実況パワフルプロ野球~二番手のエース~聖タチバナ学園高校   作:Reaflet

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二年目 躍進していく選手たち。
第十二話 4月1週 “入学式に新入部員”


 

「兄さん、パワフル高校が甲子園ベスト4らしいですね。やっぱり鈴本さんと東條さんの実力がずば抜けてたみたいですね」

「確かにな。東條小次郎、あいつもかなりの実力者だ」

「……」

「進。今年はお前があかつき入る。そうすれば去年みたいな最悪な結果にはならない。仕返しだ。ボク達あかつき大付属高校が地区予選の頂点に立つんだ」

「そうですね。わかってます」

「お前と俺のバッテリーでこの地区を制覇するぞ。パワフル高校も倒して、朱鷺も倒してだ」

「え?朱鷺先輩ですか?」

「ああ。あいつは今年こそ俺達の前に立ちはだかる。手強い相手だ。聖タチバナ高校は必ず俺達と対峙することになる」

「負けられない相手ですね。朱鷺先輩は…」

「そのためにもお前の力が必要なんだ。頼んだぞ、進」

「はい。兄さん」

「行くぞ。もう戦いは始まっている。やっと完成した”ライジングショット”と”フォーク”でこの地区を制覇して……甲子園も制覇するぞ」

昨年の借りを返しにあかつきは始動する。

新たな戦力の猪狩進。猪狩守との兄弟バッテリーが夏の大会で立ちはだかる。

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

 

 

「次はナックル!」

「ふっ!!」

「ナイスボール!」

「キャッチャー、ナイスキャッチ!」

「ラスト!ストレート!」

「ふっ!!!」

「ナイスボール!じゃあ、上がろう」

「わかった。それにしても良く頑張ったね。病気治ってよかったよ」

「そんなことはないとは思う。今までみんなに迷惑を掛けたのはあやまらないといけないことだから」

「確かにそうだけど。入部一週間目で病気にかかっちゃったからね。本当は夏の大会はレギュラーだったとは思うんだけど・・・」

「石原さんのキャッチングとかはうまかったからレギュラーは無かったとは思う。たらればなんて言ってたって仕方無い。この夏から私がキャッチャーに入ったからには負けたくは無いから」

「その心意気だよ。よろしく、新田さん。目標はこの地区の頂点……そして甲子園制覇」

「精一杯頑張るから。よろしくね大輔君」

パワフル高校にも新たな戦力が入る。

夏の大会ではたくさん新たなの戦力たちが顔合わせすることになるだろう。

それは毎年のことだ。その中で勝ちあがっていくのが強い高校なのだ。

今年の夏も熱い球児たちの戦いが見られそうだ。

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

 

