ただ陽乃さんとイチャコラしたいだけの人生   作:暇なのだー!!

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この話しを書き始める前に一つ。…ここからどうしようかなど何にも考えてません!行き当たりばったりです…だけど完結目指します。


仕事

スタバ内は外が真夏の真昼間という事だったのでクーラーがガンガンに効いていた。先程まで外を歩いていた俺達からしたらとても嬉しい。

しかし、今この一瞬、僅かにそのキンキンに冷えている店内で時間か止まったような気がした。

 

 

「…どうぞ」

 

 

ぴしり、と足が彫刻のように床から張り付いて離れない俺の足は、その一言でやっと動き出した。遠慮がちにアホ毛のこの隣─比企谷八幡君の隣に座る。

座る直前に比企谷君が逃げようとして立とうとしていたが押さえ込んだ。今ここで君がいなくなってしまったら、胃が痛くなるとかじゃなくて胃が体ごと原子分解しちゃう!

 

俺は陽乃さんから、妹さん─雪乃さんとは仲が余り宜しくないのは聞いている。そこまでならまだいち、家族関係として分類されるのだが…俺というイレギュラーが居る事で複雑性は増していく。俺を跳ねた車に乗っていた少女とその姉と被害者と助けた少年…うん、やっぱ小説一本書けるわこれ。

 

 

─この二人とは会話をした事はある。

まず雪ノ下雪乃さん。苗字から分かる通り、陽乃さんの妹である。腰まで伸びた真っ黒な黒髪は一切の手が加えられておらず、それだけで輝きを放っていた。顔立ちも陽乃さんから受け継がれたのか、初めてあった時も一瞬で美少女だと頭が勝手に認識した。しかし、性格までは同じという訳でも無かった。

例えるなら陽乃さんが陽だとすると雪乃さんは陰。つまり対極の存在である。陽乃さんほどはっちゃけておらず、言いたい事をズバッと言うらしい。それでも雪乃ちゃんは優しいと証言するのだから流石は姉である。

 

そして、比企谷八幡君。

この子は…この子は…ぼっち?何故か、俺と同じオーラを感じる。類は友を呼ぶというが本当の事だったらしい。しかし、俺でもあそこまで死んだ魚のような目をした事は無い。

つまりゾンビ。先程ここはバイオハザードって言ったけど間違いないわこれ。

 

 

「それで、雪乃ちゃんとえっと…」

 

 

確認するためにわざとらしく陽乃さんは言い詰まる。これにより比企谷君は自己紹介しないという手段を失った。

 

 

「…比企谷八幡です」

 

「そう、比企谷君ね。…比企谷君と雪乃ちゃんは何やってるの?デート?」

 

「「違います」」

 

「あははー、息ピッタリだね!もう、雪乃ちゃん彼氏が出来てたならそう言えば良いのに〜」

 

 

陽乃さんはそうおどけながら言っているが、視線は比企谷君へと向けられている。当然だろう、可愛い妹が何処の馬の骨と付き合っているのかなど気になるに決まっている。あれだ、この状況だと陽乃さんが雪乃さんの母上で俺は雪ノ下家のペット。え?お父さん?義妹だったんだよ雪乃さんは(白い目)。

 

そう俺がこのスタバ内を豪華絢爛な和室に見立て、結婚の挨拶に見立てながら現実からフェードアウトしている時も尚、陽乃さんは未だに比企谷君を見ていた。その視線は先程とは違い格付けをするような目付きをしていた。何を考えているかは分からないが、大方面白い人間かとでも考察しているのだろうか。

 

その目線に駆られてしまった比企谷君だが、耐えきれられなくなってしまったのか、ふいっとこちらに顔を向け陽乃さんの視線から目を逸らしてしまう。比企谷君の瞳から見るのは俺の瞳。目と目が合う、瞬間すーきだーときづーいたー…そんな思いに気付くわけもなく俺も比企谷君から目を逸らしてしまった。

しかし尚も比企谷君は助けを求めるような視線が俺に刺さる。すまんな、と首をふるふると振る。こんな真昼間から美少女とお茶してる奴なんて助けられるか!…あれ?これ特大ブーメランじゃね?どちらかと言うと俺の方がブーメランの大きさ大きいわこれ。つまりここの男に救いは無いという事。無念。

 

 

「コホン」

 

 

比企谷君の哀れな目付きを憐れむような目付きで見ていると、空気を変えるような咳き込みを雪乃さんはした。俺と比企谷君は再び雪乃さんと見る。何時の間にか、陽乃さんの比企谷君に向けられていた目線は収まっていた。

 

 

「部活動よ」

 

 

凛とした口調で雪乃さんはそう言った。

 

部活…?と机上に視線を下げると、そこにはレポート用紙のようなものが一枚。

─『デートスポットについて』と記された文字。

 

あぁ、そういうね…

 

なら俺達は邪魔だろうな、と結論付ける。空気の読める男…かっこいい!

