ジョセフィーヌ・ジョースターの奇妙な幻想譚   作:勇(気無い)者

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日にちを置かずに連投だァ━━━ッ‼︎


其の八、紅霧異変 ⑥

 霊夢は長い通路を暫く進み、仰々しい装飾の入った両開きの扉の前まで来ていた。咲夜の言っていた、玉座の間である。

 床に降り立ち、片方の扉を押して中へ足を踏み入れる。

 其処は先程のホールに勝るとも劣らない広さの一室であった。

 奥行きはホールの方が広いが、横幅は玉座の間の方が広い。面積的にはどっこいどっこいである。

 両脇には白い大理石の柱が立ち並び、床には真っ直ぐに伸びる赤い絨毯。その上から魔法陣が描かれており、僅かに発光している。天井には、どの部屋にあったものよりも豪華で大きいシャンデリアが吊されている。

 そして、一番奥には一段上に設置された赤い玉座。其処には一人の幼女が座っていた。

 外見は十にも満たない幼児。薄い青色の髪をしており、ウェーブが掛かったセミショート。瞳の色は赤。

 フワフワのピンクのドレスに身を包んでおり、袖口が少し膨らんでいる。スカートの端には同じ色のフリル。胸元には黄色のブローチ。頭には赤いリボンの付いたナイトキャップを被っている。

 そして、一番の特徴は背中に生えた翼。蝙蝠と同じ様な形状をしており、その大きさは自身の身長と同程度はある。

 

「……あんたが異変の首謀者?」

 

 霊夢が宙を飛び、幼女に近づきながら問う。

 対する幼女はフンと鼻を鳴らして立ち上がる。

 

「博麗の巫女か……。そうだ、私が異変の首謀者だ」

「………その特徴的な蝙蝠の翼。成る程、ジョースターさんから聞いているわ。確か吸血鬼の……吸血鬼、のー……レプリカ・ブルーレット?」

「レミリア・スカーレットだッ!」

 

 幼女、もといレミリアが憤慨する様に叫ぶ。

 レプリカ・ブルーレット。トイレに置くだけの複製品。まるで意味が解らない。

 レミリアは「ったく…あの女といい、博麗の巫女ってのは…」と、苛立たし気にブツブツと呟く。

 

「まぁ、いいわ。此処へ来たって事は、異変の解決に来たんでしょ」

「ああ、そうそう。迷惑なのよ。あんたが」

「霧が、ね。主語が抜けてるわよ、主語が」

「どっちみち迷惑なのよ。今すぐ止めるのと痛い目を見た後に止めるの、どっちがいい?」

 

 霊夢の言葉を耳にしたレミリアがニヤリと、挑発的な笑みを浮かべる。

 そして、翼を大きく羽ばたかせ、飛翔。

 

「やれるものならやってみな。紅い月の力を得た、私を止められるものならね!」

「月? 今はお昼よ? 月なんて…」

「月は昼でも上がっているわ。日に隠れて見づらいだけ。その昼に上がっている月の力を利用する為の紅い霧よ。これがどういう意味か、解る?」

「さぁ? お団子が美味しくなるとか?」

「昼間でも月の力を得られるという事よ」

「いや、そもそもここ室内だけど」

「その為に魔法陣が描かれているんだよ。さぁ、もうお喋りは終わりだ!」

 

 レミリアが一枚のスペルカードを取り出し、掲げた。霊夢も臨戦態勢をとる。

 

「天罰『スターオブダビデ』!」

 

 宣言。

 赤い光球がレミリアの周りに滞空する。それらは赤いレーザーの様な弾幕を放ち、更にレミリア自身も青い光球の弾幕を放つ。

 対する霊夢は、それらをふわりふわりと躱してゆく。当たる気配は無い。

 しかし、レミリアに近付く事は出来なかった。彼女の周囲に展開する赤い光球が、霊夢の接近を許さない。隙間から御札の弾幕を放り込んでみても、レミリアがそれを撃墜する。

 お互いに攻めきれない。均衡状態が続く。

 やがて焦れたレミリアが赤い光球を消し、霊夢へ突撃した。吸血鬼の飛行能力による圧倒的な速さ。体当たり。

 

「…ッ!」

 

 これを霊夢は間一髪で回避。ボロボロのスカートの端が更に破れたが、身体には掠ってもいない。

 

