ジョセフィーヌ・ジョースターの奇妙な幻想譚   作:勇(気無い)者

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ここからガッツリ弾幕ごっこが始まります。
…多分、紅霧異変終わるまで続くと思われます…。


其の五、紅霧異変 ③

 魔理沙は一人、紅魔館の通路を進んでいた。余りにも広すぎるので、箒に跨がって飛んでいる。歩いて進んでいたのでは、何時間掛かるか判ったものではない。

 暫く進んでゆくと、魔法陣の刻まれた扉を見つけた。今までにも幾つか扉はあったが、魔法陣が刻まれているのはこの扉だけだ。

 それが異様に気になり、魔理沙は扉を開いて中へと入る。

 

「……うっはー…!」

 

 目の前に広がる光景に、思わず驚きの声を洩らす。

 其処は図書館であった。只の図書館であれば、驚く事などなかっただろう。

 だが、この図書館は異常なまでに広かった。そして、異常な数の本が蔵書されている。目算で凡そ数千……いや、もしかしたら万を超えるかもしれない程の本の数。それらが棚にびっしり収まっているのだ。壮観であった。

 

「……これ、魔導書…だな…」

 

 箒に乗って飛んだまま本棚に近付き、適当に本を引き抜き呟く。

 本自体が魔力を持っているのだ。他の本もそうだ。此処に蔵書されているのは、殆どが魔導書なのかもしれない。

 

「まるで宝の山だな」

 

 魔法使いである魔理沙にとって、発した言葉通りの場所だった。

 これだけの数の魔導書だ。中には強力な物もある。それらを読めば、魔法の研究はかなり捗るだろう。

 帰り際に何冊か持って帰ろうか。そんな事を考えていた時だった。

 

「何者ですかー!?」

 

 魔理沙の前に、一人の少女が姿を現した。

 年頃は魔理沙と同程度か。黒の洋服に身を包んでおり、下も黒で膝丈のスカート。胸元には赤いネクタイ。

 赤い髪をしており、背中辺りまで伸ばしたストレートヘアー。横髪も肩に触れる程度に長い。

 また、頭と背中に蝙蝠の様な羽根が生えており、背中の方は五十センチ程度、頭の方は二十センチ程度である。明らかに人間ではない。

 その少女が勧告する様に告げる。

 

「ここは大魔法使いのパチュリー様が保有する図書館! 早々に立ち去りなさい!」

「おいおい、私はお客様だぜ」

「客が来るなんて聞いてないわよ! どう考えても侵入者でしょうが!」

「バレたぜ」

「バレるに決まってんでしょ!」

 

 憤慨する様に叫ぶ少女。魔理沙はやれやれと溜め息を吐く。

 

「そんなに出てってほしいのか?」

「当たり前よ!」

「ちょっとだけ見て行っちゃ駄目?」

「駄目よ!」

「どうしても出ていって欲しい?」

「さっさと出て行きなさいよ!」

「だが断る」

 

 少女が「ぬぁっ!?」と間抜けな声を出して驚く。そして、魔理沙の口から次の言葉が飛び出した。

 

「この霧雨魔理沙の最も好きな事の一つは、嫌がっている相手から出ていけと言われた時に「NO!」と答えてやる事だ! ふははは! 言ってやったぜ!」

 

 魔理沙が満足そうに笑う。ポーズまでとっているのだ。所謂(いわゆる)ジョジョ立ち。完全にジョジョ中毒に犯されている。こうなったのは大体ジョセフの所為。

 少女がぐぬぬと苛立った表情を浮かべ、

 

「ならば、実力行使に及ぶまで!」

 

 掌から光の弾を生み出し、魔理沙に向かって連続射出。それらが弾幕となって襲いかかる。

 

「ふん、ベリーイージーだぜ」

 

 対する魔理沙はというと、それらを危なげなく余裕綽々で躱していった。

 光の弾の僅かな隙間を難なく掻い潜り、

 

「そら!」

「っ!?」

 

 翳した八卦炉から光の弾を放つ。意表を突かれた少女は、これをギリギリで回避。

 しかし、魔理沙の放った弾は、そのまま真っ直ぐ飛んでゆき━━━本棚に直撃。その衝撃で納められていた本が飛び出し、床に散乱する。

 

「ぎゃあああぁぁぁっ! 本があああぁぁぁっ!」

「余所見するなんて、随分と余裕だな」

「はっ━━━ぉぐっ!」

 

 再び魔理沙の攻撃。先程と同じ光の弾が放たれ、それは少女の腹部に直撃した。

 モロに攻撃をくらった少女は、下に散らばる本の上に落ちる。その衝撃で更に本が落ちてきて、少女は生き埋め状態となった。南無南無。

 

「へへん、一丁上がりだぜ」

 

 指で鼻の下を擦り、得意気に呟く。まるで相手にならなかった。完勝である。

 それもその筈、魔理沙はあの博麗霊夢と弾幕ごっこで数百回も競っているのだ。その数百にも及ぶ勝負の内、四割の勝ちを拾っている。

 若干負け越してはいるものの、勝率が四割。紫やジョセフが天才だと評する、あの博麗霊夢を相手に。

 そんな魔理沙が、そんじょそこらの妖怪程度に遅れを取る筈がないのだ。

 

