引先に運び込む最中、立ち寄ったコロニーでは何やら不穏な動きがあるようで・・・。



「争いの足音」

早朝―艦内に設けられた食堂には朝早くから朝食を食べるために多くの人が集まっていた。

つなぎを着た整備士、オレンジの服を着た消防士、社内指定の仕事着を着たオペレーターなど職業はさまざまだ。各々が自分の好きなメニューをトレーに乗せ、それぞれのグループでかたまり食事をしている。

 

本日のおすすめメニューは豚肉の生姜焼き。朝から肉食とはヘビーだと、適当に注文したビルギットは嘆息をした。

 

「よぅ。今日も早いな。」

「ビルギットか。早いというか、まだ寝れてないだけさ。」

「そりゃ大変だ。」

 

自機のメインメカニックのアストナージに声をかけると、弱弱しい声が帰って来た。

朝食をトレーに載せたアストナージがビルギットの向かいに座り、朝食を食べ始める。

 

昨日から通達があったMS売却騒動に巻き込まれた整備クルーたちは、ほぼ丸1日売却の準備を進めていたはずだった。ビルギットを始めとするMSパイロットは簡単な聞き取りだけで済んだが、アストナージの様子を見ると言葉通り徹夜だったらしい。いかにも眠たそうに若干船を漕いでいた。

 

「それで、どうなったんだ?」

「どうなったもなにもないよ。みんなカンカンさ。虎の子も売るって聞いてなかったし、大体、本当なら売りたくないんだよ?あれはまだ手を加えたい機体だし…。」

 

アストナージはミールを口に含み言葉を切った。

 

話は転売用に開発した自社MSの件だ。現在FTIで製造しているのは主にFシリーズとPシリーズ。ビルギットが乗る先行簡易量産型試験機カスタムのF90、シーブックのFシリーズ初の完成機体F91、ハマーンのサイコミュ試験型F89-Pがそれに当たる。

PシリーズはFシリーズの簡易製造版。いわゆる量産を視野に入れた設計思考のMSだ。今ここにはないが、周辺宙域にて待機中のザンバ1号、地球のザンバ3号に配備されているMSである。

 

今回商談として話は、オーブのMSを改良するにあたり技術提供をして欲しいというものであったはずだ。それが徐々にMS自体について興味をもたれ、あれよあれよとMS自体を売るということになった。

 

それでもつい最近まではオーブモルゲンレーテ監修の元材料費など全てあちら持ちでPシリーズを製造。オーブにて模擬戦を行い商談成立のはずだった。やるとしても製造前のデモンストレーションでオーブ軍MSのM1や新型のムラサメと模擬戦をするだけで、何も虎の子のFシリーズを売る必要などなかったはずなのだ。

 

それでも所属する会社が売ると判断したのならしょうがない。

 

「で、結局俺のF90のセットアップはリセットすんのか?あれはあれでいいと思うんだが。」

「ピーキーすぎるよ。それにシステムも複雑すぎる。残すにしてもある程度ダウングレードしてオプションとして売るしかないと思う。」

「複雑にしたのはお前なんだがな。」

「誰の依頼でやったと思ってんのさ。…でもやっぱりバリエーションは残しておきたいと考えているんだが、どう思う?」

 

MSV(モビルスーツバリエーション)。一つのMSで多様な兵装を装備できる外部ユニットの総称である。F90の外部ユニットとしてA~Gタイプの6つを用意しており、行動目標別に機体を変えず機体性能を大幅に変更することが可能である。量産機における戦力低下を防ぐために試験した機能だが、思った以上に構想が進み、成果も上がっている。

この結果を元に少しでも評価が上がり、金額が高くなることを望むばかりであるが、そこまで考えたところで少しこみ上げてくる思いがあった。

 

つくりあげるのには約1年。削除するには数分しかかからないのはなかなか寂しいものではある。

 

「はぁ。まぁいいんじゃないか残しておいて。オプションとして売ればトータルの利益は増やしやすいしな。」

 

「それもそうだけど。そうだけどさ…」

 

ビルギットは朝食をちまちま食べるアストナージに対し、内心ため息をついた。

FTIはそもそもMSを開発し、それを販売して金を稼ぐ会社である。MSを設計・開発する先にそれを売ることはあらかじめ分かっていたはずなのだが…。

 

「わかっちゃいるけどってやつか。」

「なんだよ?」

「いや、さっさと飯食って作業を終わらせちまおうぜ。」

 

