ジョニィは聖の頼みで、白玉楼へ向かうことにした。
そしてジャイロは平和ボケしていた。
この世界に来て、ジョニィなどの使う『スタンド』や、ジャイロの使う『回転の技術』は強化されている。
パワーとか、スピードとかそう言ったことだけではなく、その能力もだ。
例えば、この前にあったウェザーによる異常気象。一週間近くに及ぶ豪雨は、現実世界のウェザーでは難しいだろう。
他にもプッチのスタンド『ホワイトスネイク』や吉良のスタンド『キラークイーン』といった進化した、または使用者が同じスタンド能力を取り込み、合体し、一つの個体になっているということもある。
つまりは、この幻想郷ではスタンドの力や技術は、さらに人間を越えた物となるのだ。
だが、例外もある。生前のダメージがその部分に負荷としてかかり、傷や病として出ることもある。
例としてプッチやリゾットなどがあげられる。
幻想郷がどちらを選ぶかは生きている間に、その人が起こしたことによって決まるのか、決まらないのか、全てが謎に包まれている。
☆
俺は回転の進化を実感していた。何となくだが、前よりも進化している。
本来、こういった野蛮なことには使われないものだが、このレースによって、その特性は変わってしまった。
本来の使い方を忘れているのではないか?
「ジャイロさん!またサボって・・・」
「オタクは・・・どうして俺を足止めするんだ?」
「え?」
「俺はレースに優勝し、マルクを助ける。その目標を掲げ、レースへと参加した。それだけは変わらねぇよ」
早苗は俺の言葉にそれまでの活気溢れた声を沈めてしまう。そして静かに深呼吸をすると・・・
バシッ!
俺の右頬をビンタした。
「誰も足止めなんかしてません!あなたが、こんなところでのほほんとしているだけです!」
震えた声でそう言った。
「こんなところでこんなことをやってる暇なんて俺にはないんだ!・・・それくらい言ってくださいよ」
そして涙を流し、泣き始めてしまった。
「私はジャイロさんのことを知ってます!あなたがやってきたこと全て。そしてジャイロさんが好きでした。でもそんな弱々しく、女の子の声に心を揺らされてしまうジャイロさんは嫌いです!もう一度、言ってください! 俺の馬(ヴァルキリー)に女は乗せねぇと決めているって!」
早苗はそう言うと、境内へ走っていった。
「早苗・・・クソッ!だから、女ってのは禍を運んでくるんだ」
臼の中で回っていた鉄球は回転を止め、臼の中心で静かに休んでいた。
勢いのまま、守矢神社から出てきてしまった俺は山の中で迷っていた。
どこぞのウサギもいない、魔女もいない、巫女もいない・・・守矢神社の方角はわかるが。
いや、早苗の声もあって俺は遺体を探すために出てきたんだ。シーザーにはすまないが、俺は守矢神社に帰るわけにはいかない!
「ミツケタゾ」
「!」
意気込んだとき、辺りから何者かの声が聞こえてきた。一方向じゃない、全方向からだ。
「囲まれてるみたいだな・・・」
どこから来るのか、鉄球をかまえると、急に足が痒くなってきた。
まるでたくさんの蚊にも刺されたかのような、そんな痒さが足を走った。
「何だこれは!」
恐る恐る足を見ると、拳くらいの大きさをした金色の何かが足に角を刺していた。
「な、何だ!こいつら!」
一匹、二匹とかそんな数じゃない!軽く数えただけでも十匹は確実にいる!
