僕はこの世界で英雄になりたいんだ!   作:サンマ味のヨーグルト

7 / 7
作業用BGMとして「真・うたわれるもののテーマ」と「gravitation」を聴きながら大声で歌って執筆していたんですが、結構部屋から音が漏れてたみたいです。恥ずかしイイイイイ!!

最近古いなのは二次小説を流し読みしていたんですが、なんか今のハーレムオリ主は受け入れられるんですけど、一昔のオリ主は生理的に受け入れられない。
例えば
オリ主「何言っているんだ君達は美人じゃないか。自信を持て」ニコォ
なのは「○○くん///」ポッ
アリサ「○○///」ポッ
ニコってなんだよ。満面の笑みかこの野郎

とか
オリ主「今日は騒がしいな。何かあるのか?」
友人A「バレンタインに決まっているじゃないか!」
オリ主「ああ、そうだったな。まあチョコなんてどうでもいいさ」
A「なんだと~~~!」
テメェは痴呆は何かか?テレビ見ろや。朝やたらバレンタイン連呼しているぞ。お前、創立記念日に学校が休みでもそれを続けるのか。
そういうノリなのはわかるがお前、世間についていけねえぞ。

と、友人Nに言ったんですけど。


「あ、話終わった?」


と言われ昼休みが終わりました。
結論。無視されると結構キツイ



ダンジョン〈弐〉

 

「ふ~ん。それじゃあお前はカルデアってとこからオラリオまで来たのかぁ。遠いとこからよく来たなぁ」

 

「うん。六日も掛かったけどそこから歩いて来たんだ。冒険者になりたかったからね」

 

「ソレダケ冒険者ハ、人気ダッタンダナ」

 

「六日、キミ歩イテ来タンカ」

 

「まあね~。村でのんびりしているのも悪くなかったけど、英雄譚見ちゃったかね。こう、ワクワクしたんだ。それから村を飛び出していたね」

 

「お! 気持ちはわかるぜっ! 俺も迷宮神聖譚見て冒険者に憧れたんだからな!」

 

「オレモオレモ」

 

「儂モ」

 

「ああやっぱり皆見てたんだね、みんなはどれが好きだった?僕はマハーバーラタに出てくるカルナかな」

 

「俺はベーオーウルフかな」

 

「オレハ…………オウ、ダンジョン・リザード。皆サン、バトルオープンデス!」

 

「阿保カ、トクガワ! ソレ以外ニモオルワ!」

 

「おお、ダンジョン・リザードか。初めて見るなアストルフォよ」

 

「まんまヤモリだね。リン。うっかり死なないでよ」

 

「誰がうっかりで死ぬか!」

 

 金属音を鳴らし、腰に下げたサーベルを引き抜く音が右方より響く。リン・ウッカリ―ソンの主力武器。サーベルである。祖父から教わったらしい剣技はLV.1の中でも中位に位置するだろうサーベル捌きは、背後から迫るコボルトの首根っこを流れるように両断する。

 血が飛び散り顔に綺麗に直撃しているのはスルーしてあげるのがマナーだろう。

 

 半笑いのアストルフォはクロスケを構え周囲を警戒する。今までなら飛び出して敵を殲滅するのが常套手段になっていたが今回は人数が多い為、警戒に専念している。

 

 先ほどネイティブな喋り方でモンスターの接近に気付いた男、トクガワ・ショーグンは大の男の腕くらいある鈍器、メイスを振りかぶりダンジョン・リザードの接近を阻止する。

 

 先ほど、ネイティブな関西弁を使った男、トヨトミ・ショーグンは真横に出現したゴブリンの頭部をロングソードで突き刺し、息の根を止めた。

 

「ダンジョン・リザードって、ホントに足に吸盤が存在するんだねっ、本当にめんどくさいね」

 

「もがもが」

 

 トクガワが接近を阻止したが、ダンジョン・リザードは自慢の四肢に存在している吸盤を使い、トクガワのメイスによる粉砕を回避している。アストルフォはダンジョン・リザードの逞しく進化した生態に苦言するも、リンに付着した血痕を拭う事を忘れない。

