吉良 吉影の進化したスタンド、キラークイーン・レクイエムは爆発するゾンビとして、死者を甦らせる能力を持っていた。
仗助の死体は一度はゾンビになったが、ジャイロのスタンド、オリジンによって元通りの姿になる。
すでに三十分は経っているだろう。
吉良はその能力で爆弾つきのゾンビを何体も動かし、仗助を狙う。そして、仗助はそのゾンビを片っ端から攻撃する。たまにゾンビを踏み台にして、屋根の上やゾンビの波の奥にいる吉良を狙う。
「ドラァッ!」
「仗助。少し腕が鈍ったんじゃないのか?いや、体力に限界がきているのかね?」
余裕げな表情をする吉良の前に立つ、息切れを起こし、汗だくになった仗助。
「まだ・・・終わらねぇぞ!」
クレイジーダイヤモンドの拳は、キラークイーンの手のひらで受け止められてしまう。
「今の君のスタンドの攻撃、ピッチャーフライとるみたいに簡単に受け止められた。悪いが、もう朝も近い。睡眠をとれていない。時間の無駄だ」
「はぁ、はぁ、はぁ・・・グハッ!」
「おいおい、ボロボロじゃあないか。そのスタンドで治せばいいんじゃあないか?・・・そうだった、君のスタンドは自分に使用できないんだったな」
傷を完全に治せてなかったのか、ダメージを受けていないはずなのに、仗助のあらゆる部分から血が流れ始めた。頭、腕、脚・・・着ていた服がジワジワと赤くなっていく。
「・・・この町のほとんどの人間はすでにゾンビのようになっている。もちろん、キラークイーンの能力で爆弾を背負ったゾンビとしてこの町を徘徊しているだろう。ジャイロ、君はこの死に損ないの手当てよりも先に、ゾンビではない人間を助けることを優先した方が身のためじゃあないか?あの屋敷の女の子が死ぬ前に・・・ククク」
「き、吉良ァァァーーーッ!・・・ッ!」
今の叫びで、仗助はさらに傷を広げてしまう。
「おいおい、大丈夫かねぇ?」
「仗助!」
「ジャイロさん!・・・みんなのところに行って下さい。」
「仗助・・・お前・・・」
「最後ぐらい、俺に、頼ってくださいよ。これまで、ジャイロさんに頼ってばかりだった。今回だって、ジャイロさんがいなかったら、俺はゾンビのままだった。だから、今回は・・・ッ!」
「・・・わかった。ただし、生きて帰ってこい!」
「はい!」
仗助の返事にジャイロは地霊殿に向かう。
「強がるんじゃあない!東方 仗助、キサマは敗北寸前だ!自分から希望を捨てたのと同じだ」
「吉良 吉影・・・俺がなにも考えずに、こんなことをしたと思うか?」
「・・・そうだな。じゃあ私も本気で戦わなくてはならないね。キラークイーン、東方 仗助を木っ端微塵に消し飛ばしてやれ!」
キラークイーンの攻撃が、膝をついて意識を失う寸前の仗助に当たるとき、仗助の体はなぜか横に動いた。
それは仗助への一筋の希望だった。
「殺人鬼、確か吉良とか言ったねぇ。アタシの愛する町をこんな状態にしたことを後悔するがいいわ!」
そこには本物の鬼が立っていた。腕や脚に包帯をしているが、手のひらには赤い杯が乗っていた。
「君は確かに・・・勇儀だっけな?綺麗な手をしていたが、反抗的だったからケガをさせるしかなかったと言えばいいか」
「アンタのせいで酒が二日も飲めなかったんだ。どうしてくれるんだい?」
「なら、あの世で酒でも飲むがいい!キラークイーン!」
キラークイーンの右拳は勇儀の腕に弾き飛ばされ、みぞおちががら空きになる。
「何ィ!?」
「アンタ、その鎧のせいで弱くなったんじゃないか?」
勇儀はキラークイーンの空いたボディに一撃を食らわす。キラークイーンはその一撃で吉良と共に、民家の壁に穴を開けた。
「勇儀・・・さん・・・ッ!」
「どうしたんだ!えっと・・・仗助だよな?」
「俺は、ジャイロさんと約束したんだ。今回は俺がヤツを倒すと・・・」
「・・・悪いが、その体でこの町は守れないな」
「ククク、誰が相手だろうが、私の平穏を邪魔するものは始末してくれる!」
「そいつの能力は理解した!アタシに攻撃が当たることはないよ!」
「キラークイーンは常に進化する。この生命の爆弾は止められない!・・・いけ!ゾンビ共!」
爆弾となったゾンビの波は勇儀に襲いかかる。