最後のおかずを食べ終わったビルギットはアストナージにそう言うと、食後のコーヒーを飲むため席を立った。

 

 

艦長ルーム

 

「…それで? 連中はことを起こすつもりなのかい?」

「おいおい、今渡したデータに全て書いて、、、わかった今説明する。答えはイエスだ。」

 

渡したデータを目の前で消されたレーツェルは、首を振りながらイエスと答える。

どちらにせよ、艦長のイシューが見た後はこちらで廃棄するつもりだった。自身で探し回った1点物の機密情報の塊のようなデータだ。見つかればプラントと連合の両方から追われることになる。

 

自身が潜入し確認してきた情報を元に考えられるのは、明後日までに迫ったイベントで何かが起こるというものだ。それもおそらくはナチュラルとコーディネーターの戦争に繋がるほどのもの。

 

データの削除が完全に終了するまで、イシューは返答を返さなかった。

 

「そうか。」

「…それだけか?もう少し慌てると思ったが。」

 

今いるのはプラントの商業コロニーのひとつであるアーモリーワンだ。大戦後に作られた真新しいコロニーであるのだが、非常に活気がある。活気の理由はこのコロニーが扱っているものが新型MSだからだ。それに加え…戦争の火種が出来るイベントが開かれる開催コロニーでもあった。

 

 

「新型MSと新型艦の進宙式。更にはきな臭いうわさもこの業界じゃ既に出回ってる。何かあると思わないほうがおかしい。」

 

「それはまったくだが、どうする?」

 

きな臭いうわさとは、明後日に迫ったイベントに関わるものだ。

新型のMSが同時に4機も発表されるもので、軍備増強路線を走る今のギルバート政権の力を内外に「見せつける」ためのイベント。そのイベントの主役である新型MSの制作期間は異常であった。

 

本来であれば製造だけで数年かかるはずの計画のものを、実際はわずかな1年以内の期間で開催までこじつけた。もちろんそれには理由がある。実は1から作り上げたものではなかったからだ。

 

ザフトの陣営が「ない知恵」を絞ってだしたのが複数の民間MS設計会社によるコンペだ。『平和を守るために協力して欲しい』という名の元に開かれたコンペ。多くの民間MS企業が参加し、その中にもちろんFTIもいた。

 

様々な新型MSの案が各企業から出される中、FTIも案を出していた。内容は新型ではないものの、既存MSの量産発展型の開発プランだ。

 

その全てのプランがザフトに奪われた。プランしかり、優秀なスタッフしかり。

FTIはプランこそ奪われこそしたが、スタッフは引き抜かれることだけは水際で阻止できた。

ひどいところはスタッフが軒並み誘拐され、潰れた会社もあると聞く。そんなことをして恨まれていないと考えているほうがおかしいというものだ。

 

因果応報。少しは痛い目を見たほうがいいというのがイシューの考えであった。

 

「どうもしないさ。うちらは関係ない。必要なもん補給したらさっさとオーブに行くさ」

「それがいい、と伝えておく。厄介事は出来るだけ避けたほうがいい。」

「まったくだ。ブライトの館長にも伝えておきな。へますんじゃないってさ。」

 

『それは私に直接言えばいい。だがまず先に、緊急の用件ができたので失礼する。』

 

ルームの通信画面に映し出されたのはザンバ1号艦の館長ルーム。そこにはひとりの男―ブライト・ノアが映しだされていた。

 

 

ザンバ2号 館内居住区

 

「っ―!なんだ?この嫌な感じは?」

 

時計を見るとまだ起きる時間には早く、昨日の疲れが残っているせいか少し身体がだるい。

にも関わらず頭は冴え渡り、早く自分に起きろと言っているようだった。

(この嫌な感じ―何か起こるっていうのか?)