「ふん、よく躱せたわね。人間のくせにやるじゃないの」

「……あんたなんかよりも、ずっと強い人に鍛えられたからね。大したことないわ」

「………」

 

 霊夢の言葉に三年前の襲撃者━━━ジョセフの影がレミリアの頭の中にチラつく。屈辱的な敗北の記憶が蘇る。あの女に恐怖を抱いてしまったという忌まわしい記憶。

 レミリアは怒りに歯噛みした。拳を強く握りしめ、隙間から血の雫が流れ落ちる。床に垂れたレミリアの血は、まるで魔法陣に吸収されてゆくかの様に消えてゆく。

 水面に小石を投げ入れたかの様な波紋が床全体に広がり、魔法陣の発光が僅かに強くなった。

 

「お前は、あの女の弟子という訳ね…」

 

 口角を歪め、ニヤリと笑う。

 

「私はあの女からお前を殺していいと言われている」

「……なんですって? どういう事よ?」

 

 霊夢の問い。しかし、レミリアはそれに答えず、再び強く両手を握り締めて血の雫を更に床へと垂らした。一滴ごとに波紋が広がり、魔法陣の輝きも強くなってゆく。

 やがて魔法陣がカッと輝き、

 

「……今日はこんなにも月が紅いから━━━」

 

 床には紅い月が映し出された。まるで上空をカメラで撮影し、その映像を映しているかの様に。

 

「━━━本気で殺すわよ」

「……ッ!」

 

 ただならぬ殺気を感じ、霊夢はレミリアから更に距離を置いた。霊夢の勘が危険だと告げている。油断してはならないと。

 レミリアがゆらりと動き━━━その姿が霊夢の視界から消えた。

 

「く…ッ!?」

 

 背後からの一撃。霊夢は咄嗟に身を(よじ)って避けた。

 それは貫手による突きだった。直撃していれば人間の身体など容易く貫いていただろう。

 更に二撃目。今度は爪による引き裂く攻撃。それも霊夢は身体を回しながら避ける。

 だが、霊夢の腕から鮮血が吹き出した。爪先が僅かに掠ったのだ。そう、ほんの一ミリ程度掠っただけ。

 しかし、その傷口はまるでナイフの様な刃物で斬りつけられたかの如くに、十センチ近くは裂けていた。

 霊夢は腕に走る痛みに顔を顰めるが、同時に反撃にも転じていた。弾幕用の光の御札をレミリアに投げつける。が、当たらなかった。というより、レミリアは既にその場に居なかった。いつの間にか十数メートル程の距離を置いている。

 睨み合う両者。

 二人の闘いは明らかに弾幕ごっこの領分を越え、殺し合いに発展していた。

 

「……私に対してルール無視で襲い掛かってくるなんていい度胸してんじゃないの」

 

 霊夢は傷口に御札を貼り付けながら言う。止血用の御札である。あくまで一時的な措置でしかなく、傷口が治る訳ではない。

 

 対するレミリアは鼻で笑い、

 

「先程も言ったが、私はお前を殺してしまってもいいと言われているんだ。恨みがある訳ではないが死んでもらう」

「いい加減な事言ってんじゃないわよ。ジョースターさんがそんな事言う訳ないじゃない」

「フッ……まぁどっちでもいいさ。お前が死ぬ事には変わらん!」

 

 レミリアが飛び出した。あっという間に距離を詰め、霊夢を引き裂かんと爪を振るう。

 これを霊夢は紙一重で回避。その後に続く連撃もギリギリで躱していく。

 

「フハハッ! 粘るじゃないか! だが、それも何時まで保つかな!?」

「く…っ、の……、調子に、乗るな…ッ!」

 

 防戦一方だった霊夢の反撃。実物の御札をポケットから取り出し、レミリアの顔を目掛けて投げつける。

 攻撃に意識が行っていたレミリアだったが、首を捻ってこれを回避。だが、完全に避ける事は叶わず、頬を掠めた。霊夢の腕と同様の傷がレミリアの頬に刻まれる。

 

「……ッ、の…!」

 

 ここでレミリアはスペルカードを取り出した。

 それを掲げ、宣言。

 

「獄符『千本の針の山』!」

 

