僕はこの世界で英雄になりたいんだ! 作:サンマ味のヨーグルト
(^o^=^o^) < 余は奏者が大好きだあああああ
(゚)(゚)
栄光の大都市、オラリオに太陽が昇る。神話では太陽神と謳われる神々らもオラリオに降臨している為太陽は唯の天体ということが分かる。
この世界の生物は天体の概念を理解できていない為詳しく説明してもわからないだろうが、神が太陽自身という事実では無く、太陽の威光の化身であることは呑み込めるだろう。
その太陽が最大派閥、ロキ・ファミリア本拠黄昏の館に存在するアストルフォの一室を燦々と照らす。
直射日光が顔に直撃しているが、寝相によって乱れた寝間着がゆっくりと規則正しく上下していることから深く寝入っていることが分かる。口をだらしなく開いている為か、涎が付近に垂れている。少女より少女らしい顔立ちは非常に美しく、乙女のようなきめ細やかな白磁の肌が陽の光に反射しきらきらと煌めいている。今は閉じているがぱっちりと開かれる目元は女性よりも女性らしい。桃色の長い髪を束ねた三つ編みが解かれ、波のようにゆらゆらとベッドに広がっているのもそれを後押ししているだろう。
「んんぅ……」
そして切れ長の目が開かれる。欠伸と共に起き掛けに目元から零れ出る涙は音も立てずにシーツに落ちた。目元に滴る涙の残滓を擦りながら身を起こす。いつも縛っている長い髪が下敷きになっているのは気にされていない。興味のない物に関しては一貫して興味を持たない彼は、髪や身だしなみにも昔から無頓着なのだ。ただこの恰好は趣味であることと、
寝間着の裾で涎の凝固された塊を拭きながら傍らに置かれた桶から木製のコップで水を掬い、喉に流し込む。多少温くはなっているが睡眠中寝汗を掻いていて水分が不足している起床時、そして口の中に充満する口臭を濯ぐのならば温くても問題は無い。
「……ふぅ…」
水を胃の中に流し込み、一息つく。身体に澄み渡るように広がって行く水の奔流は未だ眠っている体の器官を覚醒させる合図となる。水を受け入れ上下する喉仏はアストルフォが男だと判別できる貴重な証拠である。水を飲み干し容器を近くのテーブルに置き、ベッドの脇を視界に入れ一言。
「……………で、僕のベッドに潜り込んで何してるの。ロキ」
自身のベッドに忍び込んでいる異物に向かって尖った声を向ける。寝起きで不機嫌な人はいるだろうが、別にアストルフォは寝起きで不機嫌になるような体質では無い。ならば不機嫌になっているのは異物、ロキの所為である。
「げへへ……ええやんええやん、うちみたいな美女が添い寝してるんやでぇ?」
はあはあと息荒くロキは糸のように開いているのか閉じているのかわからない目で器用に流し目のような雰囲気を演出する。アストルフォは何言ってんだコイツというような瞳を向けて睥睨し全く反応を返さない。
「なんや、アスたんも一応性別上男なんやから少しは反応してもええんちゃう?うちはオールオッケー。カモンベイべ」
「せめて僕よりも胸が大きくなってから言うんだね」
「あああああんんまりだあああああああああ―――――ッッ!!」
それを言うなよおおおおおおおおおお!!とアストルフォの容赦のない一言にロキはハートはブロークンされ、エシディシの如く怨嗟の慟哭を上げながらベッドの上をのた打ち回った。痰が絡まっているのか、ロキの喉から飛び出ている固まった血反吐はシーツを台無しにし、アストルフォの機嫌を更に下げる。邪魔だなーと呟きアストルフォは恩恵を得た事で取得した常識、迷宮での使用する筈の、ついぞ使った事のない魔法をロキに対し使用した。
「【
速攻魔法に位置される一節の呪言はアストルフォの身体から淡い若草色のオーラを迸らせた。名前の通り今触れると生物を転倒させるのである。
原典で魔法を掛けられた魔訶不思議な槍は外典であるアストルフォと同化し、一体となったのである。この魔法は非常に凶悪である。武器の切っ先でも、服の袖であっても、彼に触れた物は転倒する。戦闘に於ける転倒は相手に見せる最大の隙となり転倒となると命取りどころか大間抜けと嘲笑されるであろう。
流石にLv.1のアストルフォでは遠距離特化のエルフには遠距離からの砲撃、高レベルの一級冒険者達には太刀打ちすらできないが知能を持たないモンスターには決定的なリーサルウェポンとなる。まあ好奇心と向上心を溢れさせているアストルフォならば喜々として高レベル保持者に戦闘を挑むだろう。