季節は春。

この聖タチバナ学園高校は他の高校と同じく、4月1週には入学式が行われる。

入学式と言えば長い長い校長先生の話を聞いて、ひたすら一時間以上も座ってなければいけないという苦痛の時間である。少なくとも俺は。

唯一の救いは新入生の顔を見ることができるところといった感じだ。

クラス替えはまだ行われてはいなく、元のクラスのまま並んでいるので矢部君が前の方になっている。

出席番号の関係からか違うクラスの友沢と猛田が俺の隣で、後ろの方なので小声で話しても別にばれたりしないし、むしろそういうことしてないと何かとつらいです。

ちなみに聖、大京、原が同じクラス、喜多村達が同じクラス、宇津とみずきちゃんが同じクラス。

でも、後でクラス替えあるしなぁ。どうなんだろ。

「毎回思うけどなんでこんなに長いんだろうなー」

「意外と大事なこと言ってるかもしれないだろ。まあ、長いのは同感だが」

「同じくだ。それより今日は練習無しだっけ?」

「ああ。自主練はありにしてるし、一年生が見学しに来るかも知んないからな。できれば何人かは居てほしいもんだけど」

「ま、この三人は自主練するから大丈夫だろ?」

三人いれば大丈夫かね。

たぶん来るとしても准辺りぐらいだと思うし、十人とか来る感じはしないしね。

俺らがしばらく会話していると、校長の話が終わる。

『それでは新入生代表のあいさつ』

「お?そろそろ終わるみたいだな」

「くー、長い長い。もう少し短くしろよ」

「昨年は橘だったらしいが、今年は誰なんだろうな」

「誰でも良いぜそんなの」

「確か入試試験で一番成績の良かった人がやるんだっけ?」

「確かそうだったと思うが」

「ってことはみずきちゃん頭いいんだな」

どんぐらいなんだろ。やっぱり一桁台なのかな。

ちなみに俺は五十番台でした。もっと勉強しとけばよかったって思うぜ。

『新入生のあいさつ。新入生代表、川瀬准さん』

「はい」

「ぶっ!」

思わず吹いてしまった。

え?ちょ、あいつ頭いいのかよ!?最初会った時は若干口が悪くて、不良って感じがしたのにまじかよ。

でも、案外あんなやつが頭いいのかもな。ルックスもかなりいい方だし。

茶髪に染まった持ち前のポニーテールを揺らしながら段を上がって、お辞儀をして話し始める。

お辞儀も綺麗ってなんだよ。茶道でもやってるのか疑わせるほど綺麗なお辞儀だ。

おいおい、周りがざわついてるぞ。

「あの子可愛くね?」「やべ、俺ストライクゾーンだわ」「ど真ん中ストレートで150キロだぜ」

うまいこと言ってんじゃねーぞ最後のやつ。猪狩レベルの速球なんて見たことあんのかよ。しかも、つまんねーし。

ってそれはいいんだよ。

「川瀬ってあいつが野球部にか?」

「ああ。俺的にはセンターに入れるつもりだ。シニアのときの試合が入手できたから見たけど、守備範囲が広い広い。足は速いってわけじゃないんだが、前に言ったとおり嗅覚が優れているんだよな。さすが”警察犬”っていう異名を持っていただけのことある。後で見るか?」

「もちろんだ。おもしろそうだからな」

「俺も見るぜ。外野だろ?俺にも参考になるところがあるかもしれねえ」

「打撃のほうもなかなかのラインだけど。小技系はうまいからどうだろうな」

打順は二番や七番って感じなタイプだったし、ミートがうまいんだよな。

粘って相手に球数を投げさせられるし、なにより打撃であいつに惹かれたのは

―――――――異常な闘争心。

2-3になって粘って四球を選んだ確率が八割を超し、相手が逃げるほどに恐ろしい闘争心を感じるんだ。眼がどんどん怖くなるというか、恐怖心を植え付けられるんだ。

試合のやつみたら俺だって鳥肌だったもん。俺だってあれは逃げる……。

最高で球を投げさせた数は四打席で三十一球というおかしい数字だ。

「新入生代表川瀬准」

おっとあいさつが終わったみたいだ。

あいさつの内容が書かれてあるだろう紙を折りたたみ、制服のポケットにしまいお辞儀する。

そして振りかえって階段を下り、歩いて自らが座ってた席に戻る。

選手として見たときとまったく反対の雰囲気を出して同級生や上級生の男子から視線を集める。

(さて待ってるぜ、准。お前がやりたい野球をできる環境だからなここは)

そう思いながら俺は退場していく准の姿を見る。

俺の視線に気づいたのか、少し微笑んで退場していった。

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

 

 

「えっと……クラスは…・・っと。……あった」

昇降口前に張り出されている紙をわざわざ見る。

ぶっちゃけるとクラスをどんどん見ていけば自分の名前が見れるんだが、昇降口に張り出されているほうが色々と楽だ。

六組か。他には誰が居るんだ?上から順に名前の欄を見ていく。

「みずきちゃん、友沢、聖と一緒か。うっし、いつでも相談できる相手がいてうれしいぜ」

少し心の中で安心する。

去年は矢部君しかいなくて、しかもあまり心の余裕がなかったから相談とかできなかったけどこの面子なら大丈夫そうだな。

キャプテンって大変だよな・・・。しかも、監督とかが未経験者となるとサインも俺が送ったりしないといけないのに練習メニューとかも自分で考えなきゃいけないしいっぱいいっぱいだ。