 

 

「…陽乃さん」

 

「そうだね…」

 

 

珍しく語尾が弱くなってしまった陽乃さんと共に席を立つ。くるり、と二人で背中を向けるとこう言った。

 

 

「「お幸せに」」

 

「「違いますっ!!」」

 

 

リア充爆発(ry

 

 

 

 

 

 

 

 

「奉仕部?」

 

 

あの後、物凄い勢いで弁明をされた俺達に雪ノ下さんは説明をしてくれた。

目の前ではやっと理解してくれたか、この鈍間という目付きでこちらを見て来る。やめろ、その目付きは俺に効く…

 

どうやら、雪乃さんと比企谷君は総武高校で奉仕部という部活動に入っているらしい。いわゆる『何でも屋』である。何でも雪乃さんが最初に入り、八幡君が後に入ったという事で、現在は二人しか所属していないらしい。

 

 

 

「そうでも無ければこんな億劫で意欲の無いシスコンと一緒に仕事なんて…」

 

「おい、それ前二つは悪口だけど、シスコンとか悪口じゃねえから。むしろステータスだし、希少価値だし」

 

 

ずびしいっ!と比企谷君の背後に青髪ロリッ娘高校生の化身のようなものが見える。

ら〇すた二期、待ってます。

 

 

「それで?今は何をやってるのかな?」

 

「姉さん達に話す事は何も無いわ」

 

 

先程まて比企谷君と話していた態度とは一変した。

ぴしゃり、とこれ以上の追求は許さないような声音で俺達を遠ざける。

しかし、そう言われても陽乃さんはあっけらかんとしていた。

 

 

「あらら、振られちゃった〜慰めて久遠くーん」

 

 

決して本心ではそう思っていないようなへらへらとした、言葉使いで俺に助けを求めてくる。

はいはい、と陽乃さんを宥めた。ここ一ヶ月これくらいのスキンシップは取るようになっている。最初の頃はオカズにこまr…心臓バクバクのドキドキでしたが、今はもはや慣れてしまった。

陽乃さんは誰にでも平等に接するため、その性格故親近感を持たせる事が出来る。故に、その手法で親しい関係となった有象無象など何人居るか分からないだろう。もしかしたら俺もすでにその有象無象なのかも知れないな…。と陽乃さんの理解者となるという目標が再び遠ざかっていく中、陽乃さんの妹、雪乃さんの視線が俺に刺さる。

 

雪乃さんの目付きは何処か不思議なものを見るような目で俺を見ていた。

 

 

「…何ですか?」

 

 

不思議と俺は雪ノ下家の方には敬語になってしまうらしい。

 

 

「いえ、なんでもないわ」

 

 

そう言うと彼女は元の目付きに戻った。何だろな?と考えていると、雪乃さんが顎に手を当て少し考えるポーズを取る。そのポーズもなかなか様になっていた。

 

やがで、考えが纏まったのか顎から手を離し彼女は俺達に向けて言った。

 

 

「…手伝う事が何も無いって言ったけど…そうね、姉さん達にやって貰いたい事があるわ」

 

「…へえ」

 

 

ふと正面を見ると、先程までのおちゃらけた陽乃さんの面影は見当たらず、興味深々に雪乃さんを見ていた。どうやら、今の雪乃さんの発言は何か陽乃さんを動かすモノがあったらしい。

 

 

「おい、雪ノ下。良いのかよ、それは俺達の仕事だろ?」

 

 

oh...八幡君…今まで声出してなかった君がいきなり出すからビックリしたぜ。

 

 

「あら、比企谷君無駄にやる気じゃない。だけど、仕事は適材適所が一番楽で効率的でしょう?ただ私達には適所じゃないって事よ。…それとも比企谷君私と一緒にやる?」

 

「それは…」

 

 

言い詰まる比企谷君。どうやら、あたらの発現力も雪乃さんの方が権限は大きいようだ…あれだ、今このテーブルは女尊男卑だわ。そのうち女性しか乗れない機体とか出て来るパティーン。

 

 

「…へぇー、雪乃ちゃんが私に頼み事をするんだ?」

 

 

今まで静かだった陽乃さんが雪乃さんに試す様な視線を送る。だが、そんな事はどうでもいいと雪乃さんは話しを進める。

 

 

「えぇ、後でしっかりと二人共各自にお礼はするわ」

 

「いいよー、可愛い妹からお礼ってのも気が引けるしね。久しぶりに妹にもお姉ちゃんらしいところ見せてあげなきゃね」

 

 

何処か小馬鹿にしたような言い方に、雪乃さんはぴきり、と青筋を立てる。ふるふると震える肩を抑えながらも彼女は言葉を紡ぐ。

 

 

「…そう、ならしっかりと見せてくださいねおねえちゃん(・・・・・・)らしいところを?」

 

 

ふふふ、と笑い合いながら約束を交わし合う姉妹達。会話だけ見れば仲睦まじい姉妹の会話に見える。だがこの二人が互いに抱いている心情などを見るととても恐ろしい、つかめっちゃ恐い。ほら、空気に化していた比企谷君だってガタガタいって蒸留しそうだからやめて上げて。

 

 

「それで?頼みたいことって何です?」

 

 

もはや俺の拒否権なんてある筈もないので、とにかくあの二人の仲睦まじい微笑みをぶつける二人の意識を互いから逸らすために口を開いた。

 

 

「え、えぇ、そういえばそうだったわね」

 

 

どうやらその目論見は上手くいったようで意識を逸らせる事が出来たようだ。二人は微笑み合うのをやめるとこちらを向く。

雪乃さんは持参していた茶色のバッグからがさがさと何かを探すような仕草をして、五枚ほど束ねられたプリントを机上に出した。

 

 

「これよ」

 

 

そこには、『真夏にはここがオススメ!デートスポットベスト5!』と一枚目に文字がプリントされていた。

 

えっ、これってと問いかけようと雪乃さんの顔を見る。そこには陽乃さんほどの美貌を持った笑みが張り付いていた。

 

 

 

「姉さん達にはこのプリント全てに記載されてる所に行ってもらうわ」

 

 




さて、お気に入り100達成ありがとうございます。
ランキング上位者の方達に比べたらまだまだだと思われますが、私にとっては大満足です。皆さんの感想や評価が日々励みになります。
ゆるりと完結を目指して行きたいのでそれまでよろしくお願いしますm(_ _)m

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