「ぽーるごーぎゃんっ!ぐげっ!!!…………」
ロキは死後名声と尊敬を集めたというフランス人画家の名前のような悲鳴と共にベッドから正につるっと効果音が出そうな音を立てて硬い石材で出来た床石に頭を直撃させた。
やっぱロキは苦手だ。何か苦手。こういうのを変態って言うんだね。と言いながら傍に畳んでおいた外行きの服に手を伸ばす。
ロキの頭頂部から湯気が出ているような幻覚が見えるがアストルフォは放置し着替えを済ます。幸いロキは気絶していることからアストルフォの生着替えに興奮することも無い。今日は用事があるのだ。
「じゃあ、ロキ。僕バイトがあるから、シーツ責任とって新しいのに変えておいてよねっ」
バイト。アストルフォはそう言った。オラリオに来た冒険者がバイトなぞに出ることは無いのだが、彼は確かにそう言った。
ピンク色の寝間着から紫のパーカーに着替えた彼は呑気に倒れているロキをペちぺちと叩き、生存確認。一応呼吸している事を確かめた後忙しい忙しいと部屋から退室した。バイトと言っていた為その時刻が迫っているのだろう。
しかし安易に部屋から退室してしまった事が彼の最大の失敗だ。
彼はロキが生きている事は分かっていたが、意識を保っている事には気づいていなかった。ロキを私室に置いておくという事は、空き巣をそのまま放置することと同義である。危機を察知する能力はあれど、人を見抜く観察眼はまだまだ未熟だったという事だ。
「ぐへへ、責任とってシーツを変えるって、何か卑猥やん…」
そしてロキはどこまで行ってもロキだった。ロキは恍惚とした表情でアストルフォの汗が染みついたシーツに跨り、身体全身を擦りつけていた…。
◆
アストルフォは少し焦ったかのような表情で大通り、ダイダロス通りを横切る。いつもひょうきんに笑う彼だったが、今回は今回で焦っている。額に汗を流しながらドワーフや獣人、ヒューマンなどの人混みをすいすい避け目的の場所へ向かう。
目的の場所が見えた。【豊饒の女主人】亭。昨夜アストルフォやリン。エミーチカが夕食を取った酒場だ。
「おはよーござまーす!ミアのおばさーんっ」
勢いよく店の扉を開け、女主人へ挨拶をする。アストルフォが先ほど言っていたバイトとはここの事だ。昨夜飲み比べを行った二人だったが、会計の際金が足りない事が発覚し、しこたま絞られたのだ。無銭飲食がファミリアに発覚する事を恐れたリンとアストルフォは、暫くここで手伝いをすることで足りないヴァリスを払うという選択をした。幸いアストルフォは酒豪であった為醜態を晒さず、二日酔いなどを起こさなかったので問題なく働くことができた。リンは飲み比べに負け、激しい頭痛に苛まれ身動きが出来ない状況だった為アストルフォ一人である。
「逃げずによく来たね。とりあえずアンタは制服に着替えな」
「はーい。あれ、でもここ女性しか入れないよ?」
ミアに先導され、ロッカールームに向かう。しかし更衣室は女性用であった。元々女性しか働いていない豊饒亭だったので、男性の着替え場所は存在しない。
「はあ?…あんた何言ってんだい?アンタそんなナリして男だって言いたいのかい」
「うん。これでも男だよ」
ミアは怪訝な顔でアストルフォにふり返った。少女のような恰好はあくまで趣味である。アストルフォ自身は性同一性障害などでは無い。あまりそういう事を気にしない性格に見えるが、女性が嫌がる事や性的なことには一応のデリカシーを持っていたらしい。
「――え、アスちゃんって男の子なんですか!?」
ミアとアストルフォの真横から声が入る。視界を動かすとそこに居たのは豊饒亭で働いている従業員の一人。アストルフォは頭の中、記憶領域の片隅に置いてある記憶を検索し名前を思い出す。
「ああ、シルちゃん」
シル・フローヴァ。アストルフォより4つも上の女性だ。確か知り合ったのは昨日、リンの介抱に酔い覚ましと称してバケツに入れた水を鼻に注ごうとしているのを笑いながら見ていた時だ。その時何故か気に入られ、アスちゃんシルちゃんと呼び合ったのだ。アストルフォは一瞬忘れていたことをおくびにも出さずのうのうとちゃん付けで呼んでいる。
「え、ホントなんですか。アスちゃん男の子だったんですか?」
「うん」
シルはアストルフォの周りをウロウロと周り、アストルフォを凝視している。そして急に立ち止まり、名案を思い付いたとばかりに手を叩いた。