でも、みんながサポートしてくれるからなんとかやって行ける。みんなに感謝しなくちゃな。

俺が他のクラスの名前のところを見てると誰かに後ろから話しかけられた。

恐らく手で軽く押されて俺が躓く。

「よっ、あんた。いや……朱鷺先輩?」

「ビビった…准、か。つか、お前が先輩つけるとなんか合わないな」

「じゃ何て呼べばいいのさ。修也さん、とかで呼べってか?」

「お前が良いなら良いけど」

「えっ、ちょ、わたしは嫌だよ!」

「冗談だっ……たぶん」

「たぶんなのかよっ」

「それより、お前頭いいんだなーって」

「そんなもんだろ。ただ、新入生のあいさつしてくれと校長や教頭に頼まれた時はかなり驚いたけどな。制服姿にも慣れてないのに」

「ふーんそうか?」

そう言って准はスカートを持ったり、制服を見たりしてうーん、と唸った。

俺は准の制服姿を全体的に見る。

いや、特におかしくもないしスタイルとかルックスとか比べても可愛いぞ?

似合ってるな。こりゃあ、人気も出るな。

「制服姿の准可愛いな。うん、可愛い」

「な、な、何言ってんだよ!!!」

そう言って准は顔を赤くする。

うわっ、俺ひどいこと言ったかな?いや、別に間違ってないような気がするんだが。

素直に感想言っただけだし、強調するために二回言ったし。それに女の子は可愛いって言われると喜ぶらしいから言ったんだけど。

「そ、そういうこと言わないでくれ!!…は、恥ずかしいだろ……」

「あ、はい」

「……はぁ」

「?」

なぜ准がため息ついているのかがわからない。

こういうときに相手の気持ちがわからないを結構傷つく。色々と。

「それじゃあ後で行く。グラウンドに行けばいいんだろ?」

「そうだな……。それでいい。じゃあ」

准と手を振って別れる。

それと同時に同じクラスになったみずきちゃん、聖、友沢の三人が寄ってきた。

「さっきの娘が野球部に入る川瀬さん?新入生のあいさつをしてたわね」

「あれが新入部員なのか?」

「そうだな。一緒の女の子だから仲良くしてあげてくれよ」

「当たり前じゃん。色々と楽しみだし♪」

「色々って……」

「そろそろ行くぞ」

「良いってそんなに急がなくたってさ。あんたはいちいち堅いわね。ゆっくり行っても大丈夫でしょ」

「時間は過ぎてるから行かなければならないぞ。早く行こう修也」

「そうだな。行くか」

「…」

「…さてこいつと一緒にいると嫌なことに巻き込まれそうだから俺も早めに行くか」

「何よそれ!私がいつもトラブってるみたいに言わないでくれない!?」

「いつも練習に付き合ってあげているのは誰だ?」

「付き合ってもらってるんじゃないわよ!!!勝負してるのよ!!!」

まあ、あいつらはほうっておこう。

友沢とみずきちゃん……いいコンビだと思うな。毎日勝負しては友沢が勝ってるから、みずきちゃんも負けずと練習しているし他のみんなもそれを見て刺激になっているみたいだ。

教室に入るとまだ先生は来てないみたいだ。

友沢に音楽プレーヤーに入れておいた准の動画を見させて、俺は考える。

みんなに言えることだけど、この冬を越してから格段に守備のレベルが上がったと感じる。打撃も良くなったと感じるけど、みんなの足が速くなったから守備レベルが一段階上がったと思う。

ポジションも色々と奪い合いだ。峰田と原がセカンドのポジションを争っている。

原は打撃能力は高いし、足も速い。打順は恐らく二番に入るし、攻撃的二番として使える。

だが、峰田のほうが圧倒的に守備範囲が広いしエラーもない。バントもうまいし、打順は恐らく九番になるかもしれない。相手によって変えるのが一番かもしれないな。

安定の喜多村とキープレイヤーの友沢は外せないとして、ファーストも未定だ。大京が入るかもしれないけど、みずきちゃんが投手に入ったときにファーストに俺が入るか、他のやつが入るか。そこのところも決めておかなければならない。