だが、勇儀の拳一つで波は真っ二つに割れた。
「だが、まだ残っている!」
「それはどうかな?キスメ!ヤマメ!あとは任せた!」
ゾンビの二つの波はヤマメの蜘蛛の糸で縛られ、キスメによって燃やされる。
炎によって爆発するなかで、少しずつ歩いてくる勇儀は吉良にとってまさに鬼のような存在だった。
「この町のために!アタシは・・・アンタを倒す!まずはその顔面を平穏じゃなくしてやるッ!」
勇儀の攻撃はキラークイーンの顔面と鎧にヒビをいれた。吹っ飛ぶと共に、鎧は砕けていく。
「キラークイーンはすでに、仲間を呼んでいる。少しすれば、君は屍の波に呑まれるだろう」
「気をつけてください!勇儀さん!ヤツ能力は爆弾を仕込んだゾンビで攻撃する能力だ!」
「何!?ゾンビ!?」
「うがぁぁぁぁぁッ!」
地面から生えるように現れたゾンビは、勇儀の足を掴み引っ張る。
「な、離せッ!離せってのッ!」
勇儀はゾンビの頭を蹴る。
「頭に攻撃するな!爆発する!」
「え・・・」
次の瞬間、勇儀の足を掴むゾンビの体から光が放たれ、爆炎がその一帯を包んだ。
「ククク・・・や、やったぞ!爆発した!やはり私の能力は最強だ!」
「まだだッ!」
爆炎のなか現れた勇儀は無傷だった。
「ッ!仗助のやつ、かっこよすぎるぜ・・・」
「ま、まさか・・・だが、私にとってどうでもいい。仗助が死んだということはつまり、私にとっての敵が消えたということだ」
あの爆炎のなか、仗助が最後の力を振り絞って出したクレイジーダイヤモンドは爆発した勇儀の体を元通りにしていた。
「あとは・・・頼みましたよ・・・勇儀さん」
力尽きるなかで仗助は目の前に立つ勇儀にだけでなく、地霊殿へと向かうジャイロにも全てを託した。
黄金の光が仗助を包み込む。
☆
「な、あれは・・・!」
俺は地霊殿へと向かっていく途中で、黄金の光が天へと登っていくのを見た。そのなかに人の形をした煙が見え、その形はしだいに仗助へと変わっていった。
「じょ、仗助・・・」
家の壁を突き破って、ゾンビが現れるが、俺はそれをまるで邪魔な障害物を手で退かすように、鉄球で破壊した。肉片と血が飛び散り、俺の目から流れる涙までも赤く濡らした。
仗助といたこの数週間の記憶が、一気に脳内を駆け巡る。
「アイツは・・・良いやつだった。だから、最後はアイツと共に、戦いの終わって平和になった地底を見たかった・・・。ったく、俺がこんな辛気臭くなってどうするんだ。俺はジャイロ・ツェペリだ。こんなことで、泣く、男じゃねぇよ・・・」
涙を拭いながら、地霊殿へと向かうと、玄関前でさとりが待っているのが見えた。
「ジャイロさん、仗助さんは?・・・そんな・・・」
さとりは俺の心を読み、その現実を知った。
「今さっきの光って・・・まさか」
「・・・うおおおおおおおおッ!」
夜の焼き焦げた臭いのする町に響く、一人の男の叫び。それは天に昇る男への叫びだった。
ジャイロは叫んだ。さとりは膝から崩れ落ちた。
東方 仗助・・・死亡。
「吉良・・・」
勇儀の攻撃を何度食らっても起き上がる吉良を見て、勇儀だけでなく、近くでそれを見ていたキスメやヤマメまでも、恐怖で鳥肌が立っていた。
「ククク、私は・・・平穏のためなら・・・非人道的なことでもする・・・私は生きなければならない・・・」
すでに吉良はボロ雑巾のような姿になっており、片目は潰れ、腕や足の骨は折れていた。そのはずなのに、吉良は立ち上がる。
それこそまるでゾンビのようだ。
「さ、さぁ、早く爆発しないか?こっちも、もう半分見えないんだ。腕も折れてるし、足も折れてる・・・だが、すでに私は勝ち負けなどどうでもよくてね・・・」
足を引きずりながら歩いてきた吉良は、勇儀の前で倒れた。
「もう、ダメみたいだ・・・最後に、満天の花火がみたいな・・・」
「ッ!・・・ヤマメッ!」
「は、はい!」
吉良の手はヤマメの蜘蛛の糸で固められ、二度とスイッチが押せないようになる。
「無駄だ・・・。ゾンビは私が死ぬと同時に爆発するようになっている・・・。そんなことをしても無意味だ。最後まで・・・ダメ・・・だった・・・よ」
吉良は目を閉じた。閉じた目からは涙が流れる。
次の瞬間、地霊殿の周りは一気に爆発し始めた。