「そうですっ!アスちゃんって女の子にしか見えないからそのまま制服に着替えちゃいましょうっ。今は更衣室に誰もいませんから着替えてもオッケー、です!ささっ、見張っていてあげますからほらほら!」
「まあ、女みたいなナリしているから問題は無いね」
シルの提案にミアは肩を竦めて賛成した。女装に抵抗の無いアストルフォは流れに身を任せていたのでシルに背中を押されそのまま更衣室に入って行った。
「おろ。結構綺麗にしているんだね」
「あはは。母さんに言われているからね」
見慣れない空間で女性特有の匂いがする事実にアストルフォは珍しい物を見る様にきょろきょろしていたが。
「40秒で支度しな!愚図はここでは働けないよ!」
「うーいっ!」
ミアに急かされ中断した。
急いで着替えていたアストルフォだったが、後ろからジーっとシルに見られていて着替えに集中は出来なかった。少しでも着替えが滞れば即座にシルが密着し、手伝って来た事には寒気がしたらしい。
「ぐへへへ……」
「ぶるっ……なんかロキの気配がする……気のせいかな」
◇◇◇
〈その頃のベルくん〉
夢を見た。あれは僕が見慣れない地に彷徨い、青い恰好をした男に追いかけられた時の光景だ。
僕は、ボーボボさん達といつの間にかはぐれ、焦っていたんだ。周りが見えず、必死に走った。迷宮から這い出てくるモンスターは迷宮よりも弱体化していると言っても、武器を持たずに彷徨っている僕では、勝てないだろう。
モンスターに遭わないように、走って、走って、走って。遂には動けなくなった。肺が必死に酸素を求めている事に気付かず、転び、倒れ伏した。
酸素を必死に吸収しようとしている身体は僕の意思に反し、微動だにしない。今日が最後か。と姿が見ないモンスターに恐怖で蝕まれ続け、僕は失禁した。
この歳になっても情けないが、我慢が出来なかった。怖い。怖い。怖い。助けて。助けて。助けて。タスケテ………。
暫くして漸く身体を動かせるようになったが、モンスターは現れなかった。
僕はボロボロになった身体を必死に動かし、フラフラしながら、木に凭れながらも。そして気がついたのだが僕は森に入っていたらしい。モンスターの遠吠えと思わしき音も、木々のさざめきだったらしい。しかし緊張状態だった僕にはそれがモンスターの遠吠えと幻聴していて、悲鳴を上げながら逃げた。必死に逃げた。
僕が逃げて、数時間は経っていたのだろうか、やがて灯りと思わしき光が見えた。
ああ、
アアアアア、
嗚呼、ああ、
光だ。
光ダヨ…。
明るい。
僕を照らしてクレル。
太陽では無い。
しかし灯りは光を、人が存在していることを教えてくれる。僕はふらつきながらも近づいた。脚から血が出ていたが構うものか。
そして近づくと、人がかなり居る事がわかった。何かを全員で唱えている。それも必死に。僕にはそれがとても怖く見えた。人が怖いわけでは無い。唱えていたら何か怖い事が起こる気がしたのだ。人は二列に並び、何かの到来を待っていた。やがて真っ黒な装束に身を包んだ人が二人、ゆっくりとその間に向かっていた。
《ひ か り か が や く お す がたに あらわれたもう》
老若男女。腹の底から唱える呪文に僕は硬直し、足元にあった木の枝に気付かず、踏んでしまった。
「―――――だれだっ!!!」
その内の一人、若い男だろうか。その音に敏感に気づいた男は僕に的確に見つけた。
怖い。怖い。何かが来る。近寄っちゃならない。
「う、うわああああああああああああッ!!」
逃げる。逃げる。脚が痛いがそんな些細な事は気にしてはいけない。怖い。怖い。脚を必死に、後ろから聴こえる足音もかなぐり捨てて、必死に動かす。
《ザザ―――――――ッ》
「―――――うグううう………」
ノイズが奔る。頭が痛い。頭が痛い。痛い痛い痛い痛い体いいたいちちたいあいあああああああああああああああああああああああああああああああーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!。
見える。見エル。僕が見える。僕だ。これは、このくせ毛は僕だ。何故、何故、何故
何故僕が頭を抑えているのが、
狂ったように背後を振り向く。怖い。怖いよ
後ろに見えるのは、青い服を着た男だった
なんで、なんで。つまり彼の視界が僕に見えたのだろう!嗚呼、何故、狂ったのか。これも魔法なのか?!