できれば外野手は肩がいいやつがいないし、俺がライトに入るべきなんだが……まだ良いだろう。

打線は夏よりも強化されてる気がする。

クリーンアップは変わらないとは思うが、その他がどうなのかわからない。

ま、一年生が入ってから考えよう。准以外にも他に来る人がいるかもしれないし。

「……」

「見たぞ。川瀬ってやつだがかなり守備範囲広いな」

「これだけ広ければショート、セカンドも楽だよな。投手としてもな」

「そうね。私とかはあんまり球速くないから痛打されると飛ぶからね。かなり広いわねこの子、聖も楽にリードできるようになるわよね?」

「そうだな。色々な投手によって打ち取り方が分かれてくるのだが、センターラインの守備範囲の広さは重要になってくる」

「じゃあ、センター決定なの?」

「ああ、一応はな。だからレフトに矢部君でライトに猛田を入れるようにする。俺がマウンドを降りたらライトに俺が入って、猛田がファーストに入るって感じで考えている。俺でも良いんだけどな。猛田は守備もなかなかうまいから出来るとは思うけど……」

大京と猛田を比べた時、相手にとって嫌なのは猛田だと思う。

積極性とチャンスの強さ、さらには常にフルスイングなのは相手にプレッシャーを掛けられることができる。後、前に言った猛田のセンスにも賭けたいのもある。

あいつが覚醒してミート型の打者に変わる確率も残す為にもファーストでも出てもらうようにする。

でも、やっぱり猛田が覚醒するのはずいぶんと先のような気がするな。東條を敵視してるけど、東條みたいなボールを捉えるセンス、バットスイングの速さ、選球眼などはすべて一流だし猛田が同じタイプの打者を目指しても100%負けると断言できる。

どうあがいても猛田は勝てないだろう。勝つ確率が無いのなら、同じ舞台に上がらなければ良い。

そう思ってるんだけどな…どうも言いにくい。猛田だからだろうか。

何事も自分で気づくのが一番だ。

教室に先生が入ってきてLHRが始まる。

俺は適当に聞き流してその時間を過ごした。一年生誰か来るかな……。

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後。

グラウンドに来たのは聖、みずきちゃん、友沢、猛田、俺の五人だった。

他のやつらは帰ったらしい。ぶっちゃけると全員が暇だからという理由で来たがいかにも一年生が来る気配がない。一名は来たけど。

「今日はジャージできたけど、明日からはちゃんとユニフォームを持ってくる」

「気合い入ってんなー、じゃあ適当にキャッチボールしたらノックするから。友沢相手してやってくれ」

「わかった。シニア出身だろ?硬式は慣れてるはずだから大丈夫だな」

「まあね。シニアの有名だった選手とキャッチボールできるなんて光栄かな」

そう言って准は友沢とキャッチボールする。

しばらくたった後、准がセンターのポジションに走って向かう。

友沢に中継できるようにショートに入ってもらって、キャッチャーに聖が入る。

「いくぞー!」

「こい!」

キンッ!とセンターとレフトの真ん中当たりでさらに後ろに下がるような打球を打つ。

准は打球を見ないで走り出した。速い!