「さて、この調子で━━━」

「私の図書館で騒いでいるのは誰?」

 

 不意に、背後からの声。振り返ると、また魔理沙と同じ年頃の少女。

 紫色の長い髪をしており、彼女もストレートヘアー。腰辺りにまで及ぼうかという長さの後ろ髪、対して前髪はパッツンである。

 服装も紫色を基調としており、ゆったりとしたローブの様な服。寝間着に見えなくもない。頭には、三日月の飾りが付いたナイトキャップ。

 魔導書を片手に、フワフワと宙に浮いて魔理沙と対峙する。

 

「……私の、って事は、噂の大魔法使いパーチュリー様とやらか」

「パチュリーよ。貴女は誰?」

「私は普通の魔法使いの霧雨魔理沙だぜ」

 

 パチュリーは「そう」と興味なさげに呟くと、視線を下へ向けた。そこには彼女の大切な本が床に散乱している。

 再び魔理沙へと視線を戻し、

 

「あれは貴女がやったの?」

「いいや、本の下敷きになってる奴がやった」

「嘘ね」

 

 魔理沙の嘘はあっさり見破られた。

 

「何でお前にそんな事が判るんだよ?」

「厳しく躾けているからよ。たまに何かの拍子にミスをするけど」

「あれはあいつが盛大にミスった結果だぜ?」

「もしそれが本当だったとしても、貴女が此処に来なければああはならなかった筈よ。詰まる所、貴女の所為」

 

 パチュリーはキッパリと言い切った。

 最早、嘘か誠かはどちらでも良いといった様子である。

 

「へっ、そうかい。んで? だったらどうだってんだ?」

「駆逐する」

 

 パチュリーは冷たく言い放つと、一枚のカードを取り出した。スペルカードだ。

 それを目にした魔理沙が不敵に笑う。

 

「私とやろうってか、大魔法使い様がよ!」

「火符『アグニシャイン』」

 

 スペルカードが宣言された。それは同時に、弾幕ごっこが開始された事をも意味する。

 パチュリーの掲げるスペルカードから、無数の光の弾が飛び出す。その弾の色は赤。名前の通り、炎の属性を持っている。

 それは円の軌跡を描いて、外側へどんどん広がってゆく。

 

「直撃すれば、貴女の綺麗な顔が醜く焼き潰れるわよ」

 

 ハッタリである。確かに、その弾幕からは肌に焼き付く様な熱を感じるが、幻覚でしかない。

 当たれば本当に焼かれているかの様な痛みを受けはするものの、外傷を与える様な事はない。弾幕ごっこにおいて、相手を殺傷する様なスペルは禁止されている。

 

「そりゃあ怖いな。けど━━━」

 

 魔理沙はそのハッタリを見抜いている訳ではない。彼女の魔法使いとしての腕前は未熟だ。百年以上の年月を魔法の研究に費やしている、魔法使いとして格上であるパチュリーの魔法を見抜く事など出来る訳がない。

 だが、魔理沙はあえて前進する。身を焦がす様な熱さにも怯まず、弾幕の隙間を上手く掻い潜る。

 当たればその身が焼かれると思い込んでいても、魔理沙は怯まない。

 

「当たらなければ、どうって事はないんだぜ」

「ッ!?」

 

 弾幕を突破した魔理沙が、パチュリーのすぐ近くに現れた。パチュリーからは弾幕に遮られて魔理沙の姿が見えなかった為、接近に気付く事が出来なかったのだ。

 魔理沙は八卦炉を構えている。パチュリーはそれが攻撃体勢であると瞬時に理解し、スペルを中断する。

 八卦炉から光の弾が発射された。パチュリーも咄嗟に掌から光の弾を撃ち出す。

 両者の弾はぶつかり合い、爆ぜた。

 

「くっ!」

「ぐっ!」

 

 それ程大きな衝撃ではなかったが、二人は余波に巻き込まれまいと距離をとる。

 勝負は白紙の状態へと戻った。

 

「…少しはやるようね」

「おたくは大した事ない様だな」

「調子に乗るんじゃないわよ、小娘が」

 

 瞬間、パチュリーの体から魔力が溢れ出した。肌がピリピリと焼けつく様な感覚に、魔理沙は顔を顰める。

 

「私が一体、何年魔法を研究してきたと思ってるの? たかだか十年ぽっちしか生きていない人間の小娘風情が、私に適うと思っているの? 身の程を弁えなさい」

「……今回の異変、あんたも一枚噛んでんのか?」

「だったら何?」

 

 その答えを聞いた魔理沙が、フッと笑う。

 

「じゃあ、あんたは負けるな。悪は絶対に勝てないと相場が決まっているからな!」

「……くだらない」

 

 パチュリーがスペルカードを取り出し、掲げる。

 