 

「もが…やっぱ、Lv.2ってだけ違うのは違うな」

 

「………そだね」

 

 アストルフォとリンは、ダンジョン・リザードをあっさり粉砕しているトクガワを見て感想を漏らす。

 

 

 

 この二人と出会ったのは、少し前に遡る。

 

 

 バイト期間を終えたアストルフォが悠々とダンジョンに向かう日常を繰り返していた頃だ。

 

 バイト。リンの酒場の女主人、ミアに公開告白した事件から2ヶ月は経っていた。

 2ヶ月経ったと言ってもやっている事は迷宮に潜り、陽が沈む前に帰り、休日はアイズと共にジャガっしーのショーを見に行ったり、実に平和だった。

 

 そんなある日。アストルフォはリンやエミーチカを連れ、共に迷宮の入り口が存在するバベルに向かおうとしていた。しかし

 

 

「アストルフォ!今日こそはズボンを穿いてもらうぞ!」

 

「断る!!これは僕の趣味だ!」

 

「せや!確かにズボンも似合うやろうけど、アスたんはスカートをご所望なんや!ひっこめリン!」

 

「テメェロキ!いくらアストルフォが女みたいな顔しているからって、ずっと女装していいってわけじゃねえだろう!」

 

「いいじゃないかっ!僕の勝手だろう!」

 

「お前がよくても周りが困惑するんだよ!俺の為だと思って穿いてくれ!」

 

 アストルフォの恰好を眼の毒だと苦言したリンがアストルフォに対しズボンを穿かせようとしたのだ。男女の風紀に地味に煩いリンは常々アストルフォに男装……ちゃんとした服装をするように忠告していた。

 しかしアストルフォは拒否。趣味や服装は人の勝手。それをとやかく言う間柄でもない。この時に関してだけアストルフォはロキを味方内に引入れていた。いや、勝手に入っていたと言った方が正しい。

 パーティーメンバーだったエミーチカは既に、大通りに新しく開店したというクレープ屋に行っている為、この場には居ない。

 

 

 

「【筋肉(マッスル)】のスパルタクスさんだってあんな恰好しているじゃないかっ!」

 

 

 

「アレは例外だっ!普通の服装している方が違和感あるし、な!」

 

「ああんっ!だからって引っ張らないでよ!」

 

 別世界ではスーツを着用していたのだが、この世界線ではスーツは存在せずスパPも芸能界のアッセイもここでは見れないだろう。

 

 埒が明かないと判断したリンは、アストルフォのミニスカートを強引に引っ張った。アストルフォは顔を赤くし、スカートを抑えている。

 見た目はまんま婦女暴行のそれであるが、当人は気にしている余裕は無い。

 

「ハア……ハア、ハア……ハア…」

 

 ズボン穿かない派であるアストルフォの味方だったロキは、この光景を目に焼き付けている為頭を無にしている。鼻血が出ているのも無心である為気づいてはいない。

 

「これが、悟り。か」

 

「やめてよぉ!リンの変態!スケベ!強姦魔!」

 

「うるへえ!男だったら男の恰好しねえか人聞きの悪い!!」

 

 両者、共にボルテージが上がり、言葉での説得が通じなくなっている。リンは歯を食い縛り、スカートの中に手を入れ、内側から引っ張り上げる。リンとアストルフォの身長差は12㎝もあるので、上に引き上げる方が、アストルフォのスカートを手に入れる事が、難易度的に容易い。

 

 ―――ビリィッ

 

 そして、アストルフォのスカートから布が破けるような音が聴こえ始めた。スカートにも裂け目が見え始める。ミニスカートなのだが下着、絶対領域はここでも作用しているのか、湯気や謎の反射光では無く、影で見えなくなっていた。

 

「ああ!これ結構気に入ってたんだよ?!」

 

「へへへ。このまま破られたくないなら、さっさと脱ぐんだなァ!!」

 

 完全に悪役である。

 くっ殺系では無く、お薬を飲んで暴走系。

 

 スカートが破れる事を恐れたアストルフォは咄嗟にリンの手を解き、身体を地面に倒れ込んだ。

 

「乱暴する気でしょ!ウ=ス異本みたいに!」

 

「ハアハア、美少女が理性を失った幼馴染に、野獣の如く襲われ、ハアハア…」

 

 

「テメェらいい加減その口縫い合わせるぞ!」

 

 

 

 

 あ、ああ、仕方ないわね!わ、私がしてあげる、から、大人しくしてなさい。いい!仕方無くなんだからね!

