テレンスが無差別殺人を計画した。
そして仗助が勇儀に殴られた。
「仗助!大丈夫か!」
俺は仗助を川から引っ張ってくると、息をしているか確かめた。とりあえず、心臓は動いているし、息をしているから大丈夫だろう。
それにしても、あの女は強かった。
通り過ぎたときですら、恐怖を感じたからな。
「おい、仗助。しっかりしろ!」
「ん・・・はっ!ジャイロさん!・・・痛ッ!」
「お前、骨は大丈夫なのか?まぁ、骨が折れていても、刺さっていても、お前の能力で治せるだろ」
「それが無理っス。俺のスタンドじゃあ自分のケガは治せないッスから」
仗助は脇腹を押さえながら、岸へと上がり、近くの長椅子に寝転がった。
腹から血が流れている。どうやら、あの攻撃によって骨が折れているようだ。
「大丈夫か!」
「心配ご無用ッスよ。これくらい慣れてますから。以前、あれくらいのパンチをくらって、ブっ飛ばされたり、爆発をくらったりしましたから」
仗助は少し横になると、すぐに復活したかのように立ち上がった。
俺は仗助の隙を見て、仗助の背中に鉄球を当てた。
「な、なんスか!」
「回転技術をナメるなよォ。麻酔としても扱われるこの回転。痛みを和らげるくらい簡単だ」
「た、確かに・・・痛みが退いた気がするような、しないような」
最初に言った通り、この回転は麻酔と同じだ。痛みを和らげるというよりは、痛覚を麻痺させるというものだ。
今、仗助は少しずつダメージを受け始めている。骨が折れているのはわかっている。
あとはこの傷を広げないために、無茶をさせないことが重要だ。
「ジャイロさん!あれを見てください!」
仗助はそこから空に現れた矢印の方向へ走っていく。いきなり走り出したため、俺は鉄球を下に落としてしまう。
「おい!あまり無茶をするな!」
確かに仗助の走っていく方向に、赤い光が柱のようになっているのが見えたが・・・本当にその場所に邪悪なる遺体があるのか、俺は少し疑っていた。
その光の下には小さな地蔵があった。
そして供えを置くための場所に箱が置かれていた。
大きさ的には人の腕が一本入るくらい。
まさかな・・・と、思いながら俺はその箱を開けた。
「これが・・・遺体ですか?」
そこには、気持ち悪いオーラを放つ右腕が入っていた。手の近くに何か紙が入っている。
「触るな、仗助。この遺体はさとりのところへ持っていく。今、俺たちには関係ない」
「どういうことッスか?」
「危険だということだ。俺は遺体を得るために何度も戦った。時には身体を恐竜にし、時には樹木に変化させられそうにとなった。・・・こいつに関わったら必ず、厄がくる」
「つまり簡単に触れるな・・・ということッスね」
そう言うと、仗助は近くの木を支えにして、崩れ落ちた。
「仗助!・・・やっぱり、骨が刺さってんじゃねぇか!今すぐ回転で!」
俺が鉄球を取り出したとき、横にあった箱が音を発てて壊れた。
「中の遺体が、俺の鉄球の回転と共鳴している!」
遺体はズルズルと地面を這いながら俺に近づき、次の瞬間には、俺の手首を掴んでいた。そしてジョニィの時みたく、俺の腕のなかに入っていった。
「な、何だ!この力は!ぐ、ぐぁぁッ!や、やめろ!俺のなかに入ってくるな!」
『キュィィ!?キュィィィィン!』
ジョニィのスタンドのような、形をしたそれが、俺の鉄球の中へ入り込む。色は黒ベースのため、少し不気味だ。
「まさか!俺にスタンドが発現しただとォ!?」
そして鉄球は俺の手を引っ張るように、仗助の脇腹部分へと近づけさせた。
「こ、この感じ・・・まるで、治療でもされている感じだ。刺さるような痛みが消えていく・・・。ジャイロさん、これはいったい?」
「わからない。だが、わかることが一つある」
俺にもスタンドが発現したということだ・・・。
あの聖なる遺体の眼球を埋め込んだときみたいに、スタンドが発現した。この遺体にも、聖なる遺体のようにスタンドを発現させる力があるようだ。