「貴女の様な格下には勿体無いけれど、私の研究の成果の一端を見せつけてあげるわ。もう二度と生意気な口が聞けない様にね」

 

 スペルカードがカッと閃光を放ち、気が付けばパチュリーの周りに五つの結晶が浮いていた。

 それぞれ色が違い、赤、青、緑、黄、紫の五色。

 

「火水木金土符『賢者の石』。━━━格の違いを知って絶望するがいいわ」

 

 それぞれの結晶から光の弾が発射される。五色の色鮮やかな弾幕。属性もそれぞれ違う。

 赤は火、青は水、緑は木、黄は金、紫は土と、属性が別れているのだ。それ故に、どんな相手にも対応する事の出来る万能の魔法である。

 

「く…っ!」

 

 先程とは打って変わって濃い弾幕に、魔理沙は僅かに狼狽する。難易度が明らかに二回りは上がっており、前後左右から迫る弾幕を躱すだけで精一杯だった。

 

「さっきまでの減らず口はどうしたのかしら?」

「くっ、くそ…!」

 

 反論出来ない。そんな隙はない。今は躱す事だけに集中しなければならない。でなければ、押し切られる。

 

「ぅぐ…っ!」

 

 遂には被弾してしまう。左の脇腹付近にもらってしまった。痛みが走り、思わず顔を歪める。後方からの弾だった。

 振り返れば、其処には緑の結晶が距離を置いて宙に漂っていた。いつの間にか背後に回り込まれている。魔理沙は弾幕を躱す事に集中し過ぎて、結晶の動きに注意を払っていなかった。

 

「くっ、そ…!」

「木の属性で良かったわね。火の属性なら火傷じゃ済まないわよ」

「……っ」

 

 勿論、それもハッタリ。痛覚を刺激するだけで、外傷などを負う事はない。

 しかし、それで動揺してしまったのか、魔理沙は更に数発、腕や足に被弾してしまう。

 当たった属性は水、木、金、土の属性。明らかに火の属性を意識し、避けている。

 

「もう諦めたら?」

「…へっ、冗談だろ」

 

 それでも魔理沙は諦めない。それどころか、逆に気力が充実していた。精神は高揚していながらも、頭は常に冷静。パチュリーの弾幕を危なげなく躱してゆく。

 

「………」

 

 このままでは当たりそうもないと判断したパチュリーは、五色の結晶の弾幕を止め、魔理沙を中心として円を描く様に動かし始めた。

 対する魔理沙は、どんな攻撃にも対応出来る様に身構える。

 

「さっき、貴女は悪がどうとか抜かしていたけれど」

「……それが何だよ?」

「力の無い正義も悪と大差はないわよね」

「……何の事だ? 何を言っている…?」

「敗者である貴女も悪、という事よ」

 

 瞬間、五色の結晶からの一斉射撃。しかも、結晶は常に動き回っている為、全方位からの射撃。

 逃げ場はない。こうなると、弾幕の一部を相殺して外側へ逃げるしかない。

 無論、パチュリーもそれは想定している。魔理沙が内側から抜け出ようものなら、再び結晶で囲んで射撃するつもりだ。

 しかし、魔理沙は動かなかった。

 

「敗者が悪…?」

 

 ポツリと呟き、ニヤリと笑う。

 

「それじゃあ矢っ張りィ━━━!!」

 

 ポケットから一枚のスペルカードを取り出し、

「テメェーの事じゃねーかァ━━━!!」

 

 それを高らかに掲げ━━━宣言。

 

「魔符『スターダストレヴァリエ』!!」

 

 瞬間、スペルカードから色とりどりの星が無数に溢れ出す。それらは一度魔理沙の後方へ飛び出し、数メートル程で歪曲して方向転換。流星群となってパチュリーへ向かって飛び出した。

 その過程で星の弾幕に呑み込まれた五色の結晶は全て砕け散ってしまう。

 

「なっ━━━ゥッ……ゲホッ、ゲホッ…!」

 

 パチュリーは驚きの余り咽せ返ってしまった。持病の喘息がそれに拍車を掛け、魔法による防御がまともに出来ない。

 辛うじて魔力を振り絞り、防御の魔法陣を展開するものの、押し寄せる流星群に流される。

 そのままパチュリーは本棚へと叩きつけられ、小悪魔が生き埋めになっている本の上に落ちた。

 

「…な…なんて火力(パワー)の…魔法なの…」

 

 呻く様に呟き、彼女は意識を失った。

 そこへ追い討ちを掛ける様に本の雪崩が降り注ぐ。パチュリー・ノーレッジも生き埋め状態となった。南無阿弥陀仏。

 魔理沙は煙をあげるスペルカードに一息吹き掛け、

 

「裁くのは私の魔法だぜ━━━なんてな」

 

 承太郎を意識した決め台詞を、最早聞こえている筈のないパチュリーへと投げ掛けるのであった。

 




ジョジョ中毒感染症重症感染者魔理沙。

スペルカードについては何となくな感じでやってます。ごめんなさい…。
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