 

 す、すまない……!はあはあ、お、抑えきれないんだ……はあ、はあ、すまない…!

 

 も、もう……は、はやくしてよねっ

 

 おっおっおっおっおっおっおっおっ!

 

 ああ、すごい!すごい!

 

 とばかりに、かのウ=ス異本のような展開に似た空間がオラリオのダイダロス通りに存在する小道に展開されていた。

 さながら固有結界、いや性欲界紳士道と言えば正確なのか。リンの表情筋は須らく大真面目なのだが、他人から見れば美少女を押し倒そうとしている変質者。スカートまで引っ張っているのだから現行犯である。

 ここに倒れているアストルフォが男だと知らぬ第三者が居れば、即刻牢獄へ連れて行かれるだろうこの光景。誰も止める者は

 

 

 

「待テヤ兄チャン」

 

 居た。

 

 

 その男は顎に無性髭を蓄え、やせ細った餓狼のような顔立ちをしていた。体つきはまるで冒険者とは思えず、腰に挿した細い、レイピアよりも細い、特徴的な剣を携えて非常にリラックスした体勢で此方を見ていた。

 まるで針に吊られているような鋭い眼光は、リンのみを覗き込んでいる。リンは尻ごみしたのか、一歩後退りしたが何も言わない。ここで引けば負けると自己暗示しているのか、それとも。

 

「兄チャン。女ノ子虐メチャアアカンッテ、母チャンニ言ワレンカッタカ?」

 

 その男はゆっくりと歩いているが、そのプレッシャーは身の丈以上に膨らんでいた。リンは額に汗を流しているも、目の前に集中して気づかない。

 

「大丈夫カ嬢チャン」

 

「え?……うん。ちょっとスカートが破けちゃったけど…………」

 

 アストルフォは男に手を差し出された。

 4尺以上離れていた距離を一瞬の内に詰め寄っている姿を、二人は視認できなかった。

 困惑しながらも、アストルフォはその手を握り、破れかけたスカートに着いた砂埃を叩きながら立ち上がった。

 

 アストルフォを掴んでいる最中も、その男はリンを見ていて、リンも目を逸らさずに睨んでいた。

 

 ごくり……

 

 威圧感に包まれているのか、ひどく静寂した空間に唾を飲み込む音が聴こえる。

 それはリンの発した音なのか、アストルフォが発したのか、アストルフォのスカートを覗き込んでいるロキが生唾を飲み込んだ音なのか……。

 

「ぐぼあ!」

 

 そして当然の如くロキはアストルフォに踵で顔を潰された。

 

 

「……アンタが何者かは知らない。だけど、知っておいてほしいことがある」

 

 それがきっかけとなったのか、リンは重々しく口を開く。それは、世界の真実。見て見ぬふりはできず、直視しなければ傷が付くとも言われている。後で知っては遅いのだ。リンが伝えたいのは、それを、傷をついてほしくないという親切心。いや、忠告である。それを遅くに知った者どもは皆、絶望の淵に叩きこまれ、皆悟りを開いたのだ。常人はそれを悟りと呼ぶのか、よくわからない何かではないのか。と疑うであろうが、彼等は皆、悟りと呼んだ。

 しかし常人、リンは拒絶した。何が悟りだ。何が新境地だ。それは唯の逃避、唯の好きモノではないか。唾棄すべし、ここは現実であろうに。

 

 故に伝えるのだ

 

 

 

 

「―――――――――そいつ、男ですよ」

 