俺は鉄球を回転させ、足についたそいつらを落とそうとするが、視界がぼんやりとしてきたため、そのままその場に倒れてしまう。
酒に酔ったような感覚・・・こいつら、何かを注入していると思ったら、酒を俺の足に注入していたのか。
「シシシ、気づいたところで、アンタの負けは決まってるんだど」
木陰からドリアン頭の丸い男が現れた。
そいつの近くには、俺の足にいた生き物と同じ生き物が集まっていた。
「こいつ・・・」
「シシシ。苦しんでるど・・・ん?その手に持った球は何だど?」
彼のスタンドであるそいつらを俺の手へと向かわせると、俺の手の中から鉄球を持ち出そうとする。
「今だ・・・」
ヤツのスタンドが触れた瞬間に、回転を加え、ヤツのスタンドを粉々にした。
だが、ヤツに効果はない。
「なぜ、本体にダメージが入らない」
「おらのハーヴェストは一匹程度、死んでも痛くないんだど。おらのハーヴェストは強いんだど!」
「何・・・だと・・・」
俺は立っていることすら厳しい体を無理矢理起こすと、鉄球を地面に置いた。もちろん、回転させて。
「何をしてるんだど?」
「ヴァルキリー!」
「?・・・な、何を言ってるど!」
「まぁ、そう焦んなって」
回転によってできた波は愛馬のところまで届き、こちらを見ると、俺の声を聞いた愛馬はすぐにこちらへ走ってきた。
「ななななな!こっちに来たど!は、は、」
愛馬はそいつを後ろ足で蹴り、俺の手前まで転がした。
「よぉ、太いの。オタクよォ、こんな近くまで来てよォ~~。そんな酒を飲みたいのかァ~~?」
あのとき、体の水分を出したみたいに、体からアルコール分が入った水を出すと、その太いのに飲ませた。
「ほ~ら。たらふく飲みな~」
「や、や、や、やめるんだどー!」
俺は守矢神社に帰ってきてしまった。
「あ、おかえり。大丈夫で・・・うわ、酒臭ッ!」
やはり、体の中にはまだ酒が残っているみたいだ。あの量のスタンドに注入されたんだ、仕方ない。
あの男は酔っぱらって、千鳥足になりながらも、どこかへ帰っていったため、俺も帰ることにしたのを思い出した。
「途中で敵と遭遇してよ」
まずそんなことを言っても、早苗にはどこかの酒場で酒を飲んで帰ってきたとしか思わないだろう。
「どこに行っていたんだ!ジャイロ!」
シーザーが箒を握り、境内の奥から現れた。
「お前がいなくなったことで、俺がお前の分の仕事をやっていたんだ!」
「あれ?でも、『新しい技が完成した!』とか言ってた波紋使いは誰でしたっけ?無駄に石鹸を使って、泡立てては外にシャボン玉飛ばしてた・・・」
「わかった!それ以上言わないでくれ!」
「まぁ、とりあえず夕飯の準備しますから、ジャイロさんはその酒臭い体を何とかしてきてください!」
と言い、早苗は俺にタオルを渡し、風呂場の方へ案内した。
「それにしても本当に臭いですよ。そんなになるまで飲んでいたんですか?あれから数時間経ってますし」
「・・・もう、怒ってないのか?」
「どうしてそんなことを?」
「・・・いや、何でもない」
「もう怒ってませんよ。決めるのはジャイロさん、あなた自身ですから、今すぐここから出ていっても、私は止めませんし、薦めることもしません。自身の道を歩んでください」
「・・・わかったよ。だが、一つだけ頼みがある」
「?・・・何ですか?」
邪悪なる遺体のある場所を知っていたら、何でもいいから教えてくれないか?
俺は次の日の朝、守矢神社から出ていった。
昨夜、早苗から貰った地図を手にすると、階段を下り、山の中へ入っていった。
そして、今は人里で休憩していた。
雨が止み、水位の上がった川はいつもよりも激しく流れていた。
「ちょっと隣いいですか?」
そこに赤い髪をした女の子がやってきて、俺の横に座った。
マントのようなものを羽織ったその子は、静かにこんなことを言っていた。
「ここ最近、この辺は色々と物騒でね。この前もピンク色に黒の斑点模様をした髪の男が近くの店を襲撃してね。確か名前は・・・何だったっけな」
「・・・すごい髪色をしたやつだな」
「そいつは確か守矢神社の方へ逃げていって、行き先もわかってるのに、この里の警備の人間だけでなく、異変解決のプロの霊夢さんでさえも、ヤツを捕まえるのに手こずってるらしいんだよね」
「あの霊夢がか?」
「うん。・・・まぁ、あなたがこれを聞いてどう思うかは知らないけど」
女は言うだけ言って、その場から立ち去った。
俺は詳しいことを聞きたくて彼女を追ったが、彼女が曲がった先の道で、完全に姿を見失ってしまった。
あんなにも、人里に隠れることは不可能な格好をしているんだ、すぐに見つかると思っていたが、どこを探しても、彼女は見つからない。
「確か、その犯人の男は守矢神社に行くとか言ってたな・・・」
守矢神社という名を聞いたとき、俺のなかに早苗の顔が浮かんできた。
「大変だ!早苗が危ない!」
俺はすぐに馬に乗ると、守矢神社へ走り始めた。
次の投稿は二週間後になるかもしれません。
理由は、この前消した『E-vil』の分を、次の作品で取り戻さなければならないことや、中間テストが始まるということですね。
できるだけ、空いた時間を使い、早めに投稿できるようにします。
今後も幻想回転録や、他の作品をよろしくお願いします。