 レミリアの手から放たれたのは、赤く太い針の形をした弾幕。人間の腕程の大きさはある。

 それが螺旋状に辺りへ広がり、レミリアの周りに滞空。更にそれより一回り小さな針を連射。

 同時、滞空していた太い針も動き出し、大小両方の針が一斉に霊夢へと押し寄せる。

 明らかに人が避けられる用に設定された速さではない。殺傷力は言わずもがな。腕や足に当たれば千切れ飛び、頭や身体に当たろうものなら即死は免れないだろう。

 対する霊夢はというと、彼女もスペルカードを取り出していた。咲夜との勝負でも使わなかった、初のスペルカード。

 それを胸元に構え、宣言。

 

「夢符『封魔陣』!」

「…ッ!?」

 

 途端、霊夢を中心として二つの長方形の結界が展開される。それらは縦と横で交差し、十字を刻んで大きく広がってゆく。レミリアの放った弾幕は全て呑み込まれ、消滅した。

 十字を刻む結界も、部屋からギリギリはみ出さない程度の大きさまで膨れ上がると萎み始め、あっという間に消えて無くなった。

 結界が展開された瞬間、危険を感じ取ったレミリアは後方へと大きく下がっていた。でなければ、あの強力な結界にギリギリ巻き込まれていたかもしれない。

 もしも巻き込まれていたならば。幾らレミリアとて、ただでは済まなかっただろう。

 

「…クソ…ッ! ならばこれでどうだッ!!」

 

 三枚目のスペルカードの宣言。

 

「神槍『スピア・ザ・グングニル』!」

 

 レミリアの右手に圧倒的なまでの魔力が集まりだした。霊夢が思わず顔を顰める程の、強力な魔力。

 それらは赤い光となって集い、槍の形を形成してゆく。長さは優に二メートルを超え、穂先の部分が全体の半分以上を占めている。

 その槍をレミリアが振りかぶり、投げた。

 ジェット機の如き速さで突き抜けるそれは霊夢のすぐ横を通過し━━━轟音。

 振り返ってみれば、遥か後方の壁に巨大な穴が空いていた。あの槍の投擲で空いた穴だ。

 霊夢の額に脂汗が滲み出る。

 圧倒的な破壊力の一撃。一度放たれてしまえば、今の霊夢に防ぐ術が無い。封魔陣でも破られてしまうだろう。

 そう、()()()()しまえば。

 

「一応言っておくが、今のは外れたんじゃない。ワザと外したんだ。次は当てる」

 

 レミリアは不適に笑いながら再び右手に魔力を集め、槍を作り出す準備を整える。

 対する霊夢はポケットから真ん丸の球体━━━赤と白の陰陽太極図の模様が入った陰陽玉をレミリアに向かって投げた。

 槍のチャージよりも陰陽玉の方が僅かに早い。このままいけば先に陰陽玉が当たる。

 レミリアはこの陰陽玉を脅威無しと捉え、避ける素振りも見せない。何故ならば、陰陽玉には霊力が込められていない。ただの玉では吸血鬼たるレミリアにダメージを与える事は出来ない。

 もし仮に霊力が込められていても、レミリアはチャージを止めなかっただろう。陰陽玉の方が僅かに早いとはいえ、それが自分に当たった次の瞬間には霊夢に向かってグングニルを投げるからだ。

 例えダメージを負ったとしても、相手は即死。

 そう、

 

「勝てればそれで良かろうなのだァ━━━━━ッ!!」

 

 レミリアの咆哮。

 次の瞬間、陰陽玉が右肩に当たった。

 そして、レミリアがグングニルを━━━

 

「ガフ…ッ!」

 

 ━━━自らの下腹部へと突き立てた。

 

「……あ…?」

 

 レミリアは今の状況が理解出来なかった。

 グングニルが自分に突き刺さっている。腹部から多量の出血。口から血も吐いている。

 何故?

 右手は未だに魔力の槍を掴んだままだ。

 自分で自分に突き立てた?

 馬鹿な。今まさに投げる瞬間だったのだ。自分に突き立てるなど有り得ない。

 では何故?

 解らない。

 有り得ない。

 今の状況が理解出来ない。

 何故?