 これぞ、悟りの境地。

 

 アストルフォを可憐な少女として想った者は、総て。総て彼の性別を少年と知り、絶望し、泣き寝入りし、吐血し、死を想う。

 

 しかし、その先の境地に達した英雄。死の境界を乗り越えたエインフェリア。死してもなお蘇る英雄達。不死鳥の復活の如く華麗に方向転換したエインフェリア達は

 

 新たな性別―――【アストルフォ】を拓いた。男でも無く、女でも無く、アストルフォ。性別・秀吉でもなく、アストルフォとしてこの世を開闢し、性別を乖離させ現界した男女乖離す開闢の性別(エヌマ・エリシュ)

 

 

 とどのつまり、

 

 

「男でもよくね?」

 

 新境地。性欲界紳士道。否、衆道至高天を流出した。

 

 この境地をリンは忌避する。

 何がショタだ。何が男の娘だ。非生産的な性癖は何も認められない。男は女。女は男を見るべし。

 

 だが誤解してはいけない。リンはアストルフォが嫌いなわけでは無い。

 寧ろ友としてなら好敵手として意識している程だ。気が合わないわけでは無いし、性格はさっぱりしている為気に入っている。

 

 ただホモが嫌いなだけだ。

 

 リンの故郷に残した家族、かつてアベという兄がリンに多大な爪痕を残した為にリンはホモを嫌う。殺したいとも言う。

 ならばホモ量産機のアストルフォを、友として。掘られる前に、矯正せねば。リンは顔を引き締め、決意した。俺のようにならないように。友を、男として。女装を取り除かねば。

 

 幸いロキ・ファミリアに残存するホモ達は、フィン団長を筆頭に、ロキが扇動しホモを蹴散らした。蜘蛛の子を散らすようにホモが殲滅されえゆく光景は、思わずリンの股座がいきり立ってしまう程快感を憶えた。

 その際浮かべていたリンの笑顔は、かの【筋肉】のスパルタクスがモンスターに致命傷を与えられた際に浮かべる笑顔と同一だったという。

 

 今のホモは水面下での行動を余儀なくされているが、ホモ量産機のアストルフォは身軽。フットワークが軽く、顔が広い。

 

 つまり外にもホモが量産されるのだ。ロキ・ファミリアがホモの病巣となるわけでは無い。しかしホモは見敵必殺。内だけで自己満足しているわけにはいかない。

 

 ならば自分が付いて行き、ズボンを穿かせよう。少女と間違えられたならば、少年と教えてあげよう。これで誰も不幸になることはない。

 

 

 

 

 故にリンは目の前の男に尻込みせず、立ち向かったのだ。

 

 

 

 

 ◇◇◇

 

「HAHAHA!ナンヤ、アストルフォハ男ナンカイ!コラ儂、トヨトミデモ見抜ケンカッタワ!」

 

「やっと目覚めない常識人が出て来てくれた、か……疲れたぜ、マジで」

 

 リンが男、トヨトミ・ショーグンに対し忠告、アストルフォを男だと教え込み10分。何故か打ち解けた二人は並んでオラリオを歩いていた。勿論アストルフォも後ろに引っ付いている。

 リンは背を伸ばして骨をバキバキ鳴らしている。

 

「スマンノウ!詫ビニ何カシタルワ!高イ物以外ナラ奢ッテモエエデ」

 

 トヨトミはリンの背中をバシバシ叩いている。あまり力を入れているようには見えないが、リンの額には脂汗が浮かんでいることから非常に痛いことがわかる。アストルフォはそれを見てプッと笑みを溢した後、名案とばかりに目を輝かせ身を乗り出した。

 

「ぷぷぷっ。じゃあさじゃあさ!トヨトミのレベル教えてよ!それとよかったら僕達に迷宮の知識やモンスターの情報を教えて教えて!」

 

「オホホ、エエヤロエエヤロ。先輩ガ教エタンデ!迷宮の極意ッテヤツヲ!」

 