「・・・何か治療と考えると、俺のクレイジー・ダイヤモンドに似てませんか?」
「確かにな。・・・他に能力があるのかもしれない。今、俺はほとんど回転のエネルギーを注がなかった。つまり、このスタンドには進化する可能性がある、そう願いたいぜ!」
『キュィ♪』
「治療・・・こいつは俺の原点なのかもしれないな」
「原点ッスか?」
「あぁ。この俺が最初に習った回転の技術は破壊のためのものじゃあない。治療のための技術だ。だから、こいつは俺の原点ってことよ」
俺はスタンドの頭を撫でると、そいつを右手の平に乗せ、景色を見せた。
この地蔵は地底の人里全てを見守るためにここにあるようだ。そのせいか地蔵の見る先は、ぽっかりと木々が無く、見晴らしがいい。
「よろしくな、オリジン。それがこいつの名前だ」
「オリジン・・・いいッスね。正直、自分の仕事が無くなりそうですがね」
「いや、俺のケガはこの力で治さない。それに力比べで鉄球は勝てない。拳と拳のぶつかりあいに、俺の回転は関与できないぜ」
『キュィィン!』
俺はスタンドをしまうと、人里へと下りる準備をした。
遺体の無くなった空箱を抱えて。
「あ!よかった!どこいってたんですか~!」
人里に帰ってきた瞬間、お燐が走ってきた。どうやら俺たちを探していたらしい。
お燐は汗だくになって、息をきらしている。
「どうした?館が火事にでもなったか?」
「今、さとり様のところに客が来まして、その人がこの地底の人間を無差別に殺すって」
「何!?そいつはどんな格好をしていた!?」
「確か男で・・・顔に車が通ったあとみたいな跡がありました!」
「車?・・・この世界にも車ってのはあるのか?」
「私とか、さとり様は外の世界から来た本をよく読むので。この世界には無いですね」
「とりあえず、その男を探せばいいんっスね。いきましょう、ジャイロさん!」
「お、おう。」
このとき、ジャイロは思った。
その男は地底の人間を無差別に殺すと言っていたみたいだが、俺の経験上、そういったヤツはもうとっくに始めているはずだ。なのに、この人里からは悲鳴や銃声一つ聞こえない。つまり、そいつは殺人のプロか、もしくはスタンド使いだ、・・・と。
「どうしたんスか?」
「仗助、検討はあるのか?」
「そ、それは・・・。でも、ここで動かないと、この里の人間が!」
「仗助、あまりキレるな。・・・冷静に進め。俺はここまでたくさんのスタンド使いと戦ってきた。だからわかる。この感じ、ヤツはまだ動いていない。ヤツはこっちがどう動いてくるのか、今も柱の後ろとか、家の中から観察している」
「何が言いたいんスか!そんは詮索より、今は」
「静かにしろ。・・・もしも、そいつの狙いが無差別殺人じゃあなく、俺たちの殺すことだったらどうする?」
俺はすでに回転を使って、ここらいったいの人の動きを確認していた。
仗助が静かになったことで、回転の波は乱れずに、さらに広い範囲まで確認することができる。
こちらに歩くことなく地面の上を進んでくる男がいる。
そして・・・
「仗助!今、そこの角の家に入った!すぐにヤツのところへ行くぞ!」
「え?わかったんスか?」
「あぁ。奇妙な移動方法をとる男を見つけた。確実ではないが、そいつが犯人だ!」
仗助はそれを聞き、すぐに走り出した。
そして角の家に着くと、玄関の扉を蹴り飛ばした。
「アンタが、無差別殺人を企んでいる男ッスか?」
仗助が中を見たとき、男は椅子に座って窓の外を見ていた。
「Exactly」
男は回転椅子を使い、クルッと回ってこちらを見ると、テーブルの上に置かれた小さな箱を持ち、こちらへやってきた。
「テメェの狙いはなんだ?」
「言う必要はありません」
男は小さな箱を仗助に渡すと、椅子に座る。
「私の名はテレンス・T・ダービー。私はテレビゲームを得意とします。もしも、勝負に勝ったらお教えしましょう」
「いいぜ、その勝負やってやる!」
「それでは戦うゲームを選んでください」
たくさんの箱がしまってある籠の中から仗助は一つ箱を選んだ。