打球音と角度の予想で一歩目が速いのと、すでに落下地点へ一直線に走り、落ちるかと思われた打球を准は難なくミットの中に収める。

伊達に”警察犬”なんて異名を持っていないな。本当に速い。

続けて左右前後に打球を打つが、まったく落とす心配もなく捕る。

これは確実にセンターのレギュラー確定だな。矢部君と比べようと思ったけど、その必要はないみたいだわ。

「ラストッ!」

カキッ!と打った打球は定位置への打球。

最後はこれで肩の強さを見る。俺の中の基準を満たしていれば良い。

准は後ろから助走をとって、捕ってすばやく送球する。

ショートの友沢をスルーして、ワンバウンドで聖のミットにバシッ!と収まった。

「ナイス送球だ」

「別に普通だよ。もっと肩は強くしないといけない」

そう言って准は戻ってくる。

レギュラーは確定だ。しかも、一年生で女子なのだから他のやつらは絶対気合いが入る。

良い刺激になってるんだぜ?准。お前は自分の目指すスタイルを目指して貰おう。

お前にも俺らにとってもプラスになるからな。

「じゃあ、打撃の方もみたいからな打席に立ってくれ」

「いいけど、誰が投げるんだ?あんたか?」

「どうしようかな。みずきちゃんに頼もう。できる?」

「別にいいわよ。でも手加減はしないけど」

「はは。じゃあ、お願い」

准は右打席に立って、バットを構える。

特に目立つフォームじゃない。いたって普通だ。

しかし、集中力は凄そうだ。みずきちゃんが振りかぶって投げる。

ヒュン!を腕を振り、球は内角低めに投げ込まれる。

聖のミットにパァンッ!と収まる。

「ストライーク」

「…よし行ける」

バッターボックスを均して、再び構える。

っと、これは油断してたら打たれるぞ?みずきちゃん。

二球目の球はさきほどの軌道を描いていたところから急激に外角へ変化した。

クレッセントムーンだ。それに准はバットを振りに行く。が、当たらない。

「ストライークツー」

当たらなかった。ただ、タイミングはすでにぴったりだった。

速い。慣れるのが速すぎる。初めて見た球のタイミングがぴったりだと?

この対応力はプロのトッププレイヤーでもそうそういないんじゃないのか?

三球目の球は外角のギリギリのコースから普通のスクリュー。

それを途中でバットを止めて見逃した。

「ボール」

「……ムッ。やるわね」

みずきちゃんが少し呟いて、ボールを受け取る。

ギリギリのコースに投げ込む制球力はさすがなのだが、そこからのスクリューは普通振ってしまう人が多いはず。さらに初対戦ならば。

「ふぅー…」

大きく息を吐いてバットを構える。

すべての球種を見た今、准にとっては反応できる。

問題はここで何を投げてくるかだ。変化球が連続して投げてきたが、ストレートも来る可能性だってある。さっきのスクリューをどう考えたかが問題だ。

外してきたのか、勝負してきたのか。

みずきちゃんの武器であるクレッセントムーンか、横手左投げからのストレートか。

どんな球が来るのか。圧倒的不利な状況だぜ。

友沢と猛田も素振りをやめて、その勝負を見ている。

みずきちゃんが振りかぶって投げた球は真ん中付近への球。

しかし、途中で変化して逃げていく――――クレッセントムーンだ。

それをしっかりと踏み込んで准は捉えた。

しかし、打球は惜しいことにピッチャーライナー。

みずきちゃんが出したグローブにバシッ!!!!と音を立てて収まった。

「うわぁ……」

「もう少し、か。打球が上がらなかった」

「ナイスバッティングだ」

打撃まで良い物持ってるじゃねえかよ。

パワーは無いけど、ミート力は十分にある。確かバントもうまいし、本当にバランスが取れてるなぁ。

上位打線じゃなくても下位打線での喜多村の後の八番が良いところか?

打てる下位打線を現実に出来るかもしれないな……。こいつは良い。

オーダーを組む時が楽しみだぜ!

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

 

数日後。

准も入って、みんなで部活動仮入部期間の中でもしっかり練習を行い、とうとう部活動正式入部期間終了となった。

今年の一年生はあまり野球部に見学は来ないらしく、他の部活も運動部は割合が少ないらしい。

そんな中、待っていた新入部員が部室に来ていた。

ただ、まぁ……ね。

これほど反応しずらい人が来るとこっちが困るんですよねー…。

「野球部に入部しに来ました。シャルル・黒豹こくひょう・セナです」

「……お、おう。じゃあこれに名前書いて」

「はい」

何この反応しずらい雰囲気。

聖も沈黙してて、みずきちゃんもなんか頭ポリポリかいて変な汗出てるし。

まあ、喜多村以外すんげー微妙な感じになってるよ。

いやいや、まあ良いんだけど。このシャルル・黒豹・セナ君……まあ、黒豹でいいか。金髪で中性的な顔立ちをしていながら男の子らしい。

話を聞くとフランス人と日本人のハーフで、生まれたのは日本ですぐにフランスへ行って、中学生のときに日本に戻ってきたという。中学の時から野球は始めたらしい。

出身中学は聞いたことも無いところだったし、シニアでやってたと言ってた。

しかし、ベンチだったらしく自ら『あまりうまくないです』と言ってたので少なくともかなりうまいとは思えない。だけど、入ってくれるんだったら大歓迎だ。

「じゃあ、改めて新入部員は自己紹介しようか。二人ともみんなのこと知らないだろうからお互いに自己紹介でもすっか。じゃあ、最初はポジション順で投手陣は最後でキャッチャーから……聖からだな」