 この先に兄弟が居るので、先にそこに向かう。と快諾したトヨトミと共にリンとアストルフォはダイダロス通りを抜け、大通りに面する小さな店に入った。どうやらポーションなどを売っている製薬ファミリアのようだった。ポーションをぼったくられそうになっていた小太りの男、トクガワ・ショーグン。トヨトミとは骨と肉以上に体系が違っていた。トヨトミが浜田ならトクガワは松本。性格ははっきりと分かれていて、トクガワは温厚だった。

 

「トクガワ・ショーグンデス。気軽ニショーちゃんと呼ンデクダサーイ」

 

「トクガワさん?」

 

「ノゥ!ショーちゃん!」

 

「ショーちゃん」

 

「オー。イエス!」

 

 トクガワ・ショーグンと合流した後に、迷宮に向かいながら二人は新人二人にレベルを明らかにし始める。

 ファミリーネームを見た通り、二人は兄弟であるらしく、トクガワが弟、トヨトミが兄のようだ。祖国に残して来た兄も居るらしいが、その兄は病弱でオラリオに来訪できずにいるらしい。

 

「アア、忘レテタ忘レテタ。儂、はLv.2ヤカラ。一応トクガワモ同時ニLv.2にナッテルデ」

 

「え、マジで?いや、まああの威圧感は確かにレベルが上だと思ったが二人とも兄弟一緒でか」

 

 二人は揃ってレベルアップしているようで、二人は同時に二つ名を付けられたそうだ。

 

「そういや、二人の二つ名って何なんだ?気になるよな」

 

「確かに。リンだったら【変質者(ストーカー)】とか付けられそうだけど」

 

「テメェいい加減殴るぞ………。あのー、お二人の二つ名って何ですか?」

 

 迷宮に向かう前、質問を二人に投げかけた。二つ名の事だ。

 

 Lvが上がった暁に、神会で付けられる二つ名は、ロキ・ファミリア団長の勇者ことフィンのように、見栄えするような二つ名もあるが、外れもある。

 神と下界の住人には決定的な美的センスの差があるので、どのような名前を付けられたとしても、狂喜乱舞し、褒めたたえるが。神は大笑いしている。

 だがそれを知らない下界は喜々として二つ名を周りに触れ回り、自己の証明のように自身の名の前に付ける。

 アストルフォとリンの思考も、下界としての常識故に訊いたのだ。

 

 そしてトヨトミ・ショーグンと、トクガワ・ショーグンの二つ名は……。

 

 

「【配管工兄弟(ショーグン・ブラザーズ)】?」

 

 

 

 ◇◇◇

 

 そして冒頭に戻る。

 

「さっさと、レベルアップしてえモンだなっ!」

 

「そうだ、ね!強くなって、もっともっと深層に向かいたい!」

 

 リンとアストルフォはアリのようなモンスター。キラーアントの群れを相手にしている。キラーアントの外皮は堅く、鎧を連想させ、上層に出現するモンスターの中で、類を見ない程の攻撃力を誇ることから、【新米殺し】と呼ばれている。

 

「ラァ! さっさと眠ってお還り!」

 

 リンとの会話をそこそこに、クロスケを逆に持ち、石突に相当する部位をキラーアントに叩きつける。鈍い音と共に吐き出る液体は、生臭く醜悪な匂いを発する。

 

「やばっ。フェロモン出ちゃった」

 

「おいおい!嘘だろ?!」

 

『kyuiiiiiiiii!!!』

 

 キラーアントが新米殺しと言われている所以。それはキラーアントが集団で戦う事が最も多いからであり、それは仲間を呼ぶフェロモンを発して強制的に集団戦に持ち込み、数の暴力で新米を殺すことである。油断と慢心を殺す、良い気付け薬になるだろうが、Lv.1には些か量は多かった。

 

「おいおい……20体以上いるぜ」

 

