実況パワフルプロ野球~二番手のエース~聖タチバナ学園高校 作:Reaflet
二人の少年が向かい合って話をしている。
片方は背番号1のユニホームを持って、片方は背番号8のユニホームを持っている。
「それ本当なのか!?」
「んだよ、エース様」
「今はお前は投手じゃないかもしれない。でも、あかつきだったら」
「小学生のときにエースの争いに負けてから、中学はお前がエースになった。俺だって投げたいのに、3連投禁止ルールの大会と紅白戦でしか投げられない俺にお前みたいなエースが俺の気持ちがわかるか」
「僕とお前の実力に差は無いはずだ!!あかつきは実力主義だ、今度こそ・・・」
「無理だね。中学で騒がれていたら、お前がエースだろうよ。いくら俺が良い投手だとしても、結局お前が居るから俺は外野のレギュラーどまりでしかないんだよ。全国大会優勝投手とただの二番手にどれだけの差があることか。猪狩猪狩騒がれてるだろ。それが証拠だ」
「だが!・・・っ!」
「走攻守揃った選手として俺は活躍しちまったから、あかつきでもエースは獲れない。それどころか外野に回させられる。それが嫌なんだよ。投手ピッチャーがしたい。エースになりたい」
「じゃあ・・・どこの高校に行くんだ?」
背番号1のユニホームを持った少年が問う。
「聖タチバナ学園」
「・・・え?あそこの高校に野球部ないはずだが・・・」
「ああ、無いよ。そこに行く。ま、俺を誘ってきたやつが行くからそれもいいかなって感じだしな」
「野球はどうするんだ!」
「別に関係ないだろ。ほら、南だって『恋恋高校に行く』とか言ってたじゃねえか」
「南がどこの高校に行ったっていい!僕はお前と同じ高校でエース争いがしたい!お前みたいな才能のあるやつがその才能をつぶすような真似をさせたくない。そんな無名な高校で野球部作ったって、プロに行けなくなるじゃないか!」
「別に道は一つじゃねえよ。プロになんなくてもいい。今のプロ野球なんてつまんねえからな。じゃあな猪狩、もうお前と話すことはない」
そう言って背番号8のユニフォームを持った少年が歩いていく。
背番号1のユニフォームを持った少年・・・猪狩守はそこにずっと立っていた。
「本気でお前とエース争いがしたかった・・・」
そう呟いて・・・。
今猪狩が見ている背中の人物は朱鷺 修也。
あかつきリトル、あかつき大付属中と一緒のチームで共に戦ってきた親友でもある。
修也が言ってた小学生のときのエース争い。修也はエースを決める日に肺炎になってしまいその日の練習に出れなかった。その結果エースは猪狩になった。
猪狩はそれが納得いかなかった。しかし、それとは裏腹に猪狩はエースとしてリトルの大会で全国出場を何度も導いた。
しかも、全国出場できたのは猪狩が抑え続けたわけではない。4番に居座ったセンターの修也の打撃があったからだ。2番手の修也のサポートもあっての出場だった。
猪狩は付属中に上がったら、もう一度エース争い出来ると思っていた。自分と修也の力関係をはっきりさせたかったのだ。負けてもいいと思いながら。
現実はそう甘くなかった。
付属中ではリトルのときの知名度から猪狩が、すぐにエース候補、1年ながらベンチ入りした。
修也自身も投手をしたかったのだが猪狩が知名度で圧倒的に上のせいか、2番手兼センターというポジションが与えられた。
決して争ったのではない。猪狩の知名度がそのままエースへと押し上げたのだ。
MAX138キロの速球に加えて、キレのあるスライダーとカーブで中学を2度制覇に導いたエース猪狩守。
打率5割超え、中学通産打点2位の男ながら、投手の能力は130キロ台の速球に加えて、スライダー、カーブ、シンカーと多彩な変化球を操る2番手投手兼センターの朱鷺修也。
どちらが良いとは決めることができない。
しかし、世間はまったく修也を評価することは無かった。
修也は猪狩と同じチームではエースになれないと自覚していた。
全国では登板の機会がなく、猪狩の連投で試合に勝って行った。
どこに行っても猪狩猪狩。自分の能力を否定され続けた感覚まで覚えてしまった自分が嫌で、猪狩と離れることを決意したのは秋の全国大会が終わった時だった。
ちょうどある人に誘われた聖タチバナ学園に進学を決めた。
「試合になれば・・・評価してくれるはずだ・・・修也あいつを・・・」
そう猪狩は歩いて行く修也に言った。
その二人のそれぞれの道を歩くところが物語の始まりとなる・・・。