「わかった。私は六道聖だ。ポジションはキャッチャーとファースト。打順は主に三番だ」

聖が自己紹介すると二人ともわかってたかのようにうなづく。

去年の夏では良い活躍してたしな。キャッチャーとしてのリードやバッティングもこの二人は何かしら見たことあるのかもしれない。

で、ファーストの大京と霧丘からずっと紹介して行って、ショートの友沢が言い自己紹介が終わると次は外野陣。猛田が気合い入ったように自己紹介して、矢部君が准に対して闘志をみなぎらせながらなど色々とあって投手陣。

宇津が普通に自己紹介すると、みずきちゃん。

「私は橘みずきって言いま~す。ちなみに生徒会長ね。ポジションは投手で宇津君と同じくリリーフ担当してるかな♪目標は友沢にデッドボールを当てることです♪」

「……負けてるやつが何言ってんだか」

「おいコラ!今聞こえたぞぉぉぉ!!!!友沢ぁ!!今日こそ勝負して勝ってやる!!」

「うるさいぞみずき」

「ごめんなさい…友沢には絶対負けません」

自己紹介というか友沢に対しての宣戦布告みたいなものが終わって俺の番となった。

緊張するな。俺は少し咳をして、自己紹介を始めた。

「えーと、俺は朱鷺修也と言います。このチームでキャプテンをしています。呼び方は特に決めませんので好きに呼んでいいから。ポジションは投手と外野全般で打順は主に五番。二人が入ってくれてベンチにも良い選手が入ってくれるってのがうれしいです」

そう言うと新入部員の准と黒豹二人は表情を明るくする。

それを見ながら他のメンバーも少し微笑しているのを俺は見る。

「じゃあ、二人自己紹介してくれ」

「じゃあ、わたしからだな。わたしは川瀬准。白薔薇かしまし学園大付中学出身。中学時代はシニアに中学三年生の春まで所属していて、途中でやめました。打順は二番、三番を打っていました。ポジションはセンター。実は高校では野球をやめようと思ったけれど」

少し途中でやめたことにざわつく。

しかし、そこまで言って、准は俺を指さして言った。

俺は動じないで話を聞き続けた。

「去年の六月ぐらいにこの人……朱鷺先輩に誘われて、この高校に野球をしに来ました。目標はレギュラーです。すぐにでも戦力になれるようにがんばります」

「いい度胸でやんす。おいらの守備範囲をなめないでほしいでやんす」

「わたしのほうが広いから問題はないはずだ。レギュラー発表が楽しみですね、朱鷺先輩」

「そ、そうですね……」

俺は汗をダラダラかきながら、弱くなりながら返事をする。

おいおい、お互いににらみ合っちゃだめだろ…。

矢部君には悪いが、センターは准だ。本当に守備範囲が広いからな。

この前見た時も肩の強さは問題はないし、恐らく外野陣を引っ張ってくれるだろう。ポジショニングもうまく取れていたし、外野の指示は准に任せられる。

「えっと、僕ですね。僕はシャルル・黒豹・セナです。シャルルってのはフランスでの名前みたいなもんです。日本の親が苗字が黒豹なので……ってこういうのはいらないですよね。ポジションは投手、捕手、内野、外野……全部経験はしたことあります。打撃に関してはあまり自信はないですが、守備での肩が僕にとっての持ち味です。よろしくおねがいします」

「え、ちょっと待って、黒豹。全部のポジションできるの?」

「はい。そうなりますね。一応投手では持ち球がドロップカーブとツーシームです」

「ってことはオールラウンドプレイヤーか。良いじゃないか」

「すげえな。色々なポジション経験出来てるのは良いと思うぜ」

なるほど。突出した能力が無かったからベンチに甘んじていたのかもしれないな。

捕手もやったことあるらしいし、投手もやったことある。それどころか内野も外野も。

こりゃあ、打撃が良かったら即レギュラーとかだったんだろうけど、あまり良くなかったんだろう。

ベンチでいつでもどのポジションに入ることできた良い選手だったのか。

肩が良いってことで守備のほうが光ってたというのもあったのだろう。

うーん、使い勝手のいい選手が入ったもんだ。

「確認事項をしておこうと思う。今はいないけど、監督は橘聖名子先生にしてもらってる。けれど、初心者なので俺が練習メニューを考えたり、サインを出したりしている。俺をサポートしてくれるとありがたい。キャプテンはさっき言ったとおりで俺。副キャプテンは友沢、猛田にやってもらってる」

「よろしくな!!」

「よろしく」

「じゃ、練習始めるぞ!!!」

「「「「「おー!!!!」」」」」

 

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

練習中。

私が座って、投手陣の球を受けている。

他の部員はノックなどを別の場所で行っていて、投手陣はマウンドへと集まった。

その姿には黒豹やみずきたち……もちろん修也など四人らが集まっていた。

私は……この四人を操っていかなければいけないのか。そう考えると怖くなってくる。

捕手とはものすごく頭を使っていかなければならないポジションだ。試合中はものすごくというレベルではなくなる。

今は何アウト、何点差、どこにランナーがいるのか、相手の打者はどうなのか、味方の守備はどうか、投手の調子、天候はどうか、グラウンド状況、相手の投手からどれだけの点数が取れるか、何回戦かなど少し考えただけでもこれほどある情報を常に整理して配球……試合をコントロールしていかなければならない。

常に考えながらも集中する。これが基本だ。

だから試合後はとても疲れてしまう。それも何も考えたくも無い状況になるぐらい。

投手が一人ならまだしも四人になるとどの継投のことも考えて配球をしなければならない。

(修也がいなければ私はすでにおかしくなっているだろう)

修也が今、監督の役目を担っている以上は試合での私の負担は半分以上減っている。

いつ投手を交換するのかは試合展開を読んでしっかりと変えてくれる。

エースという大役を担い、キャプテンという大きな負担を背負い、さらに打線では五番というクリーンアップに座る。負担は私よりも断然大きいはずだ。それなのになぜ?

(それなのになぜ―――――そこまで完璧にこなすことができるのだろうか)

私にはマネすることができない。

だから、私は精一杯自らできることは投手をサポートしつつ引っ張っていくことだけだ。

「それでどうすっかなー。まあいいや。黒豹投げてみてくれ。お前の力を見たい」

「わかりました。六道さん行きますよ!」

「うむ。来い!」

トルネード投法と呼ばれる投球フォームから繰り出される球。

黒豹は右腕を思いっきり振って投げる。

パァン!とキャッチャーミットに収まって、音を響かせる。

良い球だ。一年生ながらも良い球威を持っている。120キロ後半程度だが、重い球だ。

ただ何故かさみしく思える。

修也の球を受けられないと何故かさみしくなってしまう。

後輩ができて、色んな投手を受けられるのは良いことだとは思う。

こう、言葉に出来ない複雑な感情が私の中で湧き上がってくる。どうしてだろうか。

受けたい。もっと修也の球を受けたい。

そう思いながら黒豹にボールを返して、そして受ける。

大きく曲がるドロップカーブ。ギリギリ低めに決まる。制球力も良い。

「おっけーだ。黒豹」

「はい。わかりました。じゃあ、キャッチャーしていいですよね?」

「ん、もちろん。ミットは持ってるのか?」

「ピッチャー用、キャッチャー用、ファーストミット、内野で使うためのサード向けのミット、外野手用と五つ持ってるんですよ。さすがにレガースとかは持ってませんけどね」

「サード用のグローブは良いよな。色んなところでも使えるからさ」

「はい。では」

「じゃあ、宇津とみずきちゃんの球を受けてて」

少しボーッとしながら、マウンド周辺を見る。

あのマウンドに立つ投手にとって捕手はどのように映るのだろうか。

わからない。私はピッチャーをやったことが無いから。

「六道さん?」

「……」

「大丈夫ですか?六道さん」

そこにはレガース等をつけた黒豹が立っていた。

金髪をかきあげてマスクをつけて、隣に座る。

私が宇津とみずきの変化球と球速の大体の速さを教えるとわかりましたと頷いてボールを受ける。

「聖!行くぞ!」

「わかった」

修也に呼ばれて私が反応する。

軽くキャッチボールをして私を立たせて七割程度で投げた後、本格的に投球練習するために座る。

突然、驚くような言葉を修也は言った。

「聖、新しい球投げるぞ」

「え?」

「メジャーでは良く投げられる球…ムービングファストボール。やっと感覚がわかってきたんだ」

そう言っていつも通りのフォームで振りかぶる。

ビュン!と振られた右腕から球が投げられた。

その瞬間に私は足に力を入れて補給態勢になって、球に集中する。

球はベースの手元で変化し、ミットには収まらなかった。球は後ろのネットに当たって転がる。

「あちゃーごめん。やっぱりいきなりは捕れないか……」

「いや、もう一球頼む!」

「おし、行くぞ!」

先ほどと同じ球が放られる。

135キロ前後のストレートはベースの手元で変化し、私のミットには収まらない。

その後も何度も要求して投げてもらったが私は捕れなかった。

すぐに違う球であるストレートが放られた。

ミットにパァンッ!!!と収まる。

格段に昨年よりも速くなっている。140キロを超えている球だろう。

スライダー、カーブ、シンカーと投げられて、最後に高速シンカー。

どの球も今までよりもレベルアップし、制球力も昨年よりも良くなっている。

修也は昨年の怪我からどんどん良くなってきている。

全体を見てもトップに躍り出るほどの成長率を見せている。

私がついて行かなければ。修也に追いつかなければ。

捕手が支えられる側になってしまったら、駄目だから。

そう思いながらボールを受けた。

 

 

 

 

                     

 

 

 

 

 

 

 

練習が終わり家に帰って、部屋でオーダーを決めていた。

「パターンは二つかな……」

そう言って紙にオーダーを書いていく。

部員が十五名になったからベンチで待機してもらう人も増えるから準備もしやすくなる。

パターンAは

一番 レフト矢部

二番 セカンド原

三番 キャッチャー六道

四番 ショート友沢

五番 ピッチャー俺

六番 ライト猛田

七番 サード喜多村

八番 センター川瀬

九番 ファースト大京

かな。

上位から下位まで特に問題は無い。

准が八番に入って相手を揺さぶれば九番の大京が打ってくれるはずだ。

パターンBは

一番 レフト矢部

二番 センター川瀬

三番 キャッチャー六道

四番 ショート友沢

五番 ピッチャー俺

六番 ライト猛田

七番 サード喜多村

八番 ファースト大京

九番 セカンド原

だな。

セカンドに峰田が入る時はパターンBだ。

そして俺がマウンドから降りるときは俺をライトで、ファースト猛田が入る。

で、また俺がマウンドに上がる時はライトに黒豹が入る。

「うーん。後は調子を見て決めていくんだが」

みずきちゃんか宇津が先発のときは俺がライトに最初っから入るって感じかな。

しかし、どっちもかなりの攻撃力があるぜ。九番に大京や原を置けるのがかなり大きい。

パワフル高校やあかつき大付属にも負けない打線だ。

欠点としては全体的にパワーが足りない部分ってところかな。

本格派投手の前ではパワーが無い分、バットを弾き返されるし、打球も伸びなくなる。

しっかりと芯で捉えれば問題は無いけれど、そこまで凄いミートのある打者揃いってわけじゃないし。

軟投派投手だったら何とかなるものの、例え球が遅くても差し込まれたりしたら打ち取られてしまうのが怖いところだ。早川みたいな投手にも苦戦はするに違いない。

つか、そもそもこの地区が良い投手多すぎなんだよな。

本格派は猪狩、ゴウ、バランス型は鈴本、山口、軟投派は早川。代表的な投手だけでもこれほどいる。

こいつらを攻略していかなければならない。

「後は黒豹がカバーできる部分はしてもらおう。誰かが怪我したときに入ってもらう感じだ」

あいつのオールラウンドさは本当にすごい。

自分自身でもそういう役目を任されてるってのを感じてるかもしれないな。

ただ今思うと凄いメンバーが入ったもんだぜ。聖タチバナは。

最初は俺や聖だけでやっていくのかと思ったら、友沢、猛田。そして夏終わりにはみずきちゃん、原、大京、宇津といった実力者が揃ってる。

「次こそは進まなきゃいけない。相手が強かろうが弱かろうが」

――――――――――進んでやる。

あかつき大付属とやるのは俺らだ。

猪狩待ってろ。聖タチバナが絶対お前らの前に立ちふさがってやるからな。

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