 カサカサ、カサカサ、とまるでGが蠢くような音を発し、四肢を戦慄かせキラーアントは集合する。

 冒険者2ヶ月程度でも、二人にはキラーアントの数体程度何てことないが、流石に20体は勘弁願いたい。

 トクガワとトヨトミに助けを求めるという手段もあるが、それは最終手段。アストルフォとリンが、経験値を蓄積する名目として連れてきた保険でもあるのだ。故に、二人は助けを求めない。トクガワとトヨトミが、戦いに夢中になり過ぎて、下の階層に行ってしまった事実を知っても泣き言は言えないのだ。

 

「【触れたら転倒!(トラップ・オブ・アルガリア)】転んで死んじゃえ!」

 

【触れたら転倒!】。アストルフォの全身に若草のオーラが纏いつく。超野菜人のようなオーラではなく、淡く、儚い光がぽうぽうと全身に循環している形だ。水に油が混じらない形を想像しておくと解りやすい。

 クロスケを地面すれすれに薙ぎキラーアントの顎に叩きつける。ごちん。と鈍い音と共に転倒したキラーアントは、四肢をこれでもか。という程わたつかせている。腹に相当する部分を踏み潰しトドメを刺した後、次の標的に狙いを定め武器を縦に振るうが、違和感に気付く。

 

「あれ? ………………消えちゃった」

 

 全身を覆う若草の鎧が消失した。音も無く消え去ったので発見に遅れたが、確かに消失している。

 

 そう、【触れたら転倒!】には決定的な欠点がある。

 触れたら転倒する。は事実として、触れた後はどうなるのか。

 アストルフォが外敵に触れた後、若草の悪戯は相手に纏いつき、転倒させる。武○錬金のシルバースキンリバースを似たようなモノだろう。魔力が続く限り鎧は出現し、敵の脚を引っ張る。

 しかしだ。その鎧は魔力が続く限り、存在しているのはいいが、その後は? その鎧は一生アストルフォが纏わせた敵に纏いつくのか?

 

 答えは否。敵が消滅、絶命した後は、若草の悪戯は消滅する。

 

 つまり

 

「一体にしか、使えないって事だ、ね!」

 

『mikiiiiiiity!!?』

 

 キラーアントの死骸を剣身に乗せ、ボーリングの如くキラーアントの残存している群れに投げつけ、結論を出す。つまり慢心はノゥ。という事だ。これからも変わりはしない。とりあえずまだまだ湧いて出てくるキラーアント、仲間意識はあるようだ。仲間が自身らに突っ込んできた事実に困惑し、意識がそちらへ向いている。その隙を好機と判断し、突撃する。

 

「うらああああ!」

 

 一匹目。横腹から切っ先を突っ込み、串刺しにする。醜い断末魔は耳に痛い。

 

「うらうらうら!」

 

 二匹目。死骸が突き刺さったまま、右に薙ぐ。その際一匹目がぽーん。とシュールな音を立てて飛んで行ったが、気にしている余裕は無い。二匹目は身の半分しか両断できなかったが、叩き切るクロスケの勢いで吹き飛び、壁に身を衝突させ小さな悲鳴を上げながら絶命した。三匹目は石突に丁度当たっていたので、これもカウントする。

 

「うアッ………ダリャ!」

 

 四匹目。ぎらつく顎での攻撃を、片手に受ける。激痛が脳を刺激し、警鐘を鳴らす。力のステイタスは貯まっていたとしても、耐久のステイタスはあまり貯まっていないらしい。大声を出すことで、自己を鼓舞する。付近の壁に片手を叩きつけ、痛みの麻痺とキラーアントのダメージを狙う。アントもしてやられるか。とばかりに噛み付き、腕を食いちぎろうと襲い来る。我慢比べのように、壁に何度も、何度も叩きつける。更なる痛みに脳が麻痺し、痛みを感じなくなった。これ幸いと落ちかけているキラーアントを壁に押し付ける。ここで魔法を使うという選択肢もあったが、アストルフォの魔力値はI。つまりまだ50にも達しているかもわからない。故に精神疲労を回避する為に、魔力の温存をしている。

 