男は、僕がかつて見たことがある、黒い筒。キラットで触れた事のある―――――
「――――――了解、射殺します」
「拳じゅ――――――」
そして轟音、発砲音が耳に届き、
僕の腹に、穴が開いた。熱い、熱い風穴がああ、あああああああああああああああああああああああああああついあついあついあついあついあついあついあついあつあいつあちいいいいいいいイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイいい痛い痛い痛い痛い痛い太太太太血合いたああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!
意識を失った僕が、最後に見た光景は、石田徹雄と描かれた、ネームプレートを付けた、男が笑っている光景だった。
キラットから抜け出したベル坊。しかしケチャワチャというモンスターに襲われ、遭難する事態になる。しかしいつの間にか黄金閣下の軍勢に取り込まれ一息。しかし聖鼻毛領域という地獄に現界してしまい、ベルはボーボボ達から逃げ出した。そして見知らぬ森にたどり着いたベル。石田という男に射殺されてしまう
ベルは、ループし続ける異空間。羽生蛇村に来てしまった
第五回 その頃のベルくん 〈終〉
◇
Side シル・フローヴァ
今私の目の前にいる女の子、いえおとこの娘はアストルフォ・イルマちゃん。目がパッチリとしていてとってもチャーミング。輪郭など髪形を合わせて美少女と言える。
だが男だ。
見た目は美少女なアスちゃん。これでも男性のアレが生えているらしい。着替えている最中は目を瞑っていたが一瞬目を開けて確認した骨格などは女性にしか見えない。鎖骨がキュート。
だが男だ
ミア母さんが買って来た高級な白い、白磁の器。あの色に似ている。白磁の肌と言ってもいいだろう。美容に気を付けている同僚達よりも綺麗な肌をしている。これはアスちゃんの天然の美肌と言えるだろう。女より女らしい。
だが男だ
桃色の髪は柑橘系の匂いがし、男性に似つかわしくない匂いがアスちゃんからはしている。女性でも臭い人はいるが、アスちゃんからはそんな匂いはしない
だが男だ
ほっそりとしたウエストにはくびれが存在している。それに反しむっちりとしたお尻と太ももが日光を反射する。ハリのいいお肌は若さを引き立たせている。
だが男だ
「―――――ふふーん♪似合う?」
私の前に給仕服に着替えたアスちゃんがくるっとターンしてスカートを摘みあげる。その作法は王国に奉公に行っているメイドなる人物の作法を彷彿させる。
だが男だ
いつの間にか鼻から熱い物が流れ出ている。気のせいでしょう。女の子は鼻血なんて出しません。
「シル。鼻血が出ていますよ」
気のせいよリュー。乙女は鼻血なんて出さないの。出るとしたらこう、ふわふわしたものよ。
「おっしゃる意味がわかりません……」
「ねー。似合う?シルちゃん、リューさん」
だが男だ
「ええ、似合っています…また出た……」
◇
ドワーフの女主人、ミア・グランドが切り盛りしている酒場。豊饒の女主人亭は盛況である。昔から酒場を経営していた縁というのもあるが、見た目美麗な女性達が働いているという事が男達を引き寄せるのだろう。
「ほらっ、4番テーブルにコレ持ってきな!」
「うーい!」
給仕服に着替えたアストルフォはミアに従い、熱々の料理を持ち運んだ。素人が無理して運ぼうとすると、バランスを崩し台無しにしてしまうことがあるが、アストルフォは器用に四つの皿を掴んで混雑している足場をすいすいと移動している。
実はアストルフォが故郷に居た頃、大食いな女性に奉仕する、魅せ筋の褐色男性に紅茶の入れ方や、バランス歩行を指導してもらった経験があり給仕には馴れている
「お嬢ちゃん新人さんかい?どうだい、俺と良い事しないかい」
「あははっ。面白いこと言うね。じゃあオジサンが寿命を迎える頃ならいいよ?」
「死んでるじゃねえか!」
「ほらほら、ご注文の【タンドリーチキンブルゴーニュ風味パイの包み焼き】だよ。じゃごゆっくり早く帰ってね」
「どっちだよっ!!」
『ギャハハハハハハッ!』
酒とは偉大である。普段ブチ切れる男達も、簡単に冗談と受け流し、笑って許す。酒豪であるドワーフも、好物の酒を飲んで気が良いのか酒を喉に流し込みながら、大きく共に笑う。
いかついドワーフ達から離れたアストルフォは従業員、エルフであるリュー・リオンの元へ向かった。他人をあまり寄せ付けないエルフであるリューも例外無く、やたら近寄ってくるアストルフォと距離を取っていた。