 理解不能━━━

 

「……ッ!?」

 

 レミリアの右肩から何かが飛んでいった。陰陽玉だ。それが霊夢の元へ戻ってゆき、彼女の手の中に収まった。

 レミリアは悟る。

 アレだ。あの妙な玉が作用して自分にグングニルを突き立ててしまったのだ。何をされたのかは解らないが、兎に角あの玉が原因なのは間違いない。

 グングニルの魔力が散り始め、赤い輝きを放つの槍は霧散して消えた。

 

「……今……何をした…?」

 

 霊夢は答えない。ただ、レミリアをじっと見据えている。

 

「答えないか」

 

 フン、と鼻を鳴らし、次の瞬間にはニヤリと不敵な笑みを浮かべていた。

 

「まぁ、良い。それより、下を見てみろ」

 

 言われるまま、霊夢は下方へ視線を移す。

 床に映し出されている紅い月。先程まではただ映し出されているだけだったが、今は強い光を放ち、輝いていた。

 

「床に描かれている魔法陣は、私の血を媒介にして紅い月の力をこの室内に充満させる効果をもっている。私の血を注げば注ぐほど、その分だけ効果も強くなる。それがどういう事か解るか?」

「………」

 

 霊夢は何も答えない。

 先程のグングニルを自分に突き立てた際、レミリアの流れ落ちた血は全て魔法陣が吸収した。それにより、魔法陣の効果は更に強くなる。

 つまりは、

 

「紅い月の力の恩恵を! より強く受ける事が出来るという事だ! そう、今ならほぼ満月のそれと変わらない程の力が満ち溢れてくる!」

 

 満月の夜の吸血鬼は、圧倒的な力と脅威的な再生力を誇る。身体の一部だけでも残っていれば、あっという間に再生してしまう。現にレミリアの腹部の傷は完治している。

 圧倒的な不死性。吸血鬼の最も恐ろしい特性の一つである。

 今のレミリアはそれを兼ね備えている。

 

「さぁ、決着を着けようか! 博麗の巫女!」

 

 レミリアがスペルカードを取り出し、構える。霊夢も同じく。

 今、この決闘に終止符が打たれようしている、まさにその時だった。

 

 ━━━地下から何か圧倒的な力が膨れ上がるのを感じ取り、霊夢とレミリアは互いに後方へ大きく飛び退いた。

 次の瞬間、二人の間の床がぶち抜かれ、光の奔流が走った。それは行く手を遮る天井もぶち抜き、紅い霧の広がる空へと駆け抜けていった。

 十数秒程で光の奔流は徐々に萎んでゆき、儚く散って消えた。

 一体何だったのかと、霊夢が恐る恐る床に空いた大穴をのぞき込むと、其処にはレミリアと同じ様な年頃の赤い服に身を包んだ幼女と、見慣れた魔女の格好をした友人の姿。

 

「今のは……魔理沙が…?」

 

 先程の光の奔流。少なくとも、山を一つ消し去る程度の威力があった。思わず霊夢が目を見張る程の、圧倒的な力を感じた。

 

「……あんな隠し玉を持ってたなんてね…」

 

 霊夢にとってはちょっと変わった奴程度の認識だったが、魔理沙の評価を改めさせられた。それ程の一撃だった。

 

 と、その時。

 ビシッという、岩に亀裂が入った様な音が耳に届いた。

 辺りを見回し━━━その音源が床の一部からだと気付いた時にはもう遅かった。

 それは脆くも崩れ去り、下の階層へと落下する。

 

 ━━━魔理沙の居る場所へ向かって。

 

「魔理沙ッ! 危ない!」

 

 叫び、無意識の内に飛び出していた。

 しかし、間に合わない。気付くのが遅過ぎた。霊夢よりも岩盤の方が落下は速い。

 かといってアレを破壊する手立ても霊夢には無い。博麗の秘術は悔しい事に破壊を目的としたものではなく、あくまで妖怪を退治する手立てでしかない。

 陰陽玉を投げても壊す事は勿論、軌道を逸らす事だって出来そうに無い。

 どうしようもない。

 

 ━━━そんな時、視界に突然、白い影が走ったのが見えた。

 それは魔理沙の元まで走り━━━落下してきた岩盤を粉砕した。

 

「……な…っ!?」

 

 魔理沙の前に、人影が一つ。

 それは、神社で別れた筈の恩師、ジョセフィーヌであった。

 




レミ「おいおいおいおいおいおいおいおいおいおい。グングニルは萃夢想からだろうが。今まだ紅魔郷だろうがよ。何でグングニルを使ってるんだ私は」

逆輸入してみますた。

レミ「ナアナアナアナアナアナアナアナアナアナア。それっておかしくないか? おかしい事だよな? 一体誰の所為でこうなった?」

全てジョースターの所為です(暴論)。

レミ「だから気に入った(満足)」

ジョ「お前ら色々と待てや(怒)」
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