 襲われるキラーアントの噛み痕が残るも、キラーアントは核、魔石が粉々になった事で絶命する。腕が半分千切れかけているも、ポーションで応急処置をすることで再生させる。熱い痛みと共に再生していく様は見るも絶賛、驚天動地な光景だ。

 

「……。油断、慢心、ダメ絶対」

 

 マヌケにポーションで回復していたことに苦い顔をしつつ辺りを索敵する。既にリンと合わせて10匹以上片付けている筈だが、約10匹も居る筈である。

 

「うおおおお?! テメェ、コラァ! アリさん風情がヒューマン舐めてんじゃねえぞ! 赤井さん呼ぶぞコラァ! 引っ越し社だぞオラぁ!」

 

 片耳にリンの叫び声が聴こえる。第七層の隅で戦っていた為、気づかなかったが、意外と離れて戦っていたらしい。

 赤井さんやらアリさんマークやら何を言っているかわからないが、とにかくピンチなのだろう。アストルフォは急ぎ身を翻し、その場から走り出す。魔石の回収は、その後にする。

 

「うおわっ! おいおい! 新米殺しの本性ってか!」

 

 リンの後ろ姿が見えた。3匹のキラーアントを相手取っている。と言っても、回避に専念してすれ違い様に多少攻撃しているだけではあるが、生きているだけで僥倖である。足元に4体の死骸が転がっていることから、奮闘しているのはわかる。

 

「リn―――ッ! 頭を下げて!」

 

 その場から走り出したアストルフォは、リンを強襲しようと迷宮の天井に張り付いているキラーアントを発見した。大声を挙げてリンに勧告をしながら、魔法を詠唱する。対象は

 

「拳大の石! ヤアァ!!」

 

 一瞬身を包んだ若草の悪戯は、地面に転がっていた小石に移った。どうやら無機物には転倒の対象になりえないようだ。ここで思案していても仕方がないので、勢いに任せ、若草の石を投擲する。水切りを11回しかできなかったアストルフォだったが、この場は河では無く、室内。ならば11回も連続させる絶妙なコントロールは、リンの頭すれすれ、上に曲がるカーブを描いてキラーアントの足に命中する。

 

『pigyaaaaaaa!!!』

 

 脚を潰され、転倒しながら天井から身投げの如く放り出されたアント。その位置エネルギーから出る運動エネルギーは強く、背から堅い、迷宮の地面に衝突する。アリは東京タワーから落ちても死なないと言われているが、このアリは別だったようで、苦悶の鳴き声を挙げている。

 その光景を別段可哀想など思わない冒険者は、トドメを刺す。苦痛にのた打ち回っていたが、やがて絶命した。

 

「うおい! 危ないじゃねえの?! お兄さんちょっとビビったじゃねえか!!」

 

「生きているだけでいいじゃないのっ!」

 

 飛びかかってくるキラーアントを二人でダブルラリアットのように迎撃し、二人は背中を合わせる。

 

「………帰ったら、寝るに限るな」

 

「賛成」

 

 その言葉を契機に、二人の場所に7匹ものキラーアントが襲い掛かった。

 

 

 

 約1時間後、調子に乗り過ぎたトクガワとトヨトミが下層から二人の様子を見に来た際、目にしたのは、キラーアントの死骸が約31匹も無残に転がっていた光景だった。

その隅に、転がって眠っていた二人は、誇らしげに笑っていたという……。

 

 




・マハーバーラタ
全ての元凶はインドラ

・ウ=ス異本
Q.やめてっ、乱暴する気でしょ!薄い本みたいに!
A.いいだろ、ロックマンだぜ?

・衆道至高天
男でもいいから全力で愛したいという渇望が流出位階に達した事で発言した異能。
総軍を率いアストルフォに迫る。

・性別・秀吉
男でも無く、女でも無く、新たな性別として認知された性別。原作では帰りがけに寄った銭湯にも秀吉風呂が配置されている。

・配管工兄弟
兄が細く、弟が太いというあべこべ

・シルバースキンリバース
流星ブラボー脚!

・アリさん
どうしてそんなに大きくなったんですかぁ!?


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