「リューさん。次は何すればいいの?」
「イルマさんですか。ではテーブルを片付けてください。残った皿を回収した後、布巾で拭くことを忘れずに」
「りょーかーい」
アストルフォは一見、睨むと男でもビビると言われているリューの鋭い視線を気にすることも無く近寄っている。本気で睨まれるとアストルフォでも怖気づくが、知り合いがリューに似ていたのだ。姉貴分である女性に。それ故にアストルフォは親近感がリューに対し非常に高い。リュー本人がどう思っていたとしてもやたら近づいているのはこの所為である。
「――――やっぱり、マルタ姉さんにそっくりだ」
声が。
「お嬢さん。済まないがこっちに来てくれないかい」
「あ、はーいっ。今行きまーす」
客の一人に呼ばれ、傍へ移動し注文を聴く。これも魅せ筋のお兄さんに教えられたことだ。お兄さんが教えたのは執事としての作法だったが、給仕の作法としてアストルフォにきっちりと身に付けられていた。
アストルフォを呼んだ客は、アストルフォが持っていた皿を指さした。これは既に帰宅した客が残した残飯なのだが、この客はそれを一点に見ている。
「このチェリーがどうかしました?」
「それ余りものですよね」
「そーですけど」
「では、一つ戴けませんか?何か知りませんが、僕の好物なんです」
考える。これは客が残したもので廃棄する分である。しかし唯の従業員であるアストルフォの一存で金も払っていない客に渡してもいいのだろうか。思考を張り巡らせたアストルフォは結論を出す。
「うーん。まあ、いっか。大事に食べてくださいねー」
チェリーを手渡された客は、礼を言った後、口に含んだ。
「ん、んー。レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ」
そして、舌で転がし遊び始めた。息継ぎも無しに行われる舌遊びにチェリーはどんぐりころころのように勢いよく転がっていた。しかしどんぐりのように転がり落ちる事は無く、巧みに舌先で飛び跳ね、縦横無尽に。舌上で彼はチェリーで味わっていた。
「レロレロレロレロレロレロレロレロレロ……ん?どうかなされましたか、レディ」
「いえ、なんでもないです」
「そうですか。レロレロレロレロレロレロレロレロレロレロレロ」
その後、1時間以上もその客はチェリーだけで居座り続けた
アストルフォのバイトは、向う一週間も続けられた。一週間で済んだのは復活したリンとエミーチカが、ダンジョンでヴァリスを稼ぎ日数を比較的少なくしたのだ。その分無茶した様だったが、三週間も続ける予定を一週間に縮めたのだ。Lv.1の冒険者としては立派なものだと言えよう。
そして感動的対面で抱擁し合ったアストルフォとリンだったが、アストルフォの恰好にショックを受けたリンは蹲り動かなくなった。
「信じて送り出した筈の、アストルフォが……あんな事に」
「何言っているの?」
「さあね。アホは放っておけば?」
石村だと思った?残念、羽生蛇村でした!!
お兄さんが疑問に答えるコーナー
・魅せ筋の褐色お兄さん
身体は剣でできている……
・石田徹雄
別名、フェアリー石田。最終的に羽が生えて飛び始めることからそう呼ばれた。
・マルタ姉
声がリューさんと似ている。似ているだけだ。気のせいだ。おなj(チュピーン
村では姐さんと呼ばれているよ。素手でモンスターを蹴散らした際に、グラップラーマルタとも呼ばれているよ。別名素手の方が強いキャスター。
・信じて送り出した筈の○○が……
みさくらなんこつを知れ。リンがこうなったのはアストルフォの女装に忌避感を持っているからだよ。HSDDのイッセーがギャスくんに抱いている感情と似たような感じです。
・40秒で支度しな!
愚図は置いてくよ!
・チェリーの人
なぁんですかぁ?承太郎せんぱぁい
NGシーン
「――え、アスちゃんって男の子なんですか!?」
ミアとアストルフォの真横から声が入る。視界を動かすとそこに居たのは豊饒亭で働いている従業員の一人。アストルフォは頭の中、記憶領域の片隅に置いてある記憶を検索し名前を思い出す。
あす「誰だっけ」
「誰かと聞かれれば」
「答えてあげるが世の情け!」
「酒場の無銭飲食を防ぐ為」
「仕事の給料を護る為」
「金と仕事の作り笑いを貫く」
「ラブリーチャーミーな苦笑い」
シル「シル・フローヴァ!」
リュー「リュー・リオン!」
シル「フロントを駆ける、料理下手な二人には!」
リュー「ブラックマター、黒い何かが錬金できるぜ!」
アーニャ「にゃーんてにゃあ!」
クロエ「そーなんす!」
NGでよかった……。