幾度となく戦場で感じたこの違和感に危機感を感じたシーブックは、とにかくパイロットスーツへ着替えようと通路に躍り出た。

 

「っ貴様どこを見て!―シーブックか。」

「ハマーン!すまない大丈夫か?」

 

シーブックが急いでパイロットルームまで行く途中、曲がり角で黒いローブをまとったハマーンと出会い頭にぶつかってしまった。行く方向は―同じだった。

どこか焦りを帯びた表情のハマーンを見て、シーブックは自身が感じたことに確信を持った。

 

「ハマーンも感じたのか?」

「そうだ。貴様も感じたのか…なら急いだ方がいい。」

 

ハマーンとやりとりをしながらパイロットルームへ急ぐ。これから起こるであろう不測の自体に対処するため、戦力―MSが必要になるはずだからだ。

 

 

MSドック内

 

ところを移してビルギットとアストナージはMSドック区画に来ていた。F90の最終チェックを行うためだ。現在ザンバ2号には合計3機のMSが搭載されている。F91の他、2機を売るための最終チェックも同時進行で行われているため多くの人数が押し寄せている。

 

「何やってんだあそこ?」

「直談判さ。シーブックのとこのガキが売りたくないってマーサさんに。」

 

横で騒いでいる雰囲気を察して顔をコンソールから顔をあげると、F91の周りで騒いでいるガキどもが見えた。

 

「ガキどもなにやってんだ。さっさと仕事しろよ。」

 

「ビルギットさん!よかった、整備士長にいってやってくださいよ。F91を売るなんてひどいって!これ、俺たち頑張って作ったんだぜ?」

 

「今3機ともなくなったらザンバ2号の護衛はどうするんです?うちらがMSを売る会社ってことはわかってるつもりです。ですが、少し危険を感じます。」

 

感情的なサムと意外と考えていたドワイトの言い分を聞かされたビルギットは肩を竦めただけで何も言わず、奥にいるマーサ整備士長を見据えた。

 

「だとよ?」

「うるさい坊や達だね!」

 

振り返ったマーサ整備士長は手に持ったスパナをこちらにつきつけそう怒鳴った。

マーサはここの統括整備士長だ。ザンバ艦は1~3号まであり、所有MSは合計13機。整備クルーは述べ100名を優に超える。

 

「まったく。あたしゃもまだ聞かされてないんだが、どうも別の意図があるみたいさね。」

 

「ただのMSの取引じゃないと?」

 

「キナ臭すぎるね。取引先がオーブでなけりゃとっとととんずらしてるとこさ。」

 

「オーブか、、、。俺たちのいた所、、、。」

 

ビルギットが質問するとマーサは簡単に取引先を明かした。その国名を聞いたとき、サムとドワイトは黙り込んだ。自分たちのいた国、戦場になった国、見限った国。

複雑な感情を顔にとったマーサはちらりと二人を見た後、MSに向かい合いながら怒鳴り声を上げた。

 

「いつまでピーチクパーチクちんたらちんたらしてるんだい!さっさとF91のフォーマットをはじめな!あたしゃあんたらを軟弱な整備士に育てた気はないよ!」

 

「「はい!」」

 

慌てて駆け出す二人をまたちらりと見るマーサをわざとらしくニヤニヤと見るビルギット。

仕事を与えて暗い気持ちを紛らわせる。いつかは吹っ切らなければならない感情は確かにあるが、彼らの場合は時が解決するであろう事柄だ。それを理解して仕事を振ったマーサは彼らを息子のように扱う母親役をしていた。

 

「あんたもさっさと戻んな!」

 

にやにやしながら様子を見ていたビルギットは叱られて首を竦めた。どうやら気に食わなかったらしい。怒りの表情を帯びたマーサがこちらを睨んでいる。

 

「へーへー。どわっ! レンチをなげるな!」

 

(取引先はオーブのはず、、、。中継店地点としてアメノミハシラに向かうのはわかるが、なぜわざわざアーモリーワンへ入港したんだ?)

 

律儀に拾ったスパナを返した後、F90のところに向かう途中、ビルギットは引っかかった内容を考える。どうも嫌な予感がしてきやがっ―

 

「ビルギットさん!」

 

―厄介事がやってきやがったか。

 

シーブックとハマーンが「パイロットスーツ」を着てMSドックに入ってきた。真っ先に自分の元へくる。表情は二人共険しい。

 

このような状況は前大戦の最中何度もあった。緊急事態が迫っている状況でだ。

 

『第2種戦闘配備発令。第2種戦闘配備発令。速やかにクルーは所定の位置についてください。繰り返す―』

 

館内アナウンスが響き渡る。この時、既に事態はゆっくりと動き始めていた

 




初投稿でした。

修正は随時行っていきます。

頭のなかでは色々できているのですが、その時々に流行っていたアニメの影響を受け、大分変わってきてしまいました。

まだ出てきていない他作品のキャラも(続きを文字に起こす気力があれば)どんどんでてくる予定です。

次回は戦闘描写を書いて・